第 1 幕
近頃父を亡くして ロシリオン 伯爵の地位を継いだばかりのバートラムが家臣のペーローレスとともにフランス国王のもとへ伺候することになり、手柄を立てようと意気軒昂にパリへ出立する。バートラムの母であるロシリオン伯爵夫人に拾われた美しい孤児のヘレナはバートラムにひそかな想いを寄せていたが、身分の違いからそれを告げることができずにいた。おりしもフランス国王が深刻な病気に悩まされていたことからヘレナは優れた医師であった父から受け継いだ秘伝の処方箋で国王を治療し、見返りにバートラムとの結婚を許してもらおうとの目論見を立てる。この計画に感づいた執事の注進を受けてロシリオン伯爵夫人はヘレナに問い質し自分の息子に対するヘレナの強い愛情を確かめ、分不相応な望みを抱いたことに恐縮するヘレナに許しを与えたばかりか必要な費用や人手も出すなどの取り計らいを申し出る。
第 2 幕
知人たちが フローレンス の戦役へ赴くのを横目に、若いからという理由で出陣を許されないバートラムが気落ちしている。ヘレナが パリ へ到着し、「成功したら私の選んだ男性を国王の力で私の夫にしてほしい、その代わり失敗したら報酬は死を」という条件で国王の治療にあたることとなる。治療はみごとに成功し国王は約束通り宮廷にいた若い男たちを呼び集めてヘレナに選ばせ、ヘレナはバートラムをと指名する。バートラムは貧乏医者の娘と結婚など考えられないと断固拒否したが、主君の顔を潰すのかと国王に叱責されてしぶしぶ承諾する。やむをえず結婚はしたもののどうしてもヘレナとの 初夜 の床をともにする気になれないバートラムは用事があるから先に帰宅しろとヘレナにいいつけて国王にも無断でその日のうちにペーローレスを連れてパリを離れ、フローレンスへ出陣する。
第 3 幕
ヘレナから首尾良くことが運んだという知らせを受けて喜んでいたロシリオン伯爵夫人の元へ、バートラムからの手紙が届く。絶対にヘレナとベッドを共にすることなどできないので自分は逃げると述べたその手紙を読んで、伯爵夫人は義憤に駆られる。ヘレナもそこへやってきて、「もしも私の指輪を手に入れて、私の子供を産んでみせればお前を私の妻と認めよう」との無理難題を記したバートラムからの手紙を伯爵夫人に差し出す。手紙を届けた貴族からバートラムの近況を聞き、息子がこのような不実な人間になったのはペーローレスの悪影響に違いないと確信する。落胆しきったヘレナは、自分さえいなくなればバートラムは危険な戦場から戻ってこられるだろうからと言い残して巡礼の旅に出る。ヘレナは旅先で知り合ったキャピレット未亡人の家に泊めてもらうこととなり当地でバートラムが大きな戦功を上げたこと、未亡人の娘ダイアナがバートラムから言い寄られていることなどを知る。そのころ、バートラムの手紙を伯爵夫人に届けたフランス貴族がペーローレスは口先だけの男でありバートラムが信頼するに値しない人間だと忠告し訝るバートラムに証拠を見せようと策を立てる。一方、ヘレナはダイアナとキャピレット未亡人に協力を願い出てこちらもベッド・トリックの作戦を練る。
第 4 幕
軍太鼓を敵に奪われるという失策を嘲弄されたペーローレスは一人で取り返しに行ってみせると出まかせをいい、引き下がれなくなってしまう。自分で服を切り裂いたり傷をつけるなどしてごまかそうかと考えているペーローレスに貴族たちが襲い掛かって目隠しをする。でたらめな外国語を話して敵に捕まったと思い込ませながら、貴族たちはペーローレスをバートラムの前へ引きずり出す。拷問にかけられるまでもなく軍事機密をまくし立てバートラムを無能呼ばわりするペーローレスの姿を見てバートラムもその正体を知り、陣中から追放する。同じ夜、バートラムに呼び出されたダイアナはヘレナの授けた作戦通りに本当に自分を愛してくれるのならばバートラムの指輪がほしい、その代わりに今夜の二人の逢瀬の記念に自分の指輪(実はヘレナの物である)をバートラムにプレゼントするという条件を出す。ダイアナと寝るためならば仕方ないと考えたバートラムはこれを承諾し、ダイアナ(とバートラムは思い込んでいるが実はヘレナ)と一夜を共にする。
第 5 幕
戦役も終わり、バートラムも戻ってきたロシリオンではヘレナはすでに死んだものと思われていた。過ぎたことは仕方ないと諦めた国王や伯爵夫人は、バートラムの申し出たラフューの娘との結婚に許しを出す。誓いの印として指輪を渡すよう国王が言い渡しバートラムは自分の指から指輪を外してラフューの娘に渡すが、これを見た国王はその指輪は自分がヘレナに治療の謝礼の一部として贈ったものだがなぜバートラムが持っているのかと詰問する。そこへダイアナが現われ、バートラムの指輪を示しながら自分との結婚の約束を踏みにじったバートラムを非難する。バートラムへの怒りを再燃させながら、それ以上にヘレナの指輪をダイアナが持っていることにはなおさら納得のゆかない国王にキャピレット未亡人が「指輪の本当の持ち主を紹介する」といってバートラムの子供を身ごもったヘレナを連れてくる。ヘレナはバートラムが以前書き送った手紙を示しここに書いてある通りにしましたと告げ、バートラムは負けを認めて「ヘレナをいつまでも、いつまでも愛します」と国王の前に誓う。国王は「終わりよければ全てよし」と場を締めくくる。
作:ウィリアム・シェクスピア
演出:鵜山 仁
翻訳:小田島雄志
出演:岡本健一 浦井健治 中嶋朋子 ソニン
立川三貴 吉村 直 木下浩之 那須佐代子 勝部演之
小長谷勝彦 下総源太朗 藤木久美子 川辺邦弘 亀田佳明
永田江里 内藤裕志 須藤瑞己 福士永大 宮津侑生
NHKBSのプレミアムステージ
で観ました。
約3時間のノンストップ放送です。
シェイクスピア劇独特のせりふ回しが耳になじむまで1時間弱といったところです。
前半がまだるっこいですが、後半のベッドトリックを目論むあたりから盛り上がります。
終わりよければすべてよしかは、解釈がわかれるところですね。
懐妊して夫婦となったもののその後うまく行くかは、大いに疑問のラストです。
なかなか上演されることがない芝居を観ることができて、ラッキーでした。
問題作を2本も観れて、 すべてよし
です。
参考:
あくまでヘレナが主人公であるため「純情なヒロインが想いを寄せる男性と結ばれる」というハッピーエンドの物語であると見ることもできるが、まったく別の見方もできることがこの作品の解釈を難しくしている。
つまり中世の貴族が貧しい医者の娘との結婚を嫌がるのはむしろ当然であり、『
ロミオとジュリエット
』のように当人たちが愛し合っていても周りが反対するのならともかく国王や伯爵夫人、老貴族など分別ある人々がヘレナを支持するほうが不自然だからである [2]
。
バートラムの視点に立てばはっきり嫌いだと告げている女につけまわされ、皆の前で恥を掻かされたうえに陰謀によって既成事実を作られて無理やり結婚させられるという バッドエンド
になるのである。それまで描かれてきたバートラムの性格を考えても、その後 2
人が幸せに暮らしたという保証が作品からは得られない。
批評家のあいだでもバートラムに同情的な者(
サミュエル・テイラー・コールリッジ
など)と批判的な者(
サミュエル・ジョンソン
など)に分かれる。
また荒唐無稽なストーリーと、登場人物たちの現実的で時にシニカルな性格描写の分裂も明らかである。シェイクスピアの初期の喜劇作品にはありえないこうした矛盾がこの作品には目立つので、単純に喜劇として分類しがたい作品として「 問題劇
」というカテゴリが案出された。
(ウィキ)
終りに見た街 2024年 2024.09.26 コメント(2)
ドキュメントJ お寺と戦争と私 2024.08.14 コメント(2)
戦艦大和 封印された写真 ETV特集 2024.08.11 コメント(2)