もりちゃんパラダイスin愛・地球博★

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第三話★ホテルに住む男女の霊★


つまり、大したことありません。

ある日、僕は彼女と一緒に東京某所のとあるぼろっちいホテル(旅館のほうがいいと思う)に泊まっていた。
その旅館の入り口からして不気味で、できれば他のホテルにしたかった。
でも、終電もないし、他はすでにどこも満室。僕らにはそこ以外選択肢はなかった。

受付にはいると、なぜかまだ部屋がいくつか残っている。
しかもどれも安い。
写真を見た限りでは、なかなか広い。
ま、広かろうが狭かろうが、あまり関係ないのだが…。

僕らはその中の一つで、内装が赤っぽい部屋を選んだ。
別に赤が好きなわけではない。
ただ値段が安くて、ボタンが押しやすいところについていたからだ。

部屋にはいると、思っていた以上に汚い、暗い、やけに広い。
こういうところの部屋が広いのって、通常ではうれしいんだけど、今回ばかりは違っていた。
広さが逆に恐怖心をそそる。そんな感じだ。

「べ、べつに、こ、こわくないじゃん。な、なかなかいいじゃん。」僕は言った。
自分が感じている恐怖心を払拭するために、自分自身に言い聞かせている。そんな響きだ。
「そう?わたしは怖い。」
あっさりいってくれちゃうもんである。

「あたし、お風呂は行って来る。」
「おいおい、ひとりでなんか行かせられないよ。」恩着せがましい感じだ。

さて、服を脱いで、服を脱がせて…。
おっと、歯ブラシを忘れた。脱衣所の扉を開けると、僕の目の前を
何か黒いものがよぎった。
はっきりは見えなかったが、40代中盤ぐらいの男だと直感した。
見たわけではないのだが、そう感じたのだ。
しかし、すぐに消えてしまったので、それほど気にはしなかった。

歯ブラシを手に脱衣所へと戻り、歯ブラシの封を開けていると…
あれ?今、脱衣所の扉の向こう側を誰かが横切った。
そんなわけはない。きちんと鍵も閉めたし、他に誰もいるわけがないのだ。
その時僕が感じたのは、恐怖ではなく、むしろ好奇心だった。
僕は脱衣所を飛び出し、部屋の中を見回す。
ベッドの裏や、玄関、トイレと見て回った。
果ては、テレビの裏まで探した。

やはり誰もいない。

おっと、彼女を脱衣所に一人残したままだった。
「何?何?何を見たの?」
「いや、べ、別に…」言いよどむ僕。
「絶対見たはず。何か見たはず。さっさと白状せい!」
と、言いながらぎゅうぎゅうと僕の首を絞める。
こっちの方が霊よりよっぽど怖い。何しろホントに締めてるんだから。

僕が見たものを説明すると、
「やっぱりなぁ、あたしも感じてたんだ。それって40代ぐらいのオヤジでしょ?」
「げっ!なんで知ってる?見たのか?」
「いや、見てないけど、感じてた。特にテレビの裏が嫌な感じだった。」

それ以来、僕らはその旅館は利用していない。
あれ?酔ったあげくに行き場がなくなって、もう一度ぐらいは行ったかな?

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