オバマ新大統領が誕生


オバマ新大統領が誕生

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米国史上初の黒人大統領としてオバマ新大統領が誕生した。選挙前に心配されたブラッドリー効果(白人の有権者が人種差別主義者と思われたくないために、「黒人候補者に投票する」と本心とは違う意見を言うこと)はほとんど見られず、ふたを開けてみれば、マケイン氏に大差をつけた勝利だった。ブラッドリー効果がほとんどなかったことは、米国社会が新しい時代に突入したことの表れといえる。

オバマ氏が当選した背景には、若者の多くが投票したことが大きな要因になった。大統領選前に、テレビのあるコメンテーターが「オバマ氏の支持者が若者層であることは不安定材料になり得る。若者は気まぐれで必ず投票日に投票に行くとは限らないからだ」と言っていたが、「新世紀の大変革:マイスペース、ユーチューブ、米国政治の将来 (MySpace, YouTube and the Future Of American Politics)」の本を読んでいた私は、この考えは間違っていると思った。なぜなら、オバマ氏が大方の予想を裏切って大躍進をしたのは、若者たちがインターネットを駆使してオバマ氏の支持層を拡大させ、献金などさまざまな努力をしてきたことが背景にあったからだ。彼らが一番肝心な投票日に投票せず、自らの努力を水泡に帰するようなことをするはずがない、と思ったからだ。そして実際、若者の高い投票率の結果、オバマ氏が当選した。ブームやファッションに乗せられて、その時の気分で投票する従来の若者層とは異なり、きちんと自分の政治的な意見を持った若者層に支えられてオバマ氏が当選した、という点でも新しい時代の到来といえる。

新世紀世代は2000年代に成人を迎える若者世代であり、米国史上、人種や民族が最も多様な世代である。インターネットで育ってきた世代であり、世界への関心は他のどの世代よりも高い。環境にも関心が高く、経済成長を犠牲にしても環境保護を推進するべきだと考える割合は43%で、他のどの世代よりも高い(ジェネレーションX世代は40%、ベビー・ブーマー世代は38%である)。また、61%の新世紀世代は、米国は他の国から尊敬されることが重要だと考え、そのためには軍事力ではなく、高潔なリーダーシップをとることで世界から尊敬される国になる、と感じている。国際問題に対しては、米国が単独主義の軍事力で解決するのではなく、他の国々や国連と協調して解決するべきだ、と考えている。世界に民主主義や自由を広めるためには軍事力による犠牲もやむを得ない、と考える新世紀世代は14%しかおらず、ネオコンの考えには64%が反対している。ブッシュ政権時代に、米国は強引な単独主義行動で世界の国々から尊敬を失ってしまった。「米国は世界から尊敬されるべきだ」と考える新世紀世代に支持されたオバマ政権が、今後どのような外交戦略をとるか、大いに注目される。

新世紀世代は、情報の収集にトップ・ダウン式のマスメディアである新聞やテレビを利用せず、携帯電話やコンピュータを使って水平方向に仲間と意見交換をする。新世紀世代の価値観は、ベビーブーマー世代やジェネレーションX世代の価値観を特定するために使われた「タカ派」や「ハト派」というカテゴリーにきちんと納まるものではない。つまり、従来の既成の概念だけでは理解できない世代といえる。今後の米国社会を予測するには、この新世紀世代をきちんと理解する必要があるだろう。

ところで、大統領選の報道で毎回私が疑問に思うのは、民主党が政権をとった時にはいつも「日本にとっては共和党政権の時よりも不利な状況になった」と日本のメディアが報じることだ。共和党内には日本政府がある程度の人脈を築いているが、民主党内ではあまり人脈作りをしておらず、日本のことに疎い人物が多い、あるいは、日本より中国を重視する者が多い、というのが一因である。私がいつも不思議に思うのは、大統領選では毎回50パーセントの確率で、共和党か民主党のどちらか一方が政権をとることはわかりきっているのに、日本政府が民主党内の人脈作りをこれまでしてこなかった、ということだ。これは日本政府の怠慢ではないだろうか。日本のメディアも「民主党政権では日本が粗略に扱われる」と嘆くばかりでなく、米国で民主党政権ができる確率は50パーセントなのに、日本のことをきちんと理解してもらうために、民主党内にしっかり人脈を築く努力を怠っている日本政府を批判するべきではないだろうか。

米国社会はさまざまな問題を抱えており、日本社会の方が米国社会に比べて優れている点は多くある。しかし、今回の大統領選の結果から、次の三点は日本社会が米国社会に学ぶべきものだと思った。それは、1. 多様性を受け入れる寛容性 2. 変化を恐れない精神 3. 政治への強い関心 である。





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