颯HAYATE★我儘のべる

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明けない夜はないから 10



俺はNYにつくなり、親父に詰問した。

英はしばらく黙ったあとに話だした。

「5年前のことはお前の方がわかるだろう?私は倒れてしばらく意識不明だったわけだしな。

気がついたときにはお前は結婚し、不幸せな生活を送っていたわけだ。」

司は息を飲んだ。確かに親父の意識が戻り、すべて回復したときには俺は結婚して若宮と手を組んでいた。

「若宮が・・・親父が倒れる前から俺との縁談を持ち込んでいたのは事実なのか?」

「ああ。しつこいくらいに沙織さんを売り込んでいたよ。私は断ったが、お前は断らなかった。それだけのことだ」

親父の少し突き放すような言い方にひっかかった。

親父は俺をどうしたいんだろう。あの状況で19歳の若造になにができた?

「ああ、俺は道明寺を救うには若宮と手を組むしかないと思い込んでいた。今思えば楽な道に逃げたんだ」

「・・・そうだな。今では逃げたってことがわかるくらいに成長したか」

「ああ。俺は自分の力で周りを認めさせ、道明寺を救うべきだったんだ。それに気がついたときは遅かったが」

「遅すぎるかどうかは・・・わからんが、なにを知りたいんだ?」

英は話を促した。じっと息子の目をみつめ、そこから何かを得ようとするかのように。

「親父は5年前の当時、若宮が道明寺の名前を欲しがっていたことを知っているんだよな?」

「ああ」

「なんで今まで黙ってたんだ?」

「・・・お前、教えてもらいたかったのか?・・・情けないな。

お前は将来、道明寺財閥を背負う男だと思っていたが。それに・・・気がついた時にはもうお前は結婚していたんだぞ」

「で、でも・・・教えてくれていれば!」

「・・・教えていればどうした?牧野さんを取り戻そうとしたか?」

司は驚いて目を見張った。親父が牧野のことを知っていたとは。いったいどういうことだ?

「驚いたようだな。お前が牧野つくしさんと真剣に交際していたことは報告を受けていた。

はっきり言うと交際の事実を知ったのは楓よりも先だと思うね。それに楓があれだけ派手に動けばすぐにわかるだろう?」

「・・・親父も反対だったのか?あの頃のいろんな妨害に親父も加担していたのか?」

「別に賛成はしていなかったが、妨害はしていない。高校時代の恋愛はすぐに覚める場合が多い。

あまり強硬に反対しても逆効果だ。楓もまだまだ甘いところがある。私は様子を見ていただけだ。

体調もすぐれなかったし、妨害などしている暇はなかったね」

それは事実だろう。親父は俺が高校を卒業するまえに一度倒れた。それが俺のNY行きを決意させた。

「そう、か。じゃ、親父が鷹野に相談したことって・・・?」

「それはお前には関係ない。いずれは知らせるが、今はまだその時ではない」

英はその件に関してはこれ以上しゃべる気はないらしく、固く口を閉ざした。

「司、私はまだ表舞台に完全に復帰してはいないが情報は入るんだよ。

お前たち夫婦が最初からうまくいっていないのは知っているし、お前が避妊薬を取り寄せていることも、沙織さんが妊娠していることも知っている」

そこまで知られていることに司は驚きを隠せなかった。俺はまだ親父の域に達していないと実感させられた。

「何もかもお見通しなんですね?」

「そうだな。お前は離婚するのか?それはいい、私はもともとこの結婚を認めた覚えはないからな。

だが、若宮と手を切ったあとのことをきちんと考えているんだろうな?」

「・・・若宮はうちが手を引けば勝手に潰れますよ」

「それはわかっている。問題はそういう事態になったときに若宮の者がどうでるか、だ。」

どういう意味だ?司はいまいちよくわからなかった。

「司、沙織さんはどういう人だね?人には子供のころから培ってきた性格というものがある。

上に立つものはその後のことも、それに係わっている者がその後どうするのかまで予測しなくてはならない」

かかわる者。義父と義兄、それにあの女ってことか?

そういえば、あの女は気になることを言っていたよな。

まさか、牧野のことを知っているんじゃ?鷹野つくしが牧野だと知っている!?

と、いうことは・・・まさか!牧野に危害を加える恐れがあるということか?

「・・・親父は・・・あの女が牧野を知っていると思うか?」

「当たり前だろう?お前が全国に知らしめたような者だろうが。天草の息子とのことで雑誌に載り、お前がNYに行く前に開いた会見。

4年後かならず迎えにいきます、だったか?彼女はお前のせいで有名な庶民になってしまった。お前は忘れたのか?」

そうだ、牧野は俺と付き合ったことでいつも注目の的だった。自分のうかつさに腹がたって仕方がない。

「すぐに・・・日本に帰らなければ・・・」

英は呼びかけたが、慌てた司には聞こえなかった。さっさと部屋をでていってしまった。

「ふ、彼女のことになるとすばやいな。だが・・・まだまだだ。

沙織さんが一番大事なのは自分自身だ。そして今と変わらない生活。

若宮の倒産などプライドが許さないだろう。手っ取り早くそれを回避する方法をとる可能性がある。

そこまで考えないとダメだぞ、司・・・」

英は誰もいない部屋に向かってしゃべっていた。言い終えると電話を手にとり、出た相手にある指示を与えた。





司はNYの家を飛び出すとすぐに類に電話をかけた。

TRRRRRR・・・・

なかなかでない類にイライラしながら待った。日本は早朝4時ごろだろう、

類は普通なら夢の中だ。総二郎やあきらでもいいのだが、あの二人よりは類のほうが確実な気がした。

「はやくでろ!類!!!」

『・・・なに・・・』

やっと寝ぼけたような声が聞こえた。

「類!目を覚ませ!頼みがあるんだ!」

『う、ん・・・司・・?』

「ああ、頼む。牧野を守ってくれ!」

『牧野?どういうこと?』

切羽詰った俺の声と牧野の名前で完全に目が覚めたようだ。俺は手短に説明した。

『つまり、あの女が牧野に何かするかもってこと?』

「ああ、その恐れがある。だから気をつけてもらいたいんだ」

『司、わかってる?牧野は今、鷹野家の令嬢だよ。あっちのSPに守られてると思うけど・・・」

「わかってる。でも万が一ってこともある。お前から・・・あの人、颯介さんに連絡して・・・お前らもそれとなく気をつけてくれないか?」

『ああ。総二郎やあきらにも言っておくよ。もちろん颯介さんにもね』

類は切れるとすぐに鷹野颯介へと電話した。





「あ、花沢です。早朝から申し訳ありません」

『・・・やあ。かかってくると思っていたよ』

わかっていたということ?

「どういうことですか?」

『さっき道明寺英氏から電話を貰ってね。司くんが思い違いをしているって』

「思い違い?」

『そう、紅に危険があるって彼は思っているんだろう?」

その通りだ。この人たちは彼女に危険があるとは考えていないらしい。

『俺たちは紅に危険があるとは考えていない。あ、一応言っておくと榊と椛も同じだよ』

「・・・どういうことです?」

颯介はちょっと間をおいて、自分たちの考えを伝えた。

「あなた方は・・・そう思われるんですか?」

『ああ、ほぼ間違いないと思ってるよ。まあ、もちろん万が一ってこともあるから紅にも双子にもSPを増やしておくがね』

類は考えた。そういわれればそうかもしれない。あの女なら・・・そうするかもしれない。

『紅のことはこっちにまかせて、君たちは・・・そっちを頼むよ』

「わかりました。それにしても司のおじさんと連絡を取り合っているとは。

おじさんも妹さんが牧野だって知っているってことですよね?」

『ふ・・・鋭いね。でも俺の口からはきちんとした解答は得られないよ。じゃ、そういうことで』

まだ聞きたいこともあったが、電話は一方的に切られた。

類はしばらく考えていたが、総二郎とあきらに電話をした。

この時点で颯介の言ったことが正しいことを確信していた。

あの女なら・・・そうするだろう。



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