見たまま、感じたまま、思ったまま

手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱



T まあ、仰々しいタイトルがついていますが、要するに夏かぜの原因となることが多い病気と考えて頂いてよろしいです。

B その中で手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱をとりあげて頂く訳ですが、
これらはいずれも夏に流行ることの多い病気なんですね。

T そうです。他にもマイコプラズマ肺炎とか、溶連菌感染症なども、夏に多く見られますが、今回はウイルス性疾患と言うことで先の3つを取り上げさせて頂きました。

B それでは順を追っておしえて頂きたいと思います。
まず、手足口病について、どんな病気なのかおしえて頂けますか?

T この病気は、コクサッキーウイルス、エンテロウイルスと言う名前ウイルスの感染によって起こります。その名前の通りに、手、足、口に小さな水ぶくれの発疹が出来る病気です。熱はあまり出ないことが多く、出ても38度ぐらいまでですね。

B その発疹と言うのをもう少し詳しくおしえてください。

T 発疹の大きさは米粒くらいの大きさで、やや細長い事が多いです。
一つでなくて、何個かまとまって出ることが多いです。発疹は、手のひらや足の裏でよく観察出来ますが、膝小僧やお尻の付近にも出ます。小さく盛り上がった水ぶくれです。

B 水ぶくれの発疹と言いますと、水疱瘡を思い出すのですが、水疱瘡とは見た感じが違うんですか?

T 水ぼうそうの発疹と区別がしにくい場合もありますが、水疱瘡の発疹が身体全体に出るのに対して、手足口病では顔や頭、身体の中心部に発疹が出ることはありません。

B この発疹は痛いとか、かゆいとかの症状があるんですか?

T いや、痛みもかゆみもありません。

B 口の中はどんなかんじになりますか?

T 舌や口の内側に、小さな水ぶくれ、もしくはアフタという小さく白い口内炎のようなびらんが出来ます。こちらの方は痛いです。

B そうすると、口の痛みが主な症状になりますか?

T そうですね。喉や口の中の痛み、小さな子供さんでは、痛みと言うより、ヨダレを沢山出して食べ物を食べないという形で症状が出ます。
また38度前後の発熱を認める人も居ますが、熱の出ない人の方がむしろ多いかも知れません。
それらの症状以外に、下痢や嘔吐などの消化器症状を認める事があります。

B 小さな子供さんと言われましたが、この病気にかかりやすい年齢ってありますか?

T 小学校へ入るまでの、保育所、幼稚園の年齢のお子さんに多いですね。

B 治療はどのようにすればよろしいのでしょうか?

T このウイルスに効く薬はありませんが、多くの場合数日で自然改善する病気ですので、基本的には主に口の中の痛みに対して、症状を和らげる治療を行います。解熱鎮痛剤や、食べ物の工夫が中心になります。

B 酸っぱい食べ物などはしみるわけですよね。

T そうですよね。熱いもの、塩気の多い物、酸味の強い物はしみて食べにくいと思います。冷たくなく、牛乳のように口に膜をはるような飲み物、のど越しが良い物などを工夫してあげましょう。


B ところで、幼稚園や、保育園は休ませた方が良いのでしょうか?
もちろん人から人に、うつるのですよね。

T この病気はもちろん人にうつるのですが、ウイルスに感染した人が必ず病気を発症するとは限らないこと、また治った後も2週間くらいは便の中にウイルスが排泄されていることなどの理由で保育園や幼稚園へ行くことを禁止にする意味はあまりありません。熱や本人の食欲などをみて決めましょう。

B 要は子供さんの調子を見てという事ですよね。
他に注意するべき事はありますか?

T この病気は基本的には軽症ですが、まれにウイルス性の髄膜炎を起こすことがあります。髄膜炎の主な症状は、高熱、頭痛、嘔吐なので熱が高くなって、頭痛、嘔吐が現れた時にはもう一度主治医の先生に診て貰いましょう。

B では、手足口病についてまとめてください。

T 1手足口病は、手、足における水疱性の発疹を、口の中のアフタやびらんを特徴とする。
  2発熱は軽度で無いことも多く、数日で自然改善する。
  3口の痛みに対して食べ物の工夫が必要である。
  4まれであるが、髄膜炎を起こすことがあり、頭痛、高熱、嘔吐に注意する。

B ありがとうございました。それでは次にヘルパンギーナと言う病気についておしえて頂けますか。

T はい。この病気もコクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスなどによって夏に起こることの多い病気です。

B では、先ほどの手足口病と同じウイルスなんですね。

T そうですね。コクサッキーウイルスやエンテロウイルスには色々種類があるので、どの種類かによって表れる病気が違ってくるわけです。

B やはり小さな子供さんに多い病気ですよね。

T そうですね。やはり学童と言うよりは乳幼児の病気ですね。

B それではどんな症状なのか説明してください。

T この病気は喉の奥の方を中心に、小さな水疱やアフタ、ビランが出来ます。
そして39度前後の高い熱が出ます。高い熱のせいで、熱性痙攣を起こすこともあります。

B 高い熱と言うのが手足口病とは違うところですね。手や足の発疹もないんですね。

T そうです。不定型な発疹を伴う事はありますが、手足口病のような水疱性の発疹は出ません。

B 病原体が同じウイルスとすれば、この病気も症状に対する治療が中心となりますね。

T そうですね。この病気も2-3日で自然に治る病気ですが、喉が痛くて食べ物が食べにくくなるので、食べ物の工夫、水分の補給が大切となります。。熱が高いときには、解熱剤を使用してあげましょう。症状が激しくて、様態が悪そうなときにはもう一度受診した方がよいかと思います。

B 食事について、もう少し詳しくお聞きしたのですが、喉の痛いときと言うのは一般にどんな食事がよいのでしょうか?

T のど越しが良くてあまり咬まずに飲み込める物が良いのではないでしょうか?プリン,ゼリー,アイスクリーム,さましたおじや,とうふ,グラタンなどがよいでしょう.水分では、オレンジジュースなどすっぱいものはしみます.スポーツドリンクを中心に、牛乳や麦茶,みそ汁,ポタージュスープなどがよいでしょう.

B 幼稚園や保育所も、熱が下がって、食べ物が食べられるようになるまでお休みですね。

T その通りです。逆に元気になれば行っても構いません。

B それではヘルパンギーナについてまとめて頂けますか?

T 乳幼児を中心に喉の奥に小さなアフタやびらんを伴い高熱を来す疾患です。
  数日で自然回復するので、治療は熱や喉の痛みに対して行います。
  食事や水分摂取に関して工夫をしてみてください。

B ありがとうございました。では、次にプール熱についてお話しを伺おうと思います。これもまた面白い名前が付いていますね。

T この病気は正式の名前を咽頭結膜熱と言います。喉の扁桃炎と結膜炎を合併した病気ですが、夏にプールを介して流行する事が多いのでこの名前があります。

B この原因となるウイルスはなんと言うウイルスですか?

T これはアデノウイルスというウイルスによって起こります。アデノウイルスも沢山の種類があります。この咽頭結膜熱を起こすタイプ以外にも、流行目を起こすタイプ、胃腸炎を起こすタイプ、扁桃炎や肺炎を起こすタイプがあります。

B なるほど、アデノウイルスイコールプール熱ではなくて、アデノウイルスによる感染症の中で、咽頭扁桃炎をと結膜炎を合併したのをプール熱と呼ぶわけですね。
ところで、プール熱と呼ばれるからには、プールで感染する訳ですか?

T 夏にプールの水を介して感染する事が多いのでこの名前がありますが、もちろんウイルスは唾液や便にも排出されるので、普通の風邪と同じようにプール以外でも感染します。

B では、この病気の症状について、もう少し詳しくおしえてください。

T この病気ではすごく高い熱がでます。熱の高さは39度から40度に達することもまれではありません。そして、一旦熱が出だすと37度以下の平熱になることは滅多になく、4日から5日ぐらい熱が続きます。
喉は赤く腫れて、時には扁桃腺に膿がついたりします。目も結膜炎を起こして真っ赤になります。

B かなり激しい症状ですね。親御さんは心配になりますねえ。

T そうですね。熱がナカナカ下がらないので親御さんはとても心配されます。
ただ、子供さんの全身状態は比較的良好な事が多いです。
この病気となったら、4-5日は高熱が続くことを覚悟しないといけませんね。

B そんなに病気が続くと、他の悪い病気じゃないかと心配になるのですが、確かにこの病気だと診断するようなテストは無いんですか?

T はい。最近このアデノウイルスを検出する迅速の診断キットが使用できるようになりました。いつも言ってますように、これが陰性でもアデノウイルス感染症を否定することは出来ませんが、陽性ならまず間違いないと診断出来ると思います。

B その点ではインフルエンザと似ているわけですね。インフルエンザの場合は特効薬がありましたが、この病気にもこんなお薬はあるのですか?

T 残念ながら、診断が付いてもアデノウイルスに対しては、このウイルスに直接効くお薬はありません。
治療は、熱や喉の痛みを押さえるお薬、目薬などを処方されます。

B 家庭ではどんな事に気を付ければ良いですか?

T 高い熱が続くので、涼しい部屋で寝かせてあげましょう。水分は麦茶、スポーツドリンクなどを中心にたっぷりと与えてください。食事はのど越しのよい物を食べさせましょう。

B 人にうつしても、うつされてもイヤな病気ですが、予防はどのようにすれば良いのでしょうか?

T プールの前後には、手洗いやうがいをしっかりしましょう。プールから出た後は目もしっかり洗いましょう。患者さんとのタオルは共用しないように気を付けてください。
学校はプールの消毒をしっかりする必要があります。

B 学校はいつから行けば良いのでしょうか?

T 熱が引いて、喉の痛みや目の充血がなくなって、2日したら行って良いことになっています。

B それではプール熱についてまとめてください。

T 1 アデノウイルス感染によって起こる、咽頭炎、結膜炎を主体とする感染症です。
2 40度前後の熱が4ム5日続くことが多いです。
3 診断するための簡易テストがあります。
4 特別な治療は無く、熱や喉の痛み、結膜炎に対して治療をします。
5 症状が改善して2日経つまでは、登校、登園を控えましょう。


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