むらきぃの司法試験受験勉強記

むらきぃの司法試験受験勉強記

PR

×

Profile

むらきぃ

むらきぃ

Comments

シニア層@ Re:大村敦志『新基本民法7 家族編』[第2版](04/07) シニア層の知りたいことは、0896244450 …
もきち@ Re[1]:はじめまして(10/04) むらきぃさんへ 返信ありがとうございま…
むらきぃ @ Re:はじめまして(10/04) もきちさんへ はじめまして。 コメント…
もきち@ はじめまして はじめまして。 基本書を検索していて、た…
葵新伍@ 伊藤靖史・大杉謙一・田中 亘・松井秀征『会社法(LEGAL QUEST)』(04/24) 三版は誤記誤植が沢山ありとても読みにく…

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索

2019.03.31
XML
カテゴリ: 過去問の教材

平成25年短答式試験問題[刑事系科目]〔第20問〕

 次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
【事 例】
 甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れているのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態ではなかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,①大きさや重さは五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,②クレジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手書きで書かれ,磁気ストライプらしい黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1枚を見付けた。甲は,①の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。また,②の白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カードを自宅に保管しておいた。
【記 述】
1.甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。
2. (略)
3. (略)
4. (略)
5. (略)

【解説】

1 誤っている


(1)西田・各論28頁



さすがに,法科大学院の未修1年次の学生でも,この解説のようには間違わないのではないでしょうか。

単純遺棄罪(刑法217条)にいう遺棄とは,被遺棄者を場所的に移転させること(移置。安全な場所から危険な場所,危険な場所から更に場所を移すこと)をいいます。

一方,保護責任者遺棄罪(同法218条)にいう遺棄には,被遺棄者を場所的に移転させること(移置)のほか,置き去りのような被遺棄者を危険な場所に遺留して立ち去る行為も含まれると解されています(前田雅英 編集代表『条解 刑法』[第2版](弘文堂,2007)596頁以下参照)。

そして,このような理解が判例・通説の立場であるとされています。

これを本事例についてみると,甲は重傷を負ったAを放置して立ち去ったにすぎず,Aを場所的に移転させてはいないため,甲には単純遺棄罪は成立しません。



しかしながら,本問では,甲の罪責を判例の立場に従って検討することとされているため,判例の立場に反して,単純遺棄罪にいう遺棄に置き去りも含めて甲の罪責を検討することは許されません。

したがって,単純遺棄罪にいう遺棄には移置のみならず置き去りも含まれるとする上記解説は,明らかに誤っています。

なお,上記解説には西田・各論が引用されていますが,同書に誤りがあると誤解されるといけないので,以下に該当箇所を引用します(西田典之『刑法各論』[第四版](弘文堂,2007)28頁以下)。

「通説・判例によれば,217条,218条にいう『遺棄』とは,要扶助者を場所的に移動させることにより新たな危険を創出する場合(移置=作為犯)と,保護しなければ生命の危険が生じうる要扶助者を放置したまま立ち去る場合(置き去り=不真正不作為犯)を意味するが,いずれも行為者と要扶助者との間に場所的離隔を伴う場合である。…(中略)…しかし, 通説は,これらのすべてを処罰すべきであるとはしない。不作為による遺棄については,218条の保護責任者遺棄においてのみ処罰可能だとするのである。 その理由は,『置き去りのように不作為犯的形態のものが遺棄罪を構成すると考えられるのは,つまりは,行為者に保護義務のあるばあいだからである』として,218条にいう保護責任と不作為犯における作為義務との同一性に求められている(団藤453頁,大塚59頁)。 判例も,218条の遺棄には置き去りを含むことを認めているが(最判昭和34・7・24刑集13巻8号1163頁〔26〕),他方,不作為による単純遺棄を認めた例がないから,通説と同様の立場をとるものといえよう。 」(下線筆者)

これを見る限り,おそらく,上記解説の執筆者は,中略部分より前の箇所だけを読んで,単純遺棄罪における遺棄には移置のみならず置き去りも含まれると解説しているのだろうと予想されます。

しかし,下線で示した部分を読めば分かるように,西田・各論においても,判例・通説は単純遺棄罪における遺棄には置き去りは含まれないとする立場を採っているという内容が明確に記述されています。


ちなみに,本問の解説の執筆者は,本問について以下のようにコメントしています。

比較的短文の事例についてどのような犯罪が成立し、あるいは、どのような犯罪が成立しないかという点を検討させる形式である。個々の犯罪の構成要件について正確な理解のみならず、当てはめに際しての的確な判断が求められるが、法科大学院教育との関係では些か平易に過ぎる設問ではなかったかと思われる。

本問の解説の執筆者は,現役の法科大学院の実務家教員であるにもかかわらず,上記のような誤った解説をしたうえで,本問を些か平易に過ぎると評価しています。

私は,上記の解説やコメントを読んでいたら,このような教員に教わらざるを得ない法科大学院の学生のことが不憫にさえ思えてきました。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2019.03.31 08:00:17
コメント(0) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: