1. 前述のとおり、本件代物弁済契約の効果はXに帰属しないため、甲につきYは無権利者である。そして、登記には公信力が認められていないことから、Yから甲を譲り受けたZも無権利者である。したがって、Xは、Zに対しても、所有権に基づき甲の返還を請求しうるのが原則である。
これに対し、Zからは、以下のような反論が展開されると考える。
2. 表見代理の主張について
1)まず、Zは、自らが109条の「第三者」にあたり、保護されると主張することはできないか。109条の趣旨は、実際には代理権が与えられていないにもかかわらず、本人が他人に代理権を与えたかのような表示をしたために、この代理権授与の表示を信頼して取引関係に入ってきた相手方を保護する点にある。とすれば、「第三者」は特段の事情のない限り、代理権授与の表示を信頼した者、すなわち、代理行為の直接の相手方に限られると解すべきである。したがって、Zは原則として同条の「第三者」にあたらない。
2)では、YがAと協議するときに、譲受けの手続と譲受け後の処分方法に関して相談するために不動産業者Zに同席してもらい、Zのアドバイスにしたがって、YがXから甲を譲り受けたうえで、甲を1億2000万円でZに売却したという事情があった場合はどうか。
この場合、Zは、Xの代理権授与表示を信頼して取引関係に入ってきたといえるため、特段の事情があり、「第三者」に該当する。
これは、94条2項で使う事情でした(問題文の指示)。湯猫のばか。
しかし、Zは、不動産売買を専門に扱う不動産業者であり、所有者Xに連絡を取って意思を確かめるなどの調査確認義務を負っていながら、かかる義務に違反しているため、過失が認められる。よって、Yは、「第三者」に該当するとしても、109条を根拠にXの返還請求を拒むことは出来ない。
3. 94条2項の類推適用について
1) では、Zは、94条2項の「第三者」にあたるとして、Xからの返還請求を拒むことは出来ないか。確かに、XY間には通謀がないため、同条を直接適用することは出来ない。しかし、同条の趣旨は、権利外観法理にあるため、【1】権利者の帰責性のもと、【2】虚偽の外観が作出され、【3】第三者がかかる外観を信頼した場合、類推適用によって第三者の保護を図るべきである。
2) まず、本件では、AY間の代物弁済契約は無権代理行為であり、Xに効果帰属しないため、甲の所有権者は依然としてXである。にもかかわらず、Yは甲の所有権移転登記を備えていることから、所有権者がYであるかのごとき【2】虚偽の外観が存在している。
3) 次に、Xが、Yに登記があることを知りながら放置していたなどの事情があれば、【1】が認められる余地はある。しかし、Xが甲売却の事実を知ったのは、2004年7月1日であり、ZがYから購入したのは同年6月1日であるから、YからZへの転売時において、XはY名義の登記がなされていることを知らなかった。したがって、Xには虚偽の外観につきなんら帰責性が認められないため、94条2項を類推適用することは出来ない。
4. 以上より、Xは、原則どおり、Zに対しても、所有権に基づき甲の返還を請求することができる。
以上
民法総合事例演習 1-2 代理による契… Jun 20, 2012
民法総合事例演習 1-2 代理による契… Jun 20, 2012
民法566条1項解除事由の基礎事情 【追記】 Jun 15, 2012
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