小説 こにゃん日記

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act.36『会いに行こう』



ふうっ。
誰かの息がかかってこそばゆい。
それからぱちりと重たい瞼を引き上げる。
あれ?ここはどこ?
おいらの眼の中いっぱいに、緑の色が広がった。

『違うわ・・・。』
緑色が急においらから遠のいて、それは一匹の緑色の瞳をした白猫になった。
『また駄目か。』
あれ?忍者猫?
おいらはパチパチと瞬きを繰り返した。
『たいしたちびスケだな。俺様が駆けずり回っている間に、のん気に寝てるとは。』
黒猫の呆れたような声に、おいらははっきりと眼を覚ました。
おいらのママ猫!
『泣き疲れちゃったのよ。まだこの子は小さいから。』
トラ猫がそういって、おいらからそっと身を離した。
おいら、トラ猫にしがみついたまんま、寝ちゃったんだ。
おいら、顔中お毛毛だらけでよかったと思ったよ。
おいらの顔は、きっと夕焼けみたいに真っ赤に違いない。
いつの間にか公園には、たくさんの猫が集っていた。
おいらのママ?ママ?ママはどこ?

だけど、だぁれもおいらのママ猫を連れてきた猫はいなかったんだ。
『そんなにがっかりするんじゃないよ。ここいら辺で、こにゃんのことを知っている奴はいなかったけど、もしかしたら、隣町から連れてこられたのかも知れないし。』
おいらが、えぐえぐ鼻をすすってると、しま姉さんがおいらの肩にしっぽを乗せながら言った。
隣町?!おいらの耳がぴくっとした。
隣町には、おいらのおうちが、迷子になったとき見つけてくれた、あのキジ猫大将がいる。
『キジ猫大将だったら、おいらのママも見つけてくれるよ!』
おいらのしっぽがぴんと立った。
おいらが興奮して、そう叫んだら、いきなりにゃーにゃー騒がしかった周りがシンと静まった。
みんな黙って、トラ猫を見てる。
おいら、とたんにびくっと気がついた。
そうだ。トラ猫はキジ猫大将とは敵同士?
大将は言ってたっけ、大将の片目をつぶしたのは、トラ猫だって。
でも、トラ猫は優しくて、泣いちゃったおいらをずっと抱きしめててくれて・・・それに、おいらの目の前で会った二匹は、なんだか静かで優しい声で話をしていた。

『そうね。隣町のことは、隣町のボスに聞いたほうが早いわ。』
トラ猫は落ち着いた声で言った。
おいらは、恐る恐るトラ猫の顔を見た。
怒ってる?
トラ猫は微笑んでおいらを見た。
『キジ猫大将に会いに行きましょう。』


act.37『おいらはこの町の猫だ』  に続く




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