6.王子と王女



宴はまだ続いている
誰もいない静かな廊下でネフェル王女の声が響いた
ハルノートンがゆっくりと振り向く

「どうしたんだい?ネフェル」
「先ほどのアナタはアナタらしくなかったわ・・たかが侍女一人のために・・・」
「一人のために?」

ハルノートンの優しい眼差しに思わずネフェルは目をそむけ

「・・・・」
「何を心配しているんだい?」
「何も・・心配なんて・・私・・」
「君は誰よりも美しく気高い・・自信を持つんだ・」
「ハルノートン、本当に?本当に私だけを?」
「・・あぁ・・だから宴にお戻り・・」
「えぇ。アナタは?」
「少し夜風にあたって行くよ・・少し酔った」

ネフェルの後姿を見送る

「ティティ・・か・・」


前ファラオの娘であり、絶世の美女であるネフェルと現ファラオの第一王子であり、人々からの人望も厚いハルノートン・・二人はいつしか将来のエジプトを支える二人として育ってきた。つまりファラオと、その妻として・・
特にハルノートンに対するネフェルの愛は強く、情熱的であった。

ハルノートンの心は・・?人前で感情を露わにすることが滅多にないため、真意はわからないが誰もが「ネフェル王女を拒否する理由なんてない」と思っている。

普段は冷静沈着な王子が今夜の宴で突然セナトスの舞を止めたことは誰もが驚くことであり、ネフェルが不安になるのものも無理はなかったのである・・
そして、王子自身もそんな自分に戸惑い、夜風にあたっていた・・

セナトスの度重なる無礼に対して憤りを感じたのか?
それとも・・?




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