乂俺はマジだゼッ乂

想い人2

響きは綺麗なこのことば…しかし、想い続けるというのは、かなりの耐性
が必要なことだと、僕は思う。

出会って数年。会った瞬間から思い続けてきたのに、彼は未だ僕の想いを
知らない。
そうこうする内に、強敵が降臨することになる。

彼女の名はラクス・クライン。単身救命ポットに乗って彷徨っていた彼女
は、良くも悪くもその場を通りかかったストライクに回収された。今はア
ークエンジェルにて尋問を受けているところである。

「プラントのお姫様なんだって。」
たまたま通りかかった通路で、クルーたちがそう話しているのが聞こえた
。
その言葉は、僕の心に大きな痼りを残した。
『お姫様』。その言葉の残す痼りは、思ったより大きかった。このとき、
僕は大きな誤解をしていることに気付かなかった。
彼女の正体が『歌姫』だと分かるのは、その後のことである。

「部屋に戻りましょう。」
艦内をパトロールしていた僕の耳に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「仕方ありませんわね…」
キラに続いて聞こえたのは、例のピンクの彼女の声。
慌てて声のする方に行くと、キラが彼女の食事を部屋に運ぼうとするとこ
ろだった。
部屋に着くと、扉が開いた隙にこっそりと中に侵入し様子を窺った。
キラは食事を置くと、そのまま出ていこうとした。何事も起きなかったこと
に安心し、一緒に部屋を出ようとしたのだが。
「ありがとうございます。」
という彼女の言葉により引き留められ、僕の不安は現実となった。
「あなたは…」
彼女はあろうことか、キラの顔を真正面から見つめた。
「…優しいのですね。」
「僕は…僕もコーディネーターですから…」
キラの顔を見ると、複雑そうな表情をしていた。
いつも笑顔のキラも…やはり、ナチュラルとコーディネーターとの狭間で
揺れ動いているのだろうか。
「でも…貴方が優しいのは、貴方だからでしょう？」

彼女がいとも簡単に言ってのけたその言葉は、キラの心に大きな波紋を
残したようだった。

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