月下美人

月下美人

小話(日記でのSS)



「ややこ」
何が欲しいと問われ、どう切り返すのか興味半分冗談半分で口にした。
「そうか」
そう聞こえた次の瞬間、乱菊の視界は大きく変わり白い天井が広がる。
背にソファの柔らかさを感じ、自分が寝かされた事に気づく。
「期待に添えるかどうかわかんねぇぞ?」
乱菊の帯に手がかかる。
「隊長!ごめんなさい、冗談ですってば。ちょっと、帯引っ張んないで下さい~」
「じゃあ、ほら腕抜け」
今度は袖を引っ張る。
「だめですってば。まずいです、誰か来たらどうするんですか?」
「誰も来ねぇよ。ん?何だよ、それじゃ脱がせらんねぇぞ?じゃ、足袋を先にすっか」
「あたしの冗談が過ぎました。ごめんなさい、謝りますから。ちょっと隊長、足袋なんて脱がせないで下さいよ~」
「履いたままの方が好みか?そう言やぁ、京楽がそういうのもいいって言ってたな。試してみるか?」
「京楽隊長と何の話をしてるんですか?!」





「隊長、三番隊に書類届けに行って来ますね」
乱菊が日番谷に声をかけ立ち上がる。
「ん?市丸の所か?」
「何か、他にも用事あります?持って行きますよ」
「用はねぇが・・・・松本、ちょっと来い」
手招きに応え、側に行き膝を折る。
日番谷が乱菊の腰に手を回し引き寄せる。
そして胸元に唇を寄せ強く吸う。
白い胸元に紅い花が咲く。
「隊長・・・・見えるとこはだめって言ったじゃないですか」
ため息混じりに乱菊が言う。
「子供の悪戯だ、気にすんな」
面白そうに口元に笑みを浮かべ、行って来いと乱菊を送り出す。
どこが子供なのよ・・・・しょうのない人ねぇ、と呟きながら十番隊執務室を後にした。

「あれ、乱菊さん、久しぶりっすね。何処行くんすか?」
六番隊副隊長の阿散井恋次が声をかける。
「あら、恋次じゃない。久しぶりね。三番隊のとこまでお遣いなのよ」
振り返り胸元に抱えていた書類が下ろされると恋次は目が釘付けになった。
恋次の視線に気がつくと乱菊は笑って無言の問いに答えてやる。
「うちの隊長の悪戯よ、気にしないで」
今度は目が点になった。




「只今戻りました~」
返答が無いので執務室内を見回すと日番谷はソファーで眠っていた。
側に行き覗き込むと気持ちよさそうに寝息をたてている。
そっと顔を近づけ、耳に歯を立てる。
「・・・・ん、松本、戻ったのか?」
「ええ、只今戻りました」
そう言うと日番谷の頬に自分の頬を寄せる。
眠っていたせいか日番谷の頬は温かく心地いい。
「隊長、温かくって気持ちいい・・・」
「そうか?」
乱菊を引き寄せ後抱きにする。
横顔を見上げるように日番谷の肩に頭を乗せ目を閉じる。
「市丸のヤローは元気だったか?」
「留守でしたので、書類は吉良にお願いしてきました」
「そうか、折角の文が無駄になったな」
「文?」
怪訝そうな顔をすると日番谷が笑いながら答える。
「こいつだ」
乱菊の胸元に咲かせた紅い花を指でなぞる。
「子供の悪戯じゃなかったんですか?」
「どっちも同じようなもんだ」


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