米市議選で採用された新選挙システム


「米市議選で採用された新選挙システム より民意を反映する「順位付け投票」、サンフランシスコで」

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民主党の岡田代表は1月11日の記者会見で、社民党の福島党首に対し、4月の衆院宮城2区と福岡2区の両補選について、候補者擁立を見送るよう要請したことを明らかにした。 岡田氏は「社民党が候補者を立てても当選する可能性は低い。むしろ出せば自民党に有利になる。大局的な観点から、民主党候補に協力することが望ましい」と述べた。

このように第三の候補が出ることで、主要候補の片方を利してしまうことが選挙では実際によく起こっている。例えば2000年の米国大統領選では、共和党のブッシュと民主党のゴアが大接戦を演じたが、第三の候補として緑の党から立候補したネーダーが、ゴアの票を吸い上げ、結果的にブッシュの当選に貢献してしまったと批判されている。

この問題を解決する方法として、米国のNPOのCenter for Voting and DemocracyがRanked Choice Voting ( RCV:ランク付け投票)という非常におもしろい投票システムを全米に普及させようと運動している。昨年11月にはついに、自治体の選挙としては初めて、サンフランシスコ市の市議会議員選挙でこのRCVが採用された。初めての試みのため開票には多少手間取ったが、概ねスムーズに行われた。このサンフランシスコ市の選挙を参考に、RCV導入を検討しているほかの自治体もいくつか出始めている。識者の中には「RCVこそが米国の民主主義を画期的に好転させる潜在力を持つ」と見る者もいる。RCVは米国の選挙を変える原動力になるかもしれない。

RCVの仕組みを説明すると、これまでの選挙制度と異なり、投票者は候補者を一人だけ選ぶのではなく、候補者を選びたい順にランクづけする。例えば、三人の候補者がいる場合、当選してほしい順に一位、二位、三位を選ぶ。一人の候補者が過半数の投票者から一位に選ばれた場合は、これまでの選挙制度と同じように、その候補者の当選が決定する。しかし、どの候補者も過半数の投票者から一位の票を取れなかった場合、このランクづけが活用されることになる。まず最も得票の少なかった候補者が除外される。しかし、その除外された候補者を一位に選んだ票は、死票にはならない。彼らが二位に選んでいた候補者に、この票が再分配されるからだ。この再分配によって、過半数を取った候補者が当選者になる。

この制度が採用された場合、2000年の大統領選では、ネーダーを一位に選ぶ人たちは、恐らくゴアを二位に選んだであろうから、ブッシュを抜いてアル・ゴアが当選したかもしれない。RCVのシステムでは、第三の候補者に投票する人たちの意思が、現在よりも反映されることになる。

RCVは一八七〇年代に、マサチューセッツ工科大学(MIT)のウェール教授によって考案された。既にRCVを採用している国が数カ国ある。アイルランドでは大統領選挙、ロンドンでは市長選挙、オーストラリアでは下院議員選挙に採用されている。

RCVを全米に広げようと運動しているCenterはメリーランド州に本部を置き、1992年に設立された。代表は、1980年に民主党のカーターと共和党のレーガンが争った大統領選に、インディペンデントの候補者として出馬し、6.6%の票を獲得したジョン・アンダーソン氏である。当時、ネーダーと同様に「スポイラー (spoiler : 妨害候補者)」と批判されたアンダーソン氏は、RCVにより第三の候補者に投票する人たちの意思がより反映されると考えた。バーモント、サンフランシスコ、シカゴに拠点を置き、地域レベルで運動を展開している。

Centerの運動の結果、サンフランシスコ市でついに2002年3月5日に、市長選や市議会選挙など市政に関する選挙でのRCV導入を求めるProposition A(提案A号)が可決された。これにより早速、2003年11月の市長選でRCVが導入されることになったが、市の選挙課が、RCV導入のための投票機械の準備を怠っため、市長選での実施には間に合わなかった。RCV推進派はこの背景に政治的な圧力があったと見ている。

しかしついに機械の準備も終わり、2004年11月にRCVを導入した市議選が実施された。サンフランシスコ市でRCV導入が決まった背景には、同市の選挙事情がある。同市の市長選や市議選では、当選するためには過半数を取らなければならない。11月にある1回目の選挙でどの候補者も過半数を取れなかった場合、12月に決選投票が行われる。毎回二度も選挙があるためにコストがかかり、もともと低い投票率が二回目の選挙ではさらに低くなるという。また決選投票の前には、相手を口汚く攻撃するネガティブ・キャンペーンがひどくなるそうだ。

CenterはRCV導入により、選挙は一回で済み、投票者の意向をより反映することができると主張してきた。またネガティブ・キャンペーンも減るという。ほかの候補者を支持する有権者にも、自分を少しでも高いランクに選んでもらわなければならないからだ。ライバルの候補者を攻撃して有権者の印象を悪くすれば自分の首を締めることになる。

サンフランシスコ市でのRCV導入の立役者になったCenterのシニア・アナリストのスティーブン・ヒル氏は実際に今年はネガティブ・キャンペーンが減ったという。「ほかの候補者の支持者から2位に選んでもらおうと候補者同士の連携が増え、ネガティブ・キャンペーンが減った」。

市議選は大統領選と同じ日の11月2日に行われた。11ある選挙区のうち1、2、3、5、7、9、11の7つの選挙区で行われた(市議選は奇数区ごと、偶数区ごとに行われ、今回は奇数区の年だった。2区が含まれているのは2区の市議会議員が2003年の市長選に出馬して当選し、空席になったため)。

今回の市議選では、投票者は当選してほしい順に一位、二位、三位と選ぶ。本来のRCVでは候補者全員の順位づけができる。例えば五人候補者がいると、当選してほしい順に一位から五位まで選べる。しかし今回の市議選では候補者の人数に関わりなく、一位から三位までしか選べない。ヒル氏は「最も理想的なのは候補者全員を順位づけできることだが、現在ある機械では技術的な理由からそこまですることはできなかった」と話している。

投票は特に混乱はなくスムーズに行われた。投票に訪れた人々数人にRCVの感想を聞いた。20代の女性は「RCVは素晴らしいアイディアだ。いつも候補者を一人だけ選ぶのに苦労していた」と支持の意見だった。50代の男性は「自分はRCVにはまだ混乱気味で、本当にこの選挙システムがいいかどうかはわからない」と答えた。また30代の男性は「RCVは恐らく賢い方法なのだろうが、まだよくわからない。RCV導入の最大の理由は、選挙が一回で済むので金が節約できるという経済的なものだと思う」と話していた。

選挙区の2区、3区、9区の三つの区では、当選者が一位の票を過半数取ったのでランク付けの必要はなく、投票日の夜(11月2日)に決まった。残りの1区、5区、7区、11区の四つの区では、どの候補者も過半数を取れなかったためにランク付けが活用されて、二位、三位の票が再分配されることになったが、その集計に少々手間取ることになった。翌日の3日に、票を数える機械の故障が判明したからだ。急遽4日に機械を開発した会社の関係者がネブラスカの本社から飛んできて修理をして、カリフォルニア州州務長官から承認をもらい、5日午後にようやくすべての選挙結果が出た。ヒル氏は「機械の故障で多少時間がかかったが、それでも投票が終わって72時間以内にはすべての結果が判明した。機械の故障がなければ24時間以内に結果が出たはずだ」と一応成功裡に終わったと見ている。

RCVの選挙結果への影響について「RCVは現職より新人に有利ではないか」という見方が選挙前にあったが、七つの区のうち六つの区で現職が勝ち、RCVが選挙結果を劇的に変えるわけではないことがわかった。また残りの一つの区も現職が出馬しなかったので新人同士の争いになった。

RCVの最大の利点についてヒル氏は「より多くの投票者が投票したことだ」と指摘する。これまで決選投票が行われていた12月はホリデー・シーズンということもあり、投票率はがくっと落ちていた。例えば今回1区で当選した現職のジェイク・マクゴールドリック氏は14011票を獲得したが、2000年に行われた前回の市議選の決選投票では7486票しか獲得せずに当選している。得票数は6525票も増えている。また3区では、現職のアーロン・ペスキン氏が16120票獲得したが、2000年の前回の選挙では7200票しか獲らずに当選している。つまり獲得票数が2倍以上に増えていることになる。

ヒル氏は「前回の選挙よりかなり多くの投票者が一票を行使して議員を選んだということだ。これはデモクラシーの勝利であり、サンフランシスコ市民の勝利だ」と言う。また、5区で当選したロス・マーカリミ氏はサンフランシスコ・クロニクル紙のインタビューに答えて「RCVはサンフランシスコ市にとって、カリフォルニア州にとって良いものだ。機械の故障で多少混乱したが、RCVの選挙システムの信頼性がゆらぐことはない。機械の故障ぐらいが今回の選挙の問題であれば、カリフォルニア中にこのRCVを導入すべきだ」と話している。マーカリミ氏の得票数は13211票。前回の市議選では5区はマット・ゴンザレス氏が10300票で当選している。

しかし賞賛の声だけではない。中国系やヒスパニックなどマイノリティーの有権者から「RCVが複雑すぎて、英語が母国語ではないマイノリティーが混乱してうまく投票できなかった」という声が上がっているからだ。中国系米国人のグループからは「当選させたい順に3人選ぶところを1人しか選ばなかった中国系の有権者が多い」という意見が出ている。

ヒル氏は「今回初めてRCVを導入したので当然改良すべき点は多い。有権者教育をもっと必要とするコミュニティーを重点的に支援していかなければならない。まもなく、サンフランシスコ州立大学の公共研究機関が今回の選挙の包括的な研究結果を出すので、それを元にどの点を改良すべきか探っていきたい」と話している。












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