サトゥの死ぬまでシネマ。

サトゥの死ぬまでシネマ。

「野ザル。をプロデュース」第1話。

「第1話 ガールズ・エンド」
学校へ行く途中に(つまり通学路ってやつだ)葬儀場(いわゆるセレモニーホールってやつだ)がある。行きは朝早いこともありただ通り過ぎるだけだが帰りは「今日は誰か死んだ、死んでない」と横目で確認するようになった。ただでさえ葬式のような授業を受けたあとにそんな確認をする自分が嫌になるが、もはや(漢字で書くと最早だ)日課となってしまった。今日も横目でチラリと見て喪服姿の人をみかけ「今日も誰か死んだのか」と思った自分はその直後、思わず2度見していた。そう、一瞬敵に気づかなかったジャッキー・チェンばりの2度見だ。多分これがコメディ映画だったら迷わず電柱にぶつかるだろうが、俺はすんなりと自転車をとめてその「喪服の人」のそばへ近づいた。「喪服」と思ったのは俺の高校の女子の制服だった。つまり、その制服を身につけた彼女は俺に制服を喪服と思わせるほどの暗さでポツンと。ほんと、音が聞こえるぐらいポツンと葬儀場の前に突っ立っていたのだ。彼女の名前は猿野申子。最近転校してきて、あまりの暗さにいじめられ始めていた。もちろん俺はそんなことに興味もなかったが傍観者の時点でいじめっこだ。それくらいの自覚はある。まあ、その自覚ってやつが俺に彼女に声をかけさせた。
「おい何やってんだよ」
「・・・・」
「おまえクラスに馴染んでねえもんな」
「・・・・」
「ほら、あれだ、ハロウィンっつう行事が日本に馴染んでないぐらい馴染んでないもんな」ここで俺はずっと温めてきた例えツッコミ2つのうちのひとつを使った。まさか実生活で使えるとは思っていなかったので俺は密かに心の中でガッツポーズをした。ちなみにもうひとつの例えツッコミは「お前は始めてのデートがスケート場で手を繋いで手袋越しでありながらにも関わらずドキドキしてる中2の男子生徒か」だ。俺の絶妙な例えツッコミにも何の反応も示さない。
「お前なあ、さっきからセリフが『・・・・』なんだよ。言ってる意味わかる?その前に俺がわかる?同じクラスの・・・」
「あたし・・・」彼女がようやく口を開いた。相変わらず「・・・・」は多いが。つうか俺にも「・・・・」を使わせやがって。
「あたしが死んだらお母さんここでお葬式あげてくれるかな」
「いや、ありえねえよ」
「だって新しい家狭いし」
「そういうことじゃなくて」
「あ、私の葬式になんて誰もこないから狭い家でもいいって意味」
「だー、もう。違うっつうの、なんだ、お前死のうとしてんの?俺はな、なんかのドラマ見てえに『じゃあ死ねば』っつって冷たくつきはなしておいて説得するような手は使わねえぞ。死ぬな。それだけだ」
「私が死んで悲しむ人なんていない」
「あーもう。お前はなんでそんなマニュアル通りなんだよ。俺が『俺が悲しむよ』なんて言うと思ったら大間違いだぞ。死ぬな。しか言わん」
「じゃあ、死なない」
「よーし、それでこそ・・・」しまった。このままではアンガールズのネタ「何も考えないで『それでこそ』って言っちゃった」になっちまう。何かうまく逃れなければ。「それでこそ、俺が見つけた原石だ」「ゲンセキ?」「そう、お前は土台はモウマンタイだ。俺がお前をプロデュースして、脱いじめられっこ宣言させてやるよ」
「プロデュース・・・」
「そう、いっとくが『今日の何某』は毎回お前だ」
「あ、内P・・・」
「そうか内Pわかるか。なら話は早い。まずは・・・」こうして俺のプロデュース生活が始まった。

第2話
目次


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