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Command.0 pierced earrings


明日から、学校は冬休みに入る。

ヨリーナは内心ほくそ笑んでいた。

ヨリーナ・ハルシア、彼女の本名である。
ヨリーナの見た目は十二才の少女の姿だったが、実際は生まれてから百八十五年経つ。

なぜ、そんなに見た目の割に歳をとっているのか。

この世界で、それを疑問に思う者は一人もいないだろう。
なぜなら、皆もまた、同じように年をとっているからだ。
そう、ここは人間の住む世界ではない。四次元に位置する、魔法界なのだ。
百八十年も生きていれど、彼女は、まだまだ世間を知らない子供なのである。

大体この世界の住人は一億年ほど生きることが出来る。
其の中でも一番の長生きをし、魔力をたくさんもっているものが、大魔王となる。

今、百万年ほど、魔王は変わらず一人の男で続いている。

アイザ・メテオポリス。

大魔王と聞けば、相当陰険そうなイメージがあるが、それは勝手な妄想で、本当は心優しく皆に慕われているのだ。

しかし息子はそうとは限らない。

アイザの息子、バイオ。
バイオ・メテオポリスは父とかけ離れた性格をしている。
一言で言えば腹黒である。いつもいつもヨリーナを馬鹿にしている。
その理由は、ないこともないんだけど…。







「ヨリーナ。…ヨリーナ・ハルシア?」




はっとして、担任で、数学教師であるレイニ・ノイーズの顔を見る。

「どうかしましたか?ボーっとして。冬休みは明日からですよ。今日まではしっかりけじめをつけなさい。」

「はい。すみません!」

ヨリーナはペコリと頭を下げた。

「馬ー鹿。」

小さく、者をけなす言葉が聞こえた。
バイオだ。
何が哀しくて、こいつと同じ教室にいなければならないのか。


ヨリーナはバイオのいる方を見、目で殺してやった。





                ◇













長い長い長――――い授業が終わり、皆それぞれの帰路につく。
ある者は空を飛んだり、またある者は瞬間移動をしたり。
方法はいくらでもある。

だがヨリーナは原始的な方法―つまり歩き―で帰ることにした。

と、言っても実は彼女、空を飛ぶことができないのである。
いや、“空に浮かぶ”事は出来る。だがその後の“コントロール”ができないのだ。

「おい。お前、上から帰んねーの?」

白々しく、空から一人の男が言った。まぁ、バイオなんだけど。

「知ってるくせに。」

ヨリーナはポソリと呟いた。

「ククク。あ、空、飛べないんだっけ?アハハ」

少しおどけた口調で言う。

「ヨリーナってさァ、実は人間なんじゃナイの?」

バイオは言った後、後悔した。
ヨリーナの気がふつふつと燃え滾る。



「死ね、バイオ。」



その言葉と同時にバイオの周りに丸い電子図形のようなものが現れる。
それが100%と表示した瞬間。
大きな爆発音(人間ならば即死であろう)が起こった。
が、流石は大魔王の息子、なんとか一命を取り留めていた。

「…チッ。しくじった。」

恐ろしい言葉を残してヨリーナはすたすたと歩き出した。

「人間のような下等な動物と、一緒にしないでくれない?」
と、付け加えて……





                 ◇










「で?バイオを半殺しにしちゃったの?」


家につくなり、母、ホワイト・ハルシアは言った。

「…何で知ってるの?」

ヨリーナは無駄な質問をした事に気付いたが、言ってしまった後では、もう遅かった。

「お母さんに分からないことなんて無いわ。」

こんなセリフを吐く母親ほど恐いものはない。
ヨリーナは合えて深く聞くような真似はしなかった。
ホワイトは魔法界で知らない人はいないだろう影の支配者である。
そんな人の情報ルートなんて聞こうとも思わなかったし、知りたくも無かった。
というか、恐ろし過ぎて、知る勇気がないのだ。


「あ、そうそう。ヨリーナ。留学なんてどう?」

「…えっ!??」

「ヨリーナに行く気があるのなら、アイザに頼んでおくけど…。」

ホワイトはしれっと大魔王を呼び捨てにした。影の支配者だから許されるのかもしれないが。

「あるある!留学って?何処に行くの?フラワーランド?小妖精の集落?」

ホワイトは意味深な笑みを見せた。

「そう…あるのね。十年くらいは戻れないかも知れないわ。」

「そんなに!?」


この世界で言う“留学”は、魔法界とは別の次元(世界)にある国に訪れ、そこで、その国の文化についてレポートをまとめつつ、自分の精神を鍛えるための行事であり、一生に一度は行かなくては、笑いものにされるという過酷(?)なものだったりするのだ。
そこで魔法界のサポートセンターからくる指令をクリアし、ノルマが達成すれば帰ってこれるしくみになっている。
大体留学する年齢は、百七十歳~二百五十歳。
つまり、見た目全然子供の魔法使いの行事なのだ。


「そっか、でも、もう留学してもいい年だし。バイオの顔も見なくて済むし。私行こうかな。」

ヨリーナは決意した。

「わかったわ。」

ホワイトは楽しそうに言った。

「ところで、私は何処に行く予定なの?」

聞くと、

「さァ、それ聞くの忘れちゃった☆」

と惚けられた。


ヨリーナは不安を覚えたが、留学という二文字はそれ以上に希望で溢れていたのだった。



まさかこの時、あんな所に行くことになろうとは、思いもしなかったのである。




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