waiting for the changes

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05話:DAY BREAK


「レッシュ・F・ヴィレドルだ。この部隊の隊長になった。ヨロシク、こっちは優美だ」
「ハイハーイ!しつもーんデス」
優美が一礼し、レッシュが挨拶し終わるのとほぼ同時に一人の女性が挙手する。日系女性のメンバーの中で唯一の「外国人」だった。
「キャプテンはー、日本語上手ですネー?」
「ああ、極東地区で育ったからな」
「同じなんですネー」
レッシュに質問してきたこの女性はシェリー・ウィンド。金髪で碧眼。何処から見ても「外国系」丸出しの女性だ。この部隊で輸送機などのパイロットを担当している。・・・何故かミニスカのナース服姿だ。友子に聞くとコスプレの趣味があるらしい。「大変なんです」と友子がため息をつく。その隣にいた黒髪ロングストレートでメガネを掛けた女性が立ち上がる。結構な美人だ
「桐生 貴子です。Gはスロウです」
小さな声でそれしか言わなかった。続いてツインテールの2人のハイスクールレベルぐらいの女の子が立ち上がる。どうやら双子のようだ。
「高 亜実です」
「高 亜希です」
「よろしく!」
最後の一言は綺麗にハモった。
「ヨロシク」
レッシュが笑いかけると、「きゃー!」と言って2人で手を合わせて顔を見合わせる。まだまだ幼さが垣間見える。そういう反応に普段ならむっとする優美だが、今は言い返す気力も無い。さっき自らのGに災いが起きたからだ。そして、その張本人が帽子を取って自己紹介を始めた。
「あー、佐和村 真琴・・・です。Gの整備なら任せてー・・・ください。・・・さっきはごめんね、マジで」
「あ、はい・・・」
敬語はあまりなれていないのか、語尾に困っていた感じだった。髪型はショートで活発な印象を受ける。その後「後で、話があります」と続けた。優美も大きなため息をついてまた沈んでしまう。まあ、とにかく次だ。
「朝田 ミコです。グロリアス・スーパーに乗っています。それから・・・」
「赤き巫女デス!」
「・・・です」
ミコの自己紹介の途中でシェリーが割って入る。「ねー?」と言ってシェリーはミコの方を向いて笑う。ミコは最後に笑って付け加えた。笑顔が魅力的な茶髪セミロング、茶眼の女性だ。“赤き巫女”レッシュもその名前は聞いたことがあった。傭兵の中で、異名で呼ばれる女性は数人しかいない。かなり腕が立つと聞く。確か、有名な傭兵部隊の一員だったはずだ。レッシュの記憶違いなのだろうか。次はあの女性だった。
「間宮 クルスです・・・。先ほどは申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げた。先ほど、レッシュに向かって発砲した女性だ。女性と言うより女の子に近い。顔は日系だが髪は金髪、名前からしてもハーフのようだ。次は知った顔がおどけながら言う
「えーっと、織地 翔です。よろしくお願いします」
よそよそしく翔は言った。また、シェリーが「灰色の弾丸!」と嬉しそうに言っていた。
「最後ですね、さっきも言いましたが私は」
友子が話そうとしたその時、部屋にベルが鳴る。依頼が来たようだ。友子は「失礼します」と言って立ち上がり、部屋の奥にある数台のモニターの前に座り、キーボートを弾いた。プロジェクターのようなものが白い壁に依頼内容を映し出した。
「依頼は・・・、世界政府軍の通称“3”の撃破。世界政府軍の中でも凶悪なパイロットとして有名です。3日後にモンゴル北部地区に呼び出すことに成功しました。排除してほしいとのことです。反乱軍のアジア地区辺りからの依頼だそうです」
反乱軍からの依頼も珍しくない。しかし、その場合依頼者は正体を隠すのが普通だ。この発信元を調べても何も出てこない。依頼者がバレると、そこには間違いなく世界政府軍の特殊部隊が向かう。それが世界政府のやり方だ。レッシュは質問する。
「相手は何機だ?」
「おそらく2機です。“3”は常に“4”と組んでいます」
「俺はパスだ」
翔が面倒くさそうに言った。後で聞くと翔の腕は確かなのだが、問題は職務態度だ。気紛れで、面倒くさがりで依頼を途中放棄することもしょっちゅうだった。貴子はため息をつく。「いつもあんな感じなんですよ」とレッシュに小声で言ってきた。友子が続ける。
「どうしますか?受けますか?・・・隊長」
「わかった。受けよう」
「では早速準備してください」
「誰が行くの?Gの調整しなきゃいけないから」
真琴が皆に声を掛けた。レッシュはメンバーの顔を見回して、
「3人で行く。俺とミコ、それとクルスでどうだ?」
「いいわよ」
「ええ」
クルスに次いでミコも続く。
「じゃあ決まりだな。整備頼むぞ?」
「はいよ-!」
ミコもクルスもあっさりと賛同し、真琴は駆け足で格納庫へ向かう。レッシュが隊長となって早々最初の任務だ。


「隊長?ちょっと、いいですか?さっきの話なんですけど」
「ん?」
今はモンゴルに向かう輸送艦の中。真琴がくつろいでいたレッシュに話かけた。そう言えば自己紹介のとき話があると言っていたことを思い出した。
「その、ですね・・・」
「敬語」
「は?」
「敬語慣れてないなら無理にそうしなくてもいいよ、別に俺は気にしないから」
「あ、あはは」
ぎこちなく真琴が笑った。新しく来た隊長は、日本語をペラペラ話す外国人。さっき、箸を器用に使って食事を取っていた。それほど有名ではない上に、腕が立つのかどうかも分からないこの男が何故この部隊の隊長となったのか、また何かやらかして左遷された男なのだろうか?真琴が色々思考を巡らしていると、レッシュの声で現実に引き戻される。
「で、何の用だ?」
「あ、その、格納室に来て欲しいんだけど・・・」
「じゃあ、行くか」
2人は輸送艦の格納室に向かった。


「これなんだけどね・・・」
「ああ、EVEか」
「それは擬似人格プログラムでしょ?それは分かるけど、この数値は何?」
「ああ、そっちね」
真琴が指し示したモニターにはレッシュにとっては見慣れた数値が並んでいた。普通なら、「傭兵の基地」で調整すればよかったのだが、任務依頼の為、すぐに準備して出発したからだ。そのせいで真琴はさっきその数値を見て驚いた。EVEのモニターにそう示された事には設定をそうせざるを得ない。通常の反応係数や出力値。それとは別に設定されている反応係数などが普通では考えられない、とんでもなく高い値に設定されていた。「気にするな」とレッシュは返す。
「ちょっ、気にするなって、こんなんじゃまともに動かせないよ?」
「まあまあ」
笑みを浮かべるレッシュに真琴はますます掴めなくなってきた。とんでもない代物に乗るこの男だが、本当にこの機体を扱えるのか?
「整備は完璧なんだろ?」
「それはね。細かいところはEVEのデータで調整したから」
会話が盛り上がってきたところで艦内放送が入った。ミーティングを行うとのことだ。「じゃあ、行ってくる」と言うレッシュを真琴は見送った。


「今回は相手を呼び出し、待ち伏せる形になっているので、こちらが有利です。反政府軍の新兵器を搭載した輸送艦を襲撃するように命令を受けているはずです。そこを逆に襲う作戦です」
友子が説明を始めた。ミコが質問する。
「そんなピンポイントで“3”と“4”を呼び出せるの?」
「大丈夫です。先日付近の町を“3”が襲撃したという情報が入っています。まだその町に滞在している情報があります。世界政府上層部からの命令で一番近くにいる兵が送られることになっていますから」
友子は更に“3”と“4”のデータを説明する。
「“3”と呼ばれる世界政府軍のパイロット、ルドラス・ハー。Gパイロットとしての腕は確かだが性格が残虐で反政府軍から恐れられているパイロットです。格闘戦が得意でウィンに搭乗しています。格闘能力が目立ちがちですが、射撃の腕もいいです。あ、一応補足ですが“3”とは「3カウントの間に破壊される」と言う意味から付けられました。次は“4”と呼ばれる世界政府軍のパイロットで、ナード・キドー。“3”と組んでから凶悪さが更に増したと言われます。こちらは地上高速移動を利用した戦闘が得意です。機体は4足タイプの50に乗っています。通称はそのままですね。相手は強敵です。気をつけてくださいね」
レッシュが更に質問を重ねる。
「何でこんなヤツの排除をこの部隊がするんだ?」
「それは、被害が出ても所詮「この部隊」だからと考えているのです。でも、皆さん腕は立ちますから安心してください」
この部隊は色々背負っているようだ。レッシュにはそう感じられた。きっと、きつい依頼や、逆に消されそうになったこともあるのだろう。それでも生き残っているということはこの部隊のレベルは高いと言うことなのだろう。レッシュは窓の外に目をやる。今まさに夜が明けようとしていた。
作戦開始まであと5時間・・・。


あの時。

「排除する」
「な!?」
白いGが翼の戦闘機の前に立ちふさがる。エネルギー弾が翼の機体を捕らえた。
「タカ!!」
友が自分の名を呼ぶのが聞こえる。遠ざかる意識の中で翼は、自分のふがいなさに嘆く。
「ちっ、俺は・・・、この程度だったのか・・・」
・・・。
「・・・くん」
ん?
「・・さくん」
何だ?
「・ばさ君!」
呼んでいるのか?
「翼君!!大丈夫?」
「うっ・・・」
「うなされていたけど、大丈夫なの?」
翼の目の前にはヴィラがいた。心配そうに顔を覗き込んでいる。
「ああ、昔の夢を見ちまった・・・」
「昔のって、あの時の?」
「この話は終わりだ」
「ちょっと、翼君!」
そう言うと翼はソファーから起き上がり部屋からテラスに出た。開け放たれた大きな窓からは、心地よい地中海の風がレースのカーテンを撫でる。夕焼けの光が翼の影を部屋の中まで伸ばしていた。テラスに出て行く翼をヴィラは見つめていた。翼は反政府軍の英雄でエースパイロットであっても、組織内では疎まれている存在でもあった。そのあまりにも強すぎる力のためだ。仮にも翼が裏切り、世界政府軍に付いたらどうなってしまうのだろう?翼に対する対応も人それぞれまちまちだ。どこか1歩置いて翼に接している。本当に親しい間柄の仲間しか翼は信用していないのも事実だ。そして、3年前以前のことは誰にも話そうとしない。同じ部隊で親しい仲のヴィラにさえも話さなかった。
「翼君・・・」
「何だ?」
ヴィラの方を振り返る翼。たまに見せる沈んだその顔を見るとヴィラはいたたまれなくなる。
「私に出来ることがあったら、何でも言ってね?」
「ああ」
何度この台詞を言ったことだろう。何度その言葉を聞いたことだろう。本当は私の事も信用していないのではないかと考えてしまうことがある。そんなことを考えても何も変わらない。きっといつかは、私にも心を開いてくれるときが来ると、ヴィラはそう信じたかった。今、まさに夕日が沈もうとしていた。



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