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高校生向けのお薦めの学習参考書をシリーズで。第1段 → https://miyajuku.com/miyajuku_blog/20190314-2/第2弾 → https://miyajuku.com/miyajuku_blog/20190312/ 今日は第3弾です。英語の読解演習にお薦めなテキスト「合格へ導く英語長文Rise 読解演習1.基礎編(高2~センター試験基礎レベル)」です。https://amzn.to/2U1iMqJ設問数は12問とそれほど多くはありません。1問も3ページから4ページとボリューミーではないので、取り組みやすいでしょう。この本は解説が充実しています。設問の解説だけでなく、問題文の全文和訳、大事な文の構文解釈と、ひとりで学習していくにも問題ないものになっています。難易度はセンター試験の入門レベルです。単語数は大問1題で3百数十語が中心です。これから英語長文の学習をスタートさせる高2生、英語がちょっと不得手な高3生には最適なレベルです。このシリーズには「構文解釈」というのもあり、そちらは英文を読み解く力を身につけさせるものになっています。この「読解演習」は、文法、語法、文脈把握、文構造把握、内容把握など、英文読解の総合演習になっていて、総合的な力をつけていくスタートの教材です。春の学習で大事なことは、先ずは一冊の問題集をしっかりと終わらせることです。このテキストであれば、自分の力でしっかりと一冊を終わらせることができるはずです。そうした意味でもお薦めの一冊ですよ(^^)
2019.04.09
私立中学受験の新小5クラス。少しずつ中学受験のための勉強に慣れていってもらえるように負荷は少なくし、徐々に増やしていくようにしていってます。宿題のチェックなどまだまだのところはありますが、今のところみんな順調にすべり出しています。中学受験の場合、偏差値で55あたりを境にして「2科or4科選択の受験校」と「4科が必ず必要な受験校」が分かれています。「2科or4科選択の受験校」の多くは、定員の5割〜8割を「算、国の2科」で合格者を決めて、残りを4科目受験者から決める、という学校が多いです。いずれにしても、選択の幅を狭めないように小5の段階では4科で学習を進めておくことをお勧めします。理科と社会は覚えることが多くて大変なので、という方も多いです。確かに4科にすると学習量が多くなってしまいます。ただ、最近の理科や社会の出題は、一問一答的な出題は影を潜めて思考力を問う問題が多くなっています。理科や社会の学習をそうした観点から進めていくことは、国語や算数の力を伸ばすことにもつながります。そのためには、きちんとした指導者につくことが寛容です。ひたすらにドリル演習をさせる学習法ではなく、じっくりと「どうして?」「なんで?」と学習を進めていく場を持つことです。新小5のクラスも学習をはじめて1ヶ月ちょっとが経ったので、そろそろ学習の負荷を高めていきます。今週からは感じの学習を、来週からは課題図書の要約をはじめていきます。3月〜4月の課題図書は以下の本です。https://www.amazon.co.jp/gp/product/4167669080/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4167669080&linkCode=as2&tag=miyajuku-22&linkId=b73b6a89c0f4444d3739dacf83d28be0重松清は中学受験の国語の出題では定番です。なかでもこの「小学5年生」は短い作品が集まったものです。ひとつひとつは20分〜30分もあれば読めるものです。「もこちん」なんて小編は読書が好きでない男の子にもうけるおもしろい作品です。どの作品も「えっ、ここで終わっちゃうの」という印象がありますが、その分、続きを考えてみようか、といった想像をかき立てることができます。なお、重松清の作品は、読み聞かせにも最適かと思います。読書嫌いのお子さんがいましたら、途中まで読み聞かせをし、続きは自分で読んでみようか、という作戦がとれますよ(^_-)
2019.03.07
私立中学受験をする生徒たちには課題図書があって、その内容(あらすじ)をノートにまとめてくる課題を日常的に課しています。この2ヶ月ほどの課題図書は以下の通りです。西の魔女が死んだ 梨木香歩著 https://amzn.to/2C4fSw6十数年も前の作品ですが、今でも輝きを失っていません。映画化もされています。主題は「生と死」というもの。とはいっても、小難しいことが書かれるのではなく、丁寧に思春期の子どもたちにわかるストーリーになっています。それでいて、最後の場面は涙なくしてはいられないものです。多感な心の持ち主である主人公まいと、西の魔女であるまいのおばあちゃんから魔女の手ほどきを受ける場面は、中学入試の問題としてもよくとりあげられます。そんなこと以上に、小学校高学年から中学生にはぜひとも読んで欲しい一冊です。冷たい夜に 江國香織著 https://amzn.to/2A0cnWg短編の集まりです。いわゆる児童文学ではなく、大学入試センター試験などにも題材としてつかわれることのあるものです。今年の小6生は女の子ばかりなので、こうの江國さんの短編小説集もおもしろく読んでくれるのではないかな、と選んだものです。どの作品もストレートにテーマを描くのではなく、日常の何気ない出来事の延長が坦々と進んでいきます。それでも、読んだ後に「あれっ」と残るものがあり。それはひとりひとり違ったものになるような作品群です。わたしは『ねぎを刻む』が好きです。おおきくなる日 佐川光晴著 https://amzn.to/2zZWbUJこれも連作単編ですが、主人公が保育園を卒園して中学を卒業するまでの、家族とその周辺の人々の物語になっています。もちろん子どもが読んでもおもしろいですが、お父さん、お母さんが読めば、子育てのヒントがあちこちにあると思います。とてもすてきな家族の物語です。たとえば、お母さんが、朝のベランダで子どものジャージを干す場面など、ほんとうに日常の一瞬ですが、そこに深い心の動きが描かれ、それはそのまま世のお母さんの心にもストレートにひびくはずです。日常の何気ないひとこま。その瞬間がどれだけ大事な時間なのか、そんなことをこの3冊は教えてくれます。中学受験の読解のチカラを伸ばすためでもありますが、こうした本を通して、小5生、小6生には「豊かな時間」ってなんだろう、ということに気づいてくれるとうれしいですね。
2018.10.09
午前中は高3生の現代国語の授業。テキストは「高校生のための現代思想ベーシック ちくま評論入門 改訂版 (高校生のための現代文アンソロジー・シリーズ)」今日の題材は「ボランティアとは何か 中井久夫」と「つながりとぬくもりと 鷲田修介」「ボランティアとは何か」では、ボランティアの倫理的根拠を「惻隠の情」にあるとし、そのもとでボランティアは「熱く」動いていく。それは熱くなってはいけない行政の立場と補い合うものだ、と論を進める。「つながりとぬくもりと」では、現代社会における「つながっていたい」という思いについて、それを都市生活の様態から考察。いまの子どもたちには遮断の認識が深いことを見逃してはいけないと結論づけていく。ひとつひとつの題材はそれほど長くないが、現代の思想家・学者の著書からのアンソロジーになっている。大学入試の現代国語の対策としては、まずは、入試に出題される文章に「頭を慣れさせる」必要がある。「慣れる」ということは、一度はそこに書かれていることについて「考えたことがある」という頭をつくることだ。今日の授業であつかった文書でいうと、現代社会における「個」と「集団」の関係について、というテーマに対して、少なくとも一度は向き合ってみたことがあるかどうか、ということになる。それは「コンテクスト」と「テキスト」の関係をきちんと考えることと同じだ。「テキスト」と「コンテクスト」は相互に支え合っている。ただ、本当であればこのテキストのレベルで終わらせてはいけない。ここから気になった著者の本に興味をつなげていって欲しい。とはいっても、入試までには他の教科の学習もあるので無理かもしれない。大学生になってから、思索の深みをおっていってくれればありがたい。大人の方にもお薦めの一冊です。2015年が初版なのでちょっと古くはなっているが、現代を考えるのに様々な切り口の評論が掲載されている。1,000円で「今」を読み解くことができる一冊です。
2018.07.25
日曜日に「羊と鋼の森」を観てきました。原作は宮下奈都作で2016年の本屋大賞受賞作です。コミックにもなっています。ひと言で言ってしまうと、ピアノ調律師を目指す山崎賢人演じる青年が、さまざまな人々と交流していく物語、ということになります。ドラマチックなことはなにも起こりませんが、北海道の美しい四季の移ろいを背景に、ピアノの名曲がドラマを引き立て、そんな中で若者たちが未来に向かっていきます。澄んだ映像と音楽が心を洗ってくれます。ぜひとも中高生に観てもらいたいです。劇中で「才能って好きでいつづけることじゃないでしょうか」という言葉があります。夢を追いかけても誰もがそれをつかめるわけではありません。それどころか、つかめない人の方が多いわけです。でも、好きでいつづけることはできます。それを中高生には気づいて欲しいな、と思いますし、そんな「好き」なものを見つけても欲しいです。夢を見つけるって意味でも、この映画では「夢が突然に降ってくる」場面からはじまるんですよね。確かにそんな経験って誰もが持てるものではないのでしょうが、夢ってそうしたものなんだ、ということ。今、夢を持てなくて困っていても、いつかこんな風に「夢が降ってくる」こともあるんだ、と思って欲しいです。音の良い映画館で、ゆったりと楽しんで、家に帰ってからじっくりと振り返ってみて下さい。
2018.06.19
10月の「読む蔵」の作品紹介です。中でも、受講1年目の「キッドナップツアー/角田光代作」、受講2年目の「卒業ホームラン/重松清作」は、入試問題に必出の作品ですし、とても読みやすく作品世界に入りやすいので、読書習慣をつけるきっかけに最適な作品でしょう。また、プレ読む蔵の「リボン/草野たき作」と「卵と小麦粉それからマーマレード」、受講2年目の「博士の愛した数式/小川洋子作」も、人間関係に様々な角度から切り込んだ作品になっています。こっちも良い読書体験のきっかけになる作品です。テレビのスイッチを切り、スマホの電源を切り、たまには文字を追ってみませんか?一方的に流されてくるテレビやインターネットの情報と違い、本を読むことは自分と対話する時間になります。本の中の登場人物を追いかけていくと、いつの間にか自分が主人公のかたわらにいて、そうじゃないよ、よかったね、などと声をかけていたりします。一冊の本があなたをかえるかもしれませんよ(^_-)「読む蔵」の作品紹介pdf版は ここ をクリックしてください。
2017.09.26
夏休みです。ある程度まとまった時間がとれます。4月以来、読み終えていない「読む蔵」の作品をどんどん読んでいってしまいましょう。また、小学生については「語彙トレ」という冊子を使っての「語彙力アップ」もおこなっていきます。文脈の中で「語彙」を理解することが大切なことはいうまでもありません。8月の「読む蔵」の作品紹介です。pdfでのダウンロードは ↓ をhttps://miyajuku.com/wp-content/uploads/2017/07/book_08.pdf一冊だけ紹介しておきます。「自分の木」の下で 大江健三郎この本は「若者の自立」を主題にした本です。「なぜ子供は学校にいかなければならないか」「なぜ人を殺してはいけないのだろう」「自殺してはいけないわけ」などといった問いかけに対して大江さんが答えてくれます。いろいろな意味で「これから」が見えなくなっている今、大江さんがいうように「ひとりひとりが真の意味で自立」することが求められています。この本は大人が読んでも十分に「生きるためのチカラ」を得ることができる内容で、そういった意味では夏休みに親子でよむのに最適なものです。また、子育てにお悩みの方、どんな子どもに育って欲しいのかといったことについてもたくさんのヒントのある本です。お父さん、お母さんも、ぜひともAmazonあたりでポチッとしてみてください。文庫本もあります。わたしも20代前後の時に大江さんの本をたくさん読みました。「飼育」「死者の奢り」・・ 久しぶりに読み返してみます。「読む蔵」をきっかけとして読書体験を広げられたら良いですね。
2017.07.22
今週の「アエラ http://publications.asahi.com/ecs/12.shtml」は、中高生のお子さんをお持ちの保護者の方には、是非とも読んでいただきたい内容です。「18歳の世論」という特集では、今時の高校生たちが、何を思い、将来をどう見据えているのか、アエラが調査した若者たちの政治観がまとめられています。女子の安倍政権支持率が33.6%に対して、男子の支持率が54.6%、という数字もびっくりですが、それ以上にその原因の分析が「なるほど」というものでした。ネットの利用のしかたが男女で違うのですね。女子はネットを友だちとのコミュニュケーションなと対人関係のツールとして使用するのに対して、男子は情報収集のツールとして使う。結果、男子の方がネット上の言論の影響を受けやすい。今時のネットは、どちらかというと保守的な発言が大きく、男子はそこを通じて保守化している、というのです。神奈川県の桐光学園が取り組む、「大学訪問授業」の取り組みも紹介されていて、そこで話しあわれたことから、就職、国防、日本の行く末を、高校生がどう考えているかも紹介されています。姜尚中 さんと高校生たちの討論もぜひ読んでいただきたい。「2週間先なんて決められない」という高校生の実態調査も、身近に高校生のこどもさんをお持ちの保護者の方でさえ、えっ、という部分がたくさんあると思います。将来結婚したい、と考えている高校生は、全体の79.5%、しかも、男子に限ると75%になり、4人に1人は結婚したくないと答えています。また、結婚後に、夫は外で働き、妻は主婦業に専念、といった「性別役割分担」に、女子の64%、男子の61%が反対。尊敬する人は親という答えが圧倒的に多く、そのほとんどが母親をあげている。これだけでもいろんなことが見えてきますよね。さらに「転載はこうして生まれる」という特集も、親としては是非とも読んでおきたいものでしょう。今週号の「アエラ」はお薦めです。
2015.12.07
今日は昭和の日で祭日ですが、来週も火曜日が祝日なので平常の授業をおこないます。最新刊でちょっとお薦めの一冊です。アイスプラネット 椎名誠著 講談社 1,296円中2の光村版の国語の教科書に一昨年から掲載されている「アイスプラネット」という短編があります。とってもおもしろい話で、私も国語の教科書の中で一番好きな話です。その教科書のお話しの続編がこの「アイスプラネット」という本です。ぼくという主人公は母親の弟である「ぐうちゃん」の話を聞くのが大好き。ぐうちゃんは定職を持たない居候。あるとき、ぐうちゃんは、世界で一番長い蛇の話、3メートルはあるナマズの話、そしてアイスプラネットの話をした。ぼくはそんなほら話についていけず、ぐうちゃんをさけるようになる。ぐうちゃんは旅費が貯まったからと旅に出る。そして、そのぐうちゃんから手紙と写真が届く・・・教科書に載っているのはざっとこんな感じのお話し。何が良いかって、魅力的な大人のぐうちゃんがとっても良いんです。すげぇおとな。かっこよいおとな。自分の知らないとんでもないことをいっぱい見て、しっている大人。そんな大人って今のこどもたちの周りにはいなくなってしまいました。アイスプラネットなんてものを知っているぐうちゃん。いいですよね。その続編です。ゼッタイに読んで欲しいです。中2生はちょうど学校で学んでいる頃ですし、中3生は昨年読んだばかりです。あのぐうちゃんの旅の続きが読めるんですよ。著者の椎名さんが後書きで言っていますが、「やわらか頭」「不思議頭」になるきっかけがたくさん転がっている本です。そして、何よりも、たくさんのことを知ること、勉強すること、知識を得ることで、世の中はずっと楽しくなるんだってことを教えてくれます。
2014.04.29
昨晩はちょっと呑みすぎました本を一冊紹介しておきます。「子どもの難問」 哲学の先生、教えてください! 野矢茂樹編著 中央公論新書 1,300円はじめに、の中にこう書かれている。「私たちの多くは、たえず前に進むことを強いられている。そして哲学は、私たちを立ち止まらせようとする。たとえば人は野菜を作ったり、書類を書いたり・・・なぜ人は働くのか、とは問わない。どうすれば売れ行きを伸ばすことができるかは考えても、働くとはどういうことか、と考え込んだりしないだろう。・・・前に進め、という圧力から身を離し、哲学が開く世界に入り込む。さあ、立ち止まれ! という声が聞こえてくるだろう。」目次からすこし抜粋してみる。ぼくはいつ大人になるの? / 死んだらどうなるの? / 勉強しなくちゃいけないの? / 頭がいいとか悪いとかってどういうこと? / 好きになるってどんなこと? / 過去はどこに行っちゃったの? / なぜ生きているんだろう? / 悪いことってなに? / 自分らしいってどんなことだろう? / 神様っているのかなぁ? / 幸せってなんだろう? / どれも、根本的な難問をむき出しのまま裸で突きつけられている。そんな難問に、今の時代の哲学者たちが答えている。たとえば「なぜ生きているのだろう?」に対しては次のように答えられている。「ひとはときに『なぜいきるのだうか』とつぶやく。だが、そう問いかけたとき、実はもう答えをうっすらと感じているにちがいない。生きていることに理由なんかありはしない、と。生きることへの否定的な思いにとらわれ、それでも生を肯定的に捉えたいという希望が、この問いかけの形で現れてくる。ならば、だいじなのは、この問いに正面から答えることではなく、こう問いかけずにはおれない私たちの生そのものを、じっくりと見つめることだ。」How To 本ばかりが本屋に並べられている今、こうした「足を止めて考えてみる」きっかけになる本を一家に一冊置いてみてはどうでしょうか。読みふける、というよりも、ふと思いついたときに手に取ってみてページをめくってみる。その時々で新しい発見があるようなそんな本です。また、こどもたちには、じっくりと論理を追いかけて著者の言いたいことを理解するのに良い教本にもなると思います。たまには時間を止めてみましょう。
2013.11.11
NHKの朝ドラ「あまちゃん」を初回から欠かさず見ています。今週はいよいよ3.11の場面です。今朝の15分はいつもと違って緊張したものになっていました。ドラマの中で大吉さんが運転する北三陸鉄道がトンネルの中で地震にあいます。この話は この本 に書かれていたものと同じでした。さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 (バンチコミックス) 吉本 浩二 (著) ドラマの中の「北三陸鉄道」は実際の「三陸鉄道」をモデルにしています。夏の旅行でその三陸鉄道に乗った際、久慈駅で妻がみつけた本でした。アマゾンでもあつかっているようです。あの3.11を「三陸鉄道」という視点からみることができます。お薦めです。今朝の15分を被災地の方たちはどのように見たのでしょうか。ドラマとして3.11を正面からあつかったのは「あまちゃん」が初めてかもしれません。宮藤官九郎さんの脚本がどうやって3.11を昇華させ、前を向かせてくれるのか注目しています。もちろんクドカン流の「笑い」の中での展開なのでしょうが。昨日は防災の日でもありました。関東大震災から90年とのこと。防災についての意識を高めるきっかけにしたいですね。各小中学校でも防災についての訓練がいろいろとおこなわれているようです。家庭でも、いざというときの話は共通理解としておくべきでしょう。
2013.09.02
小学生高学年の課題図書2冊目です。「永遠に捨てない服が着たい 太陽の写真家とこどもたちのエコ革命/今関信子著」帯に書かれた文です。「わたしたちが大人になるまで、地球は待ってくれるの? 温暖化、環境破壊が進む地球のために、自分たちに、何ができるのだろう。エコにとりくむこどもたちの願いから、『永遠に捨てない服』、リサイクルしつづけることが出来る体操服が生まれた。全国で捨てられるこどもたちの体操服を積み上げると、宇宙まで届く! もし、ゴミになってしまう体操服を生き返らせることが出来たら? 環境学習の先生になった一人のカメラマンと、こどもたちのノンフィクション」Do You KYOTO? という言い方があるのを皆さんは知っていますか? KYOTO という固有名詞を「環境に良いことをする」といった意味での動詞として使う表現です。京都議定書(平成9年に国立京都国際会館で開催されたCOP3で採択された議定書)にちなんで、平成19年にCOP3の10周年記念行事で京都に来たドイツのメルケル首相が使い始めたともいいます。そんな京都の町のこどもたちが一人のカメラマンと環境問題に取り組んでいくノンフィクションです。この本に描かれたこどもたちは本当にすごいです。頭が下がります。また、そのこどもたちを取り巻くオトナたちもすごい。「かまど金制度」というのが京都には昔から合って、地域のこどもたちのために地域のオトナたち(町衆というのではね)がこどもたちのために動くという伝統があるのです。環境問題というとなんだか難しい、といった思いを持ちがちですが、この本では科学的な数字もわかりやすく説明してあります。たとえば、ある小学校の昇降口に置かれたドッチボール8個。体操服のリサイクルに取り組んだ場合に減らせる二酸化炭素の量です。小学生は1人あたりドッチボール8個分。中学生なら30個分。京都市全体で体操服のリサイクルに取り組むと、小学生ならドッチボール84,702個分。中学生なら301,980個分。こんな感じでこどもたちが想像しやすい置きかえがされています。文体が教科書のようなのもこどもたちには読みやすいかもしれません。後書きには3.11と福島第一原発の自己についての作者の「熱い思い」も書かれています。こうした時です。こどもたちが環境問題を考える良いきっかけとなる一冊になるはずです。
2013.07.19
中学生の課題図書2冊目は「ぼくが宇宙人をさがす理由/鳴沢真也著」です。本の帯には「夢をあきらめない!!」とあり「宇宙少年だったぼく。ひきこもりやつまづきの数々。そんなぼくが世界15カ国の科学者たちのリーダーになって“宇宙人さがし”の大作戦にとりくむ」とあります。内容は、宇宙人=地球外知的生命がいることを前提に、宇宙人が送信している電波をアンテナで受信観測して宇宙人の存在を確認しようとするSETI(地球外知的生命探査/Search for Extra-Terrestrial Intelligence)について書かれたものです。私もそうした取り組みがあることを初めて知りました。夢のある話です。全体は3つの部分で構成されています。1つは人類の進化と宇宙の成り立ちについて。宇宙のこともていねいに説明がされています。2つは作者の生い立ちについて。作者は何度かの挫折を経験して天文学者になっています。不登校、引きこもり。そんな中でも宇宙に対する夢を追い続けて努力をします。3つめはSETIについて。科学の最先端の研究者の日常が描かれていて、中学生たちにも良い刺激になると思います。おもしろかったです。私でさえ、天体望遠鏡をのぞいて星空を観察したくなりました。また作者の生い立ちを知ってからのひと言。『「夢はきっとかなう」とは言えない、でも「夢をあきらめないで」』は心に響きました。また、世界中の研究者たちをまとめあげていく大変さ。仕事というのは結局は調整能力なんだなぁ、なんてことも教えてくれます。感想文を書くには登り口がいくつもある本です。宇宙のことから入っていっても良いですし、作者の生い立ちから入っていって「夢」について書くことも出来ます。また、SETIについてふれながら科学研究という柱で書いていくことも出来るでしょう。もちろん表題の「ぼくが宇宙人をさがす理由」について書いていくこともできます。この本も是非とも大人にも読んでもらいたい一冊です。今年の課題図書は当たり年かもしれません。どれもおもしろいです。
2013.07.17
小学生高学年の課題図書は「オムレツ屋にようこそ/西村友里作」です。一気に読めます。おもしろいです。長い文章を読むのが不得手な生徒でもどんどん読み進められるのではないでしょうか。大人が読んでもおもしろいです。もちろん、児童書ですから、展開がむりやりだったりします。そうしたところにつっこみを入れなければ楽しめます。正直、電車の中で読んでいた私は、ちょっと目頭が熱くなって周囲が気になった場面もありました。良い言葉もたくさんちりばめられています。「たしかに一番上はいい。でも、一番下もいい。そして五段目の景色もいい。どこにだってすばらしい景色はあるんだ。それをどうやって見るかが大切なんだ。」「どちらかがわるいんじゃなくて、どっちの中学校に行ってもいいんだ。大切なのは、ぼくがそこでどうするか」「家族ってさ、だれかがだれかのためにがまんするもんじゃないよね」こうした言葉を小学生たちがどうとらえるのか楽しみです。本の帯に書かれているあらすじです。『尚子はしばらくの間「オムレツ屋」でくらすことになった。そこはブログでも評判の、伯父が家族で営む洋食屋さんだ。母さんのつごうにふりまわされる尚子にとって、あたたかな食事や家族の団らんは、はじめて味わう理想の家庭だった。ふたごの和也、敏也とも意気投合した尚子はついに、母さんに、思いきった宣言をする。そして、「じぶんの宝物」を見つけ出していく。』テンポの良さが「今」っぽい物語です。ちょうど、NHKの朝ドラみたいな感じです。登場人物もそれぞれのキャラが立っていて、やりすぎかな、という部分もありますが、物語として読めば良いでしょう。尚子も和也、敏也の双子も魅力的です。良い子過ぎる嫌いもありますが、こどもたちは自分を投影しやすいのではないでしょうか。3.11以後、物語るということに作家たちは苦労しているようです。あの宮崎駿さんでさえ、ファンタジーはもう書けない、とおっしゃっています。その宮崎駿さんの最新作「風立ちぬ」ももうすぐ封切りです。私は勝手に「風立ちぬ」のテーマを「つながること」だと思っています。この「オムレツ屋にようこそ」のテーマも「つながるってどんなこと」ではないでしょうか。いずれにしてもおもしろい作品です。たくさんの小学生に読んでもらいたいです。生徒たちがどの場面に共感し、何を感じ、どんな文章を書いていくのか。楽しみな作品です。
2013.07.13
今年も夏の講習では、小中学生全員に読書感想文の指導をします。読書感想文は、読書(インプット)と感想文(アウトプット)の両方をこどもたちに経験させることが可能です。本を自由に選ばせてもよいのですが、バラバラの作品を指導するよりもある程度まとまった作品を指導する方が効果的なので、毎年の課題図書から小中学生2冊ずつを選んで読んでもらうようにしています。まずは中学生の課題図書から「チャーシューの月/村中季衣作」です。話は、「あけぼの園」という児童養護施設に入ってきた6歳の明希と、同室になった春から中学生になる美香を中心にすすみます。この設定に、暗い話じゃないの、とか、家族に囲まれた私には関係ない世界だし、といった先入観をいだく生徒もいるかもしれません。そうした思いは読んでいくうちに見事に裏切られます。設定は児童養護施設ですが、あなたとあなたを愛する人との関係をもう一度考え直させるお話しです。同時に、大人に対して冷めた視線で鋭いつっこみをする美香にあなたはきっと共感するところが多いでしょう。おかれた立場は違っても、美香の視線はあなたの視線でもあるのです。「あけぼの園」のこどもたちはみんな心に傷を負っています。父親からの虐待、親が死んでしまった、親に捨てられた等々。そして、学校でいじめられ、捨てられた親なのにそれを慕う気持ちを抑えられなかったり、と毎日を切なく暮らしています。でも、みんな一所懸命に生きています。希望を失いつつも、明日を少しずつ探し始めていきます。クライマックスの部分で、伸也という男の子がたくさんの墓石に向かって言います。「似たようなんが、いっぱいあんなぁ。みんなおんなじような、つまんない人生をおくってきたんだろーな」この場面は児童文学らしくない迫力がありました。例えば3.11で家族を失った人たち。消したくない記憶。しかし、いつまでもその記憶が足かせになって前に進めない。「あけぼの園」のこどもたちも同じです。そんな時、人はどうすれば良いのか。この作品には明確な答えは示されていないかもしれません。最後まで読んでも「ほんわかした温かい気持ち」にもつつまれないかもしれません。でも、美香や伸也と同世代の中学生に是非とも読んでもらいたい一冊です。そして考えて欲しいです。また、大人の方にも読んでいただきたい一冊です。子どもの貧困が社会問題化しています。生まれた環境で未来を失ってしまう子どもがいること。そのために私たち大人が何が出来るのかということ。そんなことを考えさせられる一冊です。大人が読んでも十分に考えさせられる本になっています。子供さんといっしょに読んでみてください。そして、一緒にいろんなことを話してみてください。つながること、つながり続けようとすること、それがどんな意味を持っているかについいて。本当にお薦めの一冊です。
2013.07.12
来月のお知らせと一緒に、いつものように塾生全員に「サムワン」を同封しました。中高校生向けの科学雑誌ですが、お父さん、お母さんにも是非とも読んで欲しい雑誌です。夏号は「くすりの告白」という特集です。「どうして、1日に3回に分けて飲むんだろう。どうして、痛いところにだけに効くんだろう。」そんな薬の疑問に答えてくれています。私がおもしろいと思った記事は、「蚊に刺されても痛くない仕組み」という記事でした。蚊の針を参考に痛くない注射針が開発されたとのこと。おもしろいので是非読んでみてください。実は、この本はiphone、ipadを持っていれば、200円ほどの費用はかかりますが、Lindoc https://lindoc.jp からダウンロードして読むことも出来ます。バックナンバーもありますので、科学に興味のある方は是非とも試してみてください。明日は「教育シンポジウム」です。先日の「作文コンクール」の表彰式もおこなわれます。楽しみです。
2013.06.22
前にも紹介したことがある本です。親子で読む 大学図鑑 2014ホンネでの大学紹介というか、パンフなどではわからない大学の実態についてズバリ切り込んでいる。中身が数年前からほとんど変わっていないのが不満だが、今時の大学について知るには良い本かと思う。関東私大は以下のようにグループ分けしてある。Aグループ 早稲田 慶応 上智 ICU 東京理科Bグループ 明治 立教 青山 中央 学習院 法政Cグループ 成蹊 成城 明治学院 獨協 國學院 武蔵 芝浦工大 東京農業 北里Dグループ 日大 東洋 駒澤 専修 神奈川 玉川 文教Eグルーブ 大東文化 東海 亜細亜 帝京 国士舘 拓殖 東京経済 和光 立正 関東学院 桜美林たとえば、Eグループのある大学についてはこんな風に書かれている。・・・簡潔に言うと、△△大生は覇気がない。高校時代にイメージする華やかな「キャンパスライフ」と、現実の△△大ライフとのギャップに、入学直後は愕然とする。・・大学全体に漂うあきらめムードがじわじわと感染してくる。ネガティブなことばかりは言いたくないが、この大学で充実した大学生活を送るには、強い自立心が必要とされるだろう。・・・強いコネのない学生の就職状況は厳しい。Eグループの中でも下層にある。文系学生なら、無名な会社でも入れればラッキーという現況。それでも学生の危機意識はうすい。・・・こんな大学に子どもをいれたい親はいない。しかし、こうした実態について書かれている本は皆無だし、大学のパンフや説明会からは知るよしもない。ここに書かれていることほすべてそのまま真に受ける必要はないが、私が知っている範囲と照らし合わせてもそこそこ実態をあらわしている。子供さんが大学を選ぶ際の参考にしてみてください。もちろんmiyajukuには常備してあるので、高校生には課題図書として読ませています。大学もそこに集まる学生次第です。覇気のない学生が集う大学は、大学側がいかに努力をしようにも変わりようがない。オープンキャンパスでもその大学の空気を感じることは出来ます。足を運んで、自分の肌で「空気」を感じることが大事です。そして、大学の偏差値とそこに集う学生の覇気はほぼ比例関係だと言うことも事実です。
2013.05.27
このblogのアクセス数が、この一週間ずっと1.300アクセスを越えている。高校入試についての情報を得ようと検索サイトから来られる方がたくさんいらっしゃるのだろう。ただ、いつも言っているように、このblogは、あくまでもmiyajukuの塾生、保護者の方を向いて書いているものです。確かに、もう四半世紀も神奈川県で学習塾を営んでいるので、いろんな団体の役員などもさせていただき、おつき合いも広がり、私の所に情報が入って来やすいのは確かです。そんな意味で、受験生、及び受験生をお持ちの保護者の方に少しでもお役に立つのであれば幸いです。中高生の定期試験対策は続いていますが、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります。家に帰ってからも撮りだめてあったテレビ番組、といっても「とんび」だけですが、を少しずつ見る余裕が出てきています。昨日は第5話を見ました。良いですねぇ。こどもたちには是非とも見てもらいたい番組です。原作も2回ほど読みましたが、2回目でも読んでいて涙が出てきてしまいます。通勤の電車の中では読めない本です第5話は2つのエピソードを柱とした回でしたが、その柱の一つが「暴力」ということでした。中学生になったアキラが野球部の練習で後輩たちにケツバットをしている様子を見た父のヤスがアキラをなぐってしまう、という展開です。「後輩は先輩に対して反撃ができないだろ。相手が反撃できない関係の中でチカラをふるうのは卑怯だ」と父は息子に言います。この第5話を全国の部活の顧問で体罰に関わった人たちに見て欲しいですね。教師と生徒。ましてや部活動の中での顧問と選手。これはもう圧倒的な上下関係なわけで、ゼッタイに生徒側が文句を言える立場にないわけです。その関係の中での体罰は暴力以外の何ものでもないわけです。ましてや、Olympicの柔道代表選手に対しての体罰は、完全に常軌を逸しているわけで、徹底的に検証されるべきだと思っています。Olympicへの出場を担保にとっての体罰指導など犯罪と断罪しても良いはずです。重松清の著作は私立中学受験を中心に数多くが国語の問題として出題されます。私も初めて「とんび」に接したのもとある中学の入試問題としてでした。親子とは、といったことをテーマにしながら、笑いあり、涙ありと、ゼッタイにお薦めの作品です。小学生から大人までみんな楽しめる作品です。是非とも原作を手にとって親子で読んで見て下さい。とくにお父さんと息子さんであれば、一緒に読み終わって話をすると、親子の関係がぐっと縮まるのではないでしょうか。野球をやっている男の子。飛△や△也や△樹や□□はお父さんといっしょに読んでみましょう角川文庫 660円 重松清著TBSドラマ 「トンビ」 毎週日曜夜9時から
2013.02.20
めったにドラマなど見ないのですが、13日の日曜夜にスタートしたTBS系列の「とんび」というドラマを録画してあったのを昨晩見ました。重松清の原作でベストセラーにもなっているし、NHKでもドラマ化されたので皆さんもご存じでしょう。お薦めです。泣けますね。内野聖陽も常盤貴子も、わきを固める柄本明や麻生祐未もみんな良かったです。柄本明が母を亡くした旭に母がどこに行ったかを風呂の中で話す場面なんか泣かずにいられませんでした。撮影セットも良かった。初回の視聴率も17%だったとのこと。今の時代にこうしたドラマが受け入れられるのは、みんなが「家族の絆」を求めていることと、それがなかなか実現していないことの裏返しのような気がしています。重松清の原作本。もう一度読み返すことにしました。毎日の生活に追われてしまってちょっと疲れている方。是非とも読んでみてください。気持ちがすっきりとします。明日への生きるチカラがわいてきます。私立中学入試や高校入試にも良く出題される作品です。そうした意味で小中学生にもお薦めの一冊ですが、そんなこととは関係なく、「家族」とか「親子」とかを考えるとってもよいきっかけになる一冊です。ドラマも是非見て下さい。家族で泣きましょう(笑)
2013.01.15
日本経済新聞社が出しているducare(デュケレ)という雑誌があります。今月号の大特集が「2025年、わが子は幸せ? 就職はどうなる? 結婚はできる?」というものです。先日も書きましたが、親の目はどうしても「今の子供の状況」にむきがちです。日々の子育ての中では、今日の漢字のテストの得点、今日の兄弟げんか、今日の学校の先生からの連絡・・・ そんな「今」への対応に追われがちです。でも、本当に考えなければいけないのは、子供の10年後のことなのではないでしょうか。先行きが不透明でわかりにくくなっているからこそ、大人の責任として、10年後の状況から導き出した「今」の指導をこどもたちに与えていくべきだと思うのです。2025年の日本。人口はゆるやかに減少し、経済も縮小均衡。それに対して世界の人口は増え続けていて、世界規模のM&Aがつぎつぎにおき、グローバル企業が続々と誕生。英語はあらゆる日本企業で必要とされ、社内公用語は英語or中国語。といっても、英語を非母語とする人との会話が増えるので、流ちょうな英語よりも簡単で伝わりやすい英語が求められる。正社員はゆるやかに減少し、契約社員や派遣労働者の数は変わらない代わりに、フリーランスや自営業が増える。中でもフリーランスはかなり増え、専門性のあるミニジョブを掛け持ちするような働き方がうまれる。平均初婚年齢は男性で33歳、女性は31歳に上がる。生涯未婚率も男性で30パーセント、女性で20パーセントに。専業主婦は珍しい存在となり、女性が男性と同程度の収入を得て活躍する場面が増える。こんな未来を雑誌の中では想像しています。そして、そうした未来に備えて今から何をすべきか。そんなヒントも書かれています。子育て世代のお父さん、お母さん、読んでみてはどうでしょう。いろんなヒントを得られると思います。
2012.12.12
「12人の漁師たちを優秀なマーケターにする方法」 ジョー・ヴィタリー著 林田レジリ浩文訳 フォレスト出版 定価1,800円+税Amazonでチラ見できます → http://www.amazon.co.jp/12人の漁師たちを優秀なマーケターにする方法-ジョー・ヴィタリー/dp/4894515237私は書店ではこうした本が並んでいるコーナーに近寄ることはない。話題コーナーに並ぶ本を買おう、という気が全くないからだ。ましてやマーケティングなどという文字にはほぼ拒否反応を示してしまう。そんな私がこの本を手に取ったのは、訳者が私のいとこの旦那様だったからだ。来月に披露パーティがある。そんな親戚が書いた本だから一冊ぐらいは読むべきだろう、といった気持ちから読んでみた。最初はつらかった。こうした英文がもとになっている文体は苦手だからだ。古典の影印本は問題なく読めるのだが(笑) それでも、読み進めるうちに慣れてきた。慣れてきたらおもしろくなった。つぎつぎにいろんなことに興味がわいてきた。「1920年代のアメリカっておもしろそうだ」「 つぎのチラシにはこの手法を使ってみるか」「なるほどあの広告はこうした意図をもってつくっていたんだ」などと本にひきこまれていった。本の中身を簡単にまとめてしまうと「アメリカの伝説の広告業の祖、ブルース・バートンについて徹底的にしらべ、それについて7つの秘密としてまとめあげている」となる。私はもちろんブルース・バートンなる人物を知らなかった。1920年代にこんな人物がいたということに驚かされた。しかも、その考えが古いどころか、今の時代の中でも十分に輝きを放つことにもびっくりだ。ものを売っている人にはいろんな意味で啓示を与えてくれると本だと思う。そもそも「社会に生きている」ということは、「何かを売っている」ということと同義だ。仕事とは、形があるもの、ないものをふくめて何かを売っていくということだ。その「売る」という行為を昇華させてくれる本になっている。そうした意味で、「ものの売り方を学ぶハウトゥー本」ではなく、「生き方を教えてくれる本」にもなっている。最後まで読んで、やっぱり気に入ったのは冒頭の部分だった。「ビジネスは私たちに多くのものを教えてくれる。それはリスクをとって夢に向かうこと、恐怖を乗り越えて感情をコントロールすること、人間関係において隔たることしに苦手な人たちとも付き合うことを私たちに迫るからだ。・・・真剣に仕事に向き合うことが出来れば、それ以上の学びはないからだ。・・・仕事こそが最高のグルだといっていい。」こうしたジャンルの本に目を向けさせていただけて感謝です。全くといって良いほど読まない自己啓発本なども、まずはこの訳者のものから手始めに読んでいこうかと思っている。人との出会いはどんな場合でも自分の新しい扉を開いてくれる可能性を秘めている。あらためてそんな思いも持った。今回の本との出会い、そして、新しい人とのつながりにも感謝です
2012.09.27
昨日に続いてお薦めの本です。「天地明察」 沖方丁 著昨年の本屋大賞(全国の本屋さんに“おもしろい”と選ばれた本)です。映画にもなって現在公開中です。とにかくあきさせません。500ページをこえる長編ですが、先を読みたくなってしかたがない、といった展開です。一気に読めてしまいます。主人公は渋川春海(安井算哲)という江戸時代初期の人物です。将軍に碁をもって仕える家に生まれます。碁の道を進みながら、山崎闇斎に垂加神道を学び、数学や暦学などをその道の先達に学んでいきます。数学者の関孝和との交流は小説の中でも大きな役割を果たしています。その他にも、会津藩主保科正之、水戸藩主徳川光圀なども物語の中で重要な存在になっています。読みどころは満載です。数学が好きならば、江戸時代の数学者たちの様子を知るために読むと良いでしょう。「直角三角形に内接する2円の直径を問う問題」など、小説中にも何題かの問題が登場してきます。それらの問題に江戸時代の算学者になったつもりで挑戦するのもおもしろいです。ちなみに私も解いてみましたが、きちんと正しい答えでした。また、歴史好きにはたまらない本になっています。渋川春海、山崎闇斎、関孝和・・ 江戸時代前半の教科書でしか知らなかった人物たちが生き生きと動き回るわけです。小説を読んだ後で映画を見るとさらに楽しみが増すはずです。さらに、理科好きには天文学、暦学の話がワクワクとさせるはずでしょう。オトナはもちろんですが、中・高生にも是非とも読んでもらいたい一冊です。想像の海を泳げることが請け合いの一冊になっています。なお、映画もおもしろかったです。先に映画を観てから原作を読んでも良いと思います。映画はかなりエンターテイメントに作ってありますから。岡田准一も宮崎あおいも良い演技でした。
2012.09.21
ちょっと前のNHKの「ETV特集」という番組で「吉田隆子を知っていますか」という放送があった。吉田隆子という女性は、戦争の時代を「新しい音楽」を目指して生きた人だ。この本は、そんな吉田隆子の一生を、最近になって見つかった隆子本人の日記も交えて紹介している。また、生誕100周年を記念しておこなわれたコンサートの音楽CDや楽譜も付属している。男性中心の音楽界にあって女性として世界に通じる音楽を探し続ける。また、劇作家の久保栄と結婚してからは、築地小劇場を中心に民衆に訴える音楽を創り出す。戦争の色が濃くなる中、軍部ににらまれて何度も特高に捕まり拘留される。そんな拘留の中で肺を病み、長い闘病生活を送る。さらに夫の久保も特高に連れて行かれる・・・中高生の女の子に読んで欲しい一冊です。こんな女性がいたんだ。女性解放と反戦の意志をまげずに、しかも新しい日本の音楽を創造し続ける。強い意志と行動力を持ち、なおかつ人生を謳歌して「かっこよく」生きた。まさしく「時代を闊歩」し「恋」し「創造」した女性。こうした先人たちの上に今の私たちの毎日があること。それを忘れたくないですね。同時に「きな臭いにおい」があちこちから漂ってきている今こそ、吉田隆子のような生き方をもう一度見直すべきかと思います。私も「リベラル」ということの意味をこの本を読むことでもう一度考え直しました。
2012.09.20
「走れマイワラ ジザヴィエ=ローランプティ作 浜江貴絵訳」夏の読書感想文小学校高学年の課題図書です。帯に書かれているあらすじです。ひたすら走る母を心配しながら、たびたび心臓発作におそわれる娘シサンダ。不思議な力をもつ祖母、変わり者のおじさん。そんな家族を見守る学校や村の人たち。人と人のきずながあたたかい感動の物語。フランスで異国をテーマにした優秀作品に贈られる「アメリゴ・ヴェスプッチ賞」受賞作を翻訳。まず、翻訳とは思えないほど日本語が自然です。原作が良いのか、訳者の腕が良いのかはわかりませんが、思わず引きこまれてしまう作品世界をしっかりとした日本語で描いています。それだけでもお薦めの本です。登場人物は誰をとっても個性的です。しかも「笑い」がその底に流れています。大変な状況の中でも一人一人が「どうにかなるさ」といったおおらかさの中に、しっかりと前を向いている真剣さがうかがえます。そしてとってもあたたかい人と人とのつながり。いろんな意味で「気持ちの良い」読後感が味わえるかと思います。一気に読めてしまう作品ですが、ひとつひとつの場面や会話をじっくりと味わいながら読んでみたいです。2度読んでも良いかもしれません。1度目は一気に、2度目はじっくりと。感想文を書くにあたっては、「心の森」とはちがって、ストーリーを感想の中心にすえると良いでしょう。また、シサンダでもマスワラでも、その心の動きに焦点をあてて書いても良いでしょう。エピソードを選び出しやすいので書きやすいかと思います。
2012.07.19
小学校高学年の課題図書「心の森 / 小手鞠 るい (著), 酒井 駒子 (イラスト) 」についてです。この本を読んで感想文を書く場合のアドバイスです。表紙絵がきれいです。帯には「答えはすべて、森の中に。せつなくてピュアな物語」と書いてあります。さらに帯に書いてあるあらすじをそのまま書き出すと、「父の転勤で、少年はアメリカの小学校に転校する。少年の名は響(ひびき)。英語がわからず、友達もいないので、最初はとまどいながらも、新たな生活がはじまる。ある日、家の裏庭に続く森で、響きは不思議な少女に出会う。少女は何も話さず、笑顔で見つめるだけ。名前をたずねると、一輪の花をを渡す。それが彼女の名前、ディジー。その後も、響はディジーに会うようになり、森の動物たちとふれあいながら、彼女の優しさに心ひかれていく。だが、ディジーには、思いもよらない秘密があった・・・・。」さらっと読んでしまえるお話です。というか、ストーリー展開をおうお話しではないと思います。全編が「詩」だと思って読んでみてはどうでしょうか。著者の筆は何を描いても質感があります。私が好きだった場面は、響がディジーとふたりでオレンジ色のイモリたちをたすける場面です。言葉が出ないディジーと響の会話にも注目です。この本の感想文を書くのであれば、あらすじやストーリー展開からではなく、一つの場面、一つの会話からアプローチしていってはどうでしょうか。最後の場面は衝撃的かもしれません。そうなるかな、きっとそうなってしまうんだろうな、とわかっていても、読むものにはショックでしょう。この部分を高学年の小学生たちがどうとらえるのか、この本で感想文を書くのだとすれば、指導者としてはさわりたくない部分です。ひとりひとりのこどもたちの心に響いたものを「そのまま」引き出してあげたいです。著者は『「心の中」に木を植えて、水をやり、育て、心の中に豊かさを創造すれば、自分も地球も幸せになれる』と言っています。さて、こどもたちはそんな著者の意図した方向に進んでくれるのでしょうか。もう一度書いておきます。この本は「詩」だと思います。物語の展開で感想文を書くのはちょっと難しいかもしれません。それでも、著者の力のこもった文章力は読むものの心にきっと響くものがあるはずです。そう思って感想文を書くようにしてみましょう。
2012.07.17
日曜日の保護者会でもお薦めし、その時に十数人の方にはすでに買っていただいた本です。淺野中学・高等学校の校長先生だった淡路雅夫氏による著書です。こう書くと私立中学受験をするような男の子の育て方が書いてあるのか、と思われるかもしれませんがそんなことはありません。ふつうの男の子の子育てに関して「なるほどなぁ」と素直に肯ける内容になっています。以下、帯に書いてある紹介文と目次です。無口になったり、反抗的になったり、変な格好をしてみたり…。小さいころはかわいかったのに、なんだか最近ちょっと違うみたい。ケータイやゲームとの付き合い方、お金のことから問題行動まで、中高一貫男子校で40年間教鞭をとった著者が、思春期の男の子のお母さんからの質問に答えます。第1章 「うちの子、このままでいいのかしら?」と心配になったら(幼稚園児みたいな子どもは成長しているのか?;忘れ物が多い、提出物が遅い… ほか)第2章 「うちの子、前と違うみたい」と思ったら(これって反抗期なのでしょうか?;バランスのとれた食は、生活の基本 ほか)第3章 学校・勉強とどうやってつきあうか(「勉強しなさい」と言う前に;不得意科目は能力の問題ばかりではない ほか)第4章 今、大きな問題をかかえて困っているお母さんに(どんな家庭でも「不登校」の子どもが出ることはある;普通の家庭の子どもも非行の問題を起こす ほか)第5章 子どもを育てるのは、何のため?(「子どもの面倒を見る」とはどういうことか?;子どもを危険から遠ざけようとするよりも… ほか)親の役割は、子供が安心して自己と葛藤できる環境づくりをしてあげること、といった著者の考え方がどのページからも読み取れます。つねにそばに置いておきふとしたきっかけに読むことで、いろんな気づきが出てくるような本です。miyajukuのお母様で本を入手したい方はメールください。1冊500円でおわけできます。あと10冊ほど在庫があります。
2012.07.11
直木賞を受賞した作品です。本屋さんで表紙絵が気になっていた本です。最近になって、表紙絵のデザインをしたのが高校の同級生だということを知りました。何だかかっこいいなぁ、という気持で買った本です。新刊本は文庫になってから読むことが多いので私としては珍しい購入です。さて、読み始めたら一気でした。こんなにおもしろい本は久しぶりです。エンターテイメントという言葉がぴったりの本でした。先が読みたいような、でも、あんまり早く読んでしまうともったいないような、そんな思いのまま2日間で読み切ってしまいました。読後感もさわやか。涙を誘うしかけもいっぱいあります。お薦めです内容は、下町の中小企業「佃製作所」に降りかかってくる様々な難局を、社長とその従業員たちが乗り切っていくドラマです。こう書くと単なる企業ドラマのように思われるかもしれませんが、それだけの小説ではありません。「会社とは?」「仕事とは?」という問いかけはもちろんのこと、「人が生きていくこととは?」「夢を追うこととは?」といった問いかけもされています。悪役が良いですね。本当に悪役に徹している。読みながら、自分が佃製作所の社員になったかのように、銀行や大企業の悪役たちにくってかかりたくなります。そのぐらい臨場感のある場面の連続です。いやぁ、みんなに読んでもらいたいなぁ。とくにこれから就活をする学生。今年就職したばかりの新入社員。(これって家のこどもたちですね)会社の中で夢を見失っているかた。会社と人生の狭間で悩んでいるかた。企業経営者・・・ やっぱりみんなですね(笑) 日本のモノ作りはこうした人たちによって支えられているんだなぁ、という気持ちがわき上がってきます。頑張ろうニッポン! そんな気持ちにさせてくれます。ほんとうにおもしろい本でした
2011.07.27
中学生の課題図書2冊目です。「夢をつなぐ 山崎直子の4088日 山崎直子著」 角川書店 1,400円山崎直子さんは2010年4月に、日本人女性として2人目の宇宙飛行士としてスペースシャトルにて宇宙に向かいました。その山崎さんの宇宙へのあこがれにはじまり、大学時代、宇宙飛行士の試験、訓練、結婚、出産と話は進んでいきます。中でも、宇宙飛行士の訓練の記述は中学生は興味を持つのではないでしょうか。「宇宙兄弟」という漫画がありますが、私はこの漫画で宇宙飛行士の訓練の内容を知っていました。当たり前でしょうが、山崎さんも同じような訓練をされていたのを本を通じて知ったわけです。例えば、T-38というアメリカ空軍の戦闘機パイロット養成用のジェット戦闘機での訓練があります。最初の2年間は100時間以上、3年目からは48時間以上もの訓練を宇宙飛行士たちはおこないます。何で宇宙飛行士がジェット戦闘機の訓練をするの? といった疑問もこの本を読んで解決しました。その他、砂漠での訓練、海での訓練などなど、宇宙飛行士になるには、頭脳だけでなく体力も必要なことがわかります。山崎さんはロシア語、英語に堪能です。でも、言葉の習得にはかなり苦労されたようで、そんな細かなことも書かれています。長い長い準備段階を経て、やっとスペースシャトルに搭乗できます。後半は2010年のミッションについて細かく書かれていきます。報道などではわからない、宇宙飛行士たちの仕事の内容も描かれています。たった15分の家族との通信。その中で、山崎さんは、娘さんの疑問に答える実験を国際宇宙ステーションでおこないます。私はこの場面が最も好きですね。とっても気持ちの良い場面でした。中学生にはあまり興味が持てないでしょうが、子育て、夫との軋轢、などなど、宇宙に飛び立つこととは、家族の支えなくしてなかったことがよく読み取れます。一人の人間が宇宙に飛び立つには、多くの人たちがそこにかかわっているかを知ることが出来ます。そんなたくさんの人たちの支えがあってこその宇宙ミッションなんですね。あと、山崎さんは自分のことを「ふつう」と言いますが、お茶大の附属高校を出て、東大いって宇宙工学を学んで、アメリカに留学してって、「ふつう」といえば「ふつう」ですが・・ ってことはあまり突っ込まないでおきましょう。スーパーウーマンであることは間違いないですから。「夢をつなぐ」という題名が何を意味しているのか。それは、この本を読んだ一人一人が読み取って欲しいですね。また、そのことをテーマにして、感想文が書けるはずです。女性と仕事、という観点で切り込むのも良いかもしれません。いずれにしても、読書感想文を書きやすい本であることは間違いないでしょう。
2011.07.16
中学生の課題図書の1冊目。「スピリットベアにふれた島 / Ben Mikaelsen (原著), 原田 勝 (翻訳) 」鈴木出版 1,680円読後の第一印象。とにかくおもしろかった。児童文学書をこれだけわくわくしながら読んだのは初めてかもしれない。それぐらい良い出会いの本でした。中学生の課題図書ですが、高校生やオトナにも是非とも読んでもらいたい一冊です。それと、このお話しが映画化されたらゼッタイに見に行きたいですね。アメリカの多くの学校で教材として利用されているとのこと。もしかすると、ですねさて、内容です。舞台はアメリカ合衆国。主人公のコール・マシューズは15歳の少年。裕福な家庭に育ちながら、両親との関係はうまくいかず、何度も警察沙汰をおこしている。ある日、同級生のピーターに後遺症が残るほどの暴力をふるってしまう。本来ならば刑務所送りになるところを、アメリカ先住民の血を引く保護観察官ガーヴィーの勧めで「サークル・ジャスティス」の手続きを受ける。そして、アラスカ州南東部の無人島に1年間追放の処分となる。無人島でピーターは自分と向き合うことになる。アラスカの厳しい自然。スピリットベアと呼ばれる巨大なシロクマ。クジラ、トリンギット族の古老エドウィン。物語の随所にアメリカ先住民の習俗も描かれていて、それらがピーターの魂をゆさぶる。「自分を変えたいのなら腹を決めろ」というガーヴィーの言葉。生命の本質。自然への敬意。コールは純粋に自分と向き合い、命の循環の中にある自分を自覚し、生きることの意味を知ります。人間は社会的な生き物です。他者との関係の中でしか自分を構築することが出来ません。でも、少年、少女時代。他者との距離感をはかりかねて悩むのです。「・・悪いやつなんていない。ただ、怖くなって悪いことをするだけだ。時には、何かを理解しようとして、互いに傷つけ合うこともある」作中でのコールの言葉です。もうひとつ。筆力がすごい。コールがスピリットベアと闘い、傷つき、死にそうになる場面。虫を食べ、ミミズを食べ、と命をつないでいきます。この場面は秀逸でした。いたるところに刺激があり、感想文を書くには「種」には事欠かないでしょう。
2011.07.15
小学生の課題図書2冊目は「こども電車 岡田潤」金の星社 1,300円です。無垢で素直な心を持つこどもしか乗れない「こども電車」。心に深い傷を負ったり、自分にうそをついて心に影を落としている子供は乗れなくなってしまう。こども電車の最終便は午後9時発。こどもたちの夢や希望を乗せて、お菓子の国やオシャレの国、虫の国や海の国へと今日もこどもたちを運んでいく。小さな時に海でおぼれかけた自分を助けようとした父親を亡くした遼。それ以来、青い電車には乗れなくなっていた。そんなトラウマを乗り越えようとする遼を親身になって手助けする慧。友情は遼の気持ちを解放する。前半は遼、慧、大樹の男の子三人の物語。クラスの中でいじめがあった。愛が玲奈にいじめられている。そのことがクラス全体に波紋を広げていく。さらにそのいじめにはもっと深いものが隠されていた。クラス委員の美咲。彼女にも誰にも言えなかった秘密が心の奥深くに隠されていたのだ。病気で入院し、命が危なくなった玲奈を助けるため、クラスのみんなでこども電車に乗ることが計画される。この本もお薦めです。ファンタジーのようでいて、現実世界のことがしっかりと書き込まれています。読書感想文を書くには、テーマとなりそうな「種」がたくさんちりばめられています。お話しを読むのが大好きな女の子はもちろんのこと、男の子でも自分のクラスでの出来事と引き比べながら読むことが出来るはずです。絵は水墨画家でもある作者が自ら描いたもの。これも心が癒されます。登場するキャラクターもそれぞれが生き生きとしていて、一気に読めてしまうと思いますよ。
2011.07.14
夏の講習では「とにかく作文講座」をおこなうと一昨日に書いた。小学生の課題図書の1冊目は、「クジラと海とぼく」文/水口 博也 絵/しろ アリス館 1400円。写真家で海洋ジャーナリストの作者が、海とクジラへの夢を追い続けていくお話し。子供の頃から海や海洋生物に興味を持ち、いろいろな工夫をして海と遊んでいた作者。その遊びはやがて職業として海や海洋生物と接する道を選択させていく。なかでもクジラに対するあこがれが強く、後半では作者がクジラと会話をする場面が中心になっている。正直、とっても良い本です。お薦めです。小学校高学年の課題図書ですが、中学生だけでなく、進路について考えている高校生にも是非とも読んでもらいたい本です。オトナが読んでも楽しめる本です。絵もいいですね。創造力をかきたてます。海やクジラに関心があるか、というよりも、夢を追い続けることに興味のある生徒はこの本を選んでみてはどうでしょう。作者の「あとがき」での言葉です。・・何かが達成できたとき、そこには偶然の運もあれば、友人やまわりの人たちの協力もある。しかし、それ以上に、自分自身が何をしたいか。それを思い続ける心こそが最大の原動力になることをこそ、もっともお伝えしたいことである。・・読後感がとっても気持ちの良い一冊でした。
2011.07.13
原子力発電に対する3月11日以前の私の認識は、地球温暖化を防ぐためにも、資源のない日本のエネルギー需要のためにも、必要不可欠なもの、といったレベルでしかなかった。当然、日本の技術力と、行政への信頼から、しっかりとした安全基準の下に原発は作られていて、多少の自然災害には十分に対処できると信じていた。このことは多くの人たちが共有していた考えだと思う。しかし、そうした考えが全くの幻想であったことがはっきりとしてきた。子供たちに教えている立場としては恥ずかしいことだが、このところ原子力発電についての本を読みあさっている。読めば読むほどわからないことが増えていく。同時に、原子力というものに対して、わかっていないことがあまりに多いこともわかってきた。専門家の誰もが、はっきりと放射性物質の影響を、素人にわかりやすく説明できていない。とういうよりも、専門家の人たち自身が、よくわかっていないようなのだ。そんな曖昧模糊としたものに依存してきた私たちの危うさがはっきりとしてくるばかりだ。原子力発電というのは、結局、原発から生まれる莫大な利権を失いたくない人たちが、「原発をなくすと困るのは皆さんですよ」と、私たちに思い込ませていたということのようだ。私も見事にだまされていたようだ。「原子力村」と表現した人がいる。経産省、東電などの電力会社、地元自治体、などなど、巨大な「原子力利権」に群がってきた人たちだ。その人たちは、そうした利権を失いたくない故に、「オール電化」などとひたすらに啓蒙活動を続けてきた。もうだまされちゃいけない。いろんな本を読んだが、中でももっともわかりやすかったのが写真の本だ。ムック本なので1,000円と廉価本だ。是非とも家庭に1冊買って、家族全員でまわし読みして欲しい。原子力発電所の仕組み、放射性物質とはどのようなものか、日常生活の中で注意することは、などなど、我々の素朴な疑問に答えてくれている唯一の本だと思う。洗濯物を干しても大丈夫なの? 被爆した人にさわるとうつるの? 雨をあびると被爆するの? そんなQ&Aを読むだけでも、放射線とは何なのかの理解の一助になるはず。足柄茶から基準をこえる放射線が出たとのこと。ということは、神奈川に住む私たちも、同じように放射線をあびている、ということ。子供たちを外で遊ばせて良いのか、その疑問に誰も答えてくれていない。私たち大人は良い。10年後にガンが発症しても寿命だった、で片づけるしかない。でも、子供たちはそうはいかない。10年後の子供たちにどれだけの影響があるのか、真剣に考えなればいけない。福島、茨城の子供たちはさらに危ない中で日常を過ごしている。花粉情報みたいに、放射線飛散情報、なんて情報をお天気番組でやったほうが良いんじゃないだろうか。放射線が神奈川県にいつ、どの程度飛んできているのか。実際に飛散しているのだから、隠したってしかたがない。情報はオープンにして欲しい。考えないことは、大人たちが子供たちへの責任を放棄していることになる。私は考えたい。私は無力だが、考えることは出来る。子供たちを教える立場として、私なりの所見を持つべきだと考えている。だから考え続けたい。
2011.05.14
「小中学生の生存率99.8%は奇跡じゃない」という記事が、WEDGE5月号に載っています。著作権があるので記事の内容を詳しくは書けませんが、「岩手県釜石市では、市内の小中学生、ほぼ全員が津波の被害を逃れた。多くの人たちは、これを『奇跡』と呼ぶ。しかし、そうではない。教育で子供たちが身につけた対応力が『想定外』を乗り越えさせた。」と紹介文には書かれている。文章を書いているのは、釜石市の小中学校で防災教育携わってきた群馬大学大学院教授の片田敏孝氏だ。例えばこんな話が書かれている。地震の当日、釜石東中学の生徒たちは、校内放送などが壊れた中、自主的に校庭を駆け抜け、「津波が来るぞぉ」と叫びながら避難所に指定されている場所に移動した。隣接する小学校の生徒たちも、ふだんの避難訓練のように中学生たちに続いた。ところが、避難所は崖が崩れている。来た道を振りかえると、もうもうと土煙を上げながら津波が近づいている。中学生たちは、さらに高台を目指す。その間、近くの幼稚園から逃げてきた園児たちと遭遇し、その手を引き、幼児が乗るベビーカーを押して高台を目指して事なきを得たという。こうした対応力は、片田氏と現場の先生方との協力による地道な教育の結果だったことが文章を読むと良くわかる。防災教育に本腰を入れる前は、生徒たちに「家で一人でいるときに地震が来たらどうしますか?」という問いに、多くの生徒たちは「お母さんに電話する」「親が帰ってくるまで家で待つ」といった回答だったという。そんな子供たちが、今回は地震時に自宅に一人でいた小学1年生でさえ、学校で教えられたとおりに避難所まで自力で非難して助かるまでになっていたという。こうした教育の結果、小学生1927人、中学生999人の命が助かり、生存率99.8%という結果につながったという。もうひとつエピソードが載っていた。ある中学生の女の子の話だ。彼女は自宅で一人でいるときに地震に遭遇した。第一波の地震をやり過ごしたあと、急いで自宅裏に住む高齢者の家に向かう。そのおばあさんを連れて逃げるのが自分の役目だと考えたのだ。おばあさんが逃げる準備をするのを待つ間に地震の第二波が来て、彼女はタンスの下敷きになって命を落としたのだという。これも「君たちは守られる側ではなく、守る側だ。自分よりも弱い立場にある小学生や高齢者を連れて逃げるんだ」という教えの実践だったのだろう。本当に尊い命が失われてしまった。いろんな意味で考えさせられる記事だった。教育ということ。子供たちに教えると言うこと。そんなことを私自身もしっかりと考えたい。
2011.04.22
地震については、中1の理科で詳しく学習をする。地震の発生のメカニズムをプレート理論で説明することは、それほど昔からおこなわれていたわけではない。今回の大地震は、太平洋プレートと北米プレートの境目で起こったことは、ニュースで何度も説明されたことだ。とりあえず、そうしたことも含めて、地震の発生メカニズムをわかりやすく説明した本を探してみた。そんな中で、この「岩波ジュニア新書/大地の躍動を見る」がお薦めの一冊です。本の帯には次のように書かれている。我が国に多い地震,噴火の現象は,伝統的に日本の科学者たちによって多くの謎が解き明かされてきたが,研究は新たな局面を迎えた.宇宙空間からの計測,目に見えない地下深部の構造解析,地震の複雑な動きの解析などをはじめ,大被害をもたらず可能性のある地球の活動に切り込む最新の研究を解説,さらに鋭くその実像に迫る.小学校の高学年から中高生まで。また、大人が読んでも良い本だと思う。740円とそれほど高いものではないので、是非とも一冊購入して、家族でまわし読みしてはどうだろうか。さて、「アウターライズ地震」という地震が懸念されているようだ。聞き慣れない言葉だが、今回のような大地震の後に起きる地震だという。特徴は、揺れはそれほど大きくないのに大津波が発生するのだという。今の段階でそんな津波が来たとき、福島の原発は大丈夫なのだろうか。どうも、世の中全体に危機感がなさ過ぎるように思うのだが・・・同時に、首都圏直下型の地震も懸念されている。平安時代に起こった今回の大地震と類似性が指摘されている「貞観地震(869年/M8.3-8.6)」のあとに、首都直下型の「関東諸国の地震(M7.4)」が起こっているのだそうだ。地震学者の方々は「首都直下の地震は『来るかもしれない』ではなく『来る』という前提で、家の耐震補強や家具の固定、命を失わない備えをしておくべきだ」と言っている。政府の地震調査委員会は「日本列島は地震がどこで起きてもおかしくない状態」と、事実上の「非常事態」を出している。気象庁が地震活動が高まっている地域としてあげた8地域の中に、東京湾と神奈川県西部が入っている。備えたい
2011.04.19
今日も中3の入試予想模試演習でスタート。今日の結果と明日の夜中に判明する志願倍率で志願変更を考えている生徒も何人かいる。開始10分前にはほぼ全員がそろっている。熱気もある。あと10日間でモチベーションを最高に持って行かせたい。さて、今日はお母様方にちょっとした心理テストを〈学校から戻ってきた子どもを、母親は手を広げて待っている。子どもは母親に近づかない。母親はいう。「お前はお母さんが好きでないの」彼は答える。「うん」。さて、お母さん。あなただったらこんな時どうしますか?>1 心の動揺をおさえ、にこっと笑顔を見せたままだまって子供の手をひいて家に帰る。2 子供の反応にカチンときたあなたは、その怒りの感情をストレートに子供にぶつける。3 「だけどお母さんはお前がお母さんを好きなんだってこと、わかっているわ」そして抱き締める。もしかすると 3 を選んだ方が多かったのではないでしょうか。哲学者の鷲田清一さんはこの 3 を選択したお母さんが最も危ないと言います。私もそう思います。なぜでしょうか・・・ この心理テストは、一昨日に紹介した「Q 私の思考探求」で鷲田さんがモデルの冨永愛さんにした質問です。2月12日(土)午後4時00分~4時30分に再放送があるそうですから、ご興味のある方は是非ともご覧になってみてください。ちょっとずるい終わり方だったかな 時間がある時に私なりに「なぜなのか」をまとめて書きたいと思います。ちょっと古い本ですが、中3生でも十分に読めるはずです。
2011.02.06
大学生の就職内定率が過去最低になりそうだ、といったニュースが連日のように流れてきます。60パーセントを切って、50パーセント台になりそうだといいます。問題は、景気が悪いことが原因かどうかということです。景気さえ回復すれば大学生の就職内定率は上がっていくのでしょうか。中学生の子供さんをお持ちのお母様たちとお話しをしていると、「せめて大学ぐらいは出てもらいたい」といった言葉を良く耳にします。「どうしてそう思われるのですか?」と聞きますと、「どんな就職でも条件が大卒となっていますよね」というような答えがかえってきます。こうした考え方が本当に正しいのかどうか、そんなことに答えてくれるのがこの本「学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識/海老原 嗣生 (著) 」です。多くのマスコミは、大学生の就職内定率の低下を不況などを理由とし「若者被害者論」を展開します。その方が視聴者受けしやすいからです。しかし、この「若者被害者論」がいかに間違っているかを筆者はデータを通して説明していきます。私立大学の半数以上が定員を割っている今、一部の難関校を除いて大学そのものがインフレになっていて、今や専門学校より役に立たない一般教養を教える機関にすぎないということです。大学ぐらいは出てもらいたい、といったお母さんの気持ちはわかります。でも、大学は昔のように一部の若者が進学するところではなく、行こうと思えば誰もが進める場所になってしまっているのです。大学卒という学歴が本当に軽くなってしまっているのです。その一方で、電車の中吊り広告をはじめとして、大学側の宣伝は本当に上手です。ある程度のウラを知っている私でさえ、この大学にいけば夢がかないそうだ、と錯覚してしまうほどです。こうした実際の姿と、オモテに出てくる姿の乖離も今の時代の特徴なのでしょう。何も難関校だけがすべてだといっているのではありません。自分の進む道を軽くするのも重くするのも自分次第だと言いたいのです。そして、そのことは高校選択の段階からスタートしているのです。何よりも大切なことは、流れに棹さすことです。流れにのっていれば良かったよき時代はとっくに去っていってしまいました。自分のチカラで越えたハードルだけが自分の糧になる。流れに棹ささない限り自分のチカラでハードルを越えるチャンスも得られないのが今の時代だと思うのです。いろんな啓示を与えてくれる本です。就活中の学生だけでなく、これからの就活生である中高、大学生をお持ちのお父さん、お母さんも是非とも読んでみて下さい。
2011.01.22
高校生向けの科学情報誌「someone」をみんなに配っています。今号の特集は「映像が、私たちの未来を変えるかもしれない」というもの。小学生には難しい内容です。お父さん、お母さんが読んでいただき、その内容をちょっとお話ししていただければ幸いです。<Ah-HA!カフェ> コエンザイムQ10 の話題など、よく耳にするサプリメントの正体についてわかりやすくまとめています。また「細胞シートがつくる未来」という記事も、これからの再生医療のようすを伝えてくれる記事です。
2011.01.18
someone / サムワン 2010秋号 を塾生のみんなに配ります。高校生向けの科学情報誌なので、小学生や中学生にはちょっと難しい内容です。お父さん、お母さんに手にとってもらえるとうれしいです。そんな中で気づいたことを子供さんに話していただけたりしたら幸いです。秋号の内容は以下のようなモノです。都市の便利さと自然の恵みのあいだでどこへ行くにも何をするにも便利な都市にいると、自然の存在を実感することは少ないかもしれません。でも、実はずっと近くにいました。都市にだって川が流れ、木々が葉をゆらし、野鳥が飛んでくるのです。私たちが気づかないだけで……。今回の特集では、そんな都市の空間と自然の恵みを両立するために研究者ができることを、ほんの少しだけ紹介します。私が読んでおもしろかったのは「<再生医療物語>・細胞を育てからだをつくる未来素材」というお話しでした。高校生はぜひ<研究者に会いに行こう>を読んでみて下さい。中学生で科学に興味がある生徒はこのあたりから読んでみると良いでしょう。
2010.10.22
通勤電車の中でRoald Dahl作の「The Witches」という本を読んでいる。私の弟の子供たちはネイティブなのだが、その小4の姪っ子がこの本を読んでいて、私も英語の感覚をなくさないようにと読み始めてみた。たぶん、私の英語の読解力は小4の姪っ子と同じぐらいだろうと思う。もちろん、聞き取るチカラや話すチカラは足下にもおよばない。それでも、姪っ子の書く文章を見ていると、文法の間違いや単語のスペルの間違いを指摘できるので、その範疇では私の方がほんの少しだけ上回っているのかもしれない。A REAL WITCES spends all her time plotting to get rid of the children in her particular territory. Her passion is to do away with them , one by one, It is all she thinks about the whole day long. Even if she is working as a cashier in a supermarket or typing letters for a businessman or driving round in a fancy car ( and she could be doing any of these things), her mind always be piotting and scheming and churnin・・・ A REAL WITCES(ホンモノの魔女)は黒いマントでほうきに乗っているのではなく、ごく普通のかっこうをした女の人で、ふつうの家に住んでいて、ふつうに仕事をしている。魔女は子供が嫌いで、世界中の子供たちを消してしまおうと思っている。魔女の一番の楽しみは"子供をひねり潰す"ことなんです。大学入試センターの英文よりははるかに易しい。高2生あたりにはちょうど良い英文じゃないだろうか。1ページに辞書をひかないとわからない単語は1つか2つといったところかな。話も荒唐無稽な作り話ではなく、身近な生活の中で物語が進んでいくのでわかりやすいと思います。日本語に翻訳したものも出ているので、それを参考にしながら読んでみるのも良いかもしれません。高2生は時間に余裕があるんだから、こんな児童書を一冊読み切ってみると、達成感もあるし読解力がつくんじゃないかな
2010.09.25
「告白/湊かなえ著」を読んだ。普通なら本屋でぱらぱらとめくって戻してしまうだろうが、娘が「お父さんは読まなきゃダメだよ」と貸してくれたので読んでみた。正直、読んだ後に残るのは「不快感」だけだった。「得体の知れない気持ちの悪さ」というか、船酔いしてしまったような、そんな感じにつつまれてしまった。本を読んだ後にこれだけ後味が悪かったのは久しぶりのことだ。映画も大ヒット中だという。15禁になっているので中学生は観ることが出来ない。映画も観た娘によると「原作よりもすごかった」とのこと。血がたくさん出て、狂気が画面を支配し、エンドロールの際には客席全体を異様な空気が支配していたという。「ある意味、原作よりも悲惨かもしれない。一人では観に行かない方がいいね」ということだが、妻と二人で観に行く勇気がうまれるかどうか。怖いモノ見たさを越えたところにあるようだ。物語そのものは稚拙だし、重苦しい内容の割にはストーリー展開は軽い。いろんな面で荒さはある。それでも作品に引きこまれてしまう。それは、今の時代の中ではこうしたことが実際に起こってもおかしくない、といったリアリティがあるからだ。同時に、作中の中学生を「こんな子はいないよ」と言い切れない何かもあるからだ。それどころか、どんな中学生にもこの作中の子供たちと同じような「心の動き」は十分にありうる。しかし、この作品を読んだ後の「救いのなさ」は何だろうか。本を読んだ後、または映画を観た後、「こんなことはフィクションであって欲しい」と誰もが思いつつ、「でも、現実に起こる可能性もある」という現実世界の陰の部分を見事につきつけられた「気味の悪さ」を感じるはずだ。映画のレビューを読むと「観るんじゃなかった」といった感想も多い。中学生をお持ちのお母さん方がこの本を読んだら、もしかして数日寝込んでしまう人が出るかもしれない。見たくないモノ、でも、実際には存在する感情。たがが外れてしまうと、ドクドクとあふれ出てくる狂気。そんなあらゆるモノが描かれている。お薦めは出来ないが、気持ちの強い方は読んでみてはどうだろうか。あくまでも自己責任の上でだが。そのぐらいキョーレツな本です。いやぁ、久しぶりに「怖い」本を読んだ。というよりも、こんな本が出版され、映画化されている時代に生きていることの方が気味が悪くなってくる。でも、教育の一端に関わっている者として、子供たちはそんな時代とともに生きていることを知っておかねばならない。ブラック先生やMr. Hot cake先生の読後の感想を是非とも聞いてみたいなぁ。
2010.07.08
私はいわゆる「ハゥ・トゥー本」というのは読まない。「英語○○法」やら「驚異の実績△△」やら「こうすれば出来る◇◇」なんて本だ。まぁ、PCの操作法ならわからないでもないが、生き方や受験や就活に関して、こうした本を読むことに意義を認められない。それでも、本屋には“山のように”そんな本が平積みされているのだから、そうした本を必要とする人は多いのだろう。家の息子も親の影響からなのか、こうした「実戦! 就活○○」なんて本は一冊も買わずに就活を続けたようだ。私がアドバイスしたわけではない。息子が言うには「そうした本に書いてあることって、立ち読みレベルか、ネットで知ることの出来る情報しか書いてない」ということだ。その通りだと思う。確かに、ノックを2回するのはトイレの確認用だ。3回は欧米ではプライベート・ノックといって、4回が本当だということだが、日本のビジネスの現場では3回が主流だ。なんてことは立ち読みレベルで身につければよいことだ。・・・面接でさ、見事にマニュアルどおりに受け答えしている学生がいるんだ。待合い室でも「面接を成功させる△△法」なんて本をホントに真剣に読んでるわけ。ちょっとイタイよね。・・・「ハゥ・トゥー本」なんかに頼らなければいけなくなる前に、しっかりとした自分を作り上げていくことこそが大切なのだと思う。そうした自分を作り上げていくための読書をこそ普段からやっていくべきだと思う。とくに、中学、高校、大学といった学生にはそうした読書を薦めたい。とんでもない情報があふれている時代。学生の時は、そうした時代を追いかけるのではなく、じっくりと腰を据えて自分と向き合うことの出来る読書をして欲しい。そうした意味では古典とよばれるような本を読んでいくのもこの時期にこそ大切だと思う。生き方や考え方は、「生き方の○○」などといった本を読んで「学ぶモノ」ではゼッタイにない。それらは「自らの中に作り上げていくモノ」なのだ。読書はそうしたモノを作り上げていくための作業の一つであって、本の内容そのものから自分が作られていくことはない。 私は高校生の時には森有正の「木々は光を浴びて」や「バビロンの流れのほとりにて」なんて本を何度も何度も読んだ。そこから辻邦生や福永武彦の小説を読みあさっていた。そんな読書体験が自分の根っこのところにある。森有正の本はほとんどが絶版になっているが、図書館に行けば全集があるだろうし、エッセイ集も出ている。本当に美しい日本語で書かれている。それなのに中身は何度読み返してもちがった問いかけをしてくる。たくさんの本を読むのではなく、じっくりと筆者と向き合えるような、そんな読書をこそ生徒たちにはしてもらいたい。出来れば、お薦めの本を少しずつ紹介していきたい。中学生にはちょっと難しいかもしれませんが、森有正もお薦めです。
2010.06.09
「大学受験に強くなる教養講座/横山雅彦著」高3生現代国語のテキスト(その2)です。というよりも、大学受験を前にした高3生すべてに読んでもらいたい本の一冊です。全体で6章構成になっていて、それぞれの角度から「現代」を考察しています。第1章 還元主義を超えて第2章 言語とコミュニュケーション第3章 脱工業社会の到来第4章 ポストコロニアルな世界史第5章 アメリカ化する社会第6章 現代民主主義の逆説前書きから筆者のこの本を書いた意図を抜粋しておきます。『・・今、大学入試で起こりつつあることは、極端な二極化現象です。七割方の大学が、何としてでも学生を確保し、生き残りを図ろうと、まるで中学入試のような問題を出してお茶を濁している一方で、残る難関大学では、学部どころか大学院のゼミで課題となるような論文が、当たり前のように原文(英文)で出題されます。・・・これらの難関大学の入試問題が示している大きな特徴は、英語・現代文・小論文の間の垣根がなくなってきているということです。・・・本書の目的は、「英語と現代文と小論文は三位一体である」という前提に立ち、それらすべてに共通する読解の知的バックグランドを構築することです。受験で出題される評論は、すべてさまざまな角度から「現代」を切り取ったものです。本書では、政治・経済・社会・文化を横断的・相関的に捉え、六つの角度から「現代」という世界をダイナミックに俯瞰します。大学生になるための高校生の教養講座であり、社会人の読者にとっても、目からウロコの連続であると信じます。小論文のネタ探しとしても(それは本当は不本意なことですが)、きっと宝庫であることでしょう。・・・』現代国語の読解問題には、その文章が書かれたバックボーンへの理解なくしては解けないものが多いのが実際です。高校の現代国語の授業では、そのバックボーンの理解のためにどれだけのことをしているでしょうか。また、多くの予備校では、過去問の演習の繰り返しで、現代文の講義を進めています。この本の第1章にある「還元主義の問題点」「ニューアカデミズムが登場してきた理由」「演繹と帰納の違い」「批判的合理主義とは」などといったことについての理解なしでは読めない評論文はたくさんあるのです。高3現代文の授業では、夏休みまでに出来るだけ生徒たちの「教養」を高める授業にしたいと考えています。「教養」のレベルと「現代国語のチカラ」は比例していると言って良いからです。きっと東大に合格者を何人も出しているような高校では、「フリチョフ・カプラー著/ターニングポイントー科学と経済・社会、心と体、フェミニズムの将来」なんて本を原文(英文)で読んでいるんでしょうね。それはムリだとしても、カプラーが何を考え、何を主張したかの知識理解ぐらいは大学受験生としてはしておきたいと思います。高校受験生も同じです。県入試の共通問体であれば、「教養」なんてものはなくても問題を解くことは出来ます。それぐらい共通問題のレベルは低いからです。しかし、私立高校の入試問題や県の独自問題の国語となるとそうはいきません。湘南高校の国語の独自入試問題など「うーん」とうならせる出題になります。「教養」のレベルが問われる問題なのです。「教養」を身につけるには、しっかりとした骨のある文章を読むことです。筆者と思考的に闘える文章を読むこと。もうひとつは「議論」をすることです。こちらはそうそした友達や場がないとムリですが。高1生、高2生も、手がかりとしてこの本を読んでみては道でしょうか。
2010.05.24
写真の本は、高3現代文の授業のテキストとして使っている本です。大学入試の現代文は評論文の出題が主になります。言語論、文明論、社会論などなど出題は多岐にわたります。そのほとんどが現代思想を駆使してて語っているのが特徴です。多くの高3受験生は、初めて大学入試問題に立ち向かうと「理解度が限りなく0パーセントに近い」という感想を持ってしまいます。その原因は何でしょうか? また、理解度を上げるためにはどうしたら良いでしょうか?たとえば、先週の第1回の授業で扱った問題文は「科学論」でした。「最近、デカルトは評判が悪い。脳神経科学の有名な研究者であるアントニオ・ダマシオは、1994年に『デカルトの誤り』という本を書いた・・・」といった書き出しではじまります。高3生はこの書き出しでもう青息吐息になってしまいます。さらに進んで「・・・どちらの本も、精神と物体とを峻別したデカルトの二元論が、現在に至るまでの認知科学に及ぼした影響について論じている・・・」や「・・・さらに最近のポストモダンの相対主義ならば、科学も、ある個人の世界の軟式も、すべては、単にひとつの見方、勝手な構築にすぎないと・・・」となると頭の中は『ぐちゃぐちゃ』状態になってしまいます。生徒たちには「デカルト」「二元論」「ポストモダン」「相対主義」などといった語彙に対する知識が全くないのです。だからそうした言葉が出てくる度にもう頭がパニックになってしまうわけです。もうおわかりですよね。大学入試の現代文を読むためにはこうした語彙に対する『ある程度の知識』が必要なのです。この「高校生のための評論文キーワード100」は、そうした語彙を「ポイント」「切り口」「展開」の三つに分けて、アイウエオ順に見開きでまとめた辞書のような本なのです。授業では、問題文に出てくる語彙をこの本を利用しながら私が解説していきます。遠回りのようですが、こうした作業を1年間続けていけば、かなり読解力が上がることになるはずです。少なくとも「デカルトの評判が悪い」という文にぶつかったとき、デカルトという人間が何を訴えていたのか、その後の評価がどうだったのか、などといった知識があるのとないのとでは、読み取りの深度はかなり違ってくるはずです。また、この本は高校生だけではなく、お父さん、お母さんにもお薦めです。「アイロニー」「形而上」「テクスト」「構造」などなど、新聞や雑誌にも何気なく使われているのに、その意味がよくわかっていなかった語彙はたくさんあると思います。そんなときにこの本を開けば、辞書代わりとして役に立つはずです。
2010.04.14
今月の私立中学受験クラスの課題図書は「キッドナップ・ツアー」です。いつも書いていることですが、最近の児童文学書は本当におもしろいです。この「キッドナップ・ツアー」の筆者である角田光代さんはとくに児童文学の作品ばかりを書いている方ではありません。ただ、この作者の独特の文体というか、その場の雰囲気が立体的に伝わってくるタッチが、「キッドナップ・ツアー」ではよく出ていると思います。とにかくドキドキ、ワクワクする感じがあって、どんな読者でもひきこまれてしまうはずです。同時に、人生のつらさとか厳しさなんかを、じんわりと伝えてくれもします。とにかくたくさんの子供たちに読んでもらいたい一冊です。同時に、お母様方にも読んでいただきたいです。ぐんぐん作品の中に引きこまれていくこと間違いありません。一気に読めてしまうはずですmiyajukuの受験クラスの小学生たちも、私の選ぶ本を楽しみにしてくれているようです。価格的にも500円以内でないと教材費に足が出てしまうので(笑)、低価格でおもしろくて受験に頻出する題材を選ぶのはひと苦労ですが それでも「オレ、本を読むのを楽しみにしてんだ」とか、「塾長、今度はどんな本なの?」という声を聞くとうれしくなります。受験クラス以外の小学生たちも、このプログを参考にして、書店で購入して読んで見てください。
2009.11.11
10月の小5生への課題図書は「いのちをはぐくむ農と食/小泉健夫著」という本です。岩波ジュニア新書ですが、子供をお持ちのお母様方には是非とも読んでいただきたい一冊でもあります。たとえば、「食べ物を選ぶ基準」という章の内容をちょっとご紹介しておきます。『いま街で売られているいちばん安い幕の内弁当はいくらでしょうか。ご飯があり、その真ん中に梅干しがあり、蒸された塩鮭もあります。さらに真っ赤なウィンナーソーセージが二本と、真っ黄色の壺漬けが数片・・・ なんと200円台の半ばです。どうしてこんなに安いのでしょうか。・・・梅干しは中国、米はカリフォルニアの古米、アメリカでは家畜の飼料になります。サケはチリ産の養殖サケ。5年前に大量の抗生物質が入っていたと輸入禁止になったことがあります。・・・日本の食材は何もありません。これを「安い、安い」といってみんな食べているのです。』この章では、サケのことをさらに詳しく書いています。世界でいちばん安心して食べられるサケは、北海道や東北の川に上ってくるサケです。でも、日本人はそうしたサケを食べなくなっていて、たくさんのサケ業者が廃業しはじめている。日本人はなぜ、こんなに安心、安全なサケを食べなくなったのか。それは安い養殖サケがたくさん輸入されているからなのです。おにぎりなどのさけはチリやノルウェー産のモノです。これらの国では生け簀でサケを養殖しているので、安価にサケを出荷できる。でも、病気にならないようにたくさんの薬を使っている。北海道のサケは売れないので、中国の業者がやってきて大量に仕入れていく。これを「おいしいサケ缶」として、メイドインチャイナブランドでヨーロッパに出荷している。うなってしまいますよね。食を選択する基準が「値段」でしかない、というところに問題点があるわけです。一切れ数十円高くても、日本産のサケを食べる、そんな選択肢を持ちたいモノです。豊かな国である日本。モノがあふれかえっていて、世界中から食材が集まってくる国でもあります。でも、そんな国に住んでいる私たちが口にしているものは、実に貧しく貧弱なモノでしかないのかもしれません。豊かさの基準がどこかでおかしくなってしまった。受験対策(この本の内容は今春もたくさんの入試で出題されました)、というだけでなく、親子で読んでいただき、「食べ物」について考えてみるきっかけにしてもらえるとうれしいです。
2009.09.30
この仕事をしていると「児童文学」というジャンルに属する作品をたくさん読むことになる。実は、最近の「児童文学」には質の高い作品がたくさんある。学校の教科書は全くダメだ。相も変わらぬ作品ばかりだし、ジンチクムガイな作品しか掲載しないからだ。そんな中、学校の教科書には絶対に掲載されないけれど、チョーお薦めな作品が「ぼくらのサイテーの夏/笹生陽子著」だ。今月の受験クラス5年生の音読教材にしている。とにかく、こんなに読後感がさわやかな作品はないだろう。大人が読んでもとっても気持ちよい気分にさせてくれます。読んだことのない方は是非とも一読をお薦めしますよ 文庫で400円ぐらいですから。あえて内容にはふれません。小学6年生から見た家族、友情、社会がテーマです。ひきこもりや自律学習なんて重い事柄もさらりと描いたりもしています。小学生の子供をお持ちのお母さんには必読の一冊でしょう。来月は何を読んでもらおうかなぁ
2009.09.12
解散、総選挙に向けてどたばたする中、国会では「臓器移植法案」が参議院で審議されている。これまであまり考えたことがなかったが、何が問題で、何が議論されているのか、自分なりに考えている。とても難しい問題だが、だからこそ、自分なりにこの問題を消化させておきたかった。そもそも「脳死」という考え方は、臓器移植のために考え出されたものだという。脳死状態でも生き続ける人もいるし、子供を産むことさえ可能なのだそうだ。脳死しても心臓が動いている限り、血液は流れ、体温がある。自分の親しい人が「脳死」だと医者に宣言されたとき、それを私は「死」として受け入れられるだろうか。とても素朴な疑問が心の中にわき上がった。一方で、臓器移植でしか生き延びることが出来ない人たちもたくさんいる。そうした人たちの願いもまた切実なものだろう。とくに、臓器移植でしか治療できない病の子供を持つ親の立場に自分があった場合・・・ どんなことをしてでも、幼い命を救いたいと思うのは親として当然だろう。それぞれの立場からの意見を知れば知るほど、結論が出せる問題ではない、そんな思いを持ってしまう。だが、世の中の秩序を守るためにも、何らかの結論を出さざる得ないことも確かだ。そんな中、とても気になる人物がいた。テレビなどでこの問題が流れるたびに、反対派の代表として意見を述べている「小松美彦」という方だ。語り口に特徴があり、自己決定権という観点から反対の意見を述べられていた。その「小松美彦」という方は、偶然にも家の息子が通う大学の先生で、授業を受けたことがあるという。生命倫理の授業で、とても興味深く、おもしろい授業だったという。講義ノートも見せてもらった。「新自由主義」「自己決定権」この方の主張のキーワードはこの二つのようだ。今、何冊かの本を買って読んでいる。その話はいずれ書かせてもらうつもりだ。その中でも「自己決定権は幻想である」という新書がもっともお薦めのようだ。高3生の小論のテーマ教材としても良いかとも思う。いずれにしても「臓器移植法案」について、もっと広範に議論の輪を広げていくべきだと思う。今の法案がそのまま国会を通過すると、「人の死は脳死」という新しい定義ができ、それが一人歩きしていくような気がする。本当にそれで良いのか、大人として、一人一人が考えるべきことではないかと思う。
2009.07.03
「14歳からの社会学/宮台真司著」という本を読んだ。目次をざっとあげておく。1.と 「みんな仲よし」じゃ生きられない 2.と 「決まりごと」ってなんであるんだ? 3.と 「恋愛」と「性」について考えよう 4.と 君が将来就く「仕事」と「生活」について 5.と 「本物」と「ニセ物」を見わける力をつける 6.と 「死」ってどういうこと? 「生きる」って? 7.への挑戦 本当の「自由」は手に入るか? 8.BOOK&MOVIEガイド SF作品を「社会学」する 書評やレビューも、ネットで「14歳からの社会学」と検索をかけるとたくさん出てくる。アマゾンのページには著者の動画もアップされている。どんな本なのかはそれを参考にしてほしい。正直、14歳には難しすぎて本の中身は理解できないだろう。高校生にはどうだろうか。高3の現代文の授業の課題図書にするには良いかもしれない。ただ、かなりの「毒」がある本だから、著者が言うように、この本との出会いにょって「感染」してしまい、勉強が手につかなくなっても困る。「よい子ちゃん」度の高い子供には、ショックが大きい本だと思う。自分が常識だと思っていたことをことごとく覆される可能性がある。たとえば、「人のために」がいちばん良くない、と著者は言う。「人のために役立つ仕事がしたい」なんていう「自意識の垂れ流しにぼくはうんざりだ」と続く。本当は、お母様方にこの本は読んでもらいたい。今の社会はどんな状況なのか。自分の子供が生きていく社会はどう変わっていくのか。その中で身につけていくべき力はどんなものなのか。そんなもろもろのことが、ホンネで書かれている。学校の先生は絶対に語らない、そんな社会の姿が語られている。私も時に書いている、「よい子ちゃん」度がすぎると困ったことになる。その理由がこの本には語られている。全面的に著者の意見に賛成できるわけではない。折りを見て、少しずつ、書かれていることと、それに対する私の考えも書いていきたい。
2009.06.22
「大学図鑑」という本がある。ダイヤモンド社というところから出版されているのだが、「有名大学の入学後がわかる!」とタイトルにあるとおり、ちょっと変わった大学紹介の本になっている。関東私大は「Aグループ/早稲田・慶應・上智・ICU・理科大」「Bグループ/明治・立教・青学・中央・学習院・法政・東京農大・北里」「Cグループ/成蹊・成城・明学・獨協・國學院・武蔵・芝浦工大」「Dグループ/日本・東洋・駒沢・専修・神奈川・玉川・文教」「Eグループ/大東文化・東海・亜細亜・帝京・国士舘・拓殖・東京経済・和光・立正・関東学院・桜美林」と分類して、それぞれの学校の「今」を伝えている。切り口も入学後の学生生活と、卒業後の進路を中心にしてある。タイトルだけを列挙してもこの本の意図するところがわかるはずだ。早稲田・・多彩なキャラがざわざわ行き交うヒューマンスクランブル大学慶應・・社交的で合理的、明るく賢く咲きほこる私大の華的大学上智・・コンサーバティブな優等生が集まる都心のこざっぱりとした大学ICU・・東京23区の隣でのびのびと「閉じている」ミニアメリカ大学東京理科大・・中堅研究職の卵たちがかもしだす善良な安定感明治大学・・「元気があれば何でも出来る」と信じたいパワフル大学立教・・まあまあの満足感を感じながら生きていける内弁慶大学青山学院・・アオガクというオシャレな響きを喜べる学生のための大学中央・・きれいな空気を吸いながらおだやかなキャラを形成していく大学学習院・・やっぱり隅々までノープルな空気がゆるやかに漂っている大学法政・・こぎれいなイメージだけを強調したい元・代表的バンカラ大学東京農業・・お百姓さんイメージからは遠く、意外にフツーな生物系総合大学ただし、切り口は時に厳しい。例えば「私大Eグループ」の総括では「・・『どこに行くか?』の前に『なぜ大学か?』を考えよ! 自分はもしかして『大卒は高卒よりも上』という考えに縛られていないか? この問いかけを忘れないで欲しい・・」と手厳しい。多くの大学紹介本は、実は、大学からの協賛金目当ての紹介本になっていて、「本当の姿」を描けなくなっている。この「大学図鑑」もすべてを鵜呑みに出来るわけではないが、ディテールをふくめて他の大学紹介本にはない情報が満載だ。たとえば、「・・・ここの学食にはサラダバーもあり、日替わりのランチメニューの中でも『あさりのクリームスパゲティー』がとくに人気・・」などといった情報も書かれている。実は、そんなディテールの積み重ねが大学の雰囲気を作っている。大学選択の際には、是非とも目を通しておきたい一冊だ。
2009.04.24
最近の「シューカツ」事情について知るのにおもしろい本を見つけました。石田衣良著/シューカツ! という小説です。マスコミへの就職を目指す若者たちの物語ですが、こうやって就職活動って進んでいくんだ、というのがおもしろくわかる本です。これから就職活動をはじめる大学生だけではなく、高校生やお母さん方にもお薦めです。石田衣良さんの文章は、テンポが良くて読んでいて楽しくなります。登場人物たちの「青春ど真ん中」という動きも、気持ちよいモノでした。実は、私は就職活動というモノをしたことがありません。文学部の、しかも日本文学科、なおかつ中世和歌なんてものに興味を持って大学に進んだときから、教職で飯を食っていくしかない、と覚悟を定めていたからです。大学4年では教員採用試験だけを受け、ダメなら大学院に進むつもりでいました。当時の採用試験はとんでもない倍率だったからです。まぁ、何とか新卒で就職できましたが。なんだかんだといっても、日本の社会は大卒時の1回しか仕事を選択するチャンスがないわけです。このゴールデンチケットを取り損なうと、かなりの苦労が待っていることは確かです。苦労の多い割に得るモノの少ない敗者復活戦にまわるしかありません。シューカツ。今年はちょっとこの視点からいろいろと考えてみたいと思っています。中学入試、高校入試、大学入試。すべてはこのシューカツにつながっているのですから。
2009.03.31
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