ターシャ・テューダーに憧れて

ターシャ・テューダーに憧れて

生きていく頁11





小学校の時、私は本を読むのが好きだった。。

物語の中にどっぷり浸かって、
主人公になりきって、泣いたり笑ったりしていた。。

国語の時間が楽しみで、楽しみで。。
教科書の音読の時、私に当ててくれないかしらと、
先生の顔をじぃっとみつめたりしていた。。

だってもう、教科書のこの文章は、すっかり暗記していて
父さんにもおばあちゃんにも、何度も読んで聞かせて誉められたりしたもの。。
みんなの前でも恥ずかしくない。。
ただ、演じるように読みたいのだもの。。

でも、隣の席の清君は、そんな時ひたすら下を向いていた。。

そしてなぜか先生は、決まって清君に、読むように言った。。


清君は、一文字一文字、噛み締めるように読むのだけれど、
つまりながら、途中で止まりながらだから
それは、文章として聞こえなかった。。

「もう、いいわ。」
いつものように、先生のこの冷たい一言で、清君はやっと椅子に座る。。

清君が隣で、赤い顔をして疲れてしまうのを見て、
「何ですらすら読めんのだろ。。」と思っていると、

先生が止めを刺すように清君に言う。。

「ちゃんと練習せんとあかんよ。何べんも言うたろ。」

私はとたんに、もう手を上げる気もなくしてしまう。。
先生なのに、意地悪するんだと、無性に悲しかった。。
でも、心の隅で、
「清君、ちゃんと練習しなきゃ。。あんなに言われてくやしくないんかな。。」
そんなことを思っていた。。

そんなことが何度もあって、
やっぱり、その日も清君は、真っ赤な顔で、やっとこさ座った。。

「お前ちょっとは読んでこいよ。。」
男の子が言った。。

女の子がくすっと笑った。。

ざわざわッと、教室がざわめいた。。

そして、私も笑った。。


清君が泣いていた。。
制服の袖で、真っ赤になったほっぺたをこすって、
余計に、赤くなった。。。

先生がピシャっと言った。。

「ハイハイ、ほっといて、次の人読んで。。」








今、難読症(ディスレクシア)という言葉をよく聞きます。
俳優のトムクルーズさんや、黒柳徹子さん、それから、片岡鶴太郎さん、
岡本太郎さんや、あのエジソンも。。。
有名な方々が、カミングアウトされていて、
左脳が文字ができたのは、人間の誕生の歴史からみると、ほんの短いものなので、認識が追いつかないのだということ。。。

立体的な図形に対して、驚異的な才能が発揮されたり、
絵画や彫刻の、すばらしい芸術家が多い
など、次第にあきらかにされてきました。。






清君は、今どこでどうしているのだろう。。
どうぞ、認められて、幸せで居てください。。


清君、貴方は、スポーツが得意で、
逆上がりができずに泣きべそかいている私を
全然笑ったりしなかった。。。


あの日笑った私を、私は時々許せずに、
ふいに涙ぐんだりしています。。。










Last updated 2008.11.18 19:55:31
コメント(4) | コメントを書く タグ:難読症


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