Nami*のほほんルーム*

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与えられた時の中で 前編


Q、その人の心の記憶の中で居続けたいですか?
Q、あなたにとって「幸せ」とはなんですか?
そんな質問にあなたならなんと答えますか?
彼女は答えを探している。彼女の求める答えを言ってくれる人を・・・。

きっと、また会おう。僕は君を必ず見つけてみせる。たとえ何十年たっても、君は今のままで、僕だけの時が進んだとしても・・・。絶対に僕たちは向こうで幸せになろう。ここで幸せになれなかったから・・・。僕の幸せは━━━、だから。僕は君を見つけるから、君に待っててほしいんだ。
そう言って、若い二人は誓った。愛し合う二人を誰も認めなかった。そして、彼女の時の流れだけが止まった。彼の時は進み続けた。

「あなたは、青の世界で与えられた時をすべて使い果たしました。」若い女が言った。彼女はもう、何十年もこの青の世界と白と黒の世界の境目のこの地に立っている。彼女に与えられたのは、『シェア』と言う名と青の世界を終え、やって来た者に進むべき道を教える使命だった。
「与えられた時の中であなたは人間として他の人を傷つけることなく生きてきました。なので、あなたは白の世界に進むことが許されました。あなたにとって、白の世界で幸せが待っていることを心からお祈りしています。」とシェアと呼ばれる彼女が言った。
青の世界はその者が誕生し初めに過ごす世界。与えられた時を終えた者は白と黒の世界に分けられる。その分ける仕事をするのがシェアたち神の使者だ。神様から、終えた者のデータが届き使者たちが良き行いをして来た者には白、悪き行いをして来た者には黒の世界に行くように指示することになっていた。

シェアに白の世界に行くように言われ、その世界に続く白い大きな扉を開けようとする者に
「質問してもいいですか?あなたには大切な人が居ますか?」と聞いた。
「はい、俺のことを愛してくれた人です。俺も愛していました。その人が俺にとって大切な人です。」と答えた。これこそ、シェアが求めていた答えだった。『もしかして?!』と思い二つ目の質問をした。
「あなたはその人の心の記憶の中で生き続けたいですか?」と聞いてみた。その答えは、
「もちろんです。俺も忘れませんから。」とはっきりと言った。これも同じ・・・・。最後の質問をした。
「あなたにとって『幸せ』とはなんですか?」
「俺にとって、幸せは・・・・愛する人が笑っていることです。その笑顔を見ることが俺の幸せです。」その男は、その愛する人を思い浮かべながら言った。『ちがった・・・。最後の質問だけが・・・。』シェアは一瞬、悲しそうな表情になった。彼もなぜか悲しそうな顔をしていた。
「でも、その人は今、笑っては居ないんです・・・。俺は病気で死んでしまいました。」と話し出した。シェアは慌てて、そのデータを見る。確かに彼は病死だった。しかし、これは運命だったのだ。はじめから、神様に与えられた時間だった。だから、もう、あたしには何も出来ない・・・とシェアは思った。そして、彼は続けた。
「俺が、死んでもあいつには笑顔で居て欲しいんです。俺はそのほうが幸せだって・・・。あの、お願いがあります。もし、あいつが俺を追いかけてなんか来たら追い返してください。そんなことしても、お前は幸せにならない。俺も幸せじゃない。俺のために笑って生きてくれって伝えてもらえませんか?」真剣に彼はシェアに訴える。シェアは彼に少し待つように言ってどこかに走っていった。

「神様、さっき来た彼の彼女の与えられた時はいつまでですか?終える時はいったい、いつですか・・・」シェアは神様のところに行っていたのだ。神様は、
「それを言うことは出来ないのじゃ。お前も知っておるだろ?掟なんじゃ。しかし、まだその時ではないとだけは教えてやろう。」と言った。神様は優しく、走っていくシェアの背中姿を見ながら微笑んだ。そして、お前の求める者もまだじゃ。お前のすべての過去を返すのもなぁ・・・。と呟いた。

「お待たせしました。はい、ちゃんとお伝えします。だから、あなたは白の世界に進んでください。そこで、あなたの幸せを願っています。」と伝えると彼は安心したように大きな扉の向こうへ向かった。微笑みながら見送ったが扉が閉まると、急にシェアは寂しそうな顔をした。
もう、何十人、何百人、それ以上の人に同じ質問を繰り返していた。一つ目の質問が彼女の求める答えだったら、二つ目の質問をした。そこまでは、合ったとしても三つ目が合うことは今までなかった。まさかと思ったのに・・・・。最後の質問の答えが何かシェアにも分からなかった。シェアには昔の記憶がない。唯一、覚えている言葉があったが、『僕の幸せは・・・・』の後が思い出せない。その言葉を言ってくれれば、思い出せるだろうと考えていた。その人をシェアは探していた。

ここに来るのは人間ばかりじゃない。動物など、命あるもの全ての者がこの地にやって来るのだ。
ある日、やって来たのは年老いた鳥だった。
「あなたは、鳥だったのですね。大空をあなたは命ある限り羽ばたきました。雨の日も風の日もきっと、辛いこともあったでしょう。」とこの地にたどり着いた鳥にシェアは言った。
「いろいろありましたねぇ。でも一生懸命、生きたと胸を張れますよ。」その鳥は、自信たっぷりに答える。
「そうですね。あなたは白の世界でも、一生懸命過ごすことが出来るでしょう。神様は青の世界でのあなたを見ていましたよ。」といつものようにシェアは笑顔で言った。そして、
「あなたには大切な人がいますか?」と聞いた。
「はい、人ではなく風です。風は私が飛ぶのを手伝ってくれます。時には機嫌が悪くなって、大暴れをしますがね。それでも、私にとって大切な存在ですよ。」と鳥は答えた。そして、鳥は白の世界に続く大きな扉の向こうに飛んでいった。
シェアが質問するのは、人間だけじゃない。動物にだって質問する。そして、求める返事じゃなくていつも悲しむのであった。いったいシェアの求める人はいつ現れるのか・・・。

それから、またこの地にやって来た者が居た。その人は、まだ十代くらいの若い女の子だった。彼女の周りには暗い何かが漂っていた。
「あなたは、人間でしたね。・・・・・。」暗い彼女を見て、シェアは神様からのデータを確かめた。そして、優しく、聞いてみた。
「どうして、あなたは自殺なんかしたの?」と。彼女は自分で自分の時を止めたのだ。
「・・・生きることに疲れたから・・・・大好きな人はあたしを置いて先に行ってしまったんです。私も彼の元へ行きたい・・・。お願いです。彼に会わせて下さい・・・・。」彼女は疲れきったように言った。シェアはデータに目を通した。
「残念ですが・・・。」とシェアは悲しい声で言った。
「どうして?私には、彼が必要なんです。彼が居ないのに生きていくなんて出来ません。」
「あなたはまだ、青の世界での時が残っています。白の世界に行くことは許されていません。」
彼女はその場で泣き崩れてしまった。シェアは優しく言った。この人は前に伝言を頼まれた人の彼女だと気がついたから。
「伝言があるの・・・。彼からあなたへ。『もし、あいつが俺を追いかけてなんか来たら追い返してください。そんなことしても、お前は幸せにならない。俺も幸せじゃない。俺のために笑って生きてくれ。』って言ってましたよ。だから、青の世界に戻りましょう。」
彼女は、泣きながら「うん」と頷いた。そして、彼女は青の世界へと帰っていった。彼女の時は再び進みだす。白の世界に行って初めて、本当の青の世界を終えるのだ。

残念ながら、ここへやって来るのは、白の世界に向かう人ばかりではない。シェアも何人もの人を黒の世界に送った。黒の世界に向かう人へ質問をしても、みんな、
「大切な人なんか居ない。俺は一人だ。」と答えるのだった。そのたびに、シェアは悲しい思いをした。そして、どうか黒の世界で青の世界の罪を認め、清き心を取り戻し、今度は大切な人に出会うために、青の世界に再び戻って欲しいと思うのだった。黒の世界の人は罪を洗い流せば、生まれ変われることが出来る。白の世界でも、未練がなくなれば、青の世界で新しく時を与えてもらえる。白の世界と黒の世界は、休息地点・再出発の場所とも言えるだろう。


与えられた時の中で 後編につづく。

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