私は昨年以来、京都大学病院で3回の膵島移植を受けるチャンスに恵まれ、毎日インスリン注射を打つ生活から完全に解放されました。今ではうそのように低血糖がなくなり毎日を幸せにすごしております。
移植前は、毎日インスリン注射を打っていましたが、血糖値が不安定で低血糖のため意識がもうろうとし、意識がはっきりすれば急な高血糖となる、そんな繰り返しの毎日で血糖値のことを常に考えていなければ生活できませんでした。今は血糖値が安定し、本当に夢のようです。
しかし、移植後は免疫抑制剤を毎日服用しなくてはなりません。現在私が服用している免疫抑制剤「ラパミューン」は残念ながら日本では健康保険の適応になっておりません。幾種もある免疫抑制剤のなかで「ラパミューン」は膵島にとって最も効果があり、現時点で他の免疫抑制剤に変更して「改善した報告はない」と聞いております。この移植治療は世界最先端であるがゆえに日本ではまだ保険適用がなされていないのです。
今、目の前にある大きな問題は、日本では保険適用がなされていない免疫抑制剤「ラパミューン」をずっと服用していかなければなりませんが、それには多大な費用がかかることです。
現在は、新しい治療法ということで私の医療費は大学の研究費で賄っていただいております。しかし、近々自己負担(注1)となることが決まっています。
「ラパミューン」を今までどおりに服用できるかどうかは、私の経済力次第ということになり、普通のサラリーマンである私には「ラパミューン」を服用し続けていく経済力がありません。
移植を受ける際には「ラパミューンが保険適用されるように、また、膵島移植も高度先進医療に認められるようにしていっています。」と、すでに先生方は行動をおこされていました。けれど皆様方もご存知のように日本ではなかなか承認がおりません。
この素晴らしい移植治療は、ドナーの方からいただいた膵島で成り立っています。ドナーの方、そのご家族の方に私は「絶対にこの細胞を護り、元気で精一杯生きてまいります」と誓いました。その誓いは、私が今後どのような苦境に立たされても守っていきたい真剣な約束事なのです。
もしこの「ラパミューン」の服用を続けることができなくなると・・・私はこの大切な細胞を護ることができなくなります。
最近、移植前のあの苦しい生活に戻っている自分の姿や命をいただいたドナーの方とご家族の方のがっかりした表情が交互に頭を横切るようになりました。不安は日ごとに増してきています。どうか皆様、移植を受けた私達や移植を待つ患者を助けてください。
これから膵島移植を希望されている方(注2)にとっても経済的な問題は切実なのです。精神的にも肉体的にもかなりの負担を抱えている1型糖尿病患者がいます。ひとりでも多くの患者がこの膵島移植によって、インスリン注射から解放され普通の日常生活を送ることができ、笑顔の絶えない毎日を送っていただきたいと切に切に望んでいます。
この基金への寄付が、「1型糖尿病研究基金」という趣旨からも私達個人への直接的な医療費の支援ではないことは承知しております。ただ、このままでは高額な薬剤費負担のために日本での膵島移植が進まなくなることをたいへん危惧しています。どうか、ラパミューンが保険適用になる日まで、皆様方の支援をお願いする次第でございます。
皆様方にご賛同、ご協力いただくことができましたなら本当に幸せです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
2005年8月 膵島移植を受けた患者より
注1)ラパミューンの月額負担額:健康保険適用がないので、20万円から30万円程度
注2)膵島移植を待っている患者数:2005年8月現在、全国で約100名注3)京都大学移植外科での移植条件(一部抜粋)
(社)日本糖尿病学会専門医が6ヶ月以上治療しても重症低血糖発作などがあり血糖コントロールが困難で、さらに京都大学病院にて入院してインスリン分泌能を評価し、血糖コントロールを行った後も血糖の調節が困難であるとみなされた症例。