趣味の漢詩と日本文学

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September 28, 2010
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カテゴリ: 国漢文
【本文】野大弐、純友がさわぎの時、うての使にさされて、少将にてくだりける。
【注】
・野大弐=小野好古。大宰の大弐、小野葛絃(くずお)の子で、道風の兄。940年、藤原純友の乱のとき、山陽・南海の追捕使となり、純友を博多で破って捕らえた功により、山城守、大宰大弐などを経て参議に進み、従三位にいたった。
・うて=討手。
・少将=近衛府の次官。正五位下相当。
・純友がさわぎ=平安中期の藤原純友の乱。彼はもと伊予の掾(三等官)だったが、任期を終えても帰京せず、瀬戸内海西部の海賊を配下とし、939年に日振島を拠点に反乱を起こし、淡路や讃岐の国府、大宰府などを襲撃た。天慶四年(941年)、朝廷の命を受けた小野好古らにより鎮圧された。
【訳】小野の大弐が、藤原純友の乱のときに、討伐軍の使者に指名されて、少将として下ったとさ。

【本文】おほやけにもつかうまつり、四位にもなるべき年にあたりければ、むつきの加階たまはりの事、いとゆかしうおぼえけれど、京よりくだる人もをさをさきこえず。
【注】

・加階=天皇が位を授けること。
【訳】朝廷にもお仕えもうしあげ、四位に昇進しそうな年に当たっていたので、正月の加階をいただく事が、とても知りたく思われたけれども、京から下った人も何もそのての情報を申し上げなかった。

【本文】ある人にとへど、「四位になりたり」ともいふ。ある人は「さもあらず」ともいふ。「さだかなる事いかできかむ」とおもふほどに、京のたよりあるに、近江の守(かみ)公忠(きむただ)の君の文をなむ持てきたる。
【注】
・近江の守公忠の君=光孝天皇の孫。源公綱の子。平安中期の歌人。醍醐・朱雀天皇のとき蔵人をつとめ、天慶四年(941)近江守として任国に赴任した。
【訳】ある人に問いただしたが、「四位になりました。」とも言い、ある人は、「四位にななりませんでした。」という。「確かなことを何とかして聞こう。」と思っていたところ、京からの便りがあり、近江守公忠君の手紙を持ってやってきた。

【本文】いとゆかしううれしうて、あけてみれば、よろづの事どもかきもていきて、月日などかきて、おくのかたにかくなん、
 たまくしげ ふたとせあはぬ 君が身を あけながらやは あらむと思ひし
これを見て、限りなく悲しくてなむ泣きける。
【訳】とても中身が知りたく嬉しくなり、手紙を開けて見たところ、さまざまな事柄を書き連ねて、日付など書いて、最後に
 美しい櫛をおさめる箱のふたではないが、ふたとせ(二年間)会わないあなたの身を 箱の蓋を開けたままでいると想像したでしょうか、想像もしなかった。年も明けながら、まだ朱色のままでいると想像したでしょうか、想像もしなかった。


【本文】四位にならぬよし、文のことばにはなくて、ただかくなむありける。
【訳】四位にはならなかった旨、手紙の文句には無くて、ただこのように和歌に暗示されていたとさ。






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Last updated  September 28, 2010 08:46:21 PM
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