りらっくママの日々

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2010年01月12日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ71(酔いの悪夢2)」




イシタニくんの手が私の手を包んだ途端、
私の体が一瞬で女に変わった。

イシタニくんに抱きしめられたような感覚がして、
体の力が抜けたように、
いてもたってもいられない欲求が私を満たしていく…

そんな私の体をわかってるかのように、
イシタニくんの手が力をこめる。
ジワリと体が疼いた。

体と思考が切り離されたように、
私は自分の体の状態と、
現実の様子を見ていた。

イシタニくんは、
私の反対隣にいるヤマベくんと平気な顔で話していて、
こっちの方を見ようとさえしないで笑っている。

でも手だけは、
動かずに握る手だけは、
狂おしい位に私を求めていた。

どうしてそれが私にわかるのかが、
わからない。


いけない


そう思ってるのに手は動かないし、
言葉も出てこない。

何よりも信じられないことに、
そんなことをされてるのに、
モリタさんたちの会話を聞いているフリをしている私がいる。

周りに悟られないように、
何も起こって無い顔をして、
コレが私なの?
と、自分を眺める私がいる。

大きな鼓動の音がする。
頭の中が冷静に、
パニックを起こしていることを理解している。

私の何もかも、
全ての感覚をイシタニくんの手が支配してしまっていて、
モリタさんたちの会話の声が届いてこない。
誰の声も届いてこない。

みんなが笑ってる顔、
懸命に話してる顔、
グチってる顔だけを視覚が捉えるけど、
手の感覚が鋭すぎて、
他の感覚が麻痺してるみたいだ。
触覚が全てを支配してるみたいだ。

この人が欲しい
この人が欲しい
この人が欲しい

体が叫び出した。

お願いだからやめて!

まるで時間が止まったかのように、
私の手の感覚が、
イシタニくんの手の意思に応じようとする。
そして、体だけが彼を求め始めて暴走するのを、
心が必死に止めている。

モリタさんが私の顔を見て、
口を動かしているのがわかった。
スローモーションのように見えた。

「…さん?
どした?
ミゾグチさん、どしたの?
酔った?」

ようやく耳にその言葉が届いた時、
スッと金縛りから解けたように、
イシタニくんの手がサッと離れた。

「…え?
あ…」

いきなり聴覚が戻ったので、
ろれつが回らない。

「ホント、
酔ったみたいで…。
ちょっとトイレ行って来ます。」

慌てて笑顔を作って立ち上がりながら、
私はイシタニくんの顔をチラリと一瞬見た。

その表情に、唾をゴクリと飲み込んだ。

足が少しよろけて、
イシタニくんが急いで支えようとしたのを、
ふらつきながら避けて、
私は慌てて座敷から出た。

後ろを見ると、
モリタさんたちの心配そうな顔が見えたので、
大丈夫です、って笑ってお辞儀する。

座敷から離れた廊下で、
必死で息を整えた。

私の手は震えていた。

一瞬見た、イシタニくんの表情。

うつむいて手を見ていた。
驚いてるのがわかった。
自分がしたことに驚いているのがわかった。

私と同じ感覚をイシタニくんが感じていたとしたら…

そう思うとゾクリとする。

怖い…

何か恐ろしい何かに飲み込まれてしまった気がした。

アレは何?

確かめたい気持ちと、
確かめちゃいけないと思う気持ちが交差する。

トイレに入って鏡を見ると、
私の顔は目が血走っていて、
いかにも酔って赤いのに、
肌は、うっすら白く見えた。

口紅がとれているのに、
唇が妙に赤い。

自分なのに、自分じゃない女みたいだ。

熱い。
鼓動が妙に早い。

この体は誰?

飲んでるせいだからだって思った。

私も。
イシタニくんも。

特に彼は、ひどく酔っ払ってたから…。

そう自分に言い聞かせる。

それでも手が、
私の手が、
まだあの時の感覚を覚えていて、
その感覚を思い出すと、
更に体がジワリと熱くなった。

どうしてこんなことが…


握られていた時は思い出さなかった青山くんの顔が浮かんだ。

苦しくなって、
今あったことを消してしまいたくて、
私は石鹸で思いきり手を洗う。

それでも手の感覚は取れない。
そんなことはわかってる。

だけど洗う。

ゴシゴシ洗う。

何とか落ち着いて、
私がトイレから出ると、
ちょうど向かいにあった男性用のトイレの扉が開いた。

イシタニくんだった。

胸がズキリと痛んだ。

何か言い出そうとして、
声にならないイシタニくんの顔。

驚いたせいで通り過ぎようとした私の足がよろけた。

支えようとしたのか、
引き寄せられたのか、
よくわからない。

私の体は強くイシタニくんに抱きとめられていた。

イシタニくんの目に戸惑いとあきらめが見えて、
同じように何かをあきらめた自分がいた。

もう逃れられない

私の体がフワリと溶けた。

イシタニくんの舌の感触がする。




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2010年01月12日 21時34分38秒
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