不安とプライドと自己嫌悪

不安とプライドと自己嫌悪

就職後・新人~3年目


だから、部署に配属されてから半年間しか「新人」をしていない。
とはいえ、後輩に恵まれることなく先輩ばかりの中で過ごしていたから(今でもそうだ)、
いつまでも末っ子気分でいられた。

仕事は、はっきり言ってできなかった。
要領が悪いのだ。
細かい作業は好きだし、プログラミングをさせれば結構いいセンいっていると自負している。
しかし、何しろ要領が悪い。
マルチにこなすことができないから、年数がかさむにつれて、同期との差は広がっていった。

2年目の6月、現在の配偶者(仮)に出会った。
ほんの少しの間つきあったけど、すぐ別れてしまった。
「クレイジーさん」にまだまだ恋焦がれていたからだ。
でも、彼と別れるとき、ちょっと嫌なことを言われた。
大親友「TAK」に関わることで・・わたしは完全に動揺してしまった。
それからの数日、会社でも笑顔はなかった。それまではお調子者をやっていたのに。
人生が一気に暗くなった気がした。

そこに、優しい言葉をかけてくれたのが・・・・
あの男だった。
もともと同じ部署の先輩だったから、当然顔は知っていた。
人となりも少しは知っていて、嫌いではなかったけれど、恋愛的に好きでもなかった。

けど、辛いときに優しくされれば、そりゃ、弱いさ。
わたしたちはなんとなく飲みにいき、慣れないお酒を飲んでしたたか酔っ払い、
なんとなくそんな雰囲気になってしまって、キスをした。
あの男が激しくわたしを抱きしめた、その感覚は忘れることができない。

翌日、わたしはそれをなかったことにしようと思ってあえて触れなかった。
彼も触れなかった。
だって・・・彼には新婚といえるぐらい最近結婚した奥さんがあったのだ。
だからわたしは昨日の件は酔った勢いであって、真剣じゃないし、
お互いもう覚えてもいないよね、っていうスタンスを取ろうとした。
しかしあの男は帰り間際に、ふと言った。
「いい加減な気持ちじゃないから」
だったらなんだっていうんだ! 
わたしは動揺し、返事ができなかった。
そしてその後、さまざまな経緯を経て、真剣に我々はお付き合いを始めてしまった。
不本意だし世の中に申し訳ないんだけれど、
それはそれで幸せだった・・・・

あの男はわたしを愛してくれたから。
妻にばれない範囲内で、という限定付きだったとしても。
自分が今手にしている地位を何一つ損なわない間は、という限定付きだったとしても。

それでも3年目にはもう壊れ始めてた。
当然だ。
そんな背徳的な関係、続けていける根性はわたしにはないんだ。
最初からそれに気づいているべきだったのに。
あの男の笑顔に救われた。
傲慢で無邪気な笑顔。
でもそれがだんだんとわたしを傷つける凶器でしかなくなっていくのを、
わたしは息を殺して見守った。

4年目になる前に、わたしは自殺未遂をしていた。

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: