サトゥの死ぬまでシネマ。

サトゥの死ぬまでシネマ。

第2話。

「第2話 モンスター・ワーク」
「おっちゃん、ちょいと奥借りるよ」
俺は理容ナカニシの扉を野ザル(彼女のことはそう呼ぶことにした。猿野申子。サルノシンコ。だからだが、「申」もサルって読む事に気づいたのはもっと後のことだ)を連れて開けていた。
「お、おまえが女の子連れてくるなんて、紀子ちゃん以来じゃねえか」
「ちょっと待ってよドク。その話はしない約束だぜ」
「オーケイ、マーティ」
中西靖史(ナカニシヤスシ)という「最後の雨」という名曲を歌った歌手と漢字は違えど同姓同名の理容ナカニシの店主とはもう10年以上のつきあいになる。理容ナカニシは自分の家から徒歩5分の距離にあり、ものごころついた時からそこで髪を切っていた。今となっては「髪を切る」以外の目的で友人たちとの溜まり場になったいた。
「まあ、パート1とパート2でジェニファー役も代わってることだしね。あとでこの娘のカットよろしく」
「はいよ」
おっちゃんは映画好きで冒頭と今の会話もそれが顕著に表れている。2人ともバック・トゥ・ザ・フューチャーが大好きだ。そして無論、俺の口グセは「ヘヴィだ」だ。しかし、おっちゃんは発明家でもないし、俺は「チキン」と言われても怒らない。
「さあて、どうするか」俺は野ザルを店の奥の六畳の部屋に招き、冷蔵庫から500ミリのペットボトルのコーラ(もちろんペプシ)を2本を出して、1本を差し出した。オドオドしながらも彼女は受け取った。そして俺は会議モードに突入しようとした。成り行きとはいえ彼女をプロデュースしなければいけない。作戦を練らねば。
「ノリコって同じクラスのハミガさんですか」
「まあな。おまえ、転校生なのにもうフルネームで覚えてんのか。そういや自己紹介まだだったな。俺の名前はセンマルリョウ。数字の千にお城の本丸の丸。田村亮子のいや谷亮子の亮。難しくいえば、ナベブタにワにルだな。で千丸亮」
「私は・・・」
「いいよ、ホームルームで聞いたから」
「ハミガさんと付き合ってるんですか」
「付き合ってた。だな。もう別れたけど。で、それよりも、プロデュースだ。髪型
はあとでおっちゃんに、そうだな。初期のウチダ・・・。いやヒロスエでいこう。とにかくショートカットだ。これはだな。俺の好みによるところが大きいけど、髪形を変えるって重要だ」といいつつ、変えるといったら髪形しか思いつかなかっただけだったりする。
「そして次に重要なのはキャラ作りだ。俺は『ツンデレ』でいこうと思う」
「ツンデレって何ですか」
「わかんないか。帰ってググれ」
「ググレ・・・」
「ググるも知らないか。じゃあヤフれ。これは俺のオリジナルだけど」とネットで「ググる」という文字を初めてみたときから「なぜこの言葉はないのか」と思ったヤフー愛用者の俺は言ってみた。
「ま、いいや、とにかく普段は強気な女の子。ところが好きな男の前では女の子らしいっつう。そのギャップがいいわけよ。まずこれでクラスのアキバ系をガッツリ掴むんだ。このアピール法はあとで考えるとして。次にイジメだな。なんとなくいじめられているのには気づいてたけど・・・。ごめんな傍観者で。まあ、ここまで
きたからにはイジメから救わなきゃ始まらない。誰だ首謀者は?」
「・・・・・」
「言えよ」
「ノリコ・・・さん。ハミガノリコさん」
なんてこった。通りで転校生がフルネームで覚えるわけだ。
「しょうがねえな。明日ノリコに話するよ。まかせとけ元カノだ。っつうわけで今日はこれでおしまい。髪切ったら帰っていいよ。散髪代は出しとくよ」実は散髪代はツケのまま、もう5万ぐらいになっている。
「そして、今日の何某だ、行くぞドンドンドーン」
「・・・ベタでーす・・・」
「ヒャア」俺はさんまさん並みの引き笑いをして言った。
「やっぱりお前とは気が合いそうだ」

第3話
目次



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: