そんなテルアビブ★イスラエル★

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2015年02月08日
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たったひとりの聖戦(1)
たったひとりの聖戦(2)
たったひとりの聖戦(3)
たったひとりの聖戦(4)
たったひとりの聖戦(5)
たったひとりの聖戦(6)
たったひとりの聖戦(7)


たったひとりの聖戦(8)



ロバート・フィスク著      
安濃一樹訳

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<アフガニスタンのイスラム教徒がソ連の手によって屈辱の淵に落とされているときに、何もしようとしない臆病なサウジ王子たち。ここで怒りに身をふるわせた男がいた。オサマ・ビンラディンである。王子たちが辞退した使命を一身に担うと、経営する建設会社の資金と機材を投じ、たったひとりの聖戦を挑んだ>
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▽ たったひとりの聖戦(8)
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 遠く東の空に雷雲が広がっていった。パキスタンの国境にそびえる山々の上にオレンジ色の稲妻が光った。だがビンラディンは砲撃の炎かもしれないと考えたようだった。ソ連との戦いのあとに起こり、彼の心を傷つけた内紛がまだ続いていた。次第に落ち着きを失った彼は、会話を打ち切ると祈り始めた。藁で編んだマットの上に、武装した若い男たちが夕食を用意した。ヨーグルトとチーズとアフガン風のナンが皿に並べられ、紅茶がつぎ足される。ビンラディンは息子たちに挟まれて座り、食べ物に目を落としていた。


 スーダンに亡命したあと、ビンラディンに残された国はアフガニスタンだけだった。私がそういうと、彼はうなずいた。「私にとってアフガニスタンは世界でいちばん安全なところです」。サウジアラビアを倒そうとしても、あなたが活動できるのはアフガニスタンだけだ、と重ねて言った。するとビンラディンが笑い出した。大笑いしている男たちもいた。「ここだけではありません」。タジキスタンか。ウズベキスタンか。それともカザフスタンなのか。聞き出そうとした。「友人や親しい兄弟がいるところがいくつもあります。安全を守れるところです」とだけ答える。しかし、あなたはもう指名手配されている、というと「危険は覚悟の上ですから」と切り返された。
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 男たちにアムニヤ、警備について問いただしながら、空に走る閃光を何度も見ていた。遠雷の響きが次第に砲撃の音らしくなってきた。もうひとつだけ質問した。どのようなイスラム国家を建てたいと考えているのか。シャリア法を奉じる国家では、やはり盗人は手を切り落とされ、首を刎ねられるのだろうか。ちょうど、サウジアラビアでいま行われているように。彼の答えは満足できるものではなかった。
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 「イスラムの教えは何ひとつ漏らすことなく、生活の隅々にまで及んでいます。もし真のムスリムが罪を犯したら、悦んで正当な処罰を受け入れるでしょう。それを残忍だということはできません。刑罰はすべて、預言者ムハンマドに授けられた神の言葉に基づいています。かの方の上に平安あれ」。オサマ・ビンラディンは反体制派かもしれないが、けっして穏健派ではなかった。
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 写真を撮らせてほしいと頼んだ。この申し入れを彼が同志たちと詮議している間に、私は手帳に走り書きをした。この会見を報告する記事の最後を締めくくる一節だった。「サウジ政権と湾岸に進駐するアメリカ政権が最も恐るべき敵は自分だと、オサマ・ビンラディンは信じている。両政権は彼の自負を軽視することはできない」。今になって思う。彼を過小に評価していたのは、この私だった。
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 写真を撮る許しが出た。私はカメラを開くと、護衛たちに見えるようにしてフィルムを装填した。フラッシュを使うと人物の顔が平たく写ってしまう。それが嫌だったから、石油ランプをもっと近くに持ってくるように言った。エジプト人の筆記者が、ビンラディンの顔の横にランプをかかげる。もっと近く、一〇センチまで寄せるように指示した。しまいには男の手をとってランプの位置を決めた。ビンラディンの姿が、光と影に縁取られて、くっきりと浮かび上がった。
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 写真を撮っていると、突然ビンラディンが息子たちの方へ顔を向けた。唇の端に乗った微笑みには、うぬぼれと虚栄心が宿っている。そんな彼を見るたびに嫌な気分になる。オマルとサアドを呼んで脇に座らせた。また何枚か写真を撮る。ビンラディンはひとりの父親に戻っていた。我が家で自慢の息子たちとくつろぐアラブの父親の姿だった。
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 それもつかの間のことで、また顔を曇らせていった。雷鳴が激しさを増し、ライフル銃の乾いた音も聞こえるようになった。もう帰りなさい、と促された。彼自身が帰らなければならないという意味だった。安らぎのないアフガンの荒野に再び帰るときがきた。握手を交わしながら、彼はもう護衛を眼で捜していた。
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 モハメッドと運転手、そして武装した二人の男たちが、この虫だらけの湿った草原からホテルまで私を送ってくれた。この帰り道が怖かった。橋や十字路に差し掛かるたびに、武装したアフガン人に車を止められた。それぞれが別の部族で、カブールを制圧しようと戦い合っている。男が道の上に身をかがめていた。車のフロントガラスにライフルを向けて叫ぶ。車を止めると、別の男が闇の中から出てきて車の横に立ち、運転手の身分を確認した。ようやく通されてから、モハメッドがいった。
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「アフガニスタン、危ないところ」
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岩波『世界』誌、〇五年一二月号掲載。
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Extracted from The Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East by Robert Fisk.
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ロバート・フィスク 。英『インディペンデント』紙中東特派員。ベイルート在住。北アイルランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻、イラン革命、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガン侵攻、湾岸戦争、ボスニア戦争、アルジェリア内戦、NATO軍のユーゴ空爆、イラク戦争などを取材。著書にPity the Nation: Lebanon at War (1990.1992)など。最新刊にThe Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East がある。
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写真は、1996年7月5日に、オサマ・ビンラディンに面会してインタビューを行ったロバート・フィスクが愛用のニコンで撮影した。







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最終更新日  2015年02月22日 20時56分14秒
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