児童館、学童クラブの知恵袋
ごあいさつ 1
基礎編 1 児童厚生員の仕事とは? 4
基礎編 2 大人の常識 5
下積編 1 新社会人の知識 12
下積編 2 ゴミ処理 13
下積編 3 げた箱 4
下積編 4 掃除 4
下積編 5 仕事の進め方 18
下積編 6 専門用語の解説 3
串打編 1 トラブル 2
串打編 2 名前の呼び方 3
串打編 3 掲示 28
串打編 4 職場の人間関係 6
串打編 5 施設管理 1
串打編 6 危機管理・避難訓練 1
裂き編 1 予算 1
裂き編 2 研修 1
裂き編 2 図書活動 11
裂き編 4 接遇 2
裂き編 5 飼育・栽培 1
裂き編 6 障害児・要支援児童 2
裂き編 7 遠足 43
裂き編 8 キャンプ 26
焼き編 1 子どもの指導 5
焼き編 2 労働問題 2
焼き編 3 指定管理委託・民間委託 1
焼き編 4 クレーム、苦情 1
音響、映像、放送 2
工作 1
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東日本大震災から一年半がすぎていますが、東日本では未だにあの日の記憶が鮮明によみがえるほどショッキングな出来事でした。当時、私は東京都中野区内にある学童クラブで施設長をしていましたが、目の前の民家が地震でぶつかり合い、通行人が地面に這いつくばっていました。この日の様子についてはまた後日詳しくご紹介しますが、あの地震を境に、おそらく各施設では職員用にヘルメットが支給されたり、子ども用に防災ずきんが配布されたり、あるいは懐中電灯や上履きを準備した施設もあるでしょう。今回はこれらのものをどう扱ったらよいかについてお話しすることとします。 まず市役所などから職員用のヘルメットが届いた場合にみなさんの施設では今現在どうしていますでしょうか。私の知る限り、その多くの施設はまだ箱に入ったままであったり、箱から出したもののほこりをかぶるからとビニール袋のままであったり、普段使わないものだからじゃまだと更衣室のロッカーの上に置いている施設があるのではないでしょうか。本来はいざというときにそれをかぶって子どもたちの避難誘導をするためのものであり、各職員もそのことは十分承知しています。では今の場所で、あるいは今の状態(箱から開けていない、ビニールをかぶったまま)のままで、本当にいざというときにそれが活用されるでしょうか。「本当は無理なんだよなぁ・・・」とそうした施設の職員の多くが分かっているのです。そして「でも・・・」「だって・・・」「とは言っても・・・」と、本当はそうすべきことは分かっているのにそうしていない言い訳を探そうとするのです。ではヘルメットをどうしたらいいのでしょうか。まずこうしたヘルメットは職員の個人支給あるいは個人貸与で配布されることが多く、故に半ば私物と思いそのような管理をしようとする考えは改めなければなりません。市役所としてはあくまでもそのヘルメットの管理責任者として個人宛に配布したにすぎず、所有権を与えるために個人に配布したのではありません。よって施設内で管理をする責任が一人一人の職員にあるのです。ではその一つのヘルメットを管理すればそれでいいのでしょうか。答えはノーです。よく職員室などに職員分のヘルメットがまとめておかれていることがありますが、あれでは本当に必要なときに利用することができません。各部屋に一つずつ以上ヘルメットを分散させておくのです。子どもたちが来館しているときに避難の必要が生じたら、いちいちそのたびに職員室にヘルメットを取りに行っていたのならば、時間と労力の無駄ですし、その間子どもは放置されてしまいますし、本当の避難誘導ができません。常に手元に近い位置にそれがなければならないのです。よって工作室にひとつ、図書室に一つ、ホールに一つ、学童クラブ室に一つ・・・といったように各部屋の出入口付近に一つずつおいておかなくては、実際の場面でそれを利用することができません。 では子どもの防災ずきんはどうでしょうか。よく学童クラブなんかで個人のロッカーに一つずつおいてあるケースがありますが、あれは実際の場面では非効率的になってしまいます。いざという緊急の時は「これ私の防災ずきんじゃない」とか外遊びに出た際に「私の防災ずきんが学童クラブ室の中だから取りに行ってきます」なんてことにもなりかねません。子ども用の防災ずきんは子ども個人に渡すのではなく、職員が一元的に管理します。ではどのように管理したらいいのでしょうか。それは各部屋の利用頻度を鑑みて、まとまった数をヘルメットともに設置するのです。ホールはいつも十人くらいで遊んでいるから十個、図書室はいつも五人くらいで利用していることが多いから五個といったようにです。そして数に余裕があるのなら、利用比率に乗じた数を配置するようにします。例えば「ホール:図書室:工作室:集会室」の利用割合が「10:5:5:15」だとしたらその割合に応じて、例えば80個の防災ずきんがあるのなら、それぞれホールに20個、図書室に10個、工作室に10個、集会室に30個おくようにします。ただしそれに学童クラブ室が加わった場合は事情が異なります。学童クラブ室は子どもの定員が上限になってそれ以上の防災ずきんを室内に設置する必要はありません。 そして次に懐中電灯であります。懐中電灯は地震などで停電が起きた際に館内が真っ暗になってしまうときに使います。床にガラスやものが落ちているかもしれませんし、避難場所や通行可能なルートをみるのにとても必要なものです。特に冬の時期は日が落ちるのが早いため、夜まで営業している児童館・学童クラブでは必需品になります。しかしその懐中電灯が、例えば事務室の「防災グッズ」とかかれた段ボールの中にひとまとめに入っていたとしたらいざというときに使うことができるでしょうか。答えはもちろんノーです。例えば、工作室で子どもに創作活動を教えていたときに地震がきました。大きな揺れがあり館内が停電し真っ暗になってしまいました。地震の間どこかでものが倒れて壊れる音やガラスのようなものが割れる音が聞こえていました。さてゆれがおさまり、避難開始しようとしたときに足下を照らすための懐中電灯をわざわざ職員室まで取りに行って防災グッズの段ボールをあけて取り出すようなことをしますでしょうか。職員が懐中電灯を取りに行っている間は子どもたちは大人のいない状態になってしまいますし、避難が遅れてしまいます。そればかりでなく、取りにいくまでの工作室から事務室までの道のりは真っ暗でしかも壊れたものが散乱してけがをしてしまうかもしれません。だからヘルメットと同様に各部屋の出入り口付近の取りやすい位置に設置しなくてはならないのです。 最後に靴であります。土足のまま利用する児童館・学童クラブではこのような心配はいりませんが、靴を脱いで利用する児童館・学童クラブでは、いざ地震が発生し逃げようとするときの靴の問題が発生します。わざわざ下駄箱に自分の靴を取りにいくというのは避難訓練としてはNGな方法です。というのも、避難経路は玄関とは別の裏口であることが多いので、玄関に自分の靴を取りに行ってから裏口の避難口に向かうという動線は最短ルートでの避難という原則から大きくはずれてしまいます。使わなくなった上履きや靴の寄贈を受け段ボールなどに入れておき、そして避難口近くにおいておくのです。火事など時間に全くゆとりがないときは職員が靴のはいった段ボールを抱えながら外に脱出し、外に出てから子どもたちに配ります。また地震のゆれがおさまって建物の外に避難するときなど少し時間にゆとりがあるときは、足下に落ちているものでけがをしないように、避難口で一人一人に靴を配布しながら避難することができるのです。 こうした防災グッズは、いざというときのためだけに保管しておくだけにするのなら、実はいざというときに使えなくなるのです。どこになにがあるか、それが十分機能するものなのか、使い方はどうしたらいいのか、常日頃からそれについて知っておく必要があります。月一回の避難訓練の時だけ引っ張り出すのではなく、例えばヘルメット・防災ずきんなどは遊びの中で使ったり、靴は外遊びなどのときに利用していることが大事です。そして懐中電灯も頻繁に使用していないと、スイッチ部分が接触不良をおこしたり、電池が液漏れしたりします。毎日の活動の中でそれを使用することによって、メンテナンスや、そのものの在処、状態を知ることができます。いざというときにだけ使うから、さわっちゃダメよと指導するのではなく、いざというときに使うことのできるような工夫が必要になってくるのです。
2012年11月30日
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