MY HIDEOUT ~私の隠れ家~

Jan 20, 2008
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カテゴリ: 映画鑑賞記録
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監督、脚本・・・アンドリュー・ドミニク
原作・・・ロン・ハンセン
ナレーション・・・ヒュー・ロス
出演・・・ブラッド・ピット ジェシー・ジェームズ
ケイシー・アフレック ロバート・フォード
サム・シェパード フランク・ジェームズ
メアリー=ルイーズ・パーカー ジー・ジェームズ
ジェレミー・レナー ウッド・ハイト

ズーイー・デシャネル ドロシー
サム・ロックウェル チャーリー・フォード
ギャレット・ディラハント エド・ミラー
アリソン・エリオット マーサ・ボルトン
マイケル・パークス ヘンリー・クレイグ
テッド・レヴィン ティンバーレイク保安官
カイリン・シー サラー・ハイト
マイケル・コープマン エドワード・オケリー

・物語序盤・
南北戦争が北軍の勝利で終結した19世紀後半のアメリカ。
ジェシー・ジェームズと兄フランク達は、ゴロツキ連中と徒党を組んで、多くの強盗や殺人を犯した、無法者の重罪人だった。

そして彼等が強盗を犯すようになって、15年余りの月日が流れた1881年、ジェシーは34歳になっていた。
妻ジーと二人の子の父となっていたジェシーは、お尋ね者故に、常に偽名を使い、富裕層の紳士を演じつつ、転々と住処を変える生活を送っていた。
フランクや仲間達と共に、新たな列車強盗の計画を立てていたジェシーの前に、彼を崇拝する19歳の若者ロバート・フォードが現れ、彼等の右腕として働きたいと懇願する。
ロバートは一味の一人チャーリーの末の弟だったが、臆病で愚鈍な印象を与える男であり、フランクは歯牙にも掛けない。
しかし気紛れな性格のジェシーは、二つ返事でロバートを一味に加える。




アメリカ西部開拓時代の伝説的アウトロー、ジェシー・ジェームズと、彼を背後から射殺した卑劣な裏切り者として名を残したロバート・フォードを描いた作品。

しかしジェシー・ジェームズと聞いても、殆ど現代の日本人は彼の事を知らないのではないでしょうか?
私も全く知らない人物でした。
因みに父に訊くと知っていたので、西部劇が盛んだった頃に映画に馴染んでいた、年齢の高い世代には、詳細は知らずとも名は知れているという存在の模様。
アメリカ人なら今でも、きっと誰でも知っている有名人なのでしょうね。
基本的に映画は、彼を知っているという事を前提に作ってあるので、知らない者が観るには不親切な部分も多々あります。
要するに、日本の時代劇をアメリカ人に見せるようなもので、日本人なら解説なしでも歴史的知識として持っているので問題は無いけれど、アメリカさんにしてみれば、懇切丁寧に教えてもらわなければ、ほいほい話を進められてもなぁ…という感じ。
上映時間自体は、通常より少し長めなのですが、人物の心の動きに重点を置いているので、実際にあった出来事や実在の人物については、ナレーションのみでさらっと流されてゆきます。
この辺が、日本人にはネックになるかな、と思いました。

とは言え、ブラッド・ピットの成りきり度はかなりなもので、研究に研究を重ねて、伝説的ヒールを熱演したなという事は伝わりました。
そしてもう一人の主役(というより、彼が本当の主役です)、卑怯な暗殺者として汚名を残したロバートを演じたケイシー・アフレックの演技が、また見事でした。
ジェシーを追い続けるロバートの想い、その時々で色を変える微妙な心の変化が、手に取る様に判りました。
因みに、ケイシーはベン・アフレックの弟。顔立ちが似てますね。

ジェシー・ジェームズはヒーローで、彼を射殺したロバート・フォードと兄は卑怯者と見做されてしまったのが気の毒でした。
実際のジェシー達一味は、別に弱者の味方でも義賊でもなく、強盗・強かん・窃盗・殺人、その他、凶悪犯罪と名の付くものなら何でもやってきた、札付きの悪党共な訳で、本来なら彼が殺されても当然で誰も同情しない筈なんですが。
そこに南北戦争の敗者である南部の者達の、反逆精神の象徴というようなイメージが付いて、彼のエピソードには尾鰭が付いて大袈裟に賛美され、虐げられし民衆の味方というヒーロー像が出来上がった訳です。
現実問題として、ロバート達は警察からは圧力を掛けられ、ジェシーからも裏切り者と目を付けられ、もし彼を殺さなかったら、自分達が殺されていたでしょう。
危険な板挟み状態にあって、選択肢の無かったロバート兄弟の立場を思うと、非難されるのは可哀想ではないかと思いました。
そんなにジェシーは偉大で、そんなにロバートは卑怯だったのか?
映画では、ジェシーが背後から射殺されるシーンは、美化されております。
壁に掛かった額縁の歪みを直そうとしたジェシーは、一瞬ガラス越しに、ロバートと視線を交わしているのですよね。
つまり、殺される事を事前に見越していた。
その為の立派な拳銃まで、ロバートに用意して与えていた、という風に映ります。
しかし現実的に見れば、この事件は、暗黒社会で頻繁に行われる、邪魔者の排除の一つでしかなかったのではないでしょうか?

アウトロー達の物語ですが暴力的なシーンは殆ど無く、映画自体は全編通じて、非常に静かで淡々としています。
娯楽として観るような映画ではありません。
退屈とまでは思いませんでしたが、特に盛り上がりも無く、ロバートがジェシーと出会ってから、暗殺に至り、死を迎えるまでの短い期間を、彼等の内面を追って、丁寧に描いた作品です。

ジェシーの伝説に憧れ、幼い頃から彼の物語が書かれた、好い加減な三文小説を信じて愛読書にしていたロバート。
彼は家族の中でも、愚鈍で臆病な男と馬鹿にされ続け、何とか認められようともがいている。
ジェシーの気紛れで、一味に加わり、その後一時期、彼の傍で生活できたものの、それも結局はジェシーの気紛れでしかない。
ロバートは最後まで、ジェシーにも仲間にも家族にも、評価され賞賛される事は無かった。
ずっと憧れ続けてきた人物から、お前は一緒に居る者を不安にさせ、落ち着かない気分にさせる奴だと言われるのは残酷で悲しい。
確かに彼は、性格が暗くて、おどおどしていて、陽気に振る舞ってみても技とらしくて、一緒に居るのが厭になるタイプではあるのですが…。
一方、ジェシーも斑気で、感情の起伏が激しく、苛々している時は八つ当たりしたりと、リーダーとして付いてゆくには、気難しい性格の持ち主。
古馴染みでも、自分を金目当てに裏切ったのではないかと疑えば、簡単に殺してしまいます。
この辺は、アウトローの世界では日常茶飯事ではありますが。
これも裏社会に長く生きていれば当り前の事ですが、誰一人信じられず、仲間に対しても常に目を光らせ、ピリピリと神経を研ぎ澄ませて、心安らげる暇がありません。
幼い我が子達と過ごしている時ですら…。

個人的には、ジェシーが殺されてからの方が興味深かったですね。
一躍有名人となり、ジェシー暗殺場面の芝居をやらないかと、声を掛けられたのでしょう。
ロバートとチャーリーは、何百回も舞台に立ち、彼を撃ち殺すまでの経緯を大衆の前で演じました。
当時の大統領より有名だったというナレーションがありました。
しかし結局、卑怯者として世間から誹られ、精神的に追い詰められた兄チャーリーは拳銃自殺。
ロバートは懸賞金と興行で稼いだ金で、酒場のオーナーになったものの、人々の白眼視に曝される毎日。
誰よりも崇拝していたのに、自分もジェシーのような男になりたいと願っていたのに。
そして、本当は殺した事を最も悔んでいたのに…。
後に、ロバート自身は、かつてのジェシーの仲間によって殺害されます。
映像そのものも、寒々しい色合いに満ちていましたが、観終わった後に、苦々しく沈痛な気持の残る、なんとも寂しい映画でしたね。

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最終更新日  Jan 28, 2008 10:37:12 PM
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