颯HAYATE★我儘のべる

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明けない夜はないから 21完



気がつくと一面真っ白な世界。匂いですぐに病院だと気がついた。

顔を横に向けるとベッドの脇に道明寺がいた。

「・・・牧野!気がついたか。大丈夫か?」

「うん・・・あんたは?なんともないの?」

「ああ、お前がかばってくれたおかげだ。俺は傷ついたってどうってことないのに・・・

お前は女なのに背中にキズが残ってしまったな。すまない・・・。」

つくしはまだ麻酔が抜け切れず、力の入らない手をゆっくりと司の頬に当てた。

「真っ青。それに・・・ヒゲが伸びてるよ」

「・・・お前が心配させるからだろ。」

「ごめん」

「本当にお前は・・・俺に心配かけるのが趣味だよな」

「ごめんって」

少し悲しげな司の顔がゆっくりと近づいてきた。それは・・・昔よりも優しいキス。

彼が泣いていたということには気がついていた。やつれた顔に涙の跡があったから。

だけど、何も言わなかった。プライドだけは天よりも高いヤツだ、言われたくないに違いない。

私は彼の顔を見つめ、気になっていることを聞いてみた。

「沙織さんは・・・どうなったの?」

司はちょっと躊躇したが、しばらくして、ため息をつき話はじめた。

「類たちが警察に引き渡した。あれだけ大勢の前で刺したんだ、誰も庇いようがないだろう。

それにその場で殺意を認めるようなセリフも言ったしな。それに、アイツは自分の男も殺しかけてる。

鷹野のSPがあの女を盗聴していたから、状況がわかってすぐに助けられたが、そうでなかったら男は死んでいたよ。」

「沙織さんが?」

「ああ、部屋の花瓶を男の脳天に叩き付けたみたいだな。部屋中に花瓶のかけらが散らばっていたそうだ。

それだけでも殺人未遂だ、それにお前を傷つけた。俺はお前を傷つけたことを絶対に許さない。」

司の険しい顔には私にはわからない決意がみなぎっていた。

「あの女とは当然、離婚する。こうなった以上、ババアも何も言わないだろう、親父はもともと気に入らない結婚だからな。

だから、牧野・・・離婚したら結婚してくれ!今度こそ、ちゃんとした返事がほしいんだ。」

司の声には懇願するような響きがあった。必死の想いが私の胸に伝わって、涙が出そうだった。

「道明寺・・・」

「YESって返事以外は聞かないからな!」

私はこんなときだけど笑いたくなった。さっきまで泣きそうだったのに、自分でも忙しい感情の変化についていけない。

「YESだよ・・・」

「YESしかダメだっていっただろ!!」

聞こえていなかったのだろうか? YESと言ったつもりだけど。私は微笑んで彼を見つめた。

司はやっと返事を理解した。目を大きく見開いて、つくしを見つめ返した。

「も、もう一回・・・言ってくれ」

「YES!」

「本当に?」

「YESだよ! 何回も言わせないで、気が変わるかもしれないよ。」

そう言ってやると彼は焦って頭を振った。

「や、やったぁ!!!!!」

大声でガッツポーズ。病院中に聞こえたかもしれない。

まるで高校時代に戻ったかのようだった。あの時から何十年もたったような気がする。

いろんなことがありすぎた・・・・・。






俺はすぐにでも離婚して、牧野と結婚するつもりだった。

だが、あの女はこの期におよんで離婚を拒んでいた。拒める立場でもないだろう。

俺は弁護士に相談し、裁判を起こした。結局ドロ沼化してしまった。

その裁判が始まってすぐに若宮智成が死んだ。娘の起こした事件が寿命をさらに縮めたことは間違いない。

沙織の事件と智成の死によって、若宮財閥は完全に倒産した。

経也は有り金を全て持って逃げ、債権者たちに訴えられていた。そういう状態だから沙織を助けることはできない。

沙織は孤立無援だった。俺は同情する気には全くなれなかった。

まず、俺は沙織の腹の子を俺の子ではないと証明した。胎児でもDNA鑑定はできる。それをあの女は知らなかったようだ。

そして、俺を殺そうとしていたという証人として、松崎健吾を呼んだ。

健吾は自分が殺されかけたことで沙織を恨んでいたから、即座に証言をした。

共犯としての自分の罪を軽くしたかった気持ちもあるだろう。まあ、コイツは結局は何もしていないのだが。

裁判の結果は、もちろん離婚。そして慰謝料も払う必要はなかった。

沙織は事件の裁判でも当然、有罪となって刑務所に送られることになった。

執行猶予なしの懲役10年。軽い罰だと思うが、精神異常ということもあった。

確かに・・・沙織は牧野を刺して父親が死んだあと、精神がおかしくなってしまった。

裁判を続けるうちに症状は悪化し、今は自分をどこかの国のお姫様だと思っているようだ。

この女にとっては幸せな世界かもしれない。俺は沙織が精神的に安らぎの中にいることに納得できなかったが、どうしようもなかった。

沙織は懲役10年と言っても、彼女は檻のついた精神病院で10年を過ごすことになるだろう。

牧野は退院と共に、道明寺の屋敷に連れて帰った。俺はずっと一緒にいるつもりだった。

だが、鷹野颯介がやってきて、完全に離婚するまでは許さないと彼女を連れ帰ってしまった。

そこで俺は毎日、鷹野の家に通うことになってしまった。

俺と牧野は・・・結局、あの事件から2年が経過してやっと結婚することができた。






結婚式当日・・・・

俺は新郎控え室で緊張して座っていた。横には6歳になって小学1年生になった息子、榊がいた。

俺は道明寺の金と力をフルに使って、榊と椛を完全に俺の子と認めさせた。

当然、戸籍も俺の子になっている。私生児にしてたまるか!!残念ながらアメリカでは婚外子のままだが・・・

それは仕方がない。だが、父親の名は俺になっているから大目にみよう。

その時、控え室のドアがノックされた。入ってきたのは鷹野泉一だった。

つくしの義父・・・俺は緊張して思い切りよく立ち上がった。

「おじいちゃん!!」

榊が喜んで泉一のもとへ駆けて行く。俺は初めて会う鷹野財閥の総裁に何を言われるのか不安になった。

つくしとの結婚の挨拶に行った際も泉一は忙しく、颯介と煬介が代理を務めていた。

今から結婚しようというのに、義父に初めて会うとは・・・。

「司くん、結婚式の前に君に伝えておかなければならないことがある。」

「な、なんでしょうか?」

まさか、今更・・・結婚は認めないとか言わねぇだろうな?

「心配するな、君の考えているようなことじゃない。なぜ、つくしが私たちの養女になったか、ってことだ」

「え?」

「私に慈善の趣味はないよ。なぜ、あの時わたしがつくしに救いの手を差し延べたか、君は知っておいたほうがいい。」

「・・・はい、聞かせてください。」

泉一はゆっくりとイスに座り、俺にも座るように促した。






「英(すぐる)が倒れる前に私たちが会っていたのは知っているね?」

「はい」

「その時、彼が私に頼んだんだよ、彼女のことを」

「・・・え?親父がつくしを養女にするように頼んだんですか?」

「いや、正確にはつくしを鷹野で預かり、教育してほしいといわれたんだ。

私は事情を聞いて、すぐに了解したよ。だがその後、事態は一変した。

彼女の妊娠が発覚し、君は若宮沙織と婚約した。私はどうしたものかと悩んだよ。

だが・・・英との約束は守ろうと思ってね。若宮沙織が彼女を探っていたのは気がついていた。

だからこそ、預かるのではなく養女にしたんだよ。」

俺は全然理解できなかった。

「わからないみたいだね。」

「養女にした経緯はわかりましたが・・・」

「つまり、英は君とつくしを結婚させるために、道明寺の嫁としてふさわしい女性に教育してくれと私に頼んだんだよ」

俺は驚きで心臓が止まるかと思った。親父はすでにあの時から俺とつくしの結婚を認めていたのか?

「私はきちんと彼女のご両親に説明し、養女にしたんだよ。つくしは両親からも逃げたかったようだ。

ご両親も自分たちが君との交際に積極的すぎたと反省されて、つくしを私に預けてくださった。

娘を立ち直らせるためにね・・・君がヤケになっていた間につくしは道明寺の嫁として恥ずかしくない女性になったよ」

俺は真っ赤になってしまった、俺は確かに当時、全てがどうでもよくて何人もの女と遊んでいた。

つくしじゃないなら同じ・・・そう思って。

俺がバカをしている間に彼女は頑張っていたんだ・・・俺の子を妊娠して、そして生んでからも。

「ありがとうございます。聞いてよかった。親父のことも誤解していました。

つくしのことは・・・絶対に幸せにします。彼女がそばにいてくれれば俺はそれだけで幸せです。

俺は生涯をかけて彼女に償いをしますよ。」

鷹野泉一は大声で笑った。

「つくしは償いなど望んでいないだろうが、君が償いたいなら私は反対しないよ」

そういうと泉一は部屋を出て行った。榊は話を聞いていたが理解はできていないようだ。

俺の袖を引っ張り、まだ出番はこないのかと聞いている。





夢にまで見た彼女のウエディング姿はとても美しかった。

結婚行進曲が流れ、椛が先頭で花を散らしながら、その後ろを実父と義父に両脇を守られたつくしが俺も元へやってくる。

あのあまりの美しさに俺は駆け寄りそうになった。

親友たちと榊が俺の付き添い人として横に立っている。つくしの付き添いは滋と桜子、それに椛。

早く来い!ゆっくりとした歩みに苛立ちながら、俺はつくしを待っていた。

かすかな笑い声は、類が俺の内心を読み取ってのことだろう。

つくしは子供もいるのに純白のウエディングドレスを着てバージンロードを歩くのは気が引けると言っていた。

だが、俺は絶対に白だと譲らなかった。本当なら子供が生まれる前に俺たちは結婚していたはずだ。

俺さえ愚かな決断をしていなければ・・・・。

つくしが父親たちの腕を離れ、俺の手をとる。ついにここまできた・・・

俺の胸は喜びでいっぱいだった。

神父が俺につくしを妻として生涯愛し、尽くすかと聞いている。そんなことは当然だ!

「誓います」

俺は胸を張って大きな声で答えた。F3が微かに肩を震わせ笑っているのが見える。

同じことを彼女に聞いた・・・。俺は固唾を飲んで返事をまった。

「・・・誓います」

俺の声に比べれば、とても小さい声だった。だけど俺にはしっかりと聞こえた。

俺は嬉しさのあまり叫びだしそうだった。神父が俺たちを夫婦と認め、式は終わった。

ここまでの苦しい日々がすべて消えた気がする。これからの未来は絶対に幸せしかない。

俺がそうしてみせる・・・俺はここで自分に誓った。





披露宴はメープルホテルを貸しきった。2年前の沙織の事件もあるので、俺は反対したが、

メープルでやりたいと言ったのは、つくしだった。

俺たちの結婚はマスコミで凄い話題になっていた。

俺が10年近く前にした宣言「4年後、必ず迎えに行きます」

その相手と再婚するというので世間は大騒ぎだった。

世間の殆どの人間が沙織との結婚は政略結婚だとわかっていたので、俺たちの恋は悲恋のように書かれていた。

俺はそのとおりだと笑っていたが、つくしはそんなものじゃないと恥ずかしがっていた。

披露宴も半ばに差し掛かったとき、俺は親父が鷹野に頼んだことを彼女に伝えた。

つくしも何も知らなかったらしく、驚いていた。

「私たちは・・・知らないところで大勢の人たちに守られていたんだね・・・」

つくしの頬に大粒の涙が流れた。俺は親指でそっと涙をぬぐい、キスをした。

「ああ、俺たちは絶対に幸せにならないといけないな。それが親友たちや親父たち、俺たちを助け見守ってくれた人たちへの恩返しだと思う」

「・・・あんたの口から、そんなマトモな言葉が聞けるとはね!!」

つくしはそう言って涙を流しながら笑った。

俺は・・・親友たちのニヤニヤした視線を感じながら、彼女に唇を近づけていった。

俺はこれからの幸せを確信して、彼女の唇にそっとキスをした。

「愛してる・・・もう絶対に離さねぇからな・・・」

「うん、もう絶対に離さないでね」

俺は彼女の顔中にキスの雨を降らせた。

あの真っ暗な夜はもうない、やっと・・・長い夜は明けたのだ。

二人はお互いに見つめ合って、微笑んだ。

「幸せになろう、子供たちと、みんなで!」



FIN



終わりですけど、なにか!?

―――これでいいのか?

最後はムリヤリ感がありますなぁ。

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