waiting for the changes

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58話:静かな時に


「はっ!」
ルティシアは敬礼して部屋に入った。セミロングの髪が揺れる。蒼い大きな瞳が特徴的な女性だった。いつものように月の総司令官が椅子に腰掛け、机に向かっている。いつもと違うのはその横に黒いスーツの男と金髪の軍服の男が立っていることだった。
「失礼します!」
総司令官が許可を出すとルティシアは机の前に近づき、もう一度敬礼した。総司令官は手をかざした。ルティシアは休めの体制を取った。そこまですると総指揮官はふっと笑った。同じようにルティシアも笑う。
「まあ、こんなもんだろ」
「一応客人の前ですよ」
2人の仲はルティシアが新米の頃の上官が総司令官だった。今も彼女は総司令官の直属部下でもある。普通なら許されないような上官への口の利き方も総司令官とルティシアの間では許されていた。2人のやり取りを見て男はため息をついた。
「この女は“使える”のか?」
その言葉にルティシアはムッとした。いきなりそんなことを言われるといい気分でいられる訳がない。
「ちょっとあなた?初対面の相手に対して失礼じゃないですか?」
「それがどうした?私は“使える”人間以外興味はない。・・・司令官、使えるかどうかと聞いているんだ」
ルティシアを軽くあしらうと総司令官に向き直って言った。ルティシアがスーツの男を睨みつけると、横に居た金髪の男と目があった。深い緑色の目。視線は真っ直ぐだが、悲しげな表情を浮かべているように見えた。総司令官は2人をなだめるように言った。
「まあまあ・・・。心配する必要は無い。彼女はルティシア・ブリッツェン。新造艦“クローディア”の艦長だ。戦績は申し分無い」
「ルティシア・ブリッツェン・・・。ほう・・・レッツオ・ブリッツェンの娘か・・・」
目を細めて言うスーツの男にルティシアの目の色が変わった。一歩前に出てスーツの男に詰め寄る。タバコの強いにおいがする。
「父を知っているの!?どこに居るか教えて!」
「何だ・・・」
詰め寄ったルティシアを五月蝿そうにスーツの男は一歩引いた。ルティシアが更に詰め寄ろうとした時、その金髪の男が割って入った。
「知ってるのね!?・・・どこに・・・きゃっ」
「やめろ」
その金髪の男がルティシアの手を取って間に入ってきた。強い力で腕を掴む。ルティシアの顔が歪む。
「きゃっ・・・痛っ」
「“2”(セカンド)下がれ」
「はい」
スーツの男が命令するとすぐに“2”(セカンド)と呼ばれた金髪の男はルティシアの手を離して一歩下がった。ルティシアは腕を押さえて男を睨んだ。スーツの男はひとつ咳をして言った。
「まあいい。この女に“2”を預ける。後は頼んだぞ」
「ああ」
そう言うとスーツの男は部屋を出て行こうとする。それをルティシアが呼び止めたがスーツの男は歩くのをやめなかった。
「ちょっと待って!・・・待ちなさいよ!」
「ルティシア!」
背後から声がしてルティシアはビクっとして立ち止まった。スーツの男が部屋から出て行った。ルティシアは唇を噛んで総司令官に向き直った。
「君の父親とはきっとどこか出会えるさ」
「はい・・・」
萎縮したルティシアが小さく呟いた。総司令官は“2”の傍に行くと彼の肩を叩いた。
「君は彼女の直属になる、いいな?」
「はい。ボスの直属を離れた今、彼女、ルティシア・ブリッツェンが私のボスです」
機械的とも取れる、起伏の無いしゃべり方にルティシアは衝撃を受けた。普通の人間ではないことがすぐに分かった。もしかすると・・・。
「“エデン・チルドレン”なの?」
「いえ、私は“2”です。ブリッツェン艦長」
すぐに“2”が反応する。ルティシアは、とりあえず手を差し出して握手を求めた。
「ルティシアでいいわ・・・えーっと」
「“2”です。・・・ルティシア艦長よろしくお願いします」
2人は握手を交わした。彼の手は冷たかった。それが彼の印象をより強くルティシアに植えつけた。総司令官は2人の肩をそれぞれ叩いた。
「2人ともよろしく頼むぞ」
「はいっ!」
「はい」
2人は同時に敬礼した。


翼が大部屋に戻ってくるとそこにはヴィラが1人だけ座っていた。翼が入ってくるのを見ると声を掛けようとしてやめた。翼はゆっくり近づいてヴィラの前に座った。少しの間沈黙が流れる。沈黙を破ったのは翼だった。
「悪かったな」
「え?」
「・・・俺も言い過ぎた。悪い」
その言葉を聞いてヴィラはほっとした。嫌われた訳ではない。ヴィラは小さく笑った。
「ううん」
ヴィラは小さく首を振った。翼は続ける。
「あいつを・・・あいつの人生を狂わしたのはその中身がどうあれ俺だからな」
「・・・でも」
「お前が納得できねぇのは分かる。・・・でもよ、俺とあいつ・・・それからレッシュでこの問題はなんとかしてぇ」
翼の言葉にヴィラは頷いた。やはり、賛成できない部分はあるのだが、翼が意思を伝えてくれたことが嬉しかった。今まで翼が自分の心のうちを話したことなどほとんど無かったからだ。
「うん、わかった。・・・でも、条件があるわ」
「条件?」
「私も協力させて。・・・さっきみたいな事にはならないから」
ヴィラは両手を握り締めると言った。自分が抑えられないこともあるのかもしれない。でも、じっとしているより、何とかしてやりたい。
「そうだな・・・考えておくぜ」
「絶対よ」
そう言って翼は笑った。


クローディアの格納庫でルティシアは“2”を紹介した。紹介しようにも彼は本名を教えてはくれなかった。頑なに“2”だと言い続けた。
「彼は“2”よ」
「はぁ?“セカンド”ですか?・・・コードネームですか?」
「ええ・・・そうらしいわね」
クルーの1人からでた疑問にルティシアは曖昧な返事しかできなかった。自分自身彼のことが良くわからない。後1人新しく着任が決まっている女性が居ると聞いているがまだ着てないのだろうか。その時、走ってくる女性の姿があった。
「申し訳ありません!遅くなりました!」
「もう、何かあったの?」
苦笑するルティシアに息を切らしながらその女性は言った。
「いえ・・・それが・・・」
「言ってみなさい。許してあげるから」
優しく言うルティシアにその女性は申し訳なさそうに呟くように言う。
「あの・・・Gの搬入に手間取って・・・」
「なら、最初からそう言えばいいのよ」
そう言って笑うルティシアにその女性は敬礼した。
「はっ!ありがとうございます!ビリシャ・ラウドリーであります!!」
「ルティシア・ブリッツェンよ。よろしく」
手を差し出してきたルティシアにビリシャは一旦躊躇したがその握手に答えた。
「ヨロシクね、ビリシャ」
「よろしくお願いします!ブリッツェン艦長!」
「もう・・・堅いわね。ルティシアでいいわよ。私は堅い名前で呼ばれるのはあんまり好きじゃないの」
髪の毛を触りながらルティシアは言った。ビリシャは思い出していた。前にも同じようなこと言っていた女性のことを。彼女に良く似ていると思う。そんなことをまた言われるということは、自分はやはり堅い人間なのだろうか。
「では・・・ルティシア艦長、よろしくお願いします」
「あ、でもー、エライ人の前では“ブリッツェン艦長”って呼んでよね。怒られるから。他の時や、プライベートの時は好きに呼んでいいから」
付け足すように言って笑うルティシアにビリシャは苦笑いをした。
確かに似ている。
明るく裏表が無い感じだ。
部下の信頼も厚そうだ。
「はぁ・・・」
周りに居たクルーやメンバーが次々に自己紹介してくる。
「俺はバーンズだ!ヨロシクな」
「僕は、キョウ。今度お食事でも・・・」
赤くなってあたふたするビリシャを見てルティシアはクスクスと笑った。ビリシャが彼らと打ち解けるのには時間は掛からないだろう。オペレーターの青年がルティシアの前に歩み出た。
「艦長、早速ですが、ミッションです」
「いきなりなの?・・・見せて」
ため息をつきながら、青年からミッション内容を書かれた紙を見た。それほど難しい作戦ではない。“クローディア”の初陣を勝利で飾ることができそうだ。ルティシアは手を叩いて声を張って皆に言った。その声が掛かると皆が一斉に整列しなおした。
「皆ちょっと、聞いて!ミッションよ」
「はっ!」
全員が整列したことでビリシャはやっと解放される。それよりも彼女の一声でここまで統率されたことに驚いた。ビリシャも一緒に並んで彼女の言葉に注目した。
「これから月を出て衛星軌道上、第5ステーションエリアの反政府組織を叩くわ。各員、発進準備体制に移行!・・・頼んだわよ!」
「はっ!!」
全員が綺麗に敬礼すると一気にそれぞれも持ち場へ散って行った。ビリシャは1人残ってルティシアに聞いた。どこに行けばいいのか分からなかった。
「あの・・・私は・・・」
「そうね、パイロットスーツに着替えて自機で待機してて」
「了解っ!」
ビリシャは敬礼すると駆け足で行ってしまった。格納庫に残ったのはルティシアと“2”だけになった。
「あなたは・・・」
「私はあなたとこの艦を守る為に存在します。ご命令を」
ルティシアの言葉を遮り“2”が存在意義を述べた。その声が悲しく聞こえてルティシアの胸を締め付けた。
「そんなこと言わないで」
「私の存在意義はボスに仕える事です。その為には命も・・・」
「ダメよ!!」
今度は“2”の言葉をルティシアが遮った。首を横に振るたびにセミロングの髪が大きく揺れる。
「そんなのダメ!・・・私の部隊に居る以上、死ぬのは許さないから」
「・・・」
「ダメよ。ミッションはちゃんとクリアして、生きて帰ってくるの。難しいことかもしれないけど・・・大切なことなの。死んだら何もかも無くなるわ」
黙った“2”を見つめてルティシアは訴えかけた。その目は少し潤んで見える。だが、“2”は表情一つ変えない。
「・・・了解した」
「絶対よ」
そう言うとルティシアは歩き出した。そのすぐ後ろを“2”が一緒に歩いて行った。


「ん~♪」
「あ、優美っち何かいいことあった?」
クルスは鼻歌交じりでコンピューターに向かっている優美に声を掛けた。胸元の大きく開いた白いホルターネックのへそ出しのキャミに、クラッシュデニムのミニ。いつもと同じ格好をしている。クルスは英語がプリントされた薄い黄色の七分袖丈のTシャツにローライズのデニム。顔を上げた優美を見て思わずクルスが声を上げた。
「かわいいー!!」
「へっ?」
優美は普段赤いヘアピンで髪を留めている以外は何もつけていないのだが、その時の優美は後ろ髪をツインテールのように両サイドをゴムでまとめていた。毛先が外側にぴょこっと跳ねた優美のくせっ毛がクルスのツボにハマったようだ。クルスはにやつきながら優美の横に座るとその留めた髪を突っついた。
「な、何?」
「私こっちの優美っちのほうが好きかも・・・」
クルスは「ふふ・・・」と笑いながら優美の髪の毛を触る。横で笑われながら髪の毛を触られるのはあまりイヤではないが、はっきり言って今のクルスは不気味に見える。
「クルス・・・」
「なぁーに?」
「ちょっと気持ち悪い」
「え・・・」
その一言が相当ショックだったのかクルスは優美の留められた髪を掴んだまま固まった。優美も自分が言ってしまったことに少し後悔して、小さく謝った。
「あ・・・ごめん」
「あー・・・まあ、そうかも」
頭を掻きながらクルスは舌を出した。掴んでいた手を離すとその手の置き所に困って色々探して結局2人が座るソファーの背もたれに手を置いた。とりあえず、言っておきたい。
「その髪型、かわいいよ。金髪だから余計そう見えるのかも」
「そう?・・・ありがとっ」
少し照れながら優美は右側の髪を掻き上げて耳に掛けた。そして、ちらりとこちらを見た優美のその透き通った深い緑色の瞳をクルスは見た。
「それより・・・やっぱ綺麗な目」
「ふふっ」
優美が笑うとクルスは不思議そうな顔をした。いつもなら赤くなって「な、何!?」とか言うのが優美のはずだ。いつもと違う反応にクルスは拍子抜けした。
「あれ・・・“な、何!?”とか言わないの?」
クルスの優美のモノマネが面白かったのか優美はおなかを抱えて笑い出した。逆にクルスが赤くなった。
「あははっ」
「な、何よ!」
優美はソファーにサンダルを脱いで両足を上げて膝を抱えるように座り膝の上に顎を乗せ、クルスの方を向いて笑う。
「何か調子狂うよ」
「レッシュに目が綺麗だ、って褒められたから」
「へぇー・・・良かったじゃん」
嬉しそうに話す優美を見てクルスは太ももの上に肘をついて手の上に顎を乗せた。2人して笑って顔を見合わせた。と、クルスはコンピューターの画面が気になった。何やらグラフや数字が流れている。クルスは画面を覗き込んで優美に聞いた。
「何見てるの?」
「シルバリアスのデータ」
「しるばりあす??」
クルスは首を傾げた。聞いた事の無い単語だ。それはそうと“イクシーダー”の件もある。クルスは人差し指を立てて前後に振った。
「あ、そだ。“イクシーダー”のこと教えてよ」
「えーっとね・・・」
優美は右足をソファーから降ろして左足を抱えたままキーボードを片手で弾いた。そこにシルバリアスのシルエットが表示された。優美はモニターの向きをクルスのほうに向けると、それを見てクルスは驚いた。
「これ・・・格納庫にあった真っ白なG」
「うん、これがシルバリアス・・・私の新しい力」
「へぇ・・・カッコイイね」
クルスはモニターに表示されたシルバリアスを見た。回転しながら全体像が表示されている。途中で周りを覆っていたマントのようなものが展開し、大きな翼になった。更にその翼が分裂していく。クルスの頭ではスゴイことは分かったが、どうスゴイのかは、いまいちわからない。優美がこちらを向いて説明を始めた。
「この機体はね・・・」
「待って」
優美の言葉を遮ってクルスは“待った”のジェスチャーをした。多分説明されても分からない。クルスにはその自信があった。
「話、長くなる?」
「・・・うん」
「と、とにかくスゴイってことでいいでしょ。ね?」
慌てて言うクルスに優美は苦笑した。クルスも難しい話は分からない。訳の分からない何かが出てきそうな呪文のような文字が並ぶのを見ただけで頭が痛くなってくる。まだ“イクシーダー”の方が分かるかもしれない。
「・・・“イクシーダー”を教えて?」
「クルス・・・逃げちゃダメだよ」
「い、いいから!そっちを教えてよー」
優美の肩を掴んで揺さぶるクルスに優美は笑いながら答えた。
「あのね、“イクシーダー”って言うのはね。Gを乗る様になって、機械と接することが多くなって生まれた力なの。主にGに自分の意思を伝えることができる能力のことだよ」
「ほぉぉー」
「ここまではいい?」
優美の確認にクルスは頷いた。
「うんうん」
「でね、“エデン・チルドレン”と“イクシーダー”の力はほとんど変わらない。“エデン・チルドレン”を“イクシーダー”と呼ぶ場合もあるの。つまり、能力者の総称が“イクシーダー”なのよ」
「あ・・・うん」
クルスは頭が混乱してきた。つまり、“エデン・チルドレン”が“イクシーダー”で、“イクシーダー”が“エデン・チルドレン”・・・ということだろうか。混乱が増す。
「じゃあ、優美っちは・・・“エデン・チルドレン”じゃない、だけど・・・“イクシーダー”・・・でも、“エデン・チルドレン”は“イクシーダー”・・・あれ?優美っちは・・・」
「あははっ、ごめんね。もっと簡単に言えばよかったかな」
笑う優美にクルスは申し話なさそうな顔をした。クルスは頭を掻きながら言った。
「多分、私がバカだからだと思う」
「うーん、そうだね・・・。じゃあ、“イクシーダー”と“エデン・チルドレン”を分けて考えて。2つは全くの別物!・・・いい?」
優美は両手を使って左手が“イクシーダー”、右手が“エデン・チルドレン”を表して分けるようにジェスチャーで伝えた。クルスは頷く。
「うん」
「えーっとね、“力”を人工的に与えられたのが“エデン・チルドレン”、自然に身に付けたのが“イクシーダー”・・・これでどう?」
「なんとなく分かるけど・・・単語が難しい」
まだ頭を抱えるクルスに優美も頭を抱え始めた。それほど難しいことを言ってるとは思えない。唸って苦肉の説明を優美は始めた。
「・・・私とレッシュの力は基本的に同じなの。与えられ方が違うだけ。レッシュは生まれる時に、私は生まれてから、外的要因でこの“力”を手に入れた。」
そこまで説明してやっとクルスの顔が晴れた。
「なるほど!・・・要は隊長と優美っちの“力”は似てるものだけど、“力”の手に入れ方が違うってこと?それが呼び方の違いってこと?」
外的要因の方がよっぽど難しい言葉のように聞こえるが、クルスが理解したので良しとしとおこう。
「そうそう!・・・はぁ」
ため息をついた優美にクルスが苦笑した。相当苦労したのが良く分かる。ふと、クルスは優美が言っていた単語のことを聞いた。
「ねぇねぇ、優美っちの“力”の手に入れ方、って外的要因って言ったけど・・・」
「あ、それはね・・・」
そう言うと優美はまた右足をソファーに上げるとまた両膝を抱えた。
「外的要因って言うのはね、臨死体験、強い意思とか、他の“イクシーダー”との接触とかがある・・・って、エリーゼさんが言ってた」
「ふーん・・・じゃあ、優美っちの場合は、隊長のせいで“イクシーダー”になっちゃったの?」
クルスの鋭い突っ込みに驚いた表情を見せたが優美ははにかんで頷いた。
「・・・うん」
「やっぱり?やったじゃん!」
露出した優美の背中をぺちぺち叩いてクルスは笑った。
「これでレッシュの苦しみを分かち合うことができるから。同じ力を手に入れたから、もっと知ることができる・・・私はそう考えてるの」
「そうだねー。隊長にもっと近づけるじゃん」
「うん」
と、笑顔を見せる優美だが、クルスは優美の格好のことが気になってしょうがなかった。レッシュが優美の服を物色したいたこともあったが、彼女の服のバリエーションには疑問が残る。それに、今の格好もそうだ。この部屋の中は暖かいが外はまだ寒い。胸元もはだけて、腕も足も丸出し、背中も全開の優美を見てクルスは苦笑する。しかも、この間ツーリングに行ったときも夕方普通にしていても肌寒いのにバイクに乗ると余計寒さを感じてしまうはずだ。
「優美っち・・・ツーリング行った時、マジで寒くなかったの??」
「え?うん、全然平気」
優美はすぐに答えた。クルスの質問は続く。
「ねぇねぇ・・・冬場どんな格好してんの?」
クルスはソファーに横にもたれ掛かると優美に聞いた。優美は顔をこちらに向ける。
「うーん・・・この上にファーのついたパーカーとか・・・靴はロングブーツかな?」
「・・・え?」
優美はキャミの胸元を引っ張って優美は笑った。それを聞いてクルスは絶句する。いくらなんでも冗談だろう。
「・・・マジ?」
「ホントよ!・・・ねぇ、レッシュ?」
その時優美が振り返るとそこにはレッシュが居た。脅かそうと近づいたが、バレてしまったのため、悔しそうな顔をしていた。
「ちっ、見つかった」
「わっ!隊長!?・・・なんで優美っちわかったの?」
振り返ったクルスはそこにレッシュが居たことに驚いた。レッシュの存在に気づいていた優美も優美だが。クルスはぐーで優美を小突いた。
「優美っち分かってたの?」
「えへへ、まあ・・・ね」
「何だよ・・・分かってたのか」
レッシュも優美もお互い不思議な感覚を感じていた。お互いの存在が良く分かるようになた。“イクシーダー”の力なのだろうか、それでも、お互いがお互いを感じていられるのは嬉しかった。レッシュは悔しそうに言う。
「じゃあ、もう脅かして面白い反応見れないんだな」
「面白い反応?」
クルスが首を傾げるとレッシュは悪戯っぽく笑って、優美とクルスの間に背もたれのところに近づいた。
「変な声上げたりな」
「変な声って・・・」
赤くなる優美を見てクルスが笑う。レッシュは優美のツインテールに結んだ髪を見て、その右側を触った。耳の傍でそっと呟く。
「似合ってるよ」
「ありがと」
優美は照れながら右側の髪を掻きあげた。そんな2人のやり取りを見ながら「あっ」と思い出したようにクルスはレッシュに聞いた。
「隊長、優美っちって冬、どんな格好してるんですか?」
「んー、そうだな。俺が良く見るのは・・・」
ちらりと優美を見てレッシュは言った。
「こんな格好の上にパーカー着てるかな?あと、素足で黒いブーツ履いてる。俺も良く寒くないなって思うんだよ」
「え・・・マジなんだ」
クルスは優美の顔を見て苦笑した。優美が笑顔でこっちを見ている。クルスはため息をついた。個性としては強いが、自分が注目を集める容姿をしていることを自覚してもらいたい、そうクルスは思っていた。
「やっぱ、優美っちって変わってるね」
「え?そう?」
「でも、私はそこが好きかな?飾らないっていうかー、真っ直ぐっていうか・・・今まで私の周りには居なかったタイプだしね」
そう言うとクルスはソファーから立ち上がった。こうなったら自分が邪魔者だ。2人きりで過ごしてもらいたい。
「もう、行っちゃうの?」
「私もやることあるしねー。またあとでね」
クルスは手をひらひらさせるとそのままその部屋を出て行った。すぐに部屋の出口にクルスは隠れるとそっと中を覗いた。優美の横にレッシュが座っている。ぴったり引っ付くとまでは行かないが、かなり近い距離で2人が腰掛けていた。楽しそうに何か話している。何を話しているか分からないが、優美の笑顔がそれを物語っていた。まあ、今日のところはこれでいいだろう。
「ま、いっか」
クルスは鼻歌を歌いながら廊下を歩いていった。





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