
土門は『別離』の儀式をどのようにしようか思い悩んだ。生涯の付き合いを望み、マンション以外では土門に抱かれる麗子は、別れと自立は全く別個のものとして考えており、土門と別れる気は毛頭ない。
別れの方法を模索する土門は、周囲の人たちの力を借りる以外にないと思った。そこで麗子が一番信頼する妹の愛子を動員することにした。以前から土門との関係を苦々しく見て来た愛子を通して、土門を排斥する算段を目論むことにした。
土門は愛子のマンションを訪ねた。麗子をいつも厳しく叱責する愛子であったが、土門には穏やかな表情を向ける。土門は過去の女性遍歴や離婚の意志のないこと、麗子とは単なる浮気であったことを話した。
「姉は土門さんが好きということだけで離婚しました。でもあなたと一緒になりたいとは一度も言いませんでした。そんな姉に随分苦言を言って来ましたが、私の言うことなど全然聞いてくれなかった。一途な姉を見ていると女の幸せなんてきれいごとでは測れないものなんですね。最近は姉の生きざまに羨ましさを感じているんですよ」
「愛子さんは僕たちの関係を認めていなかったでしょ」
「確かに常識からすれば反対でした。でも男と女の愛は常識が通用しないことがわかりました。ですから土門さんと姉が今後どうなって行くのか見届けます」
愛子の意外な言葉に驚きを隠せない土門であった。後日、愛子を訪ねたことを知った麗子は土門を激しく叱責した。
「確かに子供と三人の生活を考えている。一緒に暮らすのは三人だけどあなたとは一生繋がっていたい。どんな形でもいい、あなたの女でいたい」
麗子の言葉に土門は戸惑った。錦糸町の麗子は『打算の女』に変身したが、土門に心情を語る麗子は我孫子時代の『純粋な女』であった。
別れることが大事なのか疑問に感じる土門であった。関係を続ける損得、別れてしまう損得、どちらも大勢に影響はない。このまま関係を続ける方が人生楽しいに違いない。土門の心に自分勝手な邪心が疼き始めた。
土門と麗子は実ることのない関係をさらに一年間続けることになる。そして中国から子供たちも呼び戻された。
(第2章に続く)

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