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喘息について



T はい。それでは逆に聞きますが、喘息ってどんな病気というイメージがありますか?

B 喘息ですか?う~んヒューヒュー言うような発作が起こって息が苦しくなる病気でしょうか?原因はアレルギーとか?でしょうかね?

T そうですね。ヒューヒューと言うのを一般に喘鳴と言いますが、喘息とはそういう喘鳴を伴う咳や呼吸困難の発作を繰り返す病気と考えて頂いて良いかと思います。

B この喘鳴と言うのはどんな風にして起こるんですか?

T 呼吸した空気は気管、気管支を通って肺の中に入っていきます。気管支は軟骨と筋肉によって出来て居るんですが、その気管支の筋肉が色んな刺激で収縮する訳です。そうなる事によって気管支の内腔が狭くなって、そこを空気が通るときに笛を吹くようにヒューヒュー言う音がする訳ですね。それが喘鳴として聞こえるわけです。喘鳴は聴診器で聞かないと解らない事もあるし、耳で聞くだけでも明かな場合もあります。

B なるほど。ところで、先ほど発作と言われましたが、喘息の患者さんはずっとその喘鳴が起こっている訳じゃないんですよね。

T そうですね。喘息の特徴は、可逆性があると言うことで、発作がおさまれば喘鳴も消失して、胸の音も呼吸機能も普通の人と全く同じような状態になります。

B 小児喘息と言う言葉がありますが、大人の喘息もあるんですよね。

T もちろん、大人にも喘息はあります。喘鳴を伴う咳や呼吸困難の発作と言うところでは同じですが、原因や治療に置いて大人と子供は若干異なる部分があるので、こういう風な言い方をする訳です。

B それで、小児喘息についてなんですが、やっぱり原因はアレルギーなんですか?

T どうしてそう思うんですか?

B 喘息の子供さんって、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などを持っている人が多いような気がするんですけど。

T 食べ物とか、埃とか花粉とか、色んな物にアレルギーを示し易い体質をアトピー性素因もしくは体質と言いますけど、確かに小児喘息の子供さんはアトピー性素因を持っている事が多いです。しかし、喘息の原因はそれだけではありません。

B では原因についてもう少し詳しく伺えますか?

T 喘息の原因は一つではありませんが、小児喘息の場合は先ほど述べました
アトピー性素因がまずがあげられます。
これ様々な物に特異的抗体を作りやすい体質で、その免疫反応によってアレルギーを呈します。
乳児期は卵白、大豆、牛乳、小麦などの食物で1歳をすぎる頃からはダニ、ハウスダスト、動物などの吸入抗原に対してアレルギーを示すことが多いです。

次に感染症があげられます。
幼少時の気管支炎、細気管支炎などの下気道感染は、炎症が起こることによって気管が狭くなり喘息と同じような喘鳴発作を起こします。これはもちろん病気が治れば治る訳ですが、こういう感染症を繰り返すことによって喘息へと移行して行くことがあります。

そして気道過敏性です。
これは様々な刺激により、気道が反応し収縮しやすくなる性質を持ってくると言うことで、刺激としては例えば光化学スモッグなどの大気汚染、建築資材の塗料や両親の喫煙による室内大気汚染があげられます。

そしてその他の因子として
ストレスや心因性の要素もあげられます。

これらが複雑に絡み合って喘息の原因となっている訳です。

B  色んな要因が絡み合ってるのですね。
それでは、喘息という診断はどのようになされるのでしょうか?

T 胸に喘鳴が聞こえる咳発作がある患者さんが居れば喘息を疑う訳ですが、同じような症状を示す感染症、気管支の先天性異常、気管内腫瘍などの人を除外します。
例えば、感染症の場合は発熱を伴っている場合が多い、先天性異常は可逆性が無く、生まれた時からずっと症状がある、気管支の中に出来た腫瘍はいつも同じ部位で喘鳴を聴取するなどが喘息とは違うところです。
そして喘息患者さんに特徴的な、アトピー性素因や気道過敏性の有無、呼吸機能などを参考にして診断します。
アトピー性素因はアレルギーの血液検査、気道過敏性は吸入試験で行いますが、そういう検査を必ずしもせずとも、先ほど述べたような咳発作が可逆性を持ってくり返し出現して居れば、ほぼ喘息と診断してよろしいかと思います。

B 喘息の患者さんに特徴的な症状というか咳の仕方ってあるのでしょうか?

T 喘息の患者さんの咳は、夜にひどくなる傾向があります。夕方から増えて来だして、就寝後1-2時間、明け方に咳き込む事が多いです。日中は夜に比べて改善してる事が多いですが、走ったりした後に咳き込やすいですね。咳はくぐもって、湿った感じの咳の事が多いです。
そしてこれらの症状は、季節の変わり目や、お天気の悪いとき、丁度低気圧の通る時に調子が悪くなることが多いです。

B それでは今度は治療についてお話しを伺いたいと思います。
喘息と言っても、私なんかが病院へ言ったときに見かけるのは、ちょっと吸入をしてるだけの人も居れば、ゼーゼー言いながら点滴を受けている人も居て、色々な程度の人が居るように思うんですけど。

T はい。喘息は慢性に発作を繰り返す病気ですが、その程度にはかなりの個人差があります。どの程度の発作がどの位の頻度で起こるかという事によってその患者さんの重症度と言うのが決められます。それによって治療も変わってくるわけです。

まず、発作の程度ですが、小発作から中発作、大発作と分類されます。
ざっと言うと、小発作は軽い喘鳴があるが、日常生活がおおむね普通に送れる人。中発作とは明らかな喘鳴があって、会話や食事にも影響が出るけど、横に慣れるぐらいの人、大発作は陥没呼吸と言って息を吸うときに胸がへこむような息の仕方をして、会話や食事も出来ず、横になって寝ることも出来ない人です。

B なるほど、それが発作の程度ですね。

T はい。そしてどの程度の発作がどのくらい起こるかで長期的な重症度と言うのが決まります。これも大体の目安ですが、
間欠型というのは年に数回、季節的に小発作を起こす人
軽症持続型とは、月に1回以上軽い発作を起こす人
中等症持続型とは、1週間に1回以上発作を起こすけど毎日ではない、時々中発作や大発作を起こす人
重症持続型とはほぼ毎日発作を起こし、時に大発作を起こす人
こんな感じになります。

B するとその重症度によって治療が違ってくると言うことなんですね。
では、その治療についてもう少し詳しくお願いします。

T 喘息の治療に使われるお薬は、大きく分けると2つに分類されます。
現在起こっている発作を停めるお薬と、発作を起こさないようにするお薬です。
前者としては気管支拡張剤や副腎皮質ホルモンが中心になります。前者は交感神経を刺激して気管支を広げることによって空気の流を良くして喘鳴を抑えるお薬、後者はアレルギーや炎症を抑えるお薬ですね。
飲み薬、吸入薬、貼り薬などの色々な剤型があり、患者さんによってそれを使い分けます。
発作を起こさないようにするお薬は、アレルギーを抑えるお薬、炎症を改善するお薬、副腎皮質ホルモンなどがあります。

B どちらの方が重要なのでしょうか?

T どちらも重要です。先ほどの重症度で言うと、間欠型のようなタイプなら、発作の起こったときにそれを押さえればそれで良いですが、持続型の時には発作を押さえるだけでなく、起こさないようにお薬を続ける事が大事になります。
重症度が強くなるほど、多くの薬を沢山使用していく事になります。

B 子供さんは、よくネブライザーで吸入しているのを見かけますね。

T 吸入薬と言うのは、気管の局所で作用して、内服に比べて全身的な副作用が少ない場合が多いので、大人でも子供でも治療のベースとして好んで用いられます。
子供さんは発作の起こっているときには気管支拡張剤と抗アレルギー剤を、発作を予防するように抗アレルギー剤を吸入することが多いです。副腎皮質ホルモンも、主に吸入で用いられます。
それをベースにして、それで不十分なら飲み薬や貼り薬を追加していく事が多いですね。

B この吸入ですが、ネブライザーって買った方が良いんですか?

T ある程度発作の頻度が多い患者さんは長期的管理に必要となる事が多いですが、それはかかりつけの先生とよく相談しましょう。



B 重症になればなるほど色んな薬を使うことが多くなると言うことですね。
それでは先生、お薬で治療する以外にはどんな事に気を付ければ良いでしょうか?

T そうですね、先ほど述べた環境的な因子で排除できる物は出来るだけ排除するようにしましょう。
例えば、両親がタバコを吸うなら、タバコは止めましょう。
動物を家の中では飼わない方が良いと思います。少なくとも寝室には入れないようにしましょう。
先ほど述べたように、ダニや家のカビにアレルギーを示す人が多いので、そういう人はそうじをマメにして、カーペットや古いソファー、クッションなどは置かないようにして、ダニや埃が貯まらないようにしましょう。

B 水泳をすればよいとよく聞きますが。

T 水泳をする事によって肌が鍛えられ自律神経の働きも活発になります。喘息の起こりにくい体質を作るには良いと思います。もちろん、発作が起こっているときには泳いではいけませんが。

B それから、小児喘息と言うのはそのまま大人になっても続くものでしょうか?

T 小児喘息から成人の喘息に移行していく方も居ますが、成人になるに従って発作が軽くなり、治っていく人の方が多いように思います。
小児期の管理が悪い人の方が移行していくように多いので、しっかりと発作を起こさないような管理をしていった方が良いでしょうね。

B ありがとうございました。
それではまとめをお願いします。


喘息は喘鳴を伴った咳、呼吸困難が発作性に起こる病気である。
発作は寝入りばなや明け方に起こりやすい。
アトピー性体質、感染症、環境因子、心理的因子などが複雑に絡み合って原因となっている。
治療は吸入を中心とした薬物療法であるが、親の禁煙などの環境的要因の整備も大切である。
発作の程度、頻度に見合った適切な治療をして、発作を起こさないようにしていくことが大事である。


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