しーくれっとらば~’S

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SERENADE 第4話 圭



SERENADE


~THE 4th~ side KEI TOUNOIN



....おかしいですね。寝相には自信があったのですが。
まあ、意識下でも、じゃれあっている相手が悠季であるということは
はなはだ嬉しい限りですがね。ふふ。

ふと、ライディングデスクの片隅に置いてあるピアスが
鈍く光を反射した。
まるで悠季の---ちょっと照れたようにうつむいた---表情のように。

神を憎んではいても、すがる事など無いと思っていた僕ですが
こんなちっぽけなピアスに救われるとは。
だから....僕の”治療”を許してくれますね。悠季。

********************************

悠季。

M響のコンサート、無事終了しました。
残念ながら僕の最愛のミューズは、薄汚い野熊と
白鳥にトリップしている最中でしたが。

ああ、恨み言を言っているのではないのですよ。
君の描いた24色の湖に舞い降りる白鳥を眺めて居たかったし
何より君をそんなにまで高めた相手が...。
まあ、そんなことはいいでしょう。

僕は.....
いつに無くあせっていたのです。
前日まで納得の行く音が出せずに舞台に立つことに。

しかし、悠季が『がんばって』と差し出してくれた
小さな「ト音記号」のピアス。
自分だけを信じ、自分の力に酔うことで不安を取り除いてきた僕にとっては
初めての『頼りになるもの』でした。
モーニングの襟元に小さく光るそれは
充分に僕の平穏な心を取り戻してくれたのです。

君を思い描いて...少し微笑んでしまったようです。
あとで飯田君にからかわれましたが。

そんな「君」に寄り添われながらのシューベルトはなかなかの出来でした!

冒頭のチェロ・コントラバスによる序奏。
次に第1主題が、弦楽器のさざなみのような伴奏にのって、
オーボエとクラリネットによって提示される。
徐々に音楽が高揚した後、全奏のカデンツで流れは中断される。
....ホルンとファゴットの導きに続いてチェロにより第2主題が叙情的に提示される。
主題はバイオリンに引き継がれた後、突然断ち切られ、
第2主題の断片をもとに劇的に展開されていく。

展開部はきわめて静寂な中に始まり、次第に高揚してゆき、激しいクライマックスをむかえる。
コーダは、序奏を元に、ため息をつくような表現を繰り返し、
全体を閉じる。


そんな高揚した気分を引きずったまま帰宅すると
久しぶりに君の姿が!
疲れた顔で(しかし笑顔で)お帰りのキスをした途端に
僕は気づいてしまったのです。
「音にまとわり憑かれて乾いている君」に。

僕が今日、性的な快感とも似た達成感を味わってきたばかりだったので
わかったのですよ。
純粋な音の高みを目指すがゆえに「禁欲」などしましたが
健康な成人である悠季には必要な潤いが足りなかったのです。

すぐにマッサージを申し出た僕に
君は素直に頷いて  よっぽど疲れていたのですね。
大切な腕から、肩、背中を時間をかけて揉み解し、
大胸筋も優しくさすると....
君の吐息が少しづつ熱く感じられた。
ああ、小さな突起さえも凝り固まって!!
....それから僕は君の張り詰めた身体を解きほぐす事に没頭しました。
小さく抵抗する君の唇を塞いで
まだ緊張している両脚を割って入り込み
上気しているその白い肌に数え切れない朱の印を落として。

うつろな君の視線を受けた僕は...
今日2度目の『未完成交響曲』を君で奏でました!
次第に高揚していくクライマックスに
トランペットの高い響きに似た君の喘ぎが木霊して!!
音と君のくれる快感の渦の中で僕も充分に至福の時を味わったのです。

ああ、悠季。
固く抱き合って絶頂の果ての甘い開放を共にした君の
先ほどまでとは打って変わった柔らかい身体と吐息に
僕は、来るべきソリストコンサートの成功を確信しました。

君自身が持っている『艶やかさ』や『柔らかさ』が
その澄み切った音に彩りを与えるなら、
そのために心と身体の充足が必要であったなら!
僕の今日のマッサージは必要不可欠な治療だったのでしょう。

キミ専用の整体師はいつでも....悠季の傍にいますよ。

おやすみ。悠季。
目覚めたキミが、心から微笑む事ができるよう祈っています。


                       圭


********************************

情事のあとのすこし紅潮した顔でまどろむ悠季を見ながら
僕はペンを置いた。
悠季のソリスト公演は3日後だ。
またそれまでは.....。
想像の中の悠季を抱く事しか出来ないのだな...。
崇高な目的を持つ伴侶を持つのも
結構、自制心を必要とするものだな。

そんな今更ながらのことをつらつらと考えていた。
まだ興奮しきった頭と身体で。


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