マ王もどきの城

マ王もどきの城

久遠の訪問者さん、小説「自由な・・・?」


閉じこめられた世界で、ただひたすらそんな考えを巡らす。
「今日も・・・学校、行けないのかな・・・」
僕は坂谷康介<さかたにこうすけ>。11歳の小学5年生。
外に出たい、遊びたい、学校へ行きたい。
・・・でも、それは無理。
・・『悪性ガンフォ』、僕がかかっている病気の名前。
詳しくは知らないけど、悪い病気らしい。
「・・・大体、何なのかな?『ガンフォ』って・・・変な名前だし」

コツコツコツコツ―――。
病室の外の廊下を歩く足音。
「・・・またか・・・」
ガチャ――パタン。
「康介君~、注射の時間だよ~」
この人は北岡 美祢<きたおか みね>さん。
「・・・はい・・・」
声が暗いのが自分でも分かった。
それぐらい嫌なんだ、この時間は。
・・・この時間――と、いうか、病院にいる時間全てが嫌だ。
束縛されてる、自由がない世界で僕は・・・もう2年も生きてきた。
周りの人たちはみんな口を揃えて「もう慣れたでしょ?」なんて言う。
「・・・そんなワケ・・・ないじゃないか・・・」
「ん?何か言った?康介君」
北岡さんは、微笑んで僕を見ていた。
「あ、いや・・・何でもないです」

・・・・・ツマラナイ。
何ガオモシロイ?
何故ミンナハ笑ッテイラレルノ?
・・・死ニタイ。コンナ世界カラ抜ケ出シタイ。
嫌ダ、嫌ダ、イヤだ、いヤだイやダ嫌だいヤダ――――。

「は~い、注射終わったよ~、今度は夕方にまた来るからね~」
ガチャ――――パタン。
コツコツコツコツ――――――。
また無機質な音が響き渡る。
「学校・・・行きたい・・・」


「・・・息子さんの病気は心が生み出しています」
「心・・・?」
「はい、心です。つまり、彼の精神状態で病状も治療時期も変わってくるということです」
「・・・康介を喜ばせてやった方がいいんですね?」
「喜ばせなくてもいいですが、彼が心を開いてくれれば・・・彼が感情をもっと出してくれれば病状は良くなるはずです」
「康介は、かなり感情を出してると思うんですが?」
「いえ・・・彼は・・・心のどこかに逃げ道を作っています。そして嫌なことも楽しいことも全部そこから放出しています・・・」
「では、康介の感情を引き出すことは難しいと?」
「はい・・・このままでは・・・病気は悪化する一方です。早急に対処を・・・」


タッタッタッタッ――――。
ガチャ――!
「康介ッ!今日も来たぞーッ」
「祐太!」
彼は僕の友達。
志賀 祐太<しが ゆうた>。
「おいおいどうしたぁ~、今日は一段と暗いなッ!」
「う、うるさいなぁ・・・いいじゃん、別に」
・・・祐太は僕の事なら何でもお見通しだ。
「今日も無理か、退院なんて」
「・・・出来るならとっくに言ってる」
「だよなぁ・・・ったく、病院なんてトコはつまらないよな。味気ない食事に密室の部屋に規則正しい生活。俺だったら絶対逃げ出してるよ」
・・・僕の考えてる、病院の嫌なとこ全部まとめて言う。
逃げ出したい。
何度ここから出ようと考えただろうか。
だけど認めてくれない、許してくれない。
縛られて、生きた心地がしない。
これなら死んでしまっても一緒かもしれない。
これ以上生きていたってつまらない。
なら死んだ方がいいんじゃないか?
そう思ってどれだけの傷を右手首に作ってきただろうか。
まだ生きている。
死んじゃいない。
本当は死にたくないのかも知れない。
このつまらない、何も出来ない、完全に自由のない世界なのに。
『死』の先にある『何か』を、知っているのかも知れない・・・。
「・・・どうした、康介。ホントに暗いぞ?」
「あっ、いや、何でも、ない・・・」
表面だけ取り繕って、慌ててそう答えた。
「そうか?・・・まぁ、無理すんなよ?」
「う、うん・・・」
それだけ言うと祐太はベッドの横の椅子から立った。
「じゃーな」
「え、もう帰るの?」
「早く帰らないと親がうるせーしな」
「・・・そっか」
そう言ってしょぼくれた僕に気付いて、祐太は背中をバンバンと叩いた。
「いてっ!」
「次会う時にはそんな顔すんじゃねーぞ。んじゃなっ!」
祐太は空いたままのドアから出て行った。

「・・・あ、また閉めないで出て行ったな・・・」
ブツブツと独り言を呟きながら、ドアにゆっくり歩み寄った。


――――ドクン――――


「――ッ!?」
ドサッ!
心臓の、たった一度だけの叫びを聞いた。
僕の体はそれだけで床に倒れた。


――――ドクン――――


「あ・・・はァ・・・ッあ・・・!」
かすれた息しかできない。
呼吸が、でき、ない――!
やば―――


――――ドクン――――


僕の心臓はもう一度だけ叫ぶと
僕の意識をどこか遠くへ
飛ばしてしまった―――――。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: