サトゥの死ぬまでシネマ。

サトゥの死ぬまでシネマ。

第6話

第6話「ネクスト・ラスト・シーン」
2005年12月8日木曜日AM:07:23
あれから1週間がたった。俺はとりあえず「トゥルー・コーリング」を借りて全部観た。中途半端な終わり方に驚いたが、なるほど、俺の体験に似ている。どうやらあの日俺とは別の人間がおばあちゃんが死んだ直後、死んだはずのおばあちゃんの「助けて」という言葉を聞いたようだ。同じ能力を持つ俺は同時に1日を繰り返したというわけだ。片方が「声」を聞いた場合はもう片方はその人が死んだ過程をフラッシュバックで見ることができる。タクシーに乗った途端俺が体験したのがそれだ。そして考えられることはただひとつ。「声」を聞いたヤツがおばあちゃんを殺したということだ。理由は定かではないが、トゥルー・コーリングの理論でいえば「死ぬべき人間を助ける必要はない」ということだ。俺から言わせればそんな能力があるということは「助けるべきだ」ということ。たとえ身内じゃなくとも。そろそろ目覚まし消すか。手を伸ばす。目覚ましの隣りにあるキム・ポッシブルのフィギア(マックのハッピーセットのヤツ)が床に落ちた。とりあえず拾いあげる。カーテンを開けるとどんよりしたくもりだった。嫌な予感がしたが、おばあちゃんが死に、フラれた俺にこれ以上の不幸は訪れないだろう。と、そのときはそう思えた。制服に着替えて1階へ降りる。
「おはよう。母さんツナくれ。ツナ」
「はいはい」
トーストにツナマヨをつけてほおばる。ンマイ。
「お兄ちゃんいつもギリギリだね」
妹のハリコがソファーでテレビを見ていた。
「あん。まあ目覚ましもギリギリにしてるしな」
「お兄ちゃん蟹座1位だよ!」
スルーかよ。
「どうしても助けたいと思える出会いアリ。だって」
「あっそ。お前はどうなんだ?」
「天秤座は5位だよ。恋愛運も不調みたい」
「おま、まだオンミョウジ先輩狙ってんの?」
「そんな、ただ・・」
ハリコはしまったという顔をした。
「なんだ言えよ」
「メルアド交換しちゃった」
うわー。恋してる顔じゃん。
「おま、いつのまに。まっいいか。遊ばれんじゃねえぞ」
「オンミョウジ先輩はそういう人じゃないもん」
どうだか。俺はどうも苦手だ。
「先いくぞ。たまには一緒に行くか?」
「やだ」
そんなに即答せんでも。
「イテキマース」とたらちゃん風に言って俺は家を出た。
メールチェック。彼女がいなくなった今、あんまり必要ない感じもするが、ルコとは今でも普通に話するし特に気まずくもない。他にできた好きな人っつうのも気になるが聞けるわけもなく、俺も好きな人ができたっつう設定なのだが向こうも聞いてこない。まっ当たり前か。
特に気にするメールもなく、学校近くのコンビ二にさしかかる。倒れている自転車と格闘している同じ学校の制服をきた女の子が目に入った。
「どうしても助けたいと思える出会いか・・・」
占いなんて本気にしないが、見過ごすわけには行くまい。
「大丈夫すか?」声をかえると、女の子は振り返った。
わーお。ミス・プウリングルスのミナミヨウコだ。
「ええ」
「カバンの中身もぶちまけちゃってんじゃん」
足元のカバンを拾おうとするとした俺は教科書やらノートやらにまぎれてなにか茶色い封筒があるのが見えた。がそのことに気付いた彼女は真っ先にそれを拾い集めた。そしてあんなに手間取っていたのに自転車をいっきに起こすと、「どうも」といって学校の方角とは逆の方へさっていった。どこへ行く気だ?とクエスチョンマークを残しつつ、俺は彼女の背中を見送った。そのとき俺はミナミヨウコを「どうしても」助けたくなるとは思いもしなかった。

第7話
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