がらくた小説館

奇跡

 深夜に電話が鳴り私は急いで病院に向かった。妻が交通事故に遭って重体との報告だった。

私はこみ上げてくる気持ちを抑えつつ、治療の続く集中治療室の前で立ち尽くしていた。

「旦那さんですね?」
一人の看護婦が駆け寄ってきて言った。

「はい」

「奥さんは以前手術や大きい事故に遭ったことはありますか?」

「はい。階段から落ちたり、海で溺れたり、交通事故もこれで二回目になります」

「どれも大変な事故だったのですか?」

「はい。どれも命に関わるほどの事故でした」

「そうですか。でも奥さんはきっと今回も無事に生還されますよ。だって四回もそんな事故に見舞われても元気に戻ってこられたんですから」

「有難うございます」

「きっと奥さんは強い生命力をお持ちなんですよ。手術は長くなりますから
そこのソファーでお待ちになったらどうですか?」

「でもじっとしていられなくて」

「お気持ちは分かりますが」

私は看護婦にすすめられてとりあえずソファーに腰を下ろすことにした。

そして五時間が立ち、ようやく手術室の電気が消えて先生が中から出てきた。

私は先生にかけより、「妻は、妻はどうなったんですか?」とすがるように聞いた。

「手術は無事に終わりましたよ。安心してください。もう大丈夫です。本当に奇跡ですよ。奥さんは凄い強運の持ち主だ」

 医者は笑顔で答えた。

 私はそっと舌打ちをした。 





               了


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