緋月の空間 漆黒の心

緋月の空間 漆黒の心

魔女の心 2話



その迷いを振り払う為に本棚の掃除をしているときだった。

いきなり外が騒がしくなり、それに気付き片付けていた(途中から読み耽っていたが)手を休め、顔を上げた。その後すぐ、先代が残した使い魔の一人がふらふらになりながら慌ただしく入って来た。その使い魔はチィシーの顔をみたとたん崩れ、ひたすら謝っていた。

「すっすいません……入れてしまいました……」

「うん……しょうがないよね……頑張ってくれてありがとう。戻ってくれていいよ。ご苦労様」

その姿を見て言えたのがそれだけだった。

だが、使い魔はチィシーの言葉にホッとした顔をみせて姿を消した

その直後ドタドタドタドタという大きな音が廊下から聞こえてき、ドアを蹴り破って入ってきた。

「此処の本を全て渡せ!!」

ドアの方を見ると床には蹴り破られた時に外れたドア。そして入口に視線をやるとガタイのいい男が立っていた。でも、手には拳銃、鎧に身を包み、腰には剣の恰好でチィシーに近づいて来た。

その姿に内心引きながら、顔に出さぬように気をつけて冷静に答える。

「何故渡さなければならないのですか?」

「だったら此処にいるコイツ等を一人殺して言う事を聞かせようか?」

その男の手には入口で守ってくれていた使い魔達がいた。

「それは止めてほしいですね……本が汚れて文字が消えてしまう可能性の本が一杯ありますし、掃除が面倒なので…。…それに読めなくなったら困るのは貴方の方ですよ?それでも構わないのならどうぞ」

その言葉に掴んでいた使い魔を離し、机の上を目で探る。そして、一つの入れ物を見つけ中を確かめた。

「ちっ…。ふぅん?これは……!?」

その男が手に持ったのは後で仕舞っておこうと思っていたガラス玉だった。

「止めて、触んないで!!」

慌てて叫んだ姿を見、男は表情を変えた。

「くっ、これは使えるな。では、これを返してほしかったら本を差し出せ。出来なかったらこれを割る」

そう言ってチィシーの目の前に差し出し見せた。だが、チィシーはガラス玉の色を見て、怯える事なく男に向かって歩き出した。

「!!…あぁ~それか。ビックリしてそんした。な~んだ……それか。はぁ……どうぞ!!でも、それを割ったら、此処の本が全部駄目になりますよ!!でもお気をつけて、それ割ったら、自分も怪我する可能性が大ですので、それでもそうしたいならどうぞ?」

男の目の前に来るとチィシーは笑顔で言た。その言葉に男は顔を歪めまた拳銃をチィシーに向かって構えた。たがチィシーは、その行動を無視し机にあった他のガラス玉を仕舞いはじめた。そして、仕舞い終わったその入れ物を持ち入口の方へ歩いていった。その自然な行動に、男は一瞬手を降ろしかけた。だが、すぐに気がつき再び構えた。

「っ!!動くな!!」

その時、何日かぶりのルギが窓から入って来た。

「チィシーおひさー…?ってなにコイツ」

そして男を指を指した。

「ルギ!!なんで……?」

「えっ!?何時もの時間だと……?」

「馬鹿!!阿呆!!」

頭ごなしに思った事を言った。

「うわっひでぇ~」

「ちっ……ねぇ、ルギ……そこのレバー……」

「なになにこれ?」

「動くなと言っているだろう!!そこのそいつも」

ルギは驚き、手に掴んだレバーを下げてしまった

ガコ

「あっ……」

「えっ……?」

「動くなっ…「あぁ…いやなに、上げてって言おうと思ったけどまぁいっか」」

「え……なんかあんの?」

「いや…『人物移動、空間封印』ってね言うと……」

ゴアァァァァァァ

「ってなるわけ!!」

チィシーの反応にルギは自分でも理解できているのに、ついついチィシーの横にまで歩き、聞いた。

「えっと……目の前が暗くなって……体が重いのですが?」

「そりゃ移動してますから」

「動くなって言っているだろ!!何をしやがった!!」

「防御魔法が発動しただけですが、それが?」

「テメェ!!」

「あっ!!」

チィシーの言葉に男はカッとなり持っていたガラス玉を床に叩き割った。パリーンとなった瞬間、チィシーはルギの眼を素早く覆った

覆ったのと同時に、男の目の前が見えなくなるほど明るくなりプワーーと風が吹いた。

「何だ、前が見えん!?」

暫くすると光は消え、風もおさまった。その光にやられたのか男は眼を押さえながら、拳銃を振り回し、何発か撃った

チィシーは風がおさまると同時にルギから手を下ろした。

「ルギ大丈夫?見える?」

「あ……うん。ありがとう」

バーンと音がした。男が撃った最後の弾が後ろを向いていた、チィシーに向かってきた。

「危ないチィシー」

ドン

「えっ?」

ドサッ

「チィシー、だ………い………じょ………ぶ…?」

「あ………」

『チィシー……大丈夫…?怪我は無い?』

過去の……どこかで誰かが庇ってくれた

「また…私のせいで…。……なんで……みんな……庇うの……?『空間に溶ける刻の流れ、そして全てを拒絶する盾よ今この者に一時宿れ』」

「今のはなんだ!!貴様!!」

「許さない…『空間に溶ける破壊の力、我が手に宿りこの者の生命を壊し存在を消せ』」

静かに、呟いた言葉は空気に溶け、呪文を唱えたチィシーの回りに光が集まり、チィシーや男の身体より大きな剣が男に向かって振り下ろされた。

「ぐっ……」

「ルギ……ゴメンネ、それとありがとう『空間に宿りし命の息吹を、生命よ我に集まりルギの元へ』…もう大丈夫だね……『空間解除』」

突然現れたルギを抱えたチィシーたちに使い魔たちは気付かず淡々と本の整理をしていた。チィシーはその場に崩れるように座り込んだ

「……ここの…後片付け、宜しく……お願いね」

チィシーの言葉に今まで片付けていた者たちは顔を上げ、慌ただしく廊下に走って行った。その中の一人が扉のところで立ち止まり振り返った。

「えっ!?は・はい!!チィシー様は……どうなさるんですか……?」

「私は……。ラギさん…来てるんですよね?お久しぶりに会って言うのもなんなのですが…ルギをこんな事に巻き込んで…ごめんなさい…後は宜しくお願いしますね…」

途中で切り、窓の方を向き声を投げ掛け、そしてルギを降ろし、頭を下げた

「禁忌だって知っていただろう、何故破ったりした?」

窓のちょうど真横に居たラギはチィシーに投げ掛けた

「いつの間に……」

ラギの登場に使い魔たちは驚いた。

「知ってて犯したんです。知らなかったあの頃とはちがって……私は。……私を庇って死ぬ人をもう見たくなかったし、ルギを死なせたくなかった……。ただ私のエゴです……。それ以外無い」

それ以上何も言わず俯き、ラギの顔を見なかった

「……例えその人の記憶が失くなっても……生きてほしかった……って言ったら信じますか?あとはシュクルさんのほうに行かないといけないので……失礼します……」

ルギを床に寝かせ、ルギの頬を撫でながら微かに呟いた。そして、立ち上がり壁の方へ向かい歩いて行った

「ま・待て!!」

「ごめんなさい……」

そう言ってチィシーは闇に消えた。闇に消える一瞬のうちに、チィシーの髪は銀色に変わっていた。

「……あれは何十年も前にここから消えた唯一の術……魔術を噛った者なら誰でも術の存在ぐらいは知っているが誰も呪文なんて知らないはず。だが…何故……あいつが。…それにあの髪は……?」

残ったのは虚空に呟くラギの姿だけだった



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