見たまま、感じたまま、思ったまま

祭りの準備



「祭りの準備」75年制作のATG作品。監督は黒木和雄、主演は江藤潤(これがデビュー作)、そのほかに竹下景子、原田芳雄、馬淵晴子、ハナ肇などが出演。

この映画は、原作及び脚本を書いた中島丈博の自伝的作品であり、彼の若き青春の日々へのオマージュでもある。

土佐の中村市(ああ、僕の第2の故郷だ)で銀行員をやっている主人公(江藤潤)は、いつかシナリオ作家になってこの町を出ていくことを夢見ている。父親(ハナ肇)は愛人を作って家には寄りつかず、その分よけに注がれる母親(馬淵晴子)の愛情もうっとうしく感じている。
彼は自分の回りの出来事をシナリオにしようと考える。
都会からピロポン中毒になって帰ってきた幼なじみのタマミ、そしてそのタマミの面倒を見ているうちに彼女を妊娠させてしまった自分の祖父。兄と兄嫁を共有して、泥棒をしながら暮らしている友達(原田芳雄)、そして母親と関係を持ってしまう足の悪い友人の事など。
幼なじみの才媛の女性(竹下景子)と、銀行の宿直室で思いをとげた夜、不注意から失火をして銀行を首になった事から、彼はまずこの町を出ていくことから始めなければいけないと気が付く。

早朝、母親に黙って家を出ていく主人公。彼を見送りに着たのは殺人を犯して指名手配されている原田芳雄だけであった。彼がバンザ~イ!と叫ぶのを背中で聞きながら汽車が街で出ていくところでこの映画は終わる。
この映画を初めて見たのは多分大阪で勤務医をしている30歳の頃だったと思う。深夜テレビの映画劇場だっただろう。
以後、ビデオを探していたが見つからず、数年前に偶然また深夜放映されているのを発見。必死で録画したのだ。
ちなみに、この映画は清純派の竹下景子の濡れ場があると言う意味でよく週刊誌にも取り上げられている。
その必死で録画したビデオをある日見てみると、よりによってその竹下景子の濡れ場の場面にあのアホの長男がドラえもんを録画してるではないか!わたしゃ怒ったね!


そんな訳で以後ずっとDVDが発売されるのを心待ちにしていたのだ。


もう一つ余談になるが、中村みたいな小さな街の事、この脚本では、どの登場人物が誰になるかが、街の人には分かってしまったみたい。それで、竹下景子演ずる女性は、夫婦仲が悪くなって離婚に到ったと中村の友人に聴いた。

僕は洋画よりも邦画の方が好きだ。これは字幕を読むのが嫌いと言う他に、映画の状況が自分に身近なものとして感じられるという事があると思う。

その中でもこういう青春映画と呼ばれる物が好きだ。
青春映画と言っても、楽しく明るい学園生活・・ってな感じではなくて、もっとドロドロして暗く、それでいて内からムクムクと頭をもたげて来る強い感情を感じられる映画だ。

故郷を捨てて家を出ようと言ったのは寺山修司だったと思うが、家からの自立、親からの自立、そして性衝動とどのようにつき合っていくか。それらの事がみんなこの映画には含まれている。
他にもこういう青春物として、「TATOOあり」、「遠雷」、「サード」、「竜二」、ちょっと趣向は変わるが「スローなブギにしてくれ」、「魚影の群れ」も好きな映画だ。

僕がこういう映画が好きなのは何故だろう?
この映画の主人公達の年齢はもう遙かに過ぎてしまった。
しかし、自分はまだその過程を過ぎていない。彼らが通った道筋を通ってない、そんな思いがあるのかな?
そして、自分に足らない物を映画を見ることによって埋め合わせているのだろうか?
それとも形は違うけども、自分も同じような道を通って来たのだと思い感慨にふけっているのかも知れない。

皆さんの思い出に残る青春映画って何ですか?



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