「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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颯HAYATE★我儘のべる
雨が止まない 22(完)
早く言え、なんでもいいから早く返事をしろ。
「なんとか言えよ・・・」
俺は我慢できずに返事を促した。 俺はもう一度、颯希を抱えなおし、半身を肩に乗せた。
そしてアイツの顔をじっと見つめ、早く言えと視線で促す。
「―――あの・・・」
「なんだよ!!!」
「・・・ごめん!!! なんて言ったの?」
「―――はあああ???」
俺が呆れた返事をした途端に、周りから笑い声が上がった。
「ま、牧野・・・それはないだろ。 司の決死のプロポーズに・・・なんて言ったの?って・・・」
俺の背後から、あきらが出てきた。 その後ろには総二郎、類、それに鷹野泉一と続く。
コイツら・・・
「つくしさんは、まだ英語が苦手だからねぇ」
泉一がニヤニヤしながら言った。
―――世界の鷹野財閥に嫁に行きながら、まだ英語がダメなのか?
それで大丈夫だったのか、と俺は不安になった。
「・・・司、返事がもらえないってことは振られたってことじゃないの?」
類は確実に楽しんでいる。
「お、お前!!! 鷹野財閥の嫁なのに、なんで英語がダメなんだよ!」
俺はあまりの恥ずかしさに牧野を責めた。 すると、彼女は真っ赤になって反論する。
「なっ・・・日本人のくせに日本語を話せないアンタよりはマシよ!!!」
「「「ははははははっ!!!」」」
突然の大笑いはF3だった。三人とも腹をかかえて笑っている。
「お、お前ら・・・昔のままだな」
―――俺と牧野は無言で見詰め合っていた。 確かに今、俺たちは自然だった。
まるで昔の俺たちのように、無邪気な関係が戻ったかのようだった。
俺は颯希を抱いたまま、もう一度、今度は日本語で・・・同じセリフを繰り返した。
「順境においても逆境においても、富めるときも貧しいときも、健康なときも病のときも、
生涯変わることのない愛と忠節を誓いますか?」
「・・・」
意味を理解した彼女は真っ赤になって俯いていた。
そう、俺はプロポーズの返事もないまま、結婚の誓いを促したのだ。
これにYESと答えるなら、OKだろうし、NOと答えるなら、俺は振られたということだ。
「はい、か・・・いいえ、だ。 どっちだ? 牧野。」
俺が返事を催促しても、すぐには答えられないらしく俯いたまま黙っている。
「牧野・・・返事をくれないか?」
「あい」
え? 俺は固まってしまった。 だが、この返事は・・・
「あい」
俺の耳元で聞こえる声。 つまり・・・返事をしたのは颯希。
「―――良かったね、司。 颯希はYESみたいだ。 母親には振られても娘はOKみたい。」
類がからかってくるが、俺はそれを無視し、彼女の返事に意識を集中していた。
「―――はい・・・YES。 誓います。 道明寺・・・本当にいいんだね?
私はアンタを好きだけど、一番は颯介さんだよ?」
相変わらず、残酷な女だよな。 余計なことを言うなよ・・・だが、返事は・・・
YES? つまり結婚してもいいってことだよな・・・
「な、何度も言わせるな。 それでいいんだ。 お、俺だって・・・颯希が一番だ!」
―――げ、俺、今なんて言った?
気が動転して、わけのわからないことを言ってしまった。 いや、わからないこともないが。
「・・・司、お前・・・」
「颯希が一番って、危ないヤツみたいだぞ。」
「ち・・・違う!!」
「あい」
わけもわからず、ただ返事をする颯希だが、さっきからタイミングがいいというか・・・
「母親としては嬉しいことじゃないか。 娘を一番愛していると言ってくれているんだから。」
からかう友人たちの中、真剣な口調で鷹野泉一が言った。
「つくしさん、あなたと颯希が幸せに暮らすことが颯介の願いだと思う。
私たちは君を鷹野の家から嫁に出したいと思っているよ。 颯希と別れるのは辛いがね。」
「―――牧野が鷹野から嫁に来るというのなら、鷹野はコイツにとって実家です。
俺たちが颯希と一緒に遊びに行きますよ。 もちろん、娘と孫に会いにいつでも道明寺の屋敷を訪ねてください。
そして・・・もしも俺たちに子供ができたら、同じように孫として可愛がってください。」
泉一は俺の言葉に満面の笑みで答えた。
「もちろんだ。 つくしさんは私たちの娘だからね、孫はどの子だって可愛いものだよ。」
「ありがとうございます」
「―――お義父さん、ありがとうございます・・・」
「お礼を言われるようなことはしていない、言ってもいない。 当然のことだ。」
俺は今、最高に幸せだった。 やっと・・・最愛の女を手に入れた。
俺たちは昨日、結婚した。 あのプロポーズから1年が経過していた。
すぐに結婚したかったが、鷹野家から『格式ばったこと』を要求された。
結納、両家への挨拶、それに式場の手配、仲人のお願いなど・・・準備に1年もかかったというわけだ。
だが、俺の人生で一番幸せな1年を過ごしたと思っている。
颯希も2歳になり、俺を「お父さん」と呼ぶようになった。
俺は颯介のこともキチンと教えるつもりだったので、リビングに颯介の写真を飾っている。
さすがに寝室は・・・ご遠慮願いたいからな。
颯希にはもう一人の『パパ』だと教えている。
まだ小さいから混乱しているだろうが、そのうち意味を理解するだろう。
今、すでにつくしは妊娠2ヶ月。
素晴らしいことに、これがわかったのが結婚式の前日だった。
俺の両親、鷹野の両親には散々説教をされてしまった・・・。
だが、俺の実子ができようと、颯希を愛しているし、不安にならないように今まで以上に愛情を与えたいと思っている。
それを両親に伝えると・・・泣かれてしまった。
『まさか、司の口からそんなセリフが聞けるとは思ってもみなかったわ・・・』
これが母親の言葉だろうか。 俺をどういう目で見ているのかと憤ったが、牧野と知り合う前の俺と比べられれば仕方のないことだろう。
「司、どうしたの?」
黙ってテラスに座っている俺を心配し、妻となった、つくしが俺のそばに来た。
「・・・いや、幸せに浸ってた。 準備できたか? そろそろいくぞ。」
「うん。バッチリだよ」
俺たちは今から新婚旅行に出かける。 もちろん颯希も一緒だ。
本当は、海外にでる予定だったが、妊娠しているつくしに飛行機は無理だとキャンセルした。
新婚旅行そのものを延期しようとしたが、つくしが反対し、温泉に行きたいと言い出したので近場の温泉旅館に変更した。
車で2時間程度の近距離。 新婚旅行がそれか・・・と多少の落胆はあるが、妻と娘が一緒ならどこでも幸せだ。
つくしは今でも颯介を愛している。 俺は2番という地位に甘んじているが・・・
それでも俺は最高に幸せだ。
つくしの知っている男の中では2番だが、この地球上に生きている男の中では1番愛しているということだ。
「つくし・・・愛してる」
俺はそういうと、つくしを抱き寄せ、軽くキスをした。
微かにふれあう程度のキス・・・
だが、つくしは真っ赤になり、それでも恥ずかしそうに・・・
「―――私も愛してる」
何番だろうと関係ないだろう?
大事なのは俺がつくしを愛し、つくしが俺を愛しているという事実なのだから。
俺は笑って、今度は頬にキスをした。
「よし、行くか」
俺がそう言うと、ドアのところにいた颯希が頬を膨らまし、俺に駆け寄ってきた。
「颯希にも!!」
そう言って、俺に向かって唇を突き出す。俺は笑って抱き上げた。
「颯希、いいのか? ファーストキスがお父さんになっちゃうぞ。」
俺はそう言って、颯希の頬にチュッと軽く音を立ててキスをしてやった。
「そうよ、颯希、ファーストキスは大事にしなくっちゃ。父親になんてやるものじゃないわよ。もっといい人としなさい。」
俺はつくしの言葉にムッとしつつ、颯希の口を指で突付いた。
「大人になって、本当に好きな・・・颯希が愛している人としろ。」
「―――でも、類ちゃんとチュウしたよ。」
「「・・・・・」」
俺は颯希を床に降ろして・・・
「つくし、ちょっと待ってろ!! 急用が・・・」
「・・・道明寺!! 類のところに行くつもりでしょう。 やめなさい! 私たちは今から新婚旅行でしょ。
私は遅れるのは嫌よ。 アンタが類のところに行くなら、新婚旅行は無しよ!
私と颯希は実家に帰ってしまうからね!!!」
つくしの言葉に俺は振り向いた。
「・・・類が俺の娘にキスしたんだぞ?」
「アンタらだって、静さんとキスしてたじゃん。 外国ではキスは挨拶でしょうが!」
俺の怒りはそんな言葉で治まるはずもなく・・・だが、ここで類を殴りに行けば、この女は本当に実家に帰るだろう。
「―――10分だけ待ってくれ。 頭を冷やしてくる・・・」
俺は怒り心頭で部屋を出て行った。
つくしは勢いよく部屋を出て行く司を呆然と見つめていた。
「―――ま、それだけ颯希を愛してくれているってことなんだけどね・・・」
「お母さん、お父さん怒ってるの?」
「う~ん・・・たぶんね。 でも大丈夫よ、すぐに機嫌よくなるから。」
「類ちゃんに怒ってるの?」
「うん。だけど、ケンカしたりしないから心配しないの。 類たちはお父さんより大人だからケンカになったりしないけどね。」
「―――お父さんって子供なの?」
「そうよ、お子様。」
「ふうん・・・」
そんなことを言われているなどつゆ知らず、司は怒りを静めるべく、庭をグルグルと回っていた。
「颯希・・・お父さんはアンタを愛しているから、他の男の人がキスしたのが許せないんだよ。
愛しているから、類に怒っちゃったの。 それは忘れちゃダメだよ。
お父さんもお母さんも・・・天国のパパもみんな颯希を愛しているんだからね。」
「うん!!! 颯希もお父さんとお母さんが大好き。パパのことも好きだもん。」
つくしは颯希の頭を優しく撫でた。 司・・・部屋を飛びだすから、娘のセリフを聞き逃したわね。 バカなヤツ。
「そうだね。お母さんも颯希がだ~い好きだよ!!
―――お父さんのことも大好き! 一番、愛しているよ・・・」
つくしはニッコリと娘に向かって言った。
颯介さんも1番愛している。でも颯介さんはもういない・・・今は司を一番愛しているよ。
でも・・・司には絶対に言わないけどね・・・
FIN
・・・やっと終わった・・・
これでいいのだろうか?
あとはおいおいに番外編的に補っていこうかな。
「明けない~」みたいにさ。
それで許してくださいなっ!!!
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