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Command.0 C


白い結晶、冬だという事を改めて実感する。
「さぶっ。」
ヨリーナは身震いし、家の中へと入ろうとした時、足音がした。
振り向くと、バイオがいた。
「バイオ…。」
「明日…留学すんだってな。」
「うん。これでアンタのバカ口聞かなくてすむし、ハッピー」
ヨリーナは鼻でせせら笑った。
「…。」
バイオの反応がない。
「?そういえば…挨拶しに来てくれたの?」
ヨリーナはバイオの顔をまじまじと見る。
「ばっ…なっ違。勘違いすんなよっ!?俺は親父が行けっつーからムリヤリ…ゴニョゴニョ。」
だんだんしりつぼみになっていく。
「つまり、さよならいいに来たんでしょ?挨拶じゃない。」
「そうとも…言う。」
珍しく素直なバイオ。気味悪いな…。
ヨリーナは思っても顔に出さない子である。
「留学、何処行くんだ?」
「えーっと…分かんない☆」
「は!?」
「知らないんだもん。行き当たりバッタリってヤツ?」
「いいのか、ソレ…。」
バイオは呆れた。
「自分の事だろ。」
「うん…。」
「…。」
「…。」
へんな間が出来た。
「どのくらい留学すんだ?」
「うーん…10年くらいかなァ…よくて。」
「ふーん。」
バイオの様子がおかしい。自分の聞いた事なのに返事がどうでもいいようだ。
右耳から入って左耳へ抜けている。まるで耳がちくわになったかのように。
「バイオ…なにか気になる事でもあるの?」
ヨリーナはたまらず尋ねた。
「あ?いや…えーっと…。」
バイオがもごついている。
「親父が餞別ぐらい渡せって。」
いいながら、可愛く包装してある箱を渡した。
「やる。」
ヨリーナに向かってまっすぐのばす。
「え…あ、ウソ!バイオが私に!?」
「いらねーのか?」
「いるいる!ありがとう。」
ヨリーナは箱を受け取り笑った。
バイオに笑顔を見せたのは初めてかもしれない。
バイオはうつむいた。
「中、見ていい?」
「勝手にすれば。」
「じゃあ、勝手にしまーす。」
ヨリーナは箱を開ける。
3つの、金色に輝く縦長ダイヤ型ピアスが入っていた。
「すごい!輝いてる!!…でもバイオ、私の耳、2つしかないけど?」
するとバイオは一笑にふした。
「馬鹿?今片耳に3つつけんのが流行りなんだよ」
「馬鹿ってなによ。バカって。…ふーん。でも、ありがと。」
片耳に3つピアスをつけてみる。
もちろん、穴はあけず、魔法でくっつける。そのほうが安全なのだ。
「ど?」
ヨリーナは言うと、
「似合うじゃん。」
とバイオは言った。
「…。」「…。」
なぜか2人して赤くなった。
「何赤くなってんだよ。」
「そっちが!」
「…。」
また、変な間が出来た。
でも、さっきとは違う間。

突然、冷たく強い風がふいた。
「さむっ。」
ヨリーナが短く言う。
すると、バイオは自分がまいていたマフラーをヨリーナに巻きつけた。
「え?」
「…。」
「いいよ、一歩歩けば私の家なんだから。」
「今日ぐらい格好つけさせろって。」
「…ありがとう。」
ふうと一息つく。そしてヨリーナは急に冷静になって、
「私達なんか寒くない?」
といった…。
「俺も思った。なんか、今日俺じゃない気分。」
「…あはははは。」
ヨリーナは漫画のように笑った。
「じゃあ、」
「うん。わざわざ、ありがとう…。あ、家寄ってく?ポタージュでも出すよ。」
「いや、いい。」
「そう?」
バイオは歩き出した。
が、数歩歩いて止まった。
そして振り返り、
「ヨリーナ、…またな!」
と叫んだのだった。




              ◇





 ホワイトはヨリーナの頬に指でつんとさした。
「ヨリーナもやるわねェ…。」
「何が?」
「アラアラ、惚けなくていいのよ。母さん分かってるから。」
ウィンクまでしてくる。
「ピアス3つねぇ…しかもこれ純金じゃないの。特殊塗料が塗ってあるわ。サビることはないわね。」
まじまじとそのピアスを見ている。
「そんなに凄いの?コレ。…私が貰ってよかったのかな…。」
ヨリーナは不安になった。
「いいでしょ。」
ホワイトはあたりまえのようにケロリと言った。
「で?ヨリーナはどうなの?」
「どうってなにが?」
ホワイトは面白いものを発見した赤ちゃんのような目でヨリーナを見ている。
「だからー、バイオのことよ。」
「バイオがどうかしたの?」
「もー…やぁねぇ、この子ったら…。」
「?」
「…本気なの?」
「…何が?」
「…ふぅ。」
諦めたように息を吐いた。
ヨリーナはそんな母をみて、どうしてよいものか分からなかった。
「バイオって…」
ホワイトは口を開く。
「バイオってさ、だから…ヨリーナの…まぁ、当人達の問題に…うーん。」
それっきり、考え込んでしまった。
ヨリーナには何が言いたかったのかさっぱりだった…。



             ◇



 「箒はもった?向こうについたら必ず連絡するのよ。」
ホワイトはサポートセンターの空間の狭間で、しきりに声を掛けていた。
今日留学するのはざっと50者くらいだそうだ。
その割にはがらんとしている。
ヨリーナの行く所に留学する魔法使いは他に誰もいないようだ。
最後まで見送りに来てくれたのは、母とレーナ、クリスト、それにレイニだけだった。
「あれ、ヨリーナピアスしてる!」
めざといクリストは、ヨリーナの耳を指差した。
「本当だ。」
レーナも頷く。
「すっごい純金じゃん!高くなかった?」
クリストが耳元で騒ぐ。
「あー…コレ、貰い物だから。」
ヨリーナは微笑んだ。
「誰から?」
レーナが聞く。
「…ヒミツ」
昨日、バイオはわざわざ皆が帰ってから渡しに来たのだ。きっとからかわれるのが嫌なのだろう…と、ヨリーナなりの気を使ってみたのだ。
「なんだ~?なんか怪しいぞー?」
レーナは探るような、しかし“分かるけど”と言いたそうな顔をしていた。



プルルルルルルルル…



ヨリーナの留学先への空間が開かれる。
「それじゃあ、行ってくるね。」
ヨリーナは4人に向かって言った。
「ヨリーナ・ハルシア、門出に幸多からんことを!」
レイニの叫び声に似た声を背に、颯爽と歩く。

ピアスのこすれ合う音だけが、後に残っていた。




To be continued...

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