waiting for the changes

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18話:WAKE UP


絡みあうGたち。
次々と破壊されそれは意味を成さないものに形を変えていく。
“G”という“媒体”に乗ることで引き金を引く重みが変わった。
ヒトが生身で撃ち合う時代は終わりを告げていた。

傭兵という職業はGの登場までごく僅かな人間のものだった。
世界政府機構の弱点、それを補うのが傭兵だった。
世界政府の変貌と共に傭兵もカタチを変える。
傭兵は変わった。
ニーズによれば世界政府さえも敵に回した。

そして今、傭兵は世界でも強力な力を持つようになった。彼らはどこにも属さない。


シアトルの深くまで傭兵たちのGが侵入してきていた。ビルが高く、道が狭い分、彼らの侵入に時間を掛けていた。G用のシールドを何重にも重ね、ブロックごとにバリケードを組んでいる。
「撃て撃て!!弾が切れたら一旦後退、次のヤツが前に出て撃て!」
嘗て、日本という国で戦国時代とういう戦乱の世があった。その時代である武将が鉄砲隊を編成し、順序良く切れ目なく銃撃したのだという。世界政府軍の戦法はそれに酷似していた。次々と傭兵たちのGが破壊される。その破壊されたGたちの山が更に強力なバリケードへと姿を変えていく。その時バリケードをあっという間に突破するGが現れた。超高速で空を飛び、風圧で高層ビルのガラスが吹き飛ぶ。それが光に反射してキラキラと輝いた。
「何!?突破されたぞ!!」
「一杯いるなぁ・・・。ほら、プレゼントだ」
そのバリケードの上にスピルスを止めた。翔はスピルスの盾をスライドさせる。そこから大型の爆弾を取り出す。それを20機ほど固まっているGたちの真上から投下した。重力に引かれて真っ直ぐその中心を目指す。
「爆・・・」
凄まじい爆発が起きた。次々と誘爆し、Gが崩れていく。周りの高層ビルも崩れ、ビルの合間に作られたバリケードが意味を成さなくなった。ビルがバリケードの役割を果たしていたこともあって、世界政府軍たちのGに戸惑いが見える。それを見るや否や一気に傭兵たちのGが流れ込んできた。
「行けェ!!!」
「俺たちはお前たちに屈しない!!」
翔はそれを空から眺めながらふっと笑う。ビルの屋上に設置されたロックしてきた対空防御システムを次々と破壊してスピルスは更にシアトルの奥へと進んでいった。


「何て数なの・・・」
藍色のGを斬り倒して桜はぼやく。桜の機体は射撃武器がない。普通のGよりは活動時間がかなり長い。ブレードのみで生き抜く自信がなければこんな装備は無茶といえる。そんな桜のGでもエネルギー補給に一回下がったほどだ。桜の部下たちは引っ切り無しに補給のために母艦へと戻っている。情報が流れるモニターに傭兵たちが押していると情報が入ってきた。
「・・・やるわね」
まだ、戦闘は終わりそうにはない。


2機の白いハイジェンが左右からGを挟み撃ちにする。両側からブレードで切断されたGが炎を上げる。その時、“左側”のハイジェンの後ろから灰色のGが斬りかかってきた。“右側”のハイジェンが反応しそれを撃破する。お互い背中合わせになった2機のハイジェンは正反対の方向にダッシュし、お互い1機ずつ世界政府軍のGを沈めた。驚異的といえるコンビネーションだ。その奥から赤いグロウが表れる。
「ちょっと、早過ぎだってば・・・」
暴走癖で突っ込みがちのクルスも2人の速さとコンビネーションにはついていくのがやっとだった。それを聞いているのかいないのか、双子は会話を始める。
「楽勝だね!」
「油断は禁物だよ」
「あのさ・・・聞いてる?」
クルスの声が割り込む。
「分かってるよ」
「後ろ!!」
“左側”のハイジェンの少女が叫ぶ。その声に反応して、その場で360度回転しながら迫ってきたGを真っ二つに斬った。
「油断は禁物って言ったじゃない」
「うん、ごめんね!・・・さあ、次に行こう!」
「うん」
「もしもーし?聞いてますかぁー?」
モニターの向こうで自分と同じ声と同じ顔をした少女が笑う。2人のコンビの前に未だ敵はいなかった。そしてまた、赤いグロウが必死にその後を追う。
「ちょっと!聞いてないでしょ!ねぇ!!待ちなさいよ!!」
クルスの言葉を亜実と亜希は笑って聞いていた。


「そこよ!」
ミコのグロリアス・スーパーがライフルを放つ。バリケードから顔を出したGの頭部を破壊した。バランスを崩してGが倒れる。そこにミコと優美は同時に仕掛ける。ミコはG用手榴弾を投擲し、ライフルを連射する。爆発が起きて数機のGが破壊された。同じように優美のグロリアス・スーパーもマシンガンでGを撃破していく。
「優美ちゃん大丈夫?」
「はい!大丈夫です」
「じゃあ、まだ行くわよ!?」
「はい!」
ミコは隣のグロリアス・スーパーから返ってくる元気な返事に「よし!」と言ってGの歩みを進める。
その時だった。彼らの上空で“扉”が開いた。それは傭兵たちも世界政府軍も確認する。
「ゲート!?」
「世界政府軍の増援か!?」
その“扉”からはカプセルが凄まじいスピードで降下してきた。地面に着地・・・着弾と言った方がいいのかも知れない。凄まじい衝撃波が起きビルとGが吹き飛んだ。
「何!?・・・亜実!亜希何かくるよ!」
「「え?」」
クルスが2機のハイジェンを止めた瞬間、彼女たちを衝撃波が襲った。
「きゃあぁぁ!!」
クルスが機体を踏みとどまらせ、1機のハイジェンを受け止めた。機体が軋み関節が悲鳴を上げる。もう1機のハイジェンは赤いグロウの横でビルの陰に隠れた。世界政府軍のGたちが吹き飛ばされてビルに叩きつけられていた。
「何が起きたんだ・・・」
下の世界は砂煙で何も見えない。翔は見下ろしていた。周りのビルが倒壊している。さっきのミサイルが落ちた付近だ。だが、ミサイルにしては爆発が起きない。爆発は起きているのだが規模が小さすぎる。・・・あれはミサイルだったのだろうか。
「きゃぁっ!」
ミコは少し機体を浮かせた瞬間に衝撃波に襲われた。そのため結構な距離を飛ばされたのだろう。後方で支援していた頑丈そうなスロウに受け止められていた。
「・・・痛ぁ・・・何があったの」
「大丈夫ですか!?」
「ええ・・・平気」
「立てますか?」
ミコは機体を動かす。若干動きが鈍いが許容範囲だ。グロリアス・スーパーを真っ直ぐに立たせ、親切なスロウのパイロットに例を言った。
「ありがとう」
「いえ、何が起きたんでしょうね・・・」
「敵味方関係なしの攻撃かしら・・・」
晴れない砂煙を見て、思い出したようにミコは叫ぶ。
「優美ちゃん!!」
「危険です!視界の利かない今、突っ込むのは自殺行為です」
「仲間がいるのよ!」
ミコは目の前の状況を見る。50メートル先も見えない。通信は混同し、近くに居るスロウのパイロットの声しかはっきりと聞こえないこの状況でこの砂塵の中に突入するのは無理だ。例え入ったとしても、崩れたビルなどでバランスを崩し、転倒してしまえばおしまいだ。格好の的となってしまう。
「くっ・・・」
何も出来ない自分にミコは右側のモニターを殴りつけた。


暗い
暗い
暗い場所。
光も何もない。あるのは自分だけ。
レッシュは深い場所にいた。
友の言葉が繰り返される

「お前は“兵器”なんだよ!!」

全てを否定された気がした。“人間”として生きてきた今までは偽りだったのだろうか。
そもそも、Gパイロットとなったことも必然であったのか。
“兵器”の力がGを手足のように操る。
自らに与えられた力は・・・。


「はぁはぁ・・・」
前が全く見えない。砂塵が吹き荒れる。機体は・・・異常は無いようだ。優美は一通り動作チェックを行う。若干硬い部分があるが、完全に動かないのは左手だけだった。運がいいことに、盾を構えた状態で動かなくなっていたのが幸いだった。
「何が起きたの・・・?」
優美は機体をゆっくりと立たせて周りを見る。やはり何も見えない。レーダーも何も反応しない。滅茶苦茶な反応が点いては消え、点いては消えを繰り返していた。
「応答願います!・・・応答願います!・・・ダメか・・・」
優美は通信を切った。もし、今の衝撃で通信システムが壊れていたら敵に居所を知られてしまう恐れがある。この状況ではその危険性は低いが、居所を知られて攻撃された場合、逃げることが非常に苦しくなる。自分を危険にさらすことは極力避けたかった。
その時、目の前に桜色のGが躍り出た。優美は思わず機体を後退させた。
「きゃあ!」
「G!・・・敵!?」
桜は右手のブレードで斬りかかった。偶然動かなくなった左手の盾に受け止められる。パワー負けしている上、動かなくなった優美のグロリアス・スーパーの左手ががくんと通常とは反対の方向に曲がった。人間で言う骨折した状態になった。
「ああっ!」
「こんなところまで侵入してるなんて・・・」
桜は左手のブレードを振り下ろした。優美はギリギリで回避して桜色のGから離れた。ビルに回りこみ隠れる。だらしなく垂れ下がった左手がジャマをして思うように動けない。
桜はあたりを見回す。やはり視界は利かない。だが、さっきのGは傭兵のものだ。ここまで侵入されているということは、他にもいるはす。それにこの機を乗じて突撃するヤツもいるはずだ。桜は思い切って動くことにした。損傷は奇跡的にない。そして、動いた先にあの白いグロリアス・スーパーがいた。
「それにしても・・・この状況・・・」
桜はこれと同じような経験があった。それは桜の脳裏に焼きついた出来事とダブって映る。背中に嫌なものを感じていた。


「どうするの・・・!?優美ちゃんがいないって!!」
ミコがいた場所にクルスと亜実と亜希が戻ってきた。亜実のハイジェンは激しく損傷しているが、パイロットは無事だった。クルスのグロウもダメージを受けている。亜希のハイジェンだけが無傷に近い状態だった。
「どうするって・・・この状況じゃ動けないわ」
「亜実とクルスが動けないし・・・」
「でも、助けなきゃダメじゃん!」
傷ついたグロウで助けに行こうとするクルスをミコが止めた。
「やめなさい!今行ってもまともに動けないわ!」
「でも・・!」
「翔君が探しているはずよ!彼なら無事なはず。彼に任せるしかないわ」
ミコの言葉にクルスは素直に従った。未だ晴れない砂嵐を睨み付けて、クルスは唇を噛んだ。


「どうしよう・・・」
焦ってもしょうがない。優美は大きく深呼吸した。
鼓動は早い。動かない左腕。
とりあえず、この手を何とかしなければ・・・。
そう考えた瞬間、砂塵を切り裂きエネルギー弾が優美の機体を貫いた。
「きゃあっ!!」
ギリギリで反応し、攻撃を回避する。が、回避しきれず左腕に直撃した。左腕が根元から吹き飛ぶ。そして、若干視界が利きだした優美の目の前にあの“白いG”が居た。“白いG”はエネルギーライフルを連射してくる。
「し、白いG!?」
優美はビルの陰に隠れながらその“白いG”から遠ざかった。そして、次の角を曲がろうとした瞬間、桜色のGと衝突した。優美のGは吹き飛び砂塵の中に消える。
「きゃあぁぁ!!」
「きゃっ!・・・何?」
桜のGも飛ばされ、バランスを崩し、地面に倒れこんだ。桜はあたりを見回す。さっきよりはマシになったとはいえ、まだちゃんと見えない。近くでエネルギー兵器の発射音がした。爆発音が起き、隣のビルが崩壊し、優美のグロリアス・スーパーの目の前に瓦礫が落ちる。その時、何かが目の前を横切った。Gだ。それはビルに叩きつけられ動かなくなった。コクピットハッチがパージされ、中から血まみれのパイロットが出てくる。そのパイロットは・・・右側がなかった。大量の血が流れ、地面に落ちていく。
「・・・っ!!?」
汗をべっとりと手袋の中についている。操縦桿をしっかり握れない。白いGと桜色のG同時に降りかかった脅威、そして、その光景に優美はパニック寸前だった。
「助けて・・・」
次に何をしていいのかが浮かんでこない。
いつもの判断力もない。
呼吸が多くなり、気分も悪くなる。
手足が恐怖で震える。
更に鼓動が早まる。
寒気もする。
涙で前も見えない。
「助けて・・・」
優美は消え入りそうな声で、その名前を呼んだ。
「・・・助けて・・・レッシュ・・・」


一滴の波紋。
暗い闇の中にそれは広がっていった。
もう一つそれは落ちて広がる。
暗い世界を少しだけ明るくした気がした。
「・・・シュ」
誰かの声がする。
「・・・て・・・シュ」
その波紋はどんどん広がり、レッシュを包む。
「・・けて・・・ッシュ」
暗い世界で目を閉じた状態でもその光は見ることが出来た。
暖かい光。そうレッシュは感じる。その光は鼓動のように点滅している。
「・・・けて・・・レッシュ」
名前を呼ぶその声は震えていた。聞きなれた優しい声。
次は、はっきりとレッシュの耳に届いた。
「助けて・・・レッシュ」
世界に光が溢れる。体が温かい。レッシュは目を開いた。
「・・・優美!!」
レッシュは立ち上がり部屋を飛び出した。
もう、迷いはない。
誰の言葉にも惑わされない。

あの声を信じて。


「って、隊長!?」
真琴はパイロットスーツに着替えながら格納庫に飛び込んできたレッシュを見て驚く。いつものレッシュとは違う雰囲気だった。だが、あの時の抜け殻のようなレッシュではなかった。
「真琴!Gの準備は大丈夫か!?」
「あ、うん、大丈夫だけど・・・隊長は大丈夫なの?」
レッシュは静かに頷いた。その顔には自信が見える。
「ああ、あいつを助けに行く」
「・・・あいつ?」
レッシュをコクピットまで連れて行きながら真琴は首を傾げた。
「優美だ」
「優美ちゃんがどうかしたの?」
レッシュはヘルメットを被ってコクピットに座り込む。
「優美が「助けて」と言ってる」
「え?どうして?」
「分からないけど・・・分かるんだ・・・大体どこに居るかもわかる」
レッシュはその方向を向いた。真琴はレッシュの言っていることがよく分からないが大体状況の状況で察していた。先ほど上から“何か”がシアトルに打ち込まれて視界が全く利かない状況が続いている。レッシュは機体をスタートさせた。EVEのモニターに“EVE”のあとに“RED BIRD”の文字が出た。
「RED・・・BIRD?」
「あー、それはね。深くは聞かないで!・・・うん」
頭を掻いている真琴はばつの悪そうに笑う。
「とにかく、優美ちゃんを助けに行くんだよね?」
「ああ」
「もう、大丈夫なんでしょ?」
「ああ」
「機体は完璧だから、思う存分暴れてきて!」
「わかった。そろそろ行くぞ」
レッシュのその言葉を聞くと真琴はリフトでレッド・バードから離れた。“レッド・バード”翼の“ブラック・バード”と対する意味で付けたと真琴は小さく最後に言ってくれた。友との戦い、そして“F”。この呪縛に立ち向かうにはふさわしい名前かもしれない。真琴はレイザーのコクピットに通信を開いた。
「トモ!ウチのエースが出るよ!」
「はい?」
何のことか分からない友子は困惑する。だが、次に流れてきた映像を見て、その顔は笑顔に変わった。
「隊長・・・」
「ハッチ開けて!」
「了解。・・・レッド・バード、出撃してください」
ハッチが開いて外の世界が現れる。シアトルの街並みは砂塵に包まれていた。港では傭兵のGだろうか固まってその様子を伺っていた。レッシュはその砂塵の中の一点を見つめた。そこに彼女は居る。
「レッシュ・F・ヴィレドル、・・・レッド・バード出撃する」


赤い戦闘機が大空に羽ばたいた。




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