waiting for the changes

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19話:FLASHBACK


「・・・いっ?・・・エネルギー兵器!?」
エネルギー兵器の発射音が続く。それと同時に起きるのが爆発音。そして、地響きが起きた。また、砂塵が巻き起こり視界がゼロになった。瓦礫が落ちるところからビルが倒壊したのだろう。傭兵たちはこの町を破壊する作戦に出たのだろうか。操縦桿を握り締めそのやり方に桜は怒りを感じ始めていた。
「傭兵・・・!」
桜は砂塵を睨みつけ、ゆっくりとGの歩みを進めた。


「赤い戦闘機・・・?“赤い鷹”だ!」
空を翔る赤い戦闘機。空に浮かぶ輸送艦や戦艦の間をぬってそれは真っ直ぐシアトルの砂塵の中へと向かっていた。傭兵の通信網で一気にそれは広がった。通信がうまく出来ない今、近くに居るもの同士がバトンタッチするように言葉を送った。それは翔やミコやクルスたちにも届く。
「“赤い鷹”が現れたぞ!」
「赤い鷹?・・・隊長!!絶対隊長よ!」
クルスが嬉しそうにミコに笑いかける。亜実と亜希からも歓声があがった。クルスはほっとため息を付いた。
「隊長、大丈夫なんだね」
「そうみたいね・・・。よかった」
ミコも同じように胸を撫で下ろす。ハワイを知っている者にとっては“赤い鷹”の存在は突如現れた英雄だった。あの“漆黒の鷹”と互角に渡り合えた存在。そして、“漆黒の鷹”と同じ機体。赤い戦闘機は真っ直ぐある場所を目指す。


「視界ゼロ。状況不明・・・危険です」
「ああ、分かってる・・・でも行かなきゃならないんだ」
レッシュはEVEから流れ込んでくる情報と映像に答えた。EVEはその言葉にゆっくりと返した。
「・・・わかりました。サポートします」
その言葉にレッシュは頷いた。そして前を見る。心なしか視界がクリアに見える。それに感覚が今までと違う。言葉では言い表せないが、引っかかるものが無くなった感じだ。今までより早くスムーズに動けるような感じがする。
「これなら行ける・・・ん?」
レッド・バードの前に灰色の機体があった。空中に浮かびこちらを見ていた。その灰色の機体は彼を待っていたかのように並んで飛行し始める。
「レッシュ、大丈夫なのか?」
「ああ」
「だったらいいんだけどな」
翔は通信モニター越しに笑った。レッシュは真面目に言葉を返す。
「優美を助けに行く」
「・・・わかった。大体の場所はこっちで探してる」
翔はそれを分かっていたかのように答えた。
「あそこだ。援護してくれ」
「優美ちゃんの居る場所が分かるのか!?」
翔は驚いた。スピルスの通信モニターに位置表示が出された。そこにマーキングされている。そこに彼女が居るということなのだろうか。抜け殻のようになっていたレッシュを立ち直らせたのは彼女の力なのか。そして、彼女のピンチにかれは立ち上がる。
「ああ、砂塵の中は視界が利かない。俺の飛行ログ辿って付いて来てくれ」
「任せろ」
レッシュはレッド・バードを加速させ砂塵の中に突っ込んだ。その後にスピルスが続いた。


左側の視界は利かない。さっきの“あれ”を見て以来、優美は前も見ることが出来なくなっていた。目を開けるとその光景があるからだ。目をぎゅっとつぶり体を抱えて震えていた。怖い。Gのパイロットになって初めて味わった孤独と恐怖。彼女はどちらかといえば恵まれた環境でここまで来た。仲間にも恵まれ、戦闘においても常に声の届く場所に仲間が居た。
今は、その全てが無い。
「レッシュ・・・」
その名前を呼ぶことで途切れそうな心を優美は繋いでいた。


「あー!何も見えない・・・!」
翔はレッド・バードの後ろを飛ぶ。ギリギリでビルを掠める。たまに起きるエネルギー銃“シルバー・アロー”の独特の発射音が聞こえる。レッシュはこの視界ゼロの中でも見えているかのようだった。
「ここだな」
レッシュは何かを投下した。翔はそれを通り過ぎながら見た。赤い光が点滅していた。その直後、凄まじい風が起きる。
「ぐぁっ!?何だ!?」
その大型の爆弾は丁度“何か”が落ちた場所で炸裂した。風圧で周りの視界が一気に広がった。そこは目を疑う光景だった。ビルが倒壊し無数のGが転がる。“何か”落ちたらしき場所は回りは何も無く、すり鉢上になって地面がむき出しになっていた。その真ん中には何か物体がある。
「降下カプセル・・・?」
翔はそれを少し確認しただけではっきりとは見えなかった。ただ、カプセルのような形をしたもの、というだけだった。その時レッシュが反応する。
「・・・ヤツがいる」
「は?優美ちゃんか?」
「え?」
翔とEVEは同じ反応をした。直後、EVEもあの反応を示す。
「居ます!白いGです!・・・グロリアス・スーパー、優美機を確認。付近G総数5!」
「まずは、優美が先だ」
レッシュはレッド・バードを急降下させた。その後にスピルスも機体を急降下させる。あの倒壊したビルの向こう、そこに彼女は居る。


「姉(あね)さん!漆黒の鷹です!」
「なんですって!?」
その言葉に桜の鼓動は早まる。だが、こんなところで・・・?その時、突風が吹きぬけ、一気に視界が開けた。そして、桜の目にもその姿を捉えた。
「漆黒の鷹・・・!!えっ・・・赤い・・・“漆黒の鷹”?」
「あれは、ハワイで確認された“深紅の鷹”と呼ばれる機体です!」
桜が見た姿は赤い色をした“漆黒の鷹”だった。武装と色を除けばそのものだった。同型機なのか?だが、彼女にとって“漆黒の鷹”と同じ機体ということだけで十分だった。桜にスイッチが入る。例え同型機でも、彼と繋がっているかもしれない。破壊する。それだけだった。
「関係ないわ。私が倒す!」
「あ!姉さん!!」
部下を置いて桜は機体を真っ直ぐ赤いGに向けて加速させた。そして、ビルの角を曲がった瞬間、さっきの逃げた白いグロリアス・スーパーが居た。周りでは味方の残骸が広がる。この白いグロリアス・スーパーがやったのだろうか。桜はブレードを抜いた。だが、そのグロリアス・スーパーは全く動かなかった。戦闘する意思が見られない。だが、今の桜にとっては邪魔な存在だった。
「邪魔よ!」
桜は2本のブレードで斬りかかった。その時だった。
「どけぇぇ!!!」
「きゃあっ!!?」
凄まじい横衝撃を桜は受け、吹っ飛ばされた。いつの間にか直ぐ近くに居た赤いGがとび蹴りを食らわしたのだ。右側から強い衝撃を受け、右腕が滅茶苦茶に壊れる。ビルに叩きつけられ、桜は気を失ってしまった。
「優美!!」
一番聞きたかった声がした。優美はゆっくりと顔を上げる。通信用のモニターにはレッシュの姿があった。恐怖と孤独の涙から安堵の嬉しさの涙に変わる。涙声で優美は彼の名前を呼んだ。
「レッシュ・・・!」
「大丈夫か?」
「・・・はい」
「よかった・・・」
モニターの向こうのレッシュが笑う。ヘルメットでよく顔は見えないが、優美には笑っているのがよく分かった。手足の震えが止まる。
「あの・・・!もう大丈夫なんですか?」
「ああ、優美のおかげだ」
レッシュは今そばに居る。あれから立ち直ってくれたようだ。優美はレッシュが助けに来てくれたことより、彼が立ち直ってくれことの方が嬉しかった。ボロボロの機体で、目を真っ赤にしている優美が自らのことよりも、自分のことを心配していることにレッシュは笑えてくる。そこが優美のいいところでもあるのだが。そして、レッシュの赤い機体の横にはスピルスの姿もあった。翔は2人のやり取りがひとしきり終わった後、真面目に話す。
「レッシュ、次だ」
「ああ、次はヤツだ」
レッシュは“シルバー・アロー”を構えて反対側を向き直った。
「翔、優美を頼んだ」
「O.K。任せろ」
翔は優美の機体を抱えて飛び立つ準備をする。その前に優美は伝えておかなければならないことがあった。あの白いGだ。
「レッシュ!“白いG”がいます!」
「わかってる。そいつは俺が倒す」
「・・・あの!」
優美は心配だった。立ち直ったとはいえ、今の状況で彼は勝てるのだろうか。だが、レッシュは自信たっぷりに優美に言った。
「心配するな。必ず帰るから」
優美はその強い言葉に頷いた。翔から離脱サインが出る。
「離脱するぞ」
優美は遠ざかる赤い機体を見下ろしていた。その後姿はいつも見ていた後姿とはちょっと違う感じがした。


「反応大。距離・・・近いです」
「行くぞ」
レッシュはレッド・バードの歩みを進める。ビルの合間をぬう様に歩くと開けた場所に出た。カプセルらしきものが突き刺さり、それを中心としてすり鉢状に地面が抉られ結構広いスペースが出来ていた。そして、カプセルの横には白いGが居た。周りにはGの残骸が広がる。白いGはゆっくりとこちらを向いた。
「“F”を確認。排除する」
白いGがいつものライフルを構えた。だが、それより早くレッシュのシルバー・アローが火を噴いた。エネルギーの塊が白いGを直撃する。だが、光の粒子は白いGの目の前で拡散した。白いGはシールドを構えていた。
「新型か!?」
「過去の戦闘データ参照・・・データに無い機体です」
その白いGの基本的な形状は変わらない。肩や足に追加装甲が取り付けられているようだ。それにあのシールド。大型の普通のシールドではなかった。実体のシールドの上に更にエネルギーシールドが展開されているようだ。防御範囲が狭い分ジェネレーター・フィールドよりも強力なものらしい。レッシュはシルバー・アローを放ちながら、距離を取りつつ、その白いGの周りを旋回し始める。だが、そのシールドに全て受け止められた。
「シルバー・アローでも効かないのか!?」
レッシュはギリッと歯をかみ締める。“シルバー・アロー”は出力安定のため、威力を落としていた。その時EVEが反応した。
「後ろ!!」
「何!?」
レッシュはその言葉に反応し、機体をひねった。と同時に、後方から来たエネルギー弾が機体を掠める。白いGはもう1機居た。
「2機居るのか!?」
レッシュは2機から放たれる、エネルギー弾を回避し続けていた。運がいいことにその場所は広く開いているため、レッド・バードの性能を生かすには丁度いいことだった。


「痛ぁ・・・うっ」
視界がぼやける。頭が痛い。左右のカメラが破壊されているのだろうか、砂嵐になっている。正面のモニターもひび割れ、半分近くしか見えない。赤い警告灯が点るコックピットで桜はあたりを見回した。機体情報を表示するモニターには「右腕欠損、左腕損傷、左足損傷」と表示されている。
「何が起きたの・・・?」
桜は機体を動かそうと試みた。だが、何かに引っかかっているようだ。機体の左側が全く動かなかった。ゆっくりと桜は思い出してみた。
「あの時・・・赤い“漆黒の鷹”!!」
桜はブースターを利用して一気に立ち上がった。ビルから抜ける反動で通りの反対側のビルに叩きつけられる。だが、今度はビルにめり込まずに、そのまま落下し地面に着地した。強い衝撃がコクピットを襲う。どうやら、グラビティ・キャンセラーが壊れているようだ。
「あうっ・・・」
体を固定するベルトがパイロットスーツの上から激しく食い込む。シートに押し付けられ、胸を圧迫された桜は咳き込んだ。
「げほっえほっ・・・!」
桜はモニターを見あげる。割れて見えにくいモニターに何かを捉える。それを見て桜は凍りついた。壊れたビルの向こうで2機の白いGと赤い“漆黒の鷹”が激突していた。丁度、赤い“漆黒の鷹”が銃を仕舞い、背中から抜いた2本のブレードで1機を貫いたところだった。白いGは爆発もせず、そのまま地面に崩れ落ちた。その瞬間、彼女はあの時の映像が蘇る。


黒いGが桜の愛しい人が乗る深緑のGを貫く。小さな爆発が起きて、バラバラに崩れていく瞬間。
「・・・漆黒・・・鷹・・・り・・・うぁ」
それが彼の最期の言葉だった。


「いやあぁぁぁぁ!!!!!」
桜は目の前のその光景と、あの時の光景が重なって見えた。思わず桜は声を上げてしまった。涙が溢れ、体が動かない。“漆黒の鷹”に仇を果たすべく今まで生きてきた。桜は完全には立ち直っていない。まだ、時々あの光景を夢で見て苦しめられていた。同じような光景に桜は完全に動けなくなってしまう。
「・・・何だ?」
「どうしたのですか?」
レッシュは何かを感じ取った。言葉では言い表せない感覚。何かが呼んでいる気がした。ブレードを白いGから引き抜き、その方向を見る。そこには立っているのがやっとの状態の桜色のGが居た。さっき、レッシュが吹き飛ばしたGだった。そして、優美の機体を攻撃しようとしていたG。
「アイツは、優美を・・・!」
レッシュは、機体を一気に加速させ白いGに突っ込んだ。白いGはためらいもせずエネルギー弾を放った。が、赤いGは少しだけ動いて、それを回避した。絶対に当たる距離。至近距離からの発砲だったが、“F”はそれを避けた。直後、白いGが真っ二つに割れる。
「・・・馬鹿な」
白いGは爆発を起こし、残骸へと変わった。レッド・バードは桜色のGへと向き直る。ブレードを背中に仕舞い込み、“シルバー・アロー”を構えた。そして、ロックする。桜のコクピットに「ロック警告」の赤いランプが灯る。
「・・・っ」
桜は動かなかった。動けないのが正しい表現なのかもしれない。ロック警告のサイレンさえも耳に入らなかった。
「・・・」
レッシュが引き金を引こうとした瞬間、ミコから通信が入る。
「隊長!今すぐ、シアトル奥エリアに居る地上機動艦を破壊してください。味方の損傷が増大しています!」
「わかった」
レッシュは桜色のGを撃たなかった。今のそのGにはその時のような殺気を感じることが出来なかった。そっと、“シルバー・アロー”を降ろし、レッド・バードは飛び上がった。
「あれか・・・」
戦闘機形態に変形した、レッド・バードは地上機動艦のブリッジに狙いを定めた。ブリッジのクルーたちがざわめく。
「な!?・・・“漆黒の鷹”・・・赤い“漆黒の鷹”です!!」
「ハワイで確認されたものです!“深紅の鷹”と反政府軍(ヤツラ)からの通信傍受からです!」
「そんなことはどうでもいい!!迎撃!!」
だが、遅かった。すでに、“シルバー・アロー”が発射された後だった。
普段よりも強いエネルギーの流れが、地上機動艦のブリッジを貫いた。その威力に味方の傭兵も世界政府軍の兵士たちも驚く。そこらへん戦艦のエネルギー砲をも遥かに凌ぐ威力だった。次々と誘爆を起こし、地上機動艦は爆発していった。世界政府軍たちも撤退を始める。
「終わった・・・」
レッシュはレイザーに向きを変えた。1秒でも早く、彼女に安心した顔を見せてあげたかった。



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