ここのところ精神的に参っているのか夢を見やすい。
肉体的な疲労なら夢を見ることもなくぐっすり眠れるんだろうけど、精神的な疲労ってやつは厄介だ。
昨日も不思議な夢を見たのである。
朝からの雨がずっと続いていて・・・・夕方には風もざわつきだした。
私は田植えの済んだあぜ道を・・・傘もささずに歩いていた。
右手には透明なビニール傘を持っているのだが・・・安物は開いた途端に壊れるような気がして、・・・それに風が強いから開けば前に進みにくいような気がした。
傘をさしていなくても・・・強風は私の歩みを妨げる。
「家まで遠いなあ・・・・・」
私は長く続くあぜ道をため息交じりで眺めた。
あぜ道には木製の電柱が規則正しく建てられており、電線で繋がれていて・・・・はるか遠くの林の中にフェードアウトしているようだった。
「変な奴・・・・」
突然後ろから声がしたが、振り返っても誰もいない・・・・・・
「ここだよ・・・ここ!」
ふと上を見上げると・・・・今通り過ぎた電柱の上にちょこんと子供が座っていた。
変わった風貌である。
素肌の上に直接緑色の陣羽織を着て・・・・ズボンは真っ赤な・・・・膝のあたりに極端なふくらみを持たせたもの・・・・
まるで「アラビアンナイト」の魔法使いのような服装である。
無地の陣羽織かと思ったが・・・・どうやら錦糸で唐草模様の刺繍が施されてあった。
「よいしょっと・・・」
その子供が、電柱の上から舞い降り・・・私の目の前にふわっと着地した。
この高さから飛び降りて、少しの怪我もしていない。
顔つきも奇妙だった。
小さな両目の上には眉毛が無い・・・・
天然パーマの髪の毛の色は真っ白で・・・・伸び放題伸びているが・・・それを黒い輪ゴムでちょんまげのように結わえていた。
「風の叉三郎・・・・」
私は宮沢賢治のお話しに出てくる不思議な少年のことを思い出していた。
「誰だいそれ?・・・・まあそんなことは良いや・・・・ところでお前、何か食い物を持ってねぇか?」
背の高さは私の臍ぐらいまでしかないのに、ずいぶんと生意気な口をきく。
ところが私は・・・この「チビ助」にいいように操られてしまうのである。
「今食べ物なんか持ってるわけがないじゃないか・・・・家まで行けばなんかあると思うけど・・・・」
「じゃ行こう・・・今スグ行こう」
「チビ助」は私の左手を引っ張る。
「待てよ・・・・この風と雨で歩けやしないじゃないか。」
「雨も風もないよ」
気がつくと・・・・私の周りには風も吹いてなければ雨も降ってない。
「えっ?」
しかし・・・・私の行く先には・・・まだまだ雨が降り風が吹いている。
私の周りだけ・・・いや私の後ろの方も風雨が消えている。
私たちは今・・・・雨と風の境にいて、そのあとを追いかけているようだった。
「じゃ行こう・・・今スグ行こう!」
もう一度同じ言葉をかけられ・・・・私は彼に連れられるように歩きはじめるのだった。
つづく
HirokochanさんCalendar
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