小説 こにゃん日記

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act.7『上手にちっち』 



 『えっと・・・トイレもいるよね。』
ママはまた、ばたばたと消えた。
そうして、こんどは段ボール箱と新聞紙を持ってきた。
ママはダンボールの箱に、新聞紙を次々とちぎって入れた。
おいらはそれを見ると、とたんに堪らず箱の中に飛び込んだ。
まだ新聞紙をママは入れていたので、ぱらぱらとおいらの背中にも舞い落ちた。
おいらは行儀よくしっぽを上げ、少しがにまた気味に足を踏ん張ると、ちっちをした。
それから、ちゃんと前足で新聞紙を掻き揚げた。
ちっちの場所とは、ちょっと違うところに山を作ってしまったのは、ここだけの秘密だ。
そうしたら、ママはすごく驚いたようだった。

 『トイレのしつけは出来ているのね?もしかして、やっぱり迷子ちゃんかな?』
おいらがミルクを飲んだり、ちっちをしたりするのを、面白そうに黙って見ていた桃が、その時心配そうにママに聞いた。
 『この猫返さなきゃいけないの?』
 『迷子ならね。もし桃が迷子になったら、やっぱりおうちに帰りたいでしょう?お母さんお父さんだって桃を必死で探すよ。』
ママはそういって、桃のオーバーと自分のジャケットを脱いで、おいらの体をタオルでちょっと拭いてから、桃とおいらをリビングのこたつにいれ、どこかに電話をかけ始めた。
 『もしもし?すみません子猫を拾ったんですが、迷い猫の届出がないかと思いまして・・・。え?保健所じゃなくって警察に?わかりました。失礼します。』がちゃん。
 『おかしいな~こういう時、お話とかだと保健所なんだけどな~。なんで遺失物?』
ママはぶつぶついいながら、もう一度電話をかけた。
こんどはうまく話が出来たみたいだった。
 『では、明日そちらに連れて行って、届出をだせばいいんですね?』
ママは、はいはいとか言いながらうなずいていた。
そして電話が終わると桃とおいらに、
 『猫ちゃんのおうち探しは明日にして、今日は、もう遅いから猫ちゃんはお泊りね。』と言った。
おいらは、もう半分夢の中でそれを聞いたんだけど、ママの声がなんとなく嬉しそうで、桃がバンザイを言いながら、おいらを抱いてクルクルまわっていたのは覚えてる。



act.8『ママVSパパ』 に続く





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