waiting for the changes

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00話:G




「どうした!?」
「パイロットナンバー034、意識ロスト。急激なGの変化による気絶です」
「まともに動かせるやつはいないのか!?」
バランスを崩し倒れこむ大型の人型ロボットを見上げて、技術者が声を上げる。
「操作が複雑すぎる上に、衝撃によるGが戦闘機の比じゃないんです。Gと操作性の面を解決しないと無理ですね」
「この反応速度だとオシマイだぞ」
「まだコイツは開発されたばかりです。気長にやるしかないですよ」
「・・・っ、そのようだな」

人が乗れる大型人型ロボット。それは人類の長年の夢であった。数多の技術者たちがその開発に力を注ぎ、そして多くの有力企業もそれを支援した。大型で人型であるロボットの弱点は数多くあった。アニメやマンガのようなとんでもない動きは当時ではもってのほかだった。バランス、動力、装甲、機動性、走破性、衝撃能力、どれも解決するのは難しかった。しかし、何か新しいものが出来るとその発展は目覚しいものがある。例えば自動車。開発された当初からわずか百年の間で飛躍的な進化を遂げた。それは当時の技術力では、の話である。火星を第二の地球として、テラフォーミングするまでに成長した技術力を持ってすれば大型人型ロボットの進化は目覚しいものだった。
拍車をかけたのは「GS(グラビティ・キャンセラー)」と呼ばれる重力衝撃軽減装置の開発だった。宇宙事業に力を入れていた企業が、「より民間人を簡単に、快適に宇宙に連れて行く」というコンセプトからコンピュータ制御による小型の重力操作システムを開発した。火星のテラフォーミングで行われた重力操作の装置はあまりにも巨大で小型化は不可能とされていた。小型化に成功したグラビティ・キャンセラーは早速、大型人型ロボットに組み込まれた。完全に衝撃や反動を打ち消すことは不可能でもずいぶんと「乗り心地」は快適になった。更にこのグラビティ・キャンセラーは重力軽減方向を変えることによってバランスをとることが可能となった。操作性の面も当初から取入れが検討されていたコマンド入力方式、つまりゲームのような方式を採用することによって硬いながらも「動ける」ようになった。急速な発展を遂げた大型人型ロボットは「ギガス」通称Gと名を変え、軍事利用され始めた。最初から軍事利用を目的とした「ギガス」、ギガスの技術を民間に流用し、競技大会に活用され始めた「ヒューマノイド」これらは、世界の全てになりつつあった。


Gの発展開発が軌道に乗り始めた頃・・・

薄暗い部屋にモニターの明かりだけが灯り、2人の男がいる。
「エデン計画・・・?」
聞いたことのある単語の並びだが、いろんな意味に取れる。
「世界政府の機構を更に1つにまとめ、最新型のAIシステムで構成するのだ」
「しかし!AIは過去に失敗がっ・・・!」
「今回のシステムは完璧だ。暴走は無い」
冷静に男は続ける。
「内容は?」
「基本は世界安定が目的となる。・・・これを見てくれ」
男はディスクを渡した。そして画面には衝撃のデータが映し出された。
「これは・・・!?」
「これが、『エデン計画』だ」
「我々は、この“表向き”の計画に反抗する勢力が必ず出てくる。これは断言できる。しかも、アレを確実に使ってくるはずだ。目には目を、アレにはアレを。我々もそれによって潤う。君もそうなのだろう?」
「は、はぁ・・・」
何もいえないもう一人の男。タバコに火をつけ男は続ける。
「この計画は既に始まっているのだよ」
えっ?っと言うようにモニターに見入っていた男は顔を上げた。
「で、では、このサンプルは!?」
「既に“初期モデル”は既に開発済みだ。しかし、ヤツラは失敗に終わった。寿命、精神安定の面で問題が多すぎる」
「アレはどうなってるんですか?」
「トヨタという政府技術者が素晴らしい作品を作り上げてくれた。この“2次モデル”と共に完全だよ。あとは、成長待ちだ」
「はっ・・・」
「この辺りでいいだろう。私も深入りしすぎないようにしなくては。情報が漏れることは決してあってはならない」
「わかりました」
もう一人の男が席を立ち部屋を出て行くと、タバコの男はコンピュータにあるコードを打ち込んだ。すると、画像が崩れ、データが消滅し始める。ウィルスだ。
「世界は我々のものだ・・・」
煙を吐き、うっすらと黒い笑みを浮かべた・・・。


とある研究所・・・

けたたましい警報と共に研究員が慌てふためく。
「何だ!?何が起きている!?」
「Gの襲撃です!戦闘部隊も進入しているようです!」
情報が錯綜し、正確な情報かどうかも判断できない。研究所の主任は頭を抱えた。
「・・・何故ここがバレた?」
「分かりません!上からもまだ援護が来ません!!」
そこに、ノイズが混じりの通信が入る。
「・・・っ、突破・・・アルファべ・・・が・・・きけ・・・」
「脱出する!」
「研究は!?」
「我々さえいれば何度でも出来る!」
「分かりました」
研究員たちは地下から脱出していく。そこは、小さな窓のついた大型のタンクのようなものが50機ほど立ち並び、モニターにデータが表示されている。警報が鳴り続け、赤いランプが点る。半分近くは襲撃の衝撃によって全半壊し、中から液体が漏れていた。
「研究室らしき場所に到着、・・・こ、これは何だ!?」
「どうした」
突入部隊の傭兵が目撃したのはあってはならない光景だった。次々にメンバーが到着する。それを抱え上げて、つぶやく。
「まだ生きてる・・・」
一人が提案した。
「連れて行こう」
「馬鹿なことを!?」
「これは、証拠になる。それにここにいれば死ぬだけだぞ!」
一人が無線を開き作戦部隊長にお伺いを立てた。
「リーダー、どうします?」
「いいだろう」
「他は、プロテクトがかかって開きません」
「これだけあればいい。よし!脱出するぞ」
彼らが脱出した後、その部屋は瓦礫に包まれた。

この出来事は20年ほど前、ユーラシア大陸中央付近の山中の政府機関の研究所が襲撃された。何故襲撃されたのか、襲撃に関ったメンバー全員が行方不明になり、謎が多く残ったが、いつの間にか皆忘れていった。今でも世界政府に疑念を抱く人が多いが、この事件を口にすることはタブーなのか誰も話さなかった。


「はぁ、はぁ・・・」
どれくらい走ったのだろう。草木を掻き分け、山道を走った。サーチライトの光と銃声が聞こえる。しばらくすると銃声がしなくなった。人の気配も無い。
「撒いたのか・・・?」
傭兵は荷物の中を見た。よく眠っているようだ。その寝顔を見てほっとする。世界政府の手は予想以上に早かった。あの事件からわずか2日で襲撃部隊を割り出してきた。この傭兵も例外ではない。研究所から連れて来たものと一緒に彼は極東日本の山中にいた。更に歩くと彼は山の奥の開けた場所に古びた洋館を見つけた。旧世紀からの建物のようだ。
「孤児院か・・・」
建物の玄関前で傭兵はメモを包みの中に入れ、扉を叩いた。
「・・・はい」
しばらくすると女性が出てきた。「誰もいないのですか?」辺りをひとしきり見回した後、足元の包みに気づいた。
「あら?」
「どうかなさったの?」
もう一人の初老の女性が建物から出てくる。
「これを」
「まあ・・・」
「あら、何か入っているわ。・・・“F”かしら・・・」
「とりあえず中へ入りましょう。ここは寒いですから」
包みを抱き上げその2人の女性は優しい笑みを浮かべ、建物の中に戻って行った。


「対象を発見」
包みを持った傭兵は滝に追い詰められた。
「それを渡してもらおうか」
兵士が銃を構え歩み寄る。完全に包囲されてしまい、後ろは数十メートルもあろうかという崖だ。夜も深く滝つぼは見えない。
「貴様らに渡す程度なら!!」
そういうと、傭兵は包みを滝つぼに放り投げた。それを見た兵士たちは冷静に告げる。
「貴様に用は無い。サヨナラだ」
兵士たちのサブマシンガンが火を吹き傭兵は滝つぼへと崩れ落ちていった。一人の兵士が隊長らしき人に静かに言う。
「アレはどうしますか?」
「この高さでは助からんだろう。総員、撤収せよ!」
「了解っ!」
兵士たちは闇の中に消えて行った・・・。


更に月日は流れ・・・

「レッシュ!」
「何だお前か・・・」
「誰だったら良かったんだよ!あぁ?」
ため息交じりのレッシュの背後から羽交い絞めにした。
「冗談だよ」
レッシュは笑ってその声のするほうに向き直った。そこにはルームメイトであり、チームメイトでもあり、何より親友であるその男がそこにいた。レッシュは傭兵技術専門学校の航空科にいた。彼とレッシュとの出会いは最悪といってもいい出会いだった。今やそのとき様な感じは微塵も無い。食堂の席に座り、今日の日替わり定食を食べようとしていたとき、
「あ、あのぅ・・・」
2人の前に少女が来て、小さな声で話しかけてきた。その男はいつものような反応をする。
「ああっ!?」
「ひっ・・・」
「おいおい、怖がってるじゃねーか」
睨まれ泣き出しそうになる少女をなだめながら、レッシュはその男を逆に睨む。
「はいはい・・・」
その男は意外とあっさり、言うことを聞いた。そのことに少女は驚いた。その男は少女も知っている。超人的なパイロットセンスを持つ男で、レッシュと組んでから学校内でも一目を置かれる存在である。しかし、目つきの鋭い怖い見た目と荒っぽい性格から恐れられていた。その男がレッシュの言うことを普通に聞いてることが少女には信じられなかった。まあ、食堂にいるほかの生徒たちも最初は信じられなかったが、今や見慣れた光景だ。
「あんた、航空科じゃねぇだろ?」
その男がドスの効いた声で少女に話しかけた。
「あっ・・・、え、は、はい・・・」
「いいから黙ってろ」
レッシュの2度目の静止の顔を見た男は静かになった。
「用があるんじゃないのか?」
レッシュがその少女に優しく話しかけた。
「あ、あのー・・・、私、レッシュ先輩のファンなんです!!」
少女は顔を赤らめて、精いっぱいの勇気を振り絞って言った。横の男は何か言いたげだが、これ以上何か言ったら後で・・・って顔をしているレッシュには何も言えない。
「こ、これ、受け取ってくれますか?」
少女は包みを渡した。手が震えている。
「ありがとうな。開けていいか?」
少女はこくりと頷き、レッシュは包みを開いた。そこにはマフラーが入っていた。
「いいのか?」
少女は頷くだけだ。「失礼します」と言って、席を立ち去る少女にあっ、と思い出したようにレッシュは問いかけた。
「名前何て言うんだ?」
少女はこちらを向き直り、お辞儀して名前を言った。
「樹村・・・、樹村 優美です」
「O.K。優美ちゃんか覚えとくよ」
飛び切りの笑顔を見せた少女は走って帰っていった。必ず横の男からの攻撃が始まる。どんな技術授業の敵より厄介だ。
「おいおい!マジかよ!ありゃ、惚れてるな」
男が耳打ちしてくる。レッシュは唐揚げを食べかけて途中でやめた。
「そうか?」
「鈍いな」
「お前も十分鈍いだろ!」
「お互い様ってことだな」
2人は顔を見合わせて笑った。その時、チャイムが鳴る。
「やべぇ!次の授業、シュミレーターバトルじゃねぇか!」
カバンの中を弄り、戦闘記録や自機体のセッティングが書き込まれたディスクを探す。
「無い・・・」
「これか?」
ぴらぴらとレッシュが自分のカバンからディスクを取り出した。すぐに盗ろうとする男から取られないようにレッシュはその男の手をかわした。
「あ、さすがだな!」
「何か言いたいことはないか?」
「お、サンキュー」
「心がこもってない・・・」
「・・・レッシュ様、誠にありがとうございました」
「まあ、いいだろ」
男は、「ははーっ」と言うポーズをとった。レッシュは笑ってディスクを渡す。
「って、こんなことやってる場合じゃねぇだろ!」
急いで日替わり定食をかき込んで、シュミレータールームに2人は急いで向かった。授業にはギリギリ間に合った。これは今から4年前の話である。まだ、世界を二分する戦争が始まろうとは誰も思わなかった。


そして、レッシュたちは大きな戦いへと巻き込まれていく・・・。



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