人生で大事なことはみんなノムラで教わった

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バブルマン1983

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Nov 3, 2006
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だいたいこのノートに200件~250件の新規先を貼り、ひたすら電話して10件程度のアポを取り、アポを10件~20件程度こなせば1件位新規の客が出来たような気がする。当時はこのやり方はものすごい効率が悪い気もしたが、近頃ノムラ出身の社長がいる「エリア何とか」っていう新興の不動産仲介会社も、ものすごい勢いで若手の営業マンが手当たり次第に企業に電話してくる。全く同じ手法だろうが、この会社の業績を見ると、営業が基本の会社にとって本質的な営業のやり方は何も変わっていないような気がしてならない。

さて、当時のノムラの客はせいぜい持って1年程度だったろうか。そう顧客の「寿命」がである。トラの穴や都内の大店ではもっと早く客を「殺して」いたから、ほとんどの営業マンは毎日のノルマに追われるので、「黙テン」や「一筆」「保証商い」でノルマをこなす一方、当然そんな「無茶苦茶」な商いだから次々と客を殺しながら、その一方で新規開拓をこなして行かないと過酷なノルマにはとうてい耐えられない。客がゼロになってノルマの達成が全く困難になると新規の開拓に専念できそうなものだが、組織としてなのかそれとも伝統なのだろうか、当時の出来ない営業マンに対する「苛め」は想像を絶する過酷なものだった。

だいたい支店長や次長や課長などの上司は、犯罪者中の犯罪者であり若手の誤魔化しやトボケなんか全てお見通しだから、「ツメ」(ノルマの確認・催促)に要する手練手管や、言うことを聞かない反抗的な部下の締め方や仕打ちの種類なら数限りなく持っている。このノムラという組織のせいも当然あるのだろうが、昔は根性という合言葉が普通にまかり通り、シゴキも普通の弱小運動部でも、練習中には全く水を飲ませないとか、少年野球でも「けつバット」で叩いたり、平手打ち程度は当たり前で、「理不尽な指導」や「無意味な制裁」も当たり前だったが、今では直ぐにPTAや保護者がてきたり、教師も事なかれ主義も多くなったし、社会人になれば異性間でなくても「セクハラ」で直ぐに訴えられたりすることも含めて、社会の変化というか、こんな体質は根付か無くなったのかも知れないし、今のノムラはこんなことは全く無いという。が、80年代のこのノムラは決して誇張など無くありのままでこんな感じだった。

そんな陰湿な苛め体質の中、同期のT中は群を抜いて変わっていた。いつもろくな客もいないから彼は必ず新規の電話外交をしていた。「もしもし、私、ノムラ証券の、虎ノ門支店の、T中と申します。はい。初めてお電話させていただきます。経理部長さんいらっしゃいますでしょうか?」って、昔、物まねで有名だった江戸屋猫八師匠のような、何とも鼻にかかった芝居じみた同じ台詞で電話していた。ゆっくりと、単調な言葉使いで、横で聞いていても声に抑揚が無いというか、緊張している様子など微塵も無く、小学生の国語の朗読に近かったと思う。で、断られたりするとガチャンと電話を切る。誰かに取り次いでもらうと、平社員だろうが、課長だろうが、「えぇ~~~私、ノムラ証券のT中と申します。御社のご資金の運用の件で。一度是非お目に掛からせていただきたいと思いましてぇ~。お電話をさせて頂きましたんですが・・・」

断られても断られても電話をする。これは全営業マンの修正で、とにかく日常のノルマから逃げるためには新規客を作り続けるしか無い。運が良ければアポがもらえるが、この新規の電話外交も結構慣れるのに神経を使った。新人で世間知らずの人間にとって、対面で無いとは言っても、断られても断られても新規に電話をするのはまともな神経ではとてもつとまらない。私も最初から非常に苦痛だった。電話口に経理部長などが出てくれるととても嬉しく、一所懸命話したものだし、ましてアポが取れると本当に嬉しかった。しかし、T中は変な話し方で電話をしているが、断られても断られても全然平気な顔をしてひたすら電話していた。こいつの神経の異常さが出ているのかと思ったが、実は彼には秘密があった。

それにT中は顧客はいつも1件か2件しかいないから、それでもその客が何故か大口客で、それにその客はY田課長が管理しているから、何故か1年目の後半から普段はあまり仕切り玉やノルマの消化には苦労していなかった。課長が勝手に客に電話して商いをするから、こいつだけは新規開拓に専念していれば良かった。時々大口客が言うことを聴かない日などは課長の機嫌が悪いから、コツコツと1000株単位でノルマを積み上げる他の営業マンの手前もあるから、怒鳴られてノルマ消化の電話をしているフリもするが、どの道顧客がいないんだから自分で商売など出来るわけが無いから、時々怒鳴られるだけで、結局はずっと新規開拓だけをしていた。

では真面目に電話しているかというと、実際に新規のリストに従って電話しているのは1日に恐らく10件程度で、100件以上電話しているふりはしていても、こいつはほとんど実際には電話をつなげていなかった。天気予報か時刻案内に電話して、独り言を繰り返しているか、左手で受話器を持ちながら右手の指で番号をプッシュするのだが、左手の受話器を持った手で電話機の受話器を置くスイッチを押しながらプッシュしてもそんなものは電話が掛かるはずが無い。こいつはいつも電話をつなげずにプッシュボタンを押し、掛かったフリをしながら受話器に向かって同じ事を繰り返していた。だから同じ台詞で、全く神経を使っている様子も無く平然と新規電話アポ取りが出来たのだ。

しかしである。T中は不思議と大物を釣り上げてきた。突然大口のアポを取り2度目には必ず課長同伴で訪問し、新規の客で10億円単位の現物の買付け注を取ってくる。いくら当時の虎の穴でも、確定利付きの新発のCBや外貨建てCBと中国ファンドの抱き合わせ商法の短期運用でもなく、変動商品のまして株の買付け新規資金導入で一発買いである。しかもこの男は何度かこういう大業をやってのけてきた。不思議な男だった。(続く)





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Last updated  Nov 3, 2006 09:40:29 PM コメントを書く


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