がらくた小説館

理由なき犯行


「お金貸してくれない?」
 俺は、高校生らしき男三人に囲まれていた。
「いや、持ってないです…」
 そう答えると、中でも一番下っ端らしき男が詰め寄ってきた。
「言っとくけど、こいつ(体のでかい仲間の一人を指して)嘘とかつかれるのが一番嫌いだから、キレたら俺でも止めらんないよ」
「ほんとです。持ってません」
「それじゃ~ジャンプしてみろよ」
 俺は黙って言葉に従った。
『チャリーン』
「あっ、こいつ嘘つきやがった」
 下っ端の男は、無理やり俺のポケットから小銭を抜き取った。
「これしかないの?」
 なおもひつこく詮索してくる。
「はい」
「じゃーここまでどうやって来たの?90円ぽっちで」
「それは帰りの電車賃です」
「90円で?自分、中学生だよね?」
「はい」
「子供料金で帰るの?」
「はい」
「どうする?こいつほんとに金持ってないよ」
 下っ端の男は仲間の二人に向かって呆れるように言った。
「じゃ~もういいよ」
 下っ端の男はそう言うと、俺から奪ったお金を返してきた。
 そればかりか「カンパだ」と言って、大人料金の180円になる90円を足してくれた。
「すいません。いいんですか?」
 俺は丁寧に礼を言った。本心だった。まさか、かつあげにあって逆にお金を貰えるなんて聞いたことがない。
「いいよ。じゃあな」
 三人の男達は笑顔でそういうと、手を振りながら颯爽と帰って行った。その姿はまさに不良のカリスマ、矢沢栄吉のように粋だった。




 そして俺はいつものようにキセルをして、子供の待つ家路を急いだ。










© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: