気楽に行こうよ☆

気楽に行こうよ☆

中2の1学期中間テスト後まで



正確には、通うというより通わせるといった感じ。

前日に時間割を見て出たい授業を選び、それに間に合うように起こして学校まで連れて行き、終る頃に迎えに行く。

なかなか起きない彼を無理やり起こさなければならないのは、それはそれは難しいことだった。

後になって考えてみれば、朝起きられないのも症状の一つだったのだから、かなり無茶なことをしていたものだ。

一日に1時限だけのときもあれば、2時限出るときもあり、2,3日続くと次の日は丸一日寝続けるといったような日々が続いた。

食欲は相変わらず戻らず、彼の好きなものばかりを日替わりで作ったりもしたが、たいした効果も見られないうちにいつもの食事に戻った。(そもそもレパートリーが少ないので、あっという間にメニューが一周してしまうのだ)

心療内科には、薬がなくなったらもらいに行きながら先生に話を聞いてもらうくらいで、これといった変化はなかった。

そんなことを続けているうち、彼の中には気づかないうちに以前にも増して大きなストレス溜まっていった。

そして、1学期の中間テストの日がやってきた。


中間テストを受けるといっても、ほとんどの授業には出ていないのだからまず問題など解けないはず。

そのことを本人も気にしている様子ではあったが、とにかく時間には送っていった。

1年の学年末試験は、先生の配慮により他の生徒が来ない別室で、2時限で3教科分受けさせてもらったが、それでも体力の限界で2日目は受けることが出来ず仕舞い。

今回も別室を用意してくれる。という先生の申し出を断り、普通に教室で受けるという本人。

本人がそう言うならと、教室で受けさせることにしたが、不安は消えない。

少しイヤな予感はしていたんだ・・・

そして、早めに迎えに行ったがなかなか終る様子がない。

いったん家に帰って時間の確認をしようと思ったのが、間違いだった。

すぐに引き返したが、待てど暮らせど息子が出てこない。

どうやら、入れ違いになったようだと気づいて、あわてて家に引き返す。

母に聞くと、私が出かけてしばらくしたら帰ってきたという。

でも、どうも様子がおかしいので、2階の自室まで様子を見に行って驚いた。

さっきまで開けていたカーテンを閉ざして、ベッドの隅で布団をかぶって震えている。

「どうしたの?何があったの??」

思わず布団をはいで、彼の顔を見るが、両手で覆って泣き出してしまった!

搾り出すような震える声でやっと言った一言

「音が怖い!人が怖い!学校が怖い!」

あまりの変貌とその一言でショックを受けながらも、思い切り抱きしめながらしばらく気持ちが落ち着くのを待った。

ようやく聞き出したのは、教室でテストを受けるというのは、かなり辛かったこと。

その上、私の車が無かったので一人で歩いて帰ってきたが、車の音が怖くてやっとのことで歩いた、ということ。

バイクとすれ違ったときは、あまりの恐怖に座り込んでしまったらしい。

なんてかわいそうな思いをさせてしまったんだろう。そう思いながら、私も一緒に泣いてしまった。

しばらくして彼の気持ちを聞いてみると・・・

「本当は無理していたんだ。お母さんやお父さんのことを考えると、頑張らなくちゃいけないって。それに、自分でも早く元のように通いたいと思っていたから。
でも、やっぱり無理だったんだ。もう、学校へは近づきたくもない!」

それを聞いて、覚悟は決まった。

「もう学校へは行かなくてもいい。無理なんかしなくていい。とにかくゆっくり休んで
お前の中のストレスを少しでも失くすようにしていこう。」

そう言うのに、ためらいなどなかった。

その時の、彼の顔はまるで別人のようだった。

その晩、その様子を旦那に話したとき、それまでのもんもんとした気持ちから一気に覚悟が決まったのだと、後から聞いた。

「この子は、ずっと俺が面倒を見ていこう」と。

それからは、学校については触れないことになった。

息子は昼過ぎまで死んだように眠り、目覚めても着替えることもなく、食事をする食欲さえもなく、PC前の椅子から下りることもしない日々が続いた。

見る見る体力が落ちていくのが見ていられなくなって、なんとかしなくちゃと思い、しばらく行かないでも済んでいた心療内科に出かけた。

いつもあまり待たないで良いように受付終了ギリギリに行くのだが、その日に限っていつも以上に長い時間待たされて、とうとう待合室の椅子に横になってしまった。

ようやく診察室に入って、当日の様子を話したとき、先生はこうおっしゃった。

「まだ早すぎたんだよ。学校に行けなくなってまだ3ヶ月でしょ?まだ無理だよ。長くかかって当たり前なんだから。ゆっくり休まなくちゃ。焦っちゃいけないよ。」

「勉強に集中できないのも症状の一つ。いつでも取り返せるから大丈夫だからね」


彼の為だと思って、いつしか親の期待を押し付けていたのに気がつき、すべてを時間にゆだねることにしてからは、私の気持ちも一気に吹っ切れて楽になった。

続く・・・


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