がらくた小説館

 38歳。それはプロ野球選手としてはけっして若くない彼を、この優勝のかかった大舞台で打者に指名したのは、全権を持つ私の一存によるものだった。

勿論試合を放棄したわけではない。私は彼の経験にかけてみたいと思ったからだ。
試合は2-3で負けている。そして9回裏二死満塁。

すべては彼の、いや彼を指名した時点で俺の肩にかかっていると
言っても過言ではない。

それはつまりこの試合に負けたら、私は責任をとってやめても良い、とすら考えているのだ。

そして彼だけを悪者にはしたくはないし、私は人のせいにするような、そんな卑怯な人間ではない。

カウントは2-3。すべてはこの一球で決まる。

そして人々が息を呑む中、ついにその運命の一球が投げ下ろされた。

彼は私の魂を乗せて、力いっぱいバットを振る。

「ストラ~イク!!!!バッターアウト!」

ボールは無情にも審判の声と共に、乾いたミットの中へと吸い込まれていった。

「…」


 私はその光景をただただ眺めながら、しかし次の瞬間、右手はコントローラーのリセットボタンを押していた。



               了


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