第三ファイト・大盗賊を倒せ


第三ファイト

大盗賊を倒せ


 ソードとクロスとキリは、大盗賊と名乗る男と向き合っていた。
キリは、大盗賊の男をキッと睨みつけていた。
 大盗賊の男は昔、キリの故郷の氷石村を襲い、そしてキリの両親を
殺した、最強最悪のバトルファイターなのだ。

 「へぇ?あの時のガキか…?」
男がニヤリと笑って言った。キリは怒りの表情で男を睨み続ける。
 ソードとクロスはあたふたとしている。
この男が、キリの両親を殺した?!
何でそんな男がここにいるんだ?!
 バトルファイターになってそんなにたっていない二人にとって、
これほどのファイターを相手にするのはかなり危険だ。
経験もそれほど積んでいない。なのに、こんな危険な男と戦うのか。

 「…ソードとクロスはさがってて」
キリがよく通る声で言った。声が少し震えている。
「で、でもっ!!」
ソードが叫んだが、クロスがソードの左腕をつかみ、
後ろへ5歩位さがったので、もう何も言わない事にした。

 キリは空気中の水分を凍らせ、弾を作った。
それを安全装置をはずしたブラスターにこめ、ハンマーを右親指で上げる。
カチリと音がして、発砲の準備ができた。
 「おやおや、それで俺様と戦う気か?やめときな」
男が言った。キリは男にブラスターを向ける。
 「フン…こっちは2つも鉄砲を持ってるんだぞ?」
男は両手の鉄砲をキリに向けた。
「敵(かたき)討ち…かい?ははは、やめとけって」
男はハハハと笑い、キリを見た。

 「貴様…」
キリは怒りのあまり、声が出ない様子だった。
親の敵が目の前にいるのだ。
キリはブラスターの発砲口を男に向け…そして発砲した。
パァァァンと音がして、男の右手に握られていた鉄砲がはじけ飛ぶ。
「何?!」
男が地面に落ちた鉄砲を拾おうとすると、
「動くな」
キリのよく通る声が聞こえてきた。

 「……ふふふふ…はははははは…」
男はキリを見るとクックと笑った。
「何がおかしい!!」
キリの怒号が響く。キリの長い髪の毛が揺れる。
 「はははは…俺様には左手にも鉄砲があるのだと、分かっているのかな?」
パァン。音がしてキリの右手に握られていたブラスターがはじけ飛ぶ。
キリのブラスターはカツンと音を立てて地面に落ちた。

 「!!」
キリが拾おうとする。男が鉄砲を向ける。
そして男は…引き金を引いた。パァーン!と大きな音がした。
弾はキリに向かって一直線に飛ぶ。
ガキイイインと音がして、弾ははじかれた。
 「?!」
キリがハッとして前を向く。
落としたブラスターを拾うため下を向いていたキリは、
前に立っているソードに目をやる。

 「大丈夫か?」
ソードの言葉にキリはああ、と答えた。
「お、おい…危ないぞ、さがってろ」
キリは慌てて言った。が、ソードは首を横に振った。
 弾をはじいたサンダーソードを構えてソードはキリの右に立つ。
キリは空気中の水分を氷に変え、新しい弾を作った。
弾をブラスターにセットしたキリは、ブラスターを構える。

 「……フッ、私も経験不足だったようだな」
キリはフッと笑うと、ソードの横顔を見た。
ソードは、そんな事無いと思うけど…と呟いて、男を見る。
 「ハハハハ!!ガキが二人になった所で状況は変わらん!」
男が笑うと、ソードは男をジロリと睨みつける。
確かにバトルファイターになったばかりだ。
だけど、キリの援護(えんご)ならできる。

 後ろにさがっていたクロスが武器を構えて前に出てきた。
「クロス?!」
ソードが驚いてクロスの顔を見る。
クロスはニヤリと笑っていた。
「へっ、俺だけ逃げ腰なんてダサいじゃん?」
 「ハハハハハ、三人になった所で…無駄だ!!!」
男は叫ぶと同時に鉄砲に弾をこめ、パンパンパンと連射した。
ソードは剣で、クロスは刀で弾をはじく。
キリは弾を間一髪でよけた。

 「ふふふふふ、これならどうだ?!」
バン!!バキューン!!
大きな音がした。そしてその弾はソードとクロスの武器に当たった。
鈍い音がした。
そして…武器が崩壊した。

 「あっ?!」
ソードが叫んだ。それにピクッと反応したキリはソードとクロスを
パッと見た。
 二人の右手に握られている武器の刃が、ポキリと折れている。
刃が折れた武器は、武器の役目を果たせない状態だった。

 「さてさて…と、男の子二人は足手まといになっちゃったねぇ?」
男がニヤニヤと笑って言った。
ソードとクロスはくぅ、と悔しそうに声を漏らした。
 「大丈夫か?!」
キリが慌てたように言った。
いつもは冷静沈着なキリも、さすがに焦っている。
「ああ、武器が壊されただけだから…」
クロスが言った。が、キリはソードとクロスをドンと押すと、
後ろに下がってろと呟いた。

 男はキリに鉄砲を向ける。
「おやおや?また一人で戦うのか?」
男はキリを見て、クックックと笑った。
 「例え一人でも戦う。バトルファイターの辞書に諦めと言う言葉はない」
キリはサラリと言った。
男は立派だねぇ、と言って笑った。
そのニヤニヤ顔にムッとしてキリはギリリと歯を噛む。

 男はパァンと発砲した。
弾を間一髪でサッとよけ、キリは右に3歩ほど動いた。
そして、その位置から男に向けてブラスターをパァン!と鳴らす。
氷でできた弾は男に向かって一直線。
 男はスッとしゃがみ、弾をよけた。
そしてしゃがんだ体勢からバンバンと二発、連射した。
キリはサッと左に動く。キリが一秒前に立っていた場所に
カツンカツンと弾が当たり、パシュンとはねる。

 「うおおおぉぉ…何かすごいな…」
クロスがゴクリと息をのむ。
目の前で行われている戦いをジッと見守るソードとクロス。
クロスはハラハラしながら見つめる。
 「…ソード?」
クロスがふと声をかけた。
「何?」
「ソード、何か静かだなと思って…」
「ああ…何か悔しくて…さ」
「?何が?」
「キリが戦ってるのにさ…見てるだけなんて…」
「…ああ」

 キリと大盗賊の男は銃撃戦を繰り広げている。
パンパン、バキューンと音が響く。
 キリがよける。撃つ。大盗賊の男がよける。撃つ。
バキュン!!パンパン!!バーン!!

 ふいに、男が笑った。
「…ふっ」
キリは、一瞬男の顔を見た。スキが出来た。
それを、男は見逃さなかった。
「よく頑張ったけど、これでジ・エンドだ」

 男が叫ぶ。なんと、自分の鉄砲を二つとも、キリに向けて
投げた。
どこの世界に鉄砲を相手に投げつけるヤツがいるのか。
おそらく、こんな意外な行動をとるのは…コイツだけだろう。
大盗賊。それは、意外性ナンバーワンなのかもしれない。
 キリは男が投げた鉄砲を唖然と見ていた。
ドンドンこっちに迫ってくる。
驚いている。ギョッとしている。
キリは予想外の展開にビックリして、一瞬理解能力が停止した。

 ピクンッと体が反応した。
目の前に迫ってくる二つの鉄砲をよける。
キリはすぐに体勢を立て直した。しかし、遅かった。
反応が完全に遅れていた。
 男は右手を高々と挙げている。
掌に小さな竜巻のようなものが出現した。
キュウウウンと音を立てて、竜巻のようなそれは、
男の掌で徐々に大きくなっていく。
あれは、エネルギー波だ。

 やがて、半径50センチほどまで大きくなったエネルギー波を
男は、ニヤッと笑い、キリに向けて放った。
エネルギー波は空気抵抗を受けずに、一直線に飛ぶ。
ゴォォォォッ、と風が生じる。
 「!!」
キリは反応が遅れ、逃げる事ができない。
キリは、その場に呆然と立っていた。

 ドゴォォォッ!!大きな音がした。
そして、地面に大きな穴が空く。
ビキビキとヒビが入り、砂ぼこりが舞い上がる。
ブワァ、と舞い上がる砂ぼこり。大盗賊はうっとうしい、と
いった様子でパタパタと右手を振る。
 地面がボコボコとえぐれている。
空いた穴の中央から煙がモワモワと立ち昇る。
そして大盗賊は、ニヤッと笑った。
そこに10秒前に立っていた少女と、少年二人の姿は…ない。
完全に削除(デリート)した、と大盗賊は呟いた。
そして落ちていた鉄砲二丁を拾い、両手に片方ずつ持つ。

 風が吹いた。
ヒョオオオオッと吹いた風は、辺りの木々を揺らす。
ザワザワザワ、揺れる木。
 大盗賊がクルリと背を向けて、スタスタと歩く。
その顔は、ものすごく怖かった。
ものすごく怖い顔で、大盗賊はギリリと歯を噛む。

 大盗賊は20代前半の若い男である。
鉄砲をサッと直した男は黒いマントをグッと握る。
ドクロのマークがついたバンダナを頭に巻いている。
上下黒の服を着ている大盗賊は、ギリッ、ギリリと音を立てて歯を噛む。
 ふいに男がクックックと笑った。
「フフフ…あんなガキ共に13発も弾を使うとは…」
大盗賊の男は鉄砲を二丁出すと、弾をこめた。
10発撃てる鉄砲。連射向きではない。しかし、威力は強い。
たかが10代の少女と少年に、13発。
苦戦したとは言わないが、弾を使いすぎだ。
「惜しいねぇ…俺様とバトらなければ、すばらしい人生を…」
そこまで言って、男はニヤリと笑った。
「すばらしい人生を送れたのにねぇ」
クックックと笑って男は足早に村を出て行った。

 ヒョォォォォと風が吹いた。
そして、村の人々が出てきた。
「何が…起こったんだ…」
村人達が口々に呟いた。
 地面に大きな穴が空いている。家の窓ガラスは割れている。
銃撃戦が起こったのだろう。弾があちこちに転がっている。

 太陽が昇った。辺り一面、明るくなる。
村人達は、村の掃除を始めた。ザッザッとほうきで、
割れた窓ガラスを掃く。そして土を持ってきて地面の穴を埋める。
 「…旅人さん?!」
ふと、誰かが叫んだ。そして村人達に、まさか…旅人さんが犠牲に?!
というとても嫌な予感がする。
旅人三人の姿が…ない。
村人達は、うわぁぁぁっ、と叫ぶ。
自分達の村を守った旅人が、犠牲になってしまった。

 そのころ。
村の東にある、岩山で男が歩いていた。
大盗賊の男だった。さきほど、すごいエネルギー波を放った、
噂の最強最悪の大盗賊の男だった。
 「・・・・・・ふん、今戻ったぞ」
男が言った。すると、声が聞こえてきた。
遅かったね。
おう、おかえり。
お~、帰ったか。

 声の主達は大盗賊の男を迎える。
大盗賊の仲間か。
 辺り一面、岩だらけ。ゴツゴツした岩がゴロゴロと転がっている。
木は、生えていない。
 岩山に現在住んでいる大盗賊達は、ドカッと腰を降ろす。
「で?今日は何かゲットした?」
大盗賊と同じ位の歳の男が聞いた。ドクロのついたバンダナをしている。
 大盗賊の仲間達は全員バンダナをしていて、黒いマントを羽織っている。
そして髪の毛の色と顔が違うだけで、服も靴も同じだ。
間違いない。大盗賊の仲間なのだ。

 村を出て、少し歩いた所にある大きな木の下に、
少年が三人と少女が一人。
小声で話をしていた。
 そして…彼らは、武器を手に持っていた。
一人は星のように輝く黄色の瞳の少年。
一人は燃え上がるような炎の赤色の瞳の少年。
一人は宝石のようにキラキラ光る氷色の瞳の少女。
そして、もう一人は。
三人をあの攻撃が当たる前に、サッと連れ去った少年だった。

 静かで綺麗で暖かい、静かな海のような透明な海色。
少年は、三人を連れ去り、この大きな木の下に移動させた。
少年はソードとクロスが過去に会った事のあるファイターだった。
 有名なバトルファイター。
そして、キリと同じように大盗賊の男に恨みを持っているファイターだった。


つづく


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第三ファイト
大盗賊を倒せ

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