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酒場にいる人間には3種類あります。酔っぱらっている人、酔っぱらっていない人、そして酔っぱらいつつある人。酔っぱらっていない人には従業員をはじめ、酒をのめない人、これから呑み始める人なんかが想定できるでしょう。一般的に酒場にもっとも多く存在するのが酔っぱらいつつある人でしょう。 当人にとって酔っぱらっていない人から酔っぱらいつつある人への移行は容易に認識することは可能ですが、ここから酔っぱらっている人に移行するタイミングというのを知覚するのはなかなか難しいことのようです。この一線がはっきり分かるようであれば、これまでの人生は随分安楽なものとなっていたことでしょう。 ところが、傍目から見るとこの過程は案外判別しやすいものとなります。わかり易いシチュエーションとしてカウンターでのひとり飲みしている人を想定します。呑み始める前、ようやく開いているカウンターの窮屈な1席を両脇の先客を気遣いつつ、着席します。カウンターの中にいる主人の目に留まるよう背筋を伸ばし、酎ハイなんかを注文します。ついでにカウンターの大皿を覗きこんで肴を物色したりします。ひとしきり呑んで酒場の雰囲気にも慣れてくると、狭くて硬い椅子による腰痛のためか両肘付いて、独りごとなんか呟きだしたりします。やがて頬杖なんかを突き出すとそろそろ最終段階に移行しつつあることがわかります。間もなくカウンターによだれなんかたらしつつ突っ伏してしまうことになるでしょう。ガラス戸越しから観察したとすると徐々にその人が縮んでいく様子が見られると思います。なので、これから入店する場合は可能であればまだ縮まっていない人の影が見えている付近を探すのが賢明でしょう。
2011/10/31
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地方のすばらしい酒場を訪れるといつも思うことがあります。ここに次に来れるのはいつなのだろうか。もう二度と来れないかもしれない。この酒場の魅力を隅々まで記憶しておきたい。ところが、酒っていうのは、呑み始めたその時点からいろんなことを忘れるようにできており、酒場の記憶というものを大事にし過ぎると、酒が呑めないということになります。 ぼくの場合、これを呑んだとかあれを食べたなんてことはどちらかというと忘れてもいいことです。むしろ見知らぬ人々のなかにあって自分自身も含めてまったく赤の他人となり、ひととき解放されたような気分になれる。そんな気分だけは記憶し続けなければならないと思っています。 ぼくたちは、日々、かけがいのないものを失い続けています。ぼくにとっては、酒場がそのひとつです。すばらしい気分を与えてくれ、すでにその終焉を迎えた酒場のいつくかを思いつくままに綴りたいと思います。池袋 中華スナック まるや・池袋の北口を出て、ロサ会館を越え、しばらく川越街道方面に劇場通りを進むと左手に飲食店が中心の商店街が見えてきます。そこはかつて池袋三業地が広がっていた一帯で、戦後の復興後にも40軒近い料亭と200名程の芸妓を抱えていたそうです。今でもいくつかの料亭風の建物を見ることができますが、現在でも営業しているところはあるのでしょうか。三業通りと呼ばれる通りを歩くと左右には居酒屋、スナックに混じって青果店や床屋さんなどが昔の面影を残して営業しています。この通りには「熊の子鮨」という立ち食い寿司屋があり、給料日なんかにはこちらで寿司を握ってもらったりしましたが、数年前閉店されたようです。御嶽神社に繋がる横道を越えるとさらに場末さが増してきます。ここに「中華スナック まるや」はありました。屋号に惹かれて入ったこちらは料理自慢のおかあさんと年齢不詳の息子さんのような旦那さんで営んでおられました。朝方まで営業をしているので、近隣のスナックの方なんかもよく来ていました。スナック風の内装でありながら、ラーメン、餃子ばかりでなく、さまざまなおいしい肴が激安でいただけることもあって居酒屋感覚で頻繁に利用させてもらった時期があります。〆のホットサンドイッチは定番のメニューとなっていました。昨年久しぶりにこの界隈に呑みに行った際、建物や看板等はそのままに閉店となっていることを知りました。メニューにない品ばかりオーダーしてもさっと対応してくれたママさん、華奢でありながら野太い声が印象的でいつもにこやかに迎えてくれたマスター、おふたりが今どうされているか気掛かりですが元気でおられることを願います。御茶ノ水 まいまいつぶろ・御茶ノ水駅の聖橋口改札を出るとすぐに今でもキッチンカロリーがあります。そのすぐ隣に「まいまいつぶろ」がありました。まさに鰻の寝床のような細長く奥深い店内はいつも暗くてとても都心の駅前とは思えず、まさに魔窟に潜入した気分になったものでした。トリスはワンショット140円だったかな、寡黙なマスターはほんの一杯だけ飲む客にも他の客同様クールな表情でさらりと応対してくれて、月給前なんかにも重宝させていただきました。今はカレー屋さんになって当時の面影はまるで偲ぶことができません。淡路町 とん吉・「神田 藪そば」や西洋天ぷらの「松栄亭」など多くの老舗を抱えるこの一帯も再開発の波にさらされており、淡路町交差点に面した「やきとり」の橙色のテント式看板が印象的な「とん吉」もすでに閉店して随分になります。古びてはいるもののどこといった特別なことのないこうした酒場の消滅を残念に思うしかないのでしょうか。 愚痴っぽくなってしまったので、ここまでにしておきます。以下には行ってみたかったのに結局行けず仕舞いになってしまった酒場名を挙げておきます。失われたものについて思いを馳せるときには、いつも手遅れになってしまったことへの後悔ばかりが胸に去来してしまいます。後悔しないためにもこれまで以上にせっせと酒場を巡らないといけないと心に刻むのでした。池袋 長野屋酒場・憧れの酒場、再開したとの噂に何度か足を運ぶもののすでにマンションに建て替わっています。田端新町 神谷酒場・建物だけでも見てみたいと思い、足を運ぶもののどこにあったのかさえ分かりませんでした。曳舟 赤坂酒場・閉店後、数日たってはじめて訪れ看板の下ろされた空っぽの店舗のみ眺めることになりました。赤羽 大久保酒場綾瀬 三幸酒場東十条 大林酒場大井町 大山酒場・コメントの言葉さえ浮かびません。ぜひ一度は暖簾をくぐっておきたかった酒場です。
2011/10/31
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酒場の似合う人と似合わない人っているもんで、ぼくは残念ながら明らかに後者に属しているようです。どうしてだろう。若者よりおっさん、おっさんよりじいさんの方がしっくりしているのはあるでしょう。ぼくも十分おっさんですし、今にして振り返ると人生の三分の二以上は酒を飲み続けている。酒場も随分巡ってきたつもりだ。それでもどうにも様にならない。 細川たかしの「北酒場」、この曲が流行っていた頃はまだまだ子供で「欽ちゃんのどこまでやるの」を楽しみにしており、細川の歌うこの曲をしじゅう耳にしていたものです。「長い髪の女が似合う」「涙もろい男が似合う」と歌われていますが、いずれもセンチメンタルすぎる。競輪・競艇帰りのセンチメンタルのかけらもないような人が酒場では目を惹くことがある。 こんな経験があります。「とある酒場のカウンターに腰掛けながら物思いにふけって酒をすすっていた。ふと目をあげると、目の前に酒場に溶け込んだかのような客がいた。それまではその客の気配などまるで感じなかったのに。まるで酒場ができた頃からずっと居続けたのではないかと思わせられた」。実は知人にもこうしたタイプがおります。いつも決まった酒場で決まった酒を、決まった時間、決まった量だけ飲んでいる。けして寡黙なわけでもなく話し掛けて、話題がお気に入りの分野に及ぶと熱く持論を語ったりもする。けれど、黙っているときには、まるで幽霊のように存在感が気迫になる。ここまで来ると似合うという段階をとおり越しています。 酒場の似合う人と一言で語ってきましたが、常にどんな場面でも似合う人というのは案外少ないのかもしれません。バカ騒ぎする陽気な酒が似合う人としっとりと大人の時間を楽しめる人、場末の酒場が似合う人もいれば銀座の一流店で酒場負けしない人もいる。ぼくも自分に似合った酒場やシチュエーションを見つけることができればいいだけなのかもしれません。 ところで、酒場の客にはカウンター席が似合う客と立ち飲みが似合う客がいると思います。カウンター席が似合う客というのはうつむき加減のスタイルが様になっていて、立ち飲みが似合う客というのは仰向け気味なんじゃないでしょうか。ちょうど前者が太田和彦、後者が吉田類といったイメージですか。いずれにせよ、正しい姿勢で正面に視線を据えて酒を飲んでかっこいいのはそれこそ市川雷蔵位かもしれません。
2011/10/30
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ときとして酒場に行くことは酒を愉しむためだけではなく、他の設備がもたらす快適さや娯楽を享受するために数ある酒場から特定の酒場を選択することがあります。 酒場においては、いまだに空調の完備されていないところも多く、夏の暑い夕暮れにおいては冷房設備の整っていることが選択の条件として非常に高い比重を占めることがあります。暑い中で、グイッとビールをあおる気分も格別ですし、団扇を片手にぬる燗をすすったりするのも風雅だとは思いますが、やはり雅を楽しむより快適さのほうに分があるようです。 テレビという条件によっては邪魔な存在も、酒場にあっては重要な脇役になっているようです。ひとり酒をしない方にとっては、なんで酒場にはこうもテレビが置かれているのだ、ひとり客がテレビを眺めているのはわかっているが、むしろ侘しさが強まるようで目障りだなんて印象をもたれてしまいそうです。それでもぼくがこれまで通ってきたチェーン店以外の千軒以上の酒場の恐らく7~8割位ではテレビをサービスとして提供しています。最近ではまだアナログ対応できていない高齢な店主がひとりで切り盛りする酒場なんかでは、地デジ対応についてひとしきりお喋りすることがたびたびありました。 もちろんひとりで飲む場合も、ひとりぼんやりするもよし、文庫本をめくるもよし。でも退屈になったり、ページを捲るのが面倒になってくるとテレビ画面を見るともなしに眺めているというのは悪くないものです。店主ともテレビで放映されている内容に応じた会話を交わすこともままあります。 ところで、夕暮れの酒場の定番放映番組というと野球と相撲ですね。それと夕方の時間帯は「水戸黄門」も人気がある。酒を飲むのって案外忙しいもので、酎ハイを呑み、煮込みをつつき、タバコの灰を落とす、常連と会話を交わす。その合間にようやくテレビの画面に目を向ける。そんな忙しい酒飲みにはじっくりとテレビの画面を眺めている時間は実はそうはないのです。これらの番組は、酒飲みの生理にぴったりあったものなのでしょう。 野球にあってはドラマチックなんて言い方がされることがありますが、実はそれほどドラマチックなことが起こることは極めて少ないと思うのです。まず野球って動きが少ない。投手がボールを投球するまではドラマなど特殊な例外を除くとまず起こらない。打者にボールが迫ってからも、その後にはごく限られた結果がもたらされるはずです。有効打になるかならないか、空振りするか見送るか、まれにデッドボールがある位で、この中では有効打になりそうな場面が生じた場合のみ、その後の推移を見守らざるを得なくなります。 相撲の場合はより端的で、勝負を見守る者たちは、よほど入れ込んでいる人でない限り、ほぼ不動の大男たちが不意に衝突してからのとっ組み合いを見守るだけでしょう。そして展開は野球以上にシンプルで、押し出されるか、倒されるかに尽きています。それこそフンドシが外れたり、プロレスまがいの技が繰り出されることはほとんど期待できません。 誤解を恐れずに端的に言うと野球や相撲の放映は、ほとんどが退屈な時間で占められているのではないでしょうか。だからこそスポーツ紙は、プレー内容や勝ち負けの結果ばかりでなく選手、力士の私生活までをあれほど大きく記事にして提供し、退屈な時間を埋めるための格好のネタとして使ってもらえるよう配慮しているのではないかと思っています。酒場においては互いにそ知らぬ顔でひとり酒を決め込んでいる者たちが突如として会話に華を咲かせもします。「水戸黄門」においては若干事情が異なるかもしれませんが、見るともなしに漫然と画面を眺めていた人が終盤が近づくと口々にこの後の展開を語りだし、実際事がそのように推移していくのを見守りつつ、あまりにも予定調和なことにおかしみさえ感じて、酒場全体が何やら得体の知れぬ楽しさに包まれていたりします。 こうしてひとしきり退屈をむしろ積極的に楽しんで放映が終了すると、いい具合に酔っ払った客たちは早々に席を立ち引き上げていきます。テレビを楽しむ酔っ払いは案外律儀な連中が多いのかもしれませんね。 こうしてみてくると、酒場とテレビって案外相性がいいと思うのですがいかがでしょう。「吉田類の酒場放浪記」やが好評を博しているのも相性のよさがもたらしているのかもしれません。といっても吉田類氏の番組を除くと太田和彦氏の諸番組は肴や酒がメインっていう感じがしますし、バラエティーなんかで時折見られるのは人が酔っ払っておかしげな行動を取ることを楽しんだり、くだのまき方が激しかったりするのを楽しんでいる場合が多いのは酒場好きとしてはあまり好きになれません。酒場で楽しめる酒場番組がもっと増えると楽しいですね。案外、酒場でグルメ番組が流れていることって多いんですよ。
2011/10/30
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ようやく上中里に行くことができました。上中里界隈を愛される皆さん、お待たせしてすいませんでした。--前回-- 第2回は、上中里と三河島の対決です。ところがこれまで上中里で呑んだことがないんですね。それだけで三河島の不戦勝は決まってるんですが、それだと面白くないのでもう少し文章を引っ張ります。(略) というわけでちょっとずるい結果ですが、三河島の圧勝ということになりました。もし上中里にすごい酒場があったらお知らせください。すぐにでも出向いて確認したいと思います。-------- 前回は散歩の際に南側に「お多福」「やきとり 岡ちゃん劇場」、北側に「花屋食堂」「やまと食堂」を見掛けていたことをレポートしていますが、その時は昼間の散歩でした。酒場を巡るにはその時間帯が夜であることが重要です。昼間であれば見落としていたような酒場も夜になると息を吹き返し、温かい光を放ってくるからです。昼間には単なる民家としか思えないような家屋が夜になると提灯ひとつで酒場へと変貌している場合もあったりします。 そんな思いがけない出会いを求めて10月×日、上中里を探索してきました。といってもスタート地点は駒込駅からにしました。友人と一緒なので待合せ場所のない上中里ではちょっと不安だったからです。駒込駅東口から駒込銀座を越えて、楽しい霜降商店街を横目に眺めつつ旧古川庭園方面に向かいます。ここまで来ると辺りはすっかり暗くなってきて商店もぐっと減ってきます。脇道に何軒かの酒場があり、ちょっと気になるのもありますが、誘惑をはねのけさらに道なりに進みます。旧古川庭園の立派な塀を越えて右折、ゆるい坂を下るともう上中里駅です。 駅前にはスーパーのほかは、モダンな外観の「やきとり 岡ちゃん劇場」、ありきたりな見栄えの「お多福」(以前見たときは看板が青くて古臭かった記憶があります)、けっこうな大盛で知られる「百亀楼」なんかがあります。どこも入店するまでの決定的な魅力に欠けていたのでとりあえず駅の脇の京浜東北線などの線路をまたぐ歩道橋を越えると階段がある。外を眺めると随分な高低差があり、地上までは随分な段数がある。地上に降り立つと目の前には地味ではあるものの商店街が続いています。「花屋食堂」や銭湯,デイリーヤマザキ,八百屋,そば屋なんかがある。ここを右折してしばらくいけば「ゆたか食堂」があるのを知っているけどどうにも呑める食堂とは思えなかった。 いますぐ飲みたいので、この商店街の突き当たり「炭火宮崎地鶏 孝基亭」に入ります。平成21年創業の新しい酒場ですが店内は意外やクラシック。天井には大型のファンむき出しの扇風機があったりします。客は5名程入っているがもちろん原住民たち。この場所はなかなかふらりと立ち寄る客を引き込むのは難しいだろうなあ。みなさん、ボトルを入れて愉しんでいる。いかにも地元密着型酒場でした。オヤジさんは愛想がいいし(ちょっとご馳走してもらった)、息子さん?は料理上手で感じがよかった。 続いて、駅の階段を下りたすぐにある「花屋食堂」。でかい看板に味わいがあるけど,きれいな食堂です。酒:350円をお願いする。こちらのオヤジさん、おしゃべり好きな愉快な人だった。肉野菜イタメ:400円はものすごい量。あまり面白味はないですが近所にあったら利用したいかも。他に客が1名のみで少しさびしいのがいいかも。 やや呑み足りないので南側に引き返し、「お多福」に入店。お隣の「百亀楼」は盛りがいいので大食いたちには知られていようで、そこそこの客の入り。「お多福」であるが、最近改装したのでしょうか、以前よりきれいになっている感じ。店内はカウンター8席位にテーブル3卓だったかな。オヤジさんと女子高生位の女の子でやってるようです。お客はなし。テーブルに着いて、ホッピー:450円(中:150円)とキャベツ焼:350を注文、お通しはきゅうりとワカメとたこの酢の物、なかなかおいしい。キャベツ焼はお好み焼みたいなので量もあってうまい。ホッピーは中の値段が安いのはいいですね。 といったわけでとりあえず上中里ツアーは終了。どちらも感じがいいし、肴もまずまずうまい,値段はまあまあだし、良心的ではあるけれど、ここまでわざわざ行くべきだ、なんてお勧めできるほどの酒場はなさそうでした。 どちらも酒場らしい酒場が少ない土地ですが、やはり三河島のほうが酒場好きには魅力的な街であることは間違いなさそうです。それでも念願の夜の上中里に行けたのは楽しかったですね。 ここで、友人とお別れ。本当なら尾久に立ち寄って、都営荒川線に乗って帰宅したかったのですが、駒込まで同じ道を引き返したのでした(本当は駒込までの中間地点に気になる酒場を見つけたので立ち寄るつもりだった、でも財布の事情で今度のお楽しみ)。
2011/10/29
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お通しや突き出しについて考えを巡らすには、まずこれらの単語に着目してみることにします。ふたつの単語から受ける印象を比較すると「お通し」は、お店に「お通し」するというように受け止められないこともないですし、「突き出し」はお店から「突き出す」というまったく逆の意味を想起させないこともないでしょう。東日本方面で使われるという「お通し」と西日本方面で使われる「突き出し」はなぜ反対の意味合いをもったのでしょうか。本当に反対の意味をもった言葉なのでしょうか。 それぞれを動詞化してみました。「お通し」は「通す」、「突き出し」は「突き出す」ということになります。まず「通す」を見てみましょう。「お」は丁寧の形態素「御」から来ていると思われますが、この「お」を抜いて動詞化すると意外なことに頑固者の一面が際立ってきました。「一念岩をも通す」「押し通す」「言い通す」「筋を通す」「貫き通す」などなどなかなかマッチョな単語が揃っています。一方、「突き出す」は「小突き出す」位しか派生的な単語は見当たりませんが、いずれにせよ乱暴で暴力的な匂いが感じられます。「お通し」も「突き出し」も男性的な印象で正反対の意味という程かけ離れたものではなさそうです。試しに「突き出し」にも丁寧の「お」を付けて「お突き出し」にすればゴロはいささか悪くなりますが、似たようにソフトな印象になるようです。 とりあえず「お通し」「突き出し」の単語を考えても収集が着けられそうにはなさそうです。わが不愉快を克服できるすべを探る方向へ舵を切りたいと思います。
2011/10/28
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そば屋で昼酒っていうのは、飲兵衛が憧れるひとつの飲み方です。ときおりリタイアしたじいさまグループが真昼間から顔を真っ赤にしているなんて風景を目にすることがありますが、あれは見苦しいですね。やはりそば屋で昼間飲むからにはかっこつけ過ぎな位で飲む方がはたから見てもスマートに感じられます。当たり前に通えるようになるといいのですが、なかなか難しいものです。ぼくは、大衆食堂や中華料理店なんかが特に気に入っていて度々利用しますし、なんと言っても安くて、昼間から飲ませてくれる店が多いのも重宝します(それほど機会が多いわけではありませんが)。しかし、夜になるとどうしても惹かれるのが酒場(居酒屋)になります。いずれの店においても酒を出してくれるし、肴も出してくれる。どうして酒場(居酒屋)に惹かれるかの理由が、よくわかっていません。 その理由をはっきりさせるヒントになると思われるのが、評価に使われる言葉です。他の多くの飲食店は、「おいしい/まずい」という言われ方で評価されているようです。ところが、酒場(居酒屋)にあってはむしろ「よい/わるい(ひどい)」や「好き/嫌い」という評価のなされ方が自然な感じがします。 他の飲食店には、日本料理店・西洋・中華・その他の外国料理店・そば/うどん店・すし屋・大衆食堂などが含まれると思われますが、これらの業態においては前者で表現されることが多いように思われます。料理を出すことがメインである業態では「おいしい/まずい」という言葉で語られるのでしょう。 逆に酒場(居酒屋)・ビヤホール・バー・スナック・キャバレー・クラブなどは後者の表現がナチュラルに使われています。一般に酒場というのは接待を伴わないスタイルで酒を提供する店と捉えられているようです。ということでさらに分類を進めるとキャバレーやクラブは接待を伴っているということになるでしょうか。このキャバレーやクラブの場合、「よい/わるい(ひどい)」と一言で断じたその形容詞の前には「《サービスが》よい/わるい(ひどい)」「《女の子の質が》よい/わるい(ひどい)」といったようにかなり明瞭な単語が想起されます。ビヤホールやバーはやや曖昧ですが、営業内容がストイックだからでしょうか、《サービスが》は同様、「《従業員/バーテンダーが》好き/嫌い」は女の子の変種としてある以外には、「《店の雰囲気が》好き/嫌い」なんかが追加されるでしょうか。ところでビヤホールやバーは、「《ビール/カクテルが》おいしい/まずい」もかなり大きな要素として含まれています。ところがその店について一言で語る際には「『Bar ×××』はおいしかった」とは滅多に表現されません。だんだんわかってきました。酒場(居酒屋)というのは、さまざまな「よい/わるい(ひどい)」「好き/嫌い」という要素に加えて、少なくとも酒と肴において「おいしい/まずい」という要素も加わって評価されるために「よい/わるい(ひどい)」「好き/嫌い」という一言で片づけられることが多いのかもしれません。 こうして考えてみると評価要素の多い酒場(居酒屋)というのを切り盛りするのはなかなか大変なことかもしれません。というよりもとてつもなく料理の腕が冴えていたり、サービスが上手だったり、酒の知識が豊富だったりというタイプの人よりもいろんな方面に目端の利くタイプの人の方が酒場(居酒屋)経営には向いているのかもしれません。ということは、裏返して言えば、酒場(居酒屋)がより好きな人はまんべんなく欲張りということが言えるのでしょうか。毎晩、仕事帰りに立ち寄るときの感情はさまざまです。仕事でチョンボして落ち込んでいるときは主人との雑談で癒されたり、営業がうまくいかないで苛立ったりしたときは、安い酎ハイで大虎になってみたり、新規の契約が取れて有頂天になっているときは、奮発して普段食べられないような豪勢なつまみをとってみたりとさまざまなシーンに対応してくれる万能選手的なところが酒場(居酒屋)の魅力なのかもしれません。
2011/10/28
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10月×日夜、駒込駅から5分ほどの焼鳥屋にいます。この酒場は飲食店が5軒ほど入った小さな雑居ビルで、通路の奥にはお決まりの共同便所があります。その1軒にお邪魔しました。酒場好きとしてはどん詰まりにある酒場にそそられるものがあったのですが、持ち合わせの都合でこちらにしました。 断るまでもありませんが、入りにくい酒場っていうのは、入りたくない酒場とはまったく違っています。先ほどの奥の酒場はいかにも入りたい。 入りにくいっていう感覚は、やはりはじめて訪れた場合に鮮烈に感受されます。はじめての酒場を訪れる楽しみには、恐いもの見たさという感情を含んだ刺激的な体験をしてみたいという要素があるんでしょう。【混んでいる酒場】 当然ですね。物理的に入れないんじゃどうにもならない。「入りにくい」ではなくて「入れない」ですね。ところで気を付けないとならないのが混んでるからっていい酒場とは限らないってことです。これは多くの方が経験されていると思います。【がらがらの酒場】 すっかり夜も更けた裏通りの酒場前で、ガラス戸越しにぼんやりと窺える店内にまるで人の影がない場合、やはりその戸を開くのにはそれなりの思い切りが必要でしょう。だからといって、空いているからひどい酒場ということでもなさそうです。むしろ名酒場が紛れ込んでいたりするかもしれません。こうした酒場は丹念に街を彷徨って見つけ出さないといけないです。【恐ろしく汚い酒場】 これは外観から窺える場合に限りますが(カウンターにゴキブリが蠢いていたりして、きたねえなあなんて感じてもすでにそのときは入店してるんですね)、これがなかなか難しい。建物の周囲のゴミ箱の状態なんかで衛生状況が分かる場合もあるでしょうが、のれんがビロビロでベリベリに破れていてもすばらしい酒場はたくさんあるので油断がなりません。【不自然な位にうるさい酒場(カラオケが響き渡る酒場を含む)】 これは案外簡単に判別できますね。大抵の場合、店外にだみ声、裏声なりが轟いているからです。南千住辺りを徘徊すると見るからに酒場でありながら、ほとんどスナック化した酒場に行きあたります。居抜きで旧店舗にまるっきり手を付けずに商売をはじめたのかもしれません。ただし、何軒かを除くとほとんどががらがらのようなのでひとときの酒場気分は味わえます。【外から丸見えの酒場】 飲んでる姿がばっちり見えてしまう酒場がありますが、どうしてそんな造りにしたんでしょう。知人・同僚・恋人・家族に目撃されたときにみっともないというのもありますが、店前で店内の酔客のみぐるしさを目にしたら他人事ではなくなって嫌な気分になったりします。【狭すぎる酒場】 これは混んでいる場合とがらがらの場合のいずれかであることが多いようです。前者の場合は窮屈だということもありますが、むしろコミュニケーションを取らざるを得ないという強迫的な気分で飲み続けなければならない気分になります。後者の場合はさらに厳しくて店主との濃密なコミュニケーションまたは完全な沈黙で時間が過ぎていきます。しかも切り上げ方にも工夫が必要となります。【あんまり有名過ぎる酒場】 混んでいる、うるさいなどの要素が加味されることも多い。そわそわしていてりすると雑誌記事やネットを見てきたなあんてあなどられるのを気にして必要以上に勝手知ったる雰囲気を漂わせたりして。そんなときに限って素直にはじめて来たことを愉しんでいる客に質問されておろおろしたりしてしまうのでした。 まだまだいろんなタイプがあるかと思いますが、どんな酒場でも思い切って飛び込んでみるしかないですね。経験してはじめて好きか嫌いかもはっきりするもんでしょうね。
2011/10/27
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毎晩通える酒場の基準は、価格を基準の筆頭に上げざるをえません。残念ですが。ただし、とかく安い酒場は安いなりの理由があったりする場合が多いので、品書きの安さに目が眩んでうっかり油断してしまうのは禁物です。値段が安いとなぜうれしいのか、当然その分たくさん飲めるからということがもっとも大きいのですが、もっと大きな理由は経営者のサービス精神をはっきりと受け止めることができるからでしょう。というか、あまりに安過ぎて思わず笑ってしまうことがあります。 近所にこんな酒場があったらあっという間に病院送りになってしまいそう。そんな、徹底的に安さにこだわった酒場のリストを公開です。有名店からまったく知られていない酒場まで思いつくままに挙げています。 なお、価格は現時点のものではありません。実際に行かれてリストよりも高かった場合はご勘弁ください。板橋 昭和・生ビールのダブルが200円以外はすべて100円。とにかく破格の安さ。利用期限が無期限ではあるもののチケット制というのが少し残念な点であります。金町 居酒屋 ガキ大将・瓶ビール大瓶:370円。見るからにありきたりのチェーン店ですがハッピーアワーや曜日限定のサービスもありともかく安い。「山吹」(瓶ビール大瓶:380円)をはじめ良心的な酒場の揃う金町でも安さではハイレベルだと思います。南千住 居酒屋・食事処 たかでら・南千住は安い酒場とカラオケ付きのほとんどスナックみたいな酒場が外観からは判別できないことがままあります。こちらは外観は小奇麗ですが店内はおっさん、じいさんの活気に満ちています。酎ハイ:220円,3種 きき酒セット(日本酒/焼酎):450円,卵焼/ニラ玉:200円。新小岩 魚三酒場 新小岩店清澄白河 魚三酒場 常盤店門前仲町 魚三酒場 富岡店・確かに安いのでこちらを出さないわけにはいかないでしょう。個人的にはあまりにオオバコな門仲の富岡店よりその縮小版といった風情の常盤店や趣のある建物の新小岩店が好きです。酒:180円。,あら煮:50円。南千住 大坪屋・またもや登場しました。障害を乗り越えて安さに挑戦してみてください。焼酎:150円,炭酸:50円,まぐろブツ:200円。飯田橋 かめや・お隣の「スタンド居酒屋 立呑み やまじ」も捨てがたいですが、さらに安いのがこちら。いろんな意味で安い理由がはっきりしていて楽しめます。サワー:150円,焼物:70円。板橋 河内屋・安い、狭い、人がいい。マスコミにちょこちょこ出ているようで入れたらラッキーです。焼酎:200円,串揚:80~150円。綾瀬 串のこたに・とにかく激安ぶりに驚かされます。ファミレス使いの家族連れが多いのでひとり孤独を愉しみたい向きにはお勧めできません。瓶ビール大瓶:360円,こたにサワー:100円(じゃんぼこたにサワー:5杯分450円),串揚:5種350円~。尾久 串焼 丸吉・常連が多く、少し敷居が高いです。何も期待せずに入るとそれなりに満足できるはずです。ウーロンハイ/酒/生小:220円,ホッピー:330円(中:110円),焼物3本:220円,ガツ刺し:160円。十条 齋藤酒場・ここで紹介できる位だからやはり「齋藤酒場」は安いなあ。すばらしい酒場だし、度々訪れているのですが、いつ行っても違和感が残る酒場なのでした。澱酒180円,ポテトサラダ:200円,串かつ:200円。柏 里の味 仲屋・瓶ビール大瓶:400円,チューハイ:220円,卯の花/セロリ:100円,豆腐ステーキ:200円。次に紹介する「仲屋」は御兄弟の営む酒場のようです。あまり活気がないのでその分落ち着けます。カウンター席が少ないのが残念。柏 仲屋・チューハイ:200円,ウーロンハイ:250円,焼鳥:2本250円~。こちらは活気もあって、カウンター席も充実。馬橋 ニカカレーショップ・サワー:240円~,焼鳥(焼とん):60円or70円,ビーフカレー:300円。またまた登場のユニークな酒場、値段もしっかり安いです。松戸 ばか酒場 松戸店・酎ハイ/酒:180円,煮込:200円,寿司:1貫:50円~200円。新しくて安いのになぜかいつも(というほど行ってませんが)空いているような印象です。西川口 広瀬川・焼酎水割:190円,チャーシューメンマ:180円,ロッキード(落花生):100円。こちらは最近移転してきたそうで、案外小奇麗で使いやすい酒場です。平井 松ちゃん・特製ハイボール:230円,かしら/レバ:2本200円,寿司3貫:250円。平井の有名店。座敷がメインなのでさくっと引き揚げるのが気が引けてしまうのが残念。綾瀬 もつ焼・酒 やまざき・チューハイ/お茶ハイ:200円,もつ焼2本:200円~。こちらも空いている印象があります。空いているとちょっとだけ飲み食いで引き揚げるのが悪いような気分になるのが厄介です。淡路町 良心的な店 あさひ・席料:100円,酎ハイ/ハイボール:150円,焼酎水割:100円,ポテサラ/ゴボウ天:200円。「もやさま」はじめテレビでもよく紹介されているようです。ひとり飲みには向きません。神奈川 市民酒場 みのかん・価格は忘れましたが激安。こちらこそ近所に欲しい酒場の個人的なベストかもしれません。新大久保 仙力 支店(百人町一丁目店)・焼酎湯割/水割:230円,さしみ盛合1,000円。珍しく刺身の価格を紹介するのは値段から想像する以上に盛りが立派でけっこうおいしいから。船橋 大衆酒場 一平・酎ハイ:210円,牛煮込/肉豆腐:200円。カウンターが素敵です。先日は陽気なおっちゃんと話しこんだ挙句に御馳走になってしまいました。池袋 大都会 北口店・安くて24時間営業。通常飲めない時間帯に伺っているため夕方から夜にかけては安いかどうか保証できませんが。京成立石 立飲み さくら・立飲みとありますが,椅子が置かれています。価格的にも優良店が多い立石でもかなりの安値の酒場だと思います。南浦和 あかね・瓶ビール大瓶:380。外観の小奇麗な印象を裏切るようなうらびれた店内。肴は350円位が主流ですがかなりでかいのでオーダーし過ぎない方がよろしいでしょう。船橋 居酒屋 伸幸 本店・チューハイ/ウーロンハイ:160円,げそ唐揚/ちくわ磯辺揚:300円。正直あまり印象のない酒場ですが、安いのは確か。いわし料理の店だったと思います。いわし料理はそこそこの値段。荻窪 田中家・酒:180円,目玉焼:160円。駅前の飲み屋街にひっそり佇む一軒家の風情がすばらしい。注意)今回御紹介した酒場には基本的には立ち飲みは含まれていません。
2011/10/26
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われわれは酒場に酒を呑みに行きます。けれど酒場はたんに酒を呑むだけの場所ではありません。われわれは酒場に他の何かを求めるのでしょう。その何かに対する回答のひとつが主人の存在です。 具体的に求めるものとしては、酒や肴のうまさ、値段、雰囲気(店の佇まい、独りでもくつろげる)、案外重要なのが冷暖房施設があるかどうかといったところになるのでしょうが、当然のことながらこれらの要求を満たすには主人の存在が不可欠になります。 主人がまさにその酒場の顔になっている、そんな酒場があります。とある酒場について想起するとき、煮込やもつ焼、焼酎ハイボールやおいしいカクテル、見事なコの字カウンターや使い込まれた炉端、どれも魅力的ではありますが、それ以上に記憶の底から湧きあがってくるのが個性的な店主たちの顔です。 その顔の持ち主たちと交わした会話(あるいはまったく会話もなく沈黙を保った時間)などを思い出すと今晩にでも行ってみたくなります(もしくは近寄りたくもない、忌まわしいので余所で飲んで忘れたい)。そんな個性的な主人たちのいる酒場を紹介します。【たくましい女将のいる酒場】庚申塚 庚申酒場・こちらの女主人のばあちゃんはほんとによく喋ります。常連たちに慕われていて可愛いばあちゃんかと思いきやなかなかの毒舌家。何度も聞いた昔話を伺いにまた行ってみたいものです。日暮里 いづみや・大宮のいづみやも熟年メンバーで切り盛りしていますが、こちらはばあちゃん2名がいつも張り切っていて元気になれます。鶯谷 おせん・今はほとんど営業してないんでしょうね。お邪魔したのはたった一度っきりですが、近くの酒場で聞きこんだ情報によると、明かりがついていて御機嫌がよければ店を開けてくれることもあるということでチャレンジしました。扉を叩きしばし待つとばあちゃんがしょうがないねえといった表情で店に入れてくれました。しばらく楽しくお喋りさせていただいたのですが、なぜか急に「わたしゃあんたたちが嫌いだよ」といって追い出されてしまいました。何が気に障ったのか今でも判然としませんが、今でも記憶に焼き付いています。木場 河本・「河本」のばあちゃんは常に何やらぶつぶつと呟いているのが印象的です。けしてボケているわけではないんですけど。門前仲町 魚三酒場・ちょっと苦手なこちらの酒場。酒場に来てまで説教されるのはやっぱりちょっと抵抗があるなあ。板橋 明星・ひとりで行ったら優しいけど、数名で行くと冷やかに追い返される。女将さんは常連たちに比べるとそれほど癖はないけれど印象的なお方でした。門前仲町 大坂屋・こちらの女主人は実に優しい雰囲気で和ませてくれます。独りで行くとお喋りの相手にもなってくれて気分良く酔わせていただけます。一之江 カネス酒場・工場街の酒場というムードが溢れる店内のカウンターのはじっこにちょこんと腰かけているばあちゃんの笑顔には癒されること間違いないでしょう。三ノ輪 遠太・客たちはのんびりしたムードに包まれてゆっくり酔っぱらっていく中、主人のおばあちゃんはほとんど厨房の中でなめろうを作ったり大忙し。常連たちはこんなおばあちゃんを支えるため、お酒の準備を手伝ったりして優しさにあふれています。堀切菖蒲園 居酒屋 ふっ子・いかにも陽気なおかあさんはいつ行っても常連さんたちと楽しく会話を交わしています。こじんまりとした店内はいつも笑いが絶えないようです。三軒茶屋 味とめ・つねにうなぎを串に刺して忙しい忙しいと言っているおばちゃんですが、手だけでなく口も動き続けています。日ノ出町 おでん あさひや・洋食屋の女給さんのようないでたちのおねえさんは物腰も柔らかくてついつい話し込んでしまいます。【おっかない主人のいる酒場】新橋 くら島・おばさんの無口で不機嫌な様子はこれもまたこの酒場の佇まいにマッチしていて楽しませてくれます。南千住 大林・同じくこちらも主人もおっかない。撮影している客がいるとそのおっかなさが炸裂します。これまでのところ笑顔を目撃したことはありません。堀切菖蒲園 喜楽・どこかしら「大林」の御主人と似た感じがあります。ただ閉店間近になると常連との会話が弾んできます。自然とぼくも混ざっていたのですが、愉快な気分になったことを覚えています。【寡黙な店主のいる酒場】鐘ヶ淵 はりや・カウンターに腰掛ける将棋好きの御主人の顔にはいつも控えめながら温かな笑顔が浮かんでおり、温かな気分にさせてもらえます。三軒茶屋 焼豚 とし・「はりや」とは逆にこちらはいささか険しい表情で注文の際も若干の緊張感を強いられます。人が悪いわけではなさそうですが。【とにかく個性的な主人のいる酒場】南千住 大坪屋・こちらのおねえさんは有名人なので御存じの方も多いでしょう。彼女の応対に平然としていられるようなら通う価値ありです。普段は厨房に入っている御主人は酒場のオヤジそのものの顔をされており安心感を与えてくれます。亀有 居酒屋 ハッピー・亀有の人気店です。店の奥にいても聞こえてくる、主人とその奥さん(?)の会話がストレスになります。自信満々な御主人と言われっぱなしの奥さんを目にしたらにはおちおち酒を飲んでる気分になれません。東十条 埼玉屋・正直押し出しがきつ過ぎる。こういうスタイルを受け入れてでも、質の高いもつ焼を食べたい向きにはいいのでしょうが、ぼくには今のところそこまでの価値が見出せません。
2011/10/25
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今晩は大塚の大衆居酒屋に来ています。近頃めっきり独り呑みが多くなっています。もともと人の顔色を窺いながら行動することが不得手ですので、気楽さが楽しく感じられます。 席に着いてチューハイを待ちます。するとそこにちんまり盛り付けられた切り干し大根。こんなの頼んでないよなあ。ささやかな小遣いで毎晩呑む身としてはこんなお通しで300円も払うのは気分のいいはずがない。せこいお話を話題にするためにこちらにお邪魔したわけではないんですけどね。ホントに。「お通し」「先付」「突き出し」、いろんな言い方があって、それぞれに語源、由来もあるようですが、差し当たり席に着くと否応なしに出されるちょっとした料理のことを指すようです。最近は選択性になっていたり工夫も見られるようですがどうしても強制されている気分は否めません。 つい先日、日暮里と西日暮里のちょうど真ん中の辺りにある居酒屋にお邪魔しました。そこではお通しとして市販品ではありますが鴨のスモークをしっかりした量出していただき、続いて昨夜の残りと言って大量のもつ煮込、そしてきのこと銀杏がたっぷり入った炊き込みご飯、これだけで十分な肴となりました。しかも手作りの後の2品はとりわけおいしかったのです。 一方で、独特なスタイルでお通しをだす酒場もあります。仙台市の「一心 本店」なんかがその典型でしょう。こちらはいきなり刺身三点盛です。立派ではありますが、最近めっきり食が細くなり、でもはしごもしたいという当方としてはこれは不要なサービスと感じてしまうのでした。 同じ仙台の「源氏」になると酒を頼むと1杯目が煮物、2杯目が冷奴、3杯目は刺身、4杯目にはシジミ汁(これらは変わることもあるようですが)と抱き合わせで肴が供されるシステムで、値段がお高めなのがやや難点ですが、これは苦になりません。野毛の「武蔵屋」も似てますね。おから、酢たまねぎ、タラ豆腐、納豆、おしんこの順番で出される肴に酒が3杯、これもうれしくなるような趣向です。 お通しが無料というのもやはりうれしいものです。新宿「ぼるが」、新橋「大露路」、神保町の「兵六」、神田司町の「みますや」、住吉「大衆酒場 高島屋」、といった老舗酒場はちょっとしたものを出してくれたと思います。雑司が谷「高松屋」の塩豆、大島「大衆酒場 ゑびす」のいかり豆?(空豆の揚げたの)といったちょっとしたもので十分なんです。何と言ってもまずは酒場には酒を呑みに来てるんですから。大衆食堂や中華料理店なんかもちょこっとしたものをただでだしてくれることが多いようです。 思い出すのが神奈川の「みのかん酒場」で、立派なおでんをしっかりしたボリュームで出してくれます。ここの焼酎の割物はキョーレツにきついのでなんか一品はオーダーしたくなると思いますけど、普通の居酒屋の酒を呑むならお通しのおでんだけで十分な位です。 やっぱりただだとうれしさもいっそう増して感じられます。タイトルを気取って「お通し考」なんてしましたけど、今晩は考えるのが面倒になったのでここまでにしておきます。
2011/10/24
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日頃酒場巡りをする場合、理想としているのが、1軒目は有名店など調査済みの酒場、2軒目が飛び込みの酒場、3軒目は馴染みの酒場という予定の組み方で、まんべんなく欲求を満たせるようにしたいと考えています。まあ実際はこれほど計画的に飲み歩けることもなく、特に2軒目が当たりだったりすると勢いがついてしまい必要以上に一見さんとなる確率が高まっていくようです。 こうして気ままに酒場散策をしているとたまにおかしな酒場に行き当たったりします。これまでに出会ったユニークな酒場のいくつかを御紹介します。目白 BAR なすび 目白駅から徒歩3分ほどの裏路地にひっそりと店を構えた「BAR なすび」は目白界隈では老舗の酒場のようです。玄関はスナックみたいな構えで扉を開くのにちょっとした躊躇いますが、思い切って開くと店内はさまざまなオブジェで飾られており、オヤジさんが缶ビールをなめています。カウンターに着くとそのビールをグラスについでくれて、まあ呑んでくれだって。肴も思いついたようにあれこれ出してくれます。完全なお任せスタイルで楽といえばこれくらい気楽な酒場もないかもしれません。池袋 木ノ声 ここは、池袋の裏通り。隠れた(最近は随分有名になってしまいましたが)和菓子の名店や激安中華店などが立ち並ぶ通りです。そんな中に一軒のそば屋さんがあって、その脇にある細くて急な階段を上がるとそこが「木ノ声」です。からくり屋敷みたいな店内の造りが楽しいのです。それ以外は取り立てて代わり映えしない酒場ですけど。東京 ミルクワンタン 鳥藤 有名店です。「BAR なすび」同様、何もオーダーしなくても次から次へと肴が出されます。好き嫌いの注文はできそうですが、どれもそこそこにおいしいのでなされるがままに食べ続け飲み続けることになります。食の細い方だとお楽しみのミルクワンタンが出されるまでにお腹一杯になってしまうかもしれないので、最初に少なめでお願いすると伝えておいたほうがいいと思います。町屋 国税局素通り酒場 とんちんかん すごい屋号ですねえ。でもここのすごさは店内に入らないとわからないのです。壁中そこかしこに警句やら格言やら思いついたフレーズが短冊なんかに記されているのです。実はこれ以上にすごいのがその飲食システム、とにかく1時間1,000円で飲み放題喰い放題なのです。1時間あったら充分にお腹がぱつんぱつん、おつむはへろんへろんになってしまいます。そして本当にすごいのがオヤジさんの濃いキャラクターなのでした。実地にて確認あられたし。浅草 正直ビヤホール 分店 こちらも知られた酒場です。割烹着の女将さんが生ビールを注いでくれます。おいしい。でもこちらのメニューは生ビールだけ。店の佇まいも素敵だし、ゆったりした時間を味合わせてくれます。本店は吉原のど真ん中にある洋食屋さんでこちらはありふれた食堂の風情。先日、分店前をバスで通過したら、工事中だったような気がしたんですがちゃんと営業を続けられているのでしょうか。ちょっと心配です。御茶ノ水 徳兵衛 JR御茶ノ水駅の御茶ノ水口からすぐの酒場です。こちらは地下1階から2階までが同じ「徳兵衛」ですが、フロアーごとにサービスが違うんですね。地下で働くおにいさん(下戸)が一番サービスがいいかな。特別おいしいものを食べさせてくれるわけではないのですが、ここの酒はとにかく激しく酔っ払うこと必死なので注意が必要です。 ほかにも昼間は畳屋、夜がもつ焼屋になる月島「尾崎畳店」、京成立石の「倉井ストアー」は有名ですね、肉や惣菜をメインに扱うスーパーマーケットのようでありながらしっかし酒場として利用されており、昼酒にはもってこいです。京成高砂の「高砂家」は老舗酒場の風格がありながら、従業員が若い女の子が多くて激安のガールズバーといった趣です。まだまだ個性的な酒場はあちらこちらにありそうです。
2011/10/23
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10月×日、池袋に下車しました。ちょっと憂鬱なので軽く寄り道したいけど、うろつく元気もなく、かといって外れの酒場を楽しめる余裕もない。 もともと酒場巡りをはじめたきっかけは安くて雰囲気のいい酒場をあちらこちらに確保しておきたいという軽い気持ちからでした。できることなら都心の各駅に1、2軒ずつあれば心強い。あちらこちらにお邪魔しているうちにどんどんエスカレートして、行ったことのない酒場ばかり追いかけることに夢中になってしまっていました。 この数カ月は、その衝動もやや治まって余裕をもてるようになってきたのですが、それは単に台所事情が大きな要因であるようで、あぶく銭でも手にしてしまったらまた再発してしまうのではなかろうかと思っています。 この夜はちょっと沈み気味で疲れてもいたので、手持ちのリストから「おいでやす」をピックアップしました。もうすぐ移転が予定されている豊島区役所の裏手の暗い通りにあります。こちらは外観も店内もほとんど飾り気のないうらさびしい酒場でやたらと広い(カウンター12席、テーブル4卓、小上がり4卓)のが侘しさを強調するようです。こういう酒場ってふさぎがちな気分の時には不思議と心地いいのですね。 侘しいと言っても極端過ぎるのは逆効果、無愛想というよりも無感情といった風貌の店主もしくは女将が一言も発せずカウンターにもひとりっきりっていうこともままあったりするわけですが、ここまでくると機嫌のよい場合はむしろおかしくなってさらに上機嫌ということもあったりしますが、落ち込み気味の時には深酒してしまったりして用心が必要です。TVの音声だけがやたらと響いていたりすると、普通なら手持無沙汰を補ってくれてつい一杯飲み過ぎてしまったりもしますが、暗い気分ではまっすぐ帰宅して静かに晩酌した方がよかったなんて後悔しかねません。 この日は他のお客さんもそこそこに入っていてほどよく癒してくれるようです。オヤジさんは寡黙で調理する時以外はほとんどカウンターの外でTVを眺めているのですね。ハイサワーを頼み焼酎グラスに瓶から1/3程注いで,ゴブッと呑みます。中2杯を追加する予定ですね。こちらの肴は基本はおでん中心、すじ、じゃがいも、ちくわぶをもらいます。おでんはすべて1個100円です。TVで流れるNHKニュースを眺めたり、飽きてきたら文庫本を開いたり、好き勝手にながら呑みができるのが助かります。930円也。 きっかけはともあれ、侘しい気分のときこそ行きたくなると個人的に考えている酒場リストがありますので御紹介します。混んでなくて、うるさくなくて、明るすぎなくて、ほとんどがおいし過ぎないというような酒場です。もちろん内緒の酒場もあったりしますけど……。特に並びには意味がありませんので御了承下さい。三河島 すずや三河島 豚太郎荻窪 立飲 やき屋板橋 ホッピー酒場 亀屋浅草 つま亀飯田橋 かめや飯田橋 スタンド居酒屋 立呑み やまじ三ノ輪橋 酒場 源氏屋三ノ輪橋 中さと曳舟 玉家堀切菖蒲園 喜楽京成高砂 とんこ京成小岩 銚子屋神奈川 市民酒場 みのかん高田馬場 里高田馬場 もがみ高田馬場 やきとり みちのく池袋 おいでやす西日暮里 はやしや日暮里 お食事 とみや上野 酒場 ふたば秋葉原 山城屋南千住 おでん ヤスベエ南千住 六車食堂柏 やなぎや柏 平井食堂柏 里の味 仲屋綾瀬 立ち呑み処 かあちゃん金町 金波食堂新松戸 大衆酒蔵 まこちゃん大久保 家庭料理 愛ちゃん大久保 くろがね荻窪 田中家本八幡 飲み食い処 ふるさと本八幡 大衆割烹 平ちゃん亀戸 伊勢元酒場浅草橋 酒蔵 住吉(樽平)浅草橋 浅草橋名代 酒寮 むつみ屋浅草橋 鈴木酒場馬喰町 佐原屋板橋 やきとん 田丸屋川口 京東十条 みとめ王子 一福尾久 串焼 丸吉千駄木 そば処 あかしや人形町 おでん 幸路早稲田 鳥ぎん本所吾妻橋 やきとり あずま家三ノ輪橋 酒蔵 天風鐘ヶ淵 栄や鐘ヶ淵 大吉椎名町 まえだ八広 丸好酒場京成立石 鳥勝京成関屋 みちのく堀切菖蒲園 大衆酒場 水トクお花茶屋 かみなりや京成高砂 もつ焼 ひらの京成高砂 はし家世田谷 やきとん 福の家住吉 大衆酒場 高島屋 こうして見直してみるとちょっと違うかなって気もしますね。我が家から行きやすい場所が少ないもの残念だなあ。
2011/10/22
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いよいよ10駅目となりました。京浜東北線は埼玉ではハイクラスの街、浦和の登場です。一方、常磐線はますます知名度の低い馬橋を取り上げます。浦和はつい最近まで埼玉の県庁所在地として君臨していたはずですが、現在は伊勢丹のある埼玉における高級住宅地としてこじんまりとしてしまった印象があります。なぜか鰻の蒲焼が名物ということですがまだ実地に試したことはありません。一方、馬橋は通常下車することもなく、駅名さえ聞いたこともない方が多いと思われます。流鉄の流山線が乗り入れているのが鉄道マニアの気を惹くくらいでしょうか。こんな対照的な町ではありますがどちらの酒場が長くて短い夜を満足させてくれるのでしょうか。 浦和といえば「丸真」。西口の伊勢丹を越えてしばらく歩くと年季の入った一軒屋がきれいに整備されたこの界隈では存在感を醸し出しています。面白いことに漬物屋が併設しています。老舗なのにハッピーアワーなどのサービスが豊富で柔軟な経営態度がうれしい。カウンターの造りがせせこましいのが少し残念ですが、また訪れたいと思わせてくれる酒場でした。続いても有名店「和浦酒場 本店」、ガード下の酒場ということで期待を膨らませて向かいます。……がっかりでした。なので気になっていた「酒蔵 力 浦和本店」や「鵬来」なんかも行ってみる気力が萎えてしまいました。 気持ちを切り替えるために東口に移り、「桜扇 2号店」「桜扇」とはしごしてみました。前者が斜面にへばりつくような建物がユニークですが店内は凡庸なのに対して、後者は外観の地味さに比べると店内は渋い造りです。かといって格別面白味があるわけでもなく、値段も味もぼちぼちという印象です。やむを得ず「立ち呑み WA 浦和店」で一杯引っ掛けたのですが、こちらもやはりイマイチなのでした。 浦和には正直がっかりしています。まだいい酒場があることを期待しますが、当分出向くことはなさそうです。といっても酒場と関係なく健康的に過ごすなら実に便利で快適な街であることはよくわかります。 馬橋は、何軒かの酒場がなかったら、訪れた翌日には記憶が曖昧になってしまうような街です。ありふれていて、うらびれていて、うっかりするとどこかの街と取り違えてしまいそうです。とりわけ無個性な西口を歩きます。駅前の通りをずっと進むと駐車場の角にぽつねんと箱が置かれています。「立呑み一パイ処 寸来来」、これで「ちょっこら」と読ませるみたいです。とりたてて紹介するようなところではありませんが、こういう店って少しだけ気になります。 東口は、駅前がごちゃごちゃと入り組んで路地が多いので少し期待できそうです。「あら川」は店内に昔実際に使われていた屋台がそのまま置かれており、その屋台をぐるりと囲むようにして呑むことができます。線路沿いに反対方向に歩くと「居酒屋 まじょ」があり、屋号の怪しさに反しまっとうな小料理屋風の居酒屋でした。東にずっと進むと「ほるもん ホンダ」というもつ焼の持帰りのできる酒場がありますが、いつも(そう何度も来たことがあるわけではないのですが)閑古鳥が鳴いていてそれはそれで存在感があります。さらに進みます。すると「ニカカレーショップ」なる長屋が見えてきます。複数の店舗が入ったオンボロ長屋の一軒です。陽気でお喋りなバングラデシュ人の店主が営んでいて、平成に入ってすぐに開店して思ったより長い歴史がある店なんですね。この建物はもともと八百屋→クリーニング屋として使われていたようです。店主お勧めの牛タンと大根のカレーはラーメン丼にたっぷり入っていて、味は本格的かつスパイシーでうまい(けどしょっぱい)。思いがけず面白い酒場でした。 ところで、歩きまわってみましたがあとは目新しい店ばかりで心踊らされる酒場はあまりなさそうでした。規模の大きな浦和とは違ってこれ以上探索してもあまり収穫はなさそうです。そういうわけでこれまでの印象は馬橋が上ですが、未踏の酒場への期待値を含めて浦和との勝負は引き分けにしておきます。 残念ながら?「JR常磐線vs.京浜東北線 酒場勝負」はここで一時休止となります。というのも北浦和、与野、さいたま新都心ではまだ酒場巡りをしていないからです。一方、新松戸、北小金、南柏はそれなりに飲み歩いているので近日中に京浜東北線の3駅を巡って続報をお届けしたいと思います。
2011/10/22
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今回は、常磐線は北松戸、京浜東北線は南浦和を飲み歩きます。北松戸はほとんど駅そのもののん存在さえあまり知られていないと思われますが、駅前には工業団地が立地し、山崎製パンや合同酒精、宝酒造などが立ち並び松戸競輪場もあったりして案外飲み屋の需要は多いのかもしれません。一方、南浦和は浦和競馬場が最寄りということはありますが、JR武蔵野線と交錯してもっぱら乗り換え駅として利用されるか、住宅地となっているようです。 まずは、北松戸へ行ってみます。競輪場方面は期待ができそうなので、後回しにして東口を歩いてみます。駅をまっすぐ進むとほどなく「旬彩工房」があります。料亭風に入口の開き扉までのアプローチが長くて敷居が高いのですが、チューハイも310円でいただけてお得な店です。女性客の利用が多いのもうなずけます。その向かいには「千歳」があり、外観はどうということのない居酒屋ですが、なかなかに凝った肴を出してもらえます。その先に焼鳥屋の「とり新」があり、頑固そうな御主人がおいしい焼鳥を焼いてくれます。 西口に向かいます。まずは競輪場入口前の「松しま」。当然ながらレース開催時には昼間っから呑めます。店内にも入れますが、テントの下のオープンエア―を愉しむ人も多く見受けられます。ちょっと値段が高いなあ。そばには似たタイプの店も多く「酒処 はるちゃん」「大衆食堂 義野屋」なんかはお得に昼酒を楽しめます。そばにある「もつ焼き 一九」は夜のみの営業で奮闘しており、安い酒の肴を出してファンも多いみたいです。ホームすぐそばの「た古八」もかなりのオオバコで大衆酒場といったムードを味わいたい向きにはよさそうです。 他にも東口に一軒家の暗い鉄階段を上がった「居酒屋 きくちゃん」というのに飛び込んでみたりしましたが、ウーロンハイが200円と競輪負け組の酒場もあったりしますが、さすがに驚くほどすばらしい酒場というのに出会えていません。 南浦和は、これまで一度しか呑みに行っておらずリサーチ不足ですが、印象的な、というかお気に入りになった酒場があります。東口を出てすぐの線路際にはに魅惑の明かりが手招きしていますが、そこを通り過ぎ一本先の通りに「あかね」があります。ガラスの引き戸には「東京人」の掲載記事が貼られていたでしょうか。安さで知られた酒場のようです。実際その安さは近所に住んでいたら毎晩通いたくなるほどで、肴類もボリュームがすごい。狭いコの字(コの隙間は物置になっていますが)のカウンターで心地よく酔うことができます。線路沿いの「串助」は屋号どおり串焼の店ですが今もつ焼はやってないんでしょうか?オーダーした記憶がないのです。ともあれ駅前酒場がこんなにひっそりしていていいのかと思う位穏やかになれます。お隣の「蔵ちゃん」もまた、カウンターが主体の安い酒場でした。「大衆酒場 八起」「芽だか家」「千登利」などちらほらと気になる酒場がありまた行ってみたいと思うのでした。というわけで、両駅をチェックしたのですが、期待を込めて南浦和に軍配を上げたいと思います。
2011/10/20
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続いてはユニークの地名でありながら、ほとんど地元民以外立ち入ることもないと思われる蕨と常磐線からはいよいろ千葉県の玄関、松戸を取り上げます。蕨という街、全国の市の中で最も面積が狭いということは聞いていましたが、地図を見てみるとほんと狭いですねえ。現在は街のほとんどが住宅街として機能しているように思われますが、中山道の宿場町として栄えた時代があったのですね。松戸もまた水戸街道の宿場として商業が盛んだったようですが、今はかなり衰退した印象は否めません。 まずは、蕨です。蕨の酒場として一番に挙げられるのが「喜よし」でしょう。東口の小さな商店街を進むとやがて味わいのある店構えが目に入ってきます。昭和44年創業ということですが、もう少し古い印象があります。広いコの字のカウンターはやはり気持ちがいいものです。注文した食べ物はどれもおいしい、女性客が多いのも頷けます。 蕨の酒場街は西口にあります。「喜よし」も最近西口駅前に新店舗を出しました。ここを通過し路地を散策するとなんだか今時見掛けないようなヤミ市の一角に迷い込んだ気分になる通りがあります。ここにはうなぎの寝床のような長いカウンターのある「とり松」があって、若い店主が元気があって好感をもてます。すぐそばには「牛丼 ぎゅうちゃん」、すごいボリュームと安さでネットにもぽつりぽつりと書き込みがありますが,この夜は店内は真っ暗です。「Bon Voyage Since 1964」(これは屋号なのかな)っていう立飲みがあって中に入るとどうでもないのですが、通りからの長めは怪しくて激しく誘惑されてしまいます。 西口の北側にも酒場が続いています。「安兵衛」はチェーン店のような屋号ですが、昭和41年創業というから「喜よし」より以前から蕨の地に根っこを張って商売されているようです。オヤジさんが渋くてきびきびしていて気持ちいい酒場です。「ちょいのみ」なる閑散とした立飲み屋もあったり、かなりくたびれた「串焼居酒屋 一力」など面白そうな酒場がちらばっていてどこも覗いてみたくなります。 蕨という街のイメージにあったうら寂しい酒場と大人気店がバランスよくあって思いがけず長居してしまいそうです。 松戸駅は東口には市役所があってバブルの頃は役人たちでおおいに賑わったようですが、今はその名残さえありません。実際酒場そのものが非常に少ない感じがします。ぽつんと佇む女将さんひとりでやっている「酒処 山麓」は場末感たっぷり、焼鳥の「あほうどり」はそつなくおいしいし、「おくのほそ道」「焼酎&黒豚Bar とん豚びょうし」「よい処 ほのじ」なども奮闘しているとは思いますが、特筆すべき酒場ではないかな。線路沿いの「金時」もうらびれているし、「立呑処 もつ焼き ようちゃん」は若い店主が酒も肴も工夫していて好感を持てる、「ばか酒場 松戸店」は屋号こそ脱力させられるが安さは魅力です。ただどこもあと一歩物足りない。以前あった「酒蔵 関宿」は、「酒蔵 宇」として営業をしていますが、ビジネスホテルの2階という奇妙さも魅力には繋がっていないようです。 西口には少し知られた「開進」があります。松戸では唯一残っていると思われるもつ焼の老舗で店の外では立飲みする客もあり、古くからのお馴染みが多いようです。店内の客もほぼ常連のようで多くが一升瓶で焼酎をキープしています。砂糖っぽいやたら甘いタレのもつ焼もたまにはいいものです。駅前通りを100m程進み高砂通りに入るとすぐに飲み屋横丁が残っています。とりあえずここは通過して、吉田類の酒場放浪記で放映された「酒処 ひよし」に入ります。甲乙で値段の変わらない焼酎がうれしいですね。カウンターにはいつもおっかないオヤジさんがちびりちびりやっています。さて引き返して飲み屋横丁を覗いてみます。表通りには「松戸酒場」「上州屋」「ラーメン大学」「カレー専門店 印度」があり、なかでも「上州屋」は何を食べてもおいしくお勧めです。裏の通りにはちいさな酒場が軒を連ねています。古参は「たぬき」、6人入ればいっぱいの狭い酒場でカラオケもあるので一杯引っ掛けた仕事帰りにふらりと立ち寄る常連さんが多いようです。お隣は、「ホルモン焼 福福」。同じつくりの狭い酒場ですがカウンターにも焼台がいつくか置かれています。予約すると2階にも上がれるようですが、共同トイレに辿り着くまでが大変そうですね。さらにそのお隣は「ノグチ屋」です。若い主人とは松戸の酒場でちょくちょくお会いして研究熱心というか単なる呑んべいというか。肴も趣向を凝らしていて楽しいです。いつも大盛況の人気店となっています。 もう一軒忘れてならないのが「大都会 松戸店」。以前は「大都会」という居酒屋チェーンがあちこちに店舗を構えていたような記憶がありますが、ここもその残党なのでしょうか。池袋にもやはり北口すぐの場所に「大都会」があって、24時間営業激安の酒場として名を馳せていますが、松戸店も24時間営業でしっかり安いのです。違いは池袋がそばを売り物にしているのに対して、松戸はラーメンが売りのようです。食券式でセルフサービスというのもこうした酒場では愉快な趣向と感じられます。 というわけで、酒場個々の楽しさや店舗数は松戸が優っているようです。一方で蕨は場末な街並みに魅力があります。結果は引き分けです。
2011/10/19
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続いてはユニークの地名でありながら、ほとんど地元民以外立ち入ることもないと思われる蕨と常磐線からはいよいろ千葉県の玄関、松戸を取り上げます。蕨という街、全国の市の中で最も面積が狭いということは聞いていましたが、地図を見てみるとほんと狭いですねえ。現在は街のほとんどが住宅街として機能しているように思われますが、中山道の宿場町として栄えた時代があったのですね。松戸もまた水戸街道の宿場として商業が盛んだったようですが、今はかなり衰退した印象は否めません。 まずは、蕨です。蕨の酒場として一番に挙げられるのが「喜よし」でしょう。東口の小さな商店街を進むとやがて味わいのある店構えが目に入ってきます。昭和44年創業ということですが、もう少し古い印象があります。広いコの字のカウンターはやはり気持ちがいいものです。注文した食べ物はどれもおいしい、女性客が多いのも頷けます。 蕨の酒場街は西口にあります。「喜よし」も最近西口駅前に新店舗を出しました。ここを通過し路地を散策するとなんだか今時見掛けないようなヤミ市の一角に迷い込んだ気分になる通りがあります。ここにはうなぎの寝床のような長いカウンターのある「とり松」があって、若い店主が元気があって好感をもてます。すぐそばには「牛丼 ぎゅうちゃん」、すごいボリュームと安さでネットにもぽつりぽつりと書き込みがありますが,この夜は店内は真っ暗です。「Bon Voyage Since 1964」(これは屋号なのかな)っていう立飲みがあって中に入るとどうでもないのですが、通りからの長めは怪しくて激しく誘惑されてしまいます。 西口の北側にも酒場が続いています。「安兵衛」はチェーン店のような屋号ですが、昭和41年創業というから「喜よし」より以前から蕨の地に根っこを張って商売されているようです。オヤジさんが渋くてきびきびしていて気持ちいい酒場です。「ちょいのみ」なる閑散とした立飲み屋もあったり、かなりくたびれた「串焼居酒屋 一力」など面白そうな酒場がちらばっていてどこも覗いてみたくなります。 蕨という街のイメージにあったうら寂しい酒場と大人気店がバランスよくあって思いがけず長居してしまいそうです。 松戸駅は東口には市役所があってバブルの頃は役人たちでおおいに賑わったようですが、今はその名残さえありません。実際酒場そのものが非常に少ない感じがします。ぽつんと佇む女将さんひとりでやっている「酒処 山麓」は場末感たっぷり、焼鳥の「あほうどり」はそつなくおいしいし、「おくのほそ道」「焼酎&黒豚Bar とん豚びょうし」「よい処 ほのじ」なども奮闘しているとは思いますが、特筆すべき酒場ではないかな。線路沿いの「金時」もうらびれているし、「立呑処 もつ焼き ようちゃん」は若い店主が酒も肴も工夫していて好感を持てる、「ばか酒場 松戸店」は屋号こそ脱力させられるが安さは魅力です。ただどこもあと一歩物足りない。以前あった「酒蔵 関宿」は、「酒蔵 宇」として営業をしていますが、ビジネスホテルの2階という奇妙さも魅力には繋がっていないようです。 西口には少し知られた「開進」があります。松戸では唯一残っていると思われるもつ焼の老舗で店の外では立飲みする客もあり、古くからのお馴染みが多いようです。店内の客もほぼ常連のようで多くが一升瓶で焼酎をキープしています。砂糖っぽいやたら甘いタレのもつ焼もたまにはいいものです。駅前通りを100m程進み高砂通りに入るとすぐに飲み屋横丁が残っています。とりあえずここは通過して、吉田類の酒場放浪記で放映された「酒処 ひよし」に入ります。甲乙で値段の変わらない焼酎がうれしいですね。カウンターにはいつもおっかないオヤジさんがちびりちびりやっています。さて引き返して飲み屋横丁を覗いてみます。表通りには「松戸酒場」「上州屋」「ラーメン大学」「カレー専門店 印度」があり、なかでも「上州屋」は何を食べてもおいしくお勧めです。裏の通りにはちいさな酒場が軒を連ねています。古参は「たぬき」、6人入ればいっぱいの狭い酒場でカラオケもあるので一杯引っ掛けた仕事帰りにふらりと立ち寄る常連さんが多いようです。お隣は、「ホルモン焼 福福」。同じつくりの狭い酒場ですがカウンターにも焼台がいつくか置かれています。予約すると2階にも上がれるようですが、共同トイレに辿り着くまでが大変そうですね。さらにそのお隣は「ノグチ屋」です。若い主人とは松戸の酒場でちょくちょくお会いして研究熱心というか単なる呑んべいというか。肴も趣向を凝らしていて楽しいです。いつも大盛況の人気店となっています。 もう一軒忘れてならないのが「大都会 松戸店」。以前は「大都会」という居酒屋チェーンがあちこちに店舗を構えていたような記憶がありますが、ここもその残党なのでしょうか。池袋にもやはり北口すぐの場所に「大都会」があって、24時間営業激安の酒場として名を馳せていますが、松戸店も24時間営業でしっかり安いのです。違いは池袋がそばを売り物にしているのに対して、松戸はラーメンが売りのようです。食券式でセルフサービスというのもこうした酒場では愉快な趣向と感じられます。 というわけで、酒場個々の楽しさや店舗数は松戸が優っているようです。一方で蕨は場末な街並みに魅力があります。結果は引き分けです。
2011/10/19
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今回は金町と西川口という両線のなかでもかなりディープなエリアとなります。といっても金町って酒場と水元公園以外にこれとった何かがあるわけではないのですが。一方で、西川口というと性風俗店が乱立する街という印象でことに女性からのよくないようです。健康的な公園位しかない街とオートレース場と風俗街を併せもつ街のいずれが優っているのでしょう。 金町も駅前はすっかり再開発で整備されつつありますが、それでも駅の真正面には「居酒屋 太助」が変わらず営業を続けています。昭和23年創業という情報もあって戦後すぐからお隣で営業している牛乳販売店と共にいまだ人々を愉しませてくれます。すぐ脇の路地を入ると、コの字のカウンターをもつ酒場が2軒連なっています。安い肴が充実した「ゑびす」と独特な牛スジ煮込が美味なホルモン焼きの「大力酒蔵」です。いつまでも営業を続けてもらいたいものです。 京成金町駅のそばの踏切を渡ると飲み屋街が連なっています。激狭でいつも混んでる「よっちゃん」を振り出しに、瓶ビール激安の「山吹」、バラック風建物が魅力の「松ちゃん」、高級感がありながら実に庶民的な「大松」、家族経営でおいしいもつ焼、もつ刺を供してくれる「大渕」まで多様な酒場が迎えてくれます。 両駅の中間にある金町らしからぬセントマリーチャーチのある路地を進むと元気なおかあさんが切り盛りする「デコチャン」、界隈で最古参という立派な建物の「深川酒場」、いつももつ焼好きがシークワサーハイを片手ににぎわう「ブウちゃん」があります。 駅の北口はこじんまりした商店街が広がっており、オオバコの人気大衆食堂「ときわ食堂 金町」もありますが、ここはやはり「金波食堂」のオンボロさに惹かれます。おかあさんの娘さんの飼い犬がいつも愛らしい姿を見せてくれます。「みやご」は住宅街に足を踏み入れる一歩手前でひっそりと営業しており静かに酒を愉しむことができます。 金町はやはり酒場の充実度が高いですね。毎晩巡っても飽きない位でこんな街に住めると幸せだなあとつくづく思います。 西川口は最初はおとなしめの東口からお邪魔します。駅前すぐの「やきとり 次郎 東口店」は主婦がやきとりと生ビールで目の前の停留所にやってくる路線バスを待ったりのんびりした時間を感じられます。もう一軒立ち飲み屋があったっけ。なんだかあまり飲み屋さんはなさそうです。 西口になるとぐっとオート帰りの客向けの酒場が目立ちます。せっかくなので「やきとり 次郎 西口店」にも入ってみます。ぐっと年季の入った油で黒光りした天井と壁はうっかりひじを掛けることもできませんが、公営ギャンブル場の最寄り駅の酒場らしい風情を堪能できます。客同士のトラブルが多いようなので御注意を。西口の北側では「広瀬川」がもっとも安心して飲食を楽しむことができます。ギャンブルに勝った人も負けた人もこちらで愉しまれるようです。「大衆酒蔵 大将」はぐっと渋い居酒屋で古民家風の店内はぐっと落ち着いて呑むことができます。 西口のロータリーを越えて南側には場末の様相がぐっと濃くなります。「スタンドバー かんづめや」は狭い店内に客がぎっしり、「ワンコップ 千登利」はちゃんとコの字のカウンターがあり、「立呑 鳥しげ」はしっかり椅子がありますが、どちらも客の話題は決まってギャンブルになるようです。 といったわけで西川口の場末感も堪らなく癒されますが、酒場としての実力は金町のほうにかなり分があるようです。
2011/10/19
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とうとう京浜東北線は埼玉県に舞台を移しました。川口です。めっきり開発が進んですっかり様変わりした駅前ですが、他の街と差別化するような何かを見つけることができるのでしょうか。一方、亀有は「こち亀」でめっきり知られていおり、庶民的な商店街のある下町情緒のある街であるような印象がありますが、こちらもこじんまりした商店はかなり減ってしまい、大きなビルが目立つようになりました。以前と変わらぬ酒場が残っているのでしょうか。 かつては宿場町、ひと昔前は『キューポラのある街』で知られる川口は工場地帯のイメージが濃厚ですが、現在はかつての面影は駅からかなり離れないと感じられません。その一方で駅からすぐのそごう周辺はヤミ市さえ思わせるようなうらびれていて殺伐とした光景が広がっています。薄暗がりが奥深くまで伸びている立飲屋の「京」はすれた呑んべいでもどきどきわくわくさせられますし、持ち帰りの焼鳥店「やきとり 太郎」では買い物帰りの主婦が帰宅前の一杯を楽しんでいたりしています。程近くにも「炭火焼 まるさん」という焼鳥屋の持ち帰り主体でありながらもう少し居酒屋っぽさを演出した店もあります。 そごうを超えてしばらく進むと古いアーケードの商店街が見えてきます。この商店街はかつては川口のメインストリートであったことが想像できます。ひたすら北上すると「もります食堂」が目に入り除いてみたい誘惑に駆られますが残念ながら現在は休業中のようです。さらに先に進むと「焼とん 松ちゃん」があります。1串90円からの焼とんはちゃんとした処理をされているようで、なかなかにおいしい。隠れた良店でした。さらに商店街を越えた通りにもちらほら居酒屋がのれんを下げていて魅力的です。 川口ではあまり呑む機会もなく、散策も限られた範囲になっていて、まだまだリサーチ不足ですが、これまでの印象ではガード下の「焼鳥日高」をはじめ「関西風串かつ やきとり たぬき」「ぶっちぎり酒場」といったチェーン展開した酒場が呑み助の集まる店としては主流となりつつあるように感じられました。 かつてロマンポルノの4本立て名画座であった(といっても夏休みや冬休みには東映漫画祭りを上映していました)亀有名画座に通い詰めた頃は、まだまだ駅前商店街も戦後の名残を留めていたように記憶しますが、いまや道も開けてしまい味気ない町並みになっています。 北口には亀有の有名店が集中しています。亀有映画座のあったのは南口なので当時はあまり訪れたことのなかった方面になります。何と言っても「江戸っ子」を挙げておくべきでしょう。暖簾の下では焼台で大将がもくもくともつ焼を焼いておりその周囲はずらりと立飲み客が並びます。2階は広いL字のカウンターがありますがこちらもいつもびっしりとお客さんが掛けています。実はここ、あまり得意ではなくてその理由は商売繁盛しすぎているからという極めてわがままなものです。そばの「大力」「居酒屋 ハッピー」も同じことが言えて、えらく混んでいて落ち着けない。他にも好きになれない理由はあるんですけど。その点常連さんの自転車がずらりと並べられてつい入ってしまった「大衆酒場 だるまや」は同じ混んでいるといってもこちらは圧倒的にくつろげます。常連たちの人柄がすごくいい印象があります。ひとり孤独に飲みたい夜にはお勧めできませんが。他に八柱、秋津などえらく遠隔の武蔵野線沿線で範囲は広くてもこじんまりとチェーン展開する「大衆割烹 大漁船 亀有店 」、昼間は立ち食い風のそば屋で夕方には居酒屋となる「そば・居酒屋 やぶからぼう」は特別ではありませんが無難に飲ましてもらえます。立飲みの「立呑酒場 道楽」「炭火焼鶏 串之介」はなかなか良心的ではありますがまだまだ枯れていないせいか薄っぺらな印象です。「うな辰」は昭和40年創業で佇まいは創業当時をそのまま偲ばせてくれ魅力的ですが、評判がいいといっても鰻屋ではおちおち飲み食いしまくるわけにもいかないのでした。 南口は激安のおでん屋「まづいや」がくつろげます。特に持ち帰りのおでんスペースの裏側で飲むのが楽しめます。まだいただいたことはありませんが、2階ではお好み焼なんかをやっているようです。同じく激安居酒屋の「一力」はお隣の金町の「山吹」とご主人が兄弟だったかと思いますが、がんばっているのは感じられます。カウンター席のない「おたんこなす」もまた安さは善戦しています。ということで、川口と亀有、どちらもいささか残念な街です。ここは引き分けということにしておきます。
2011/10/18
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さて今回からは常磐線は各駅停車区間に突入します。綾瀬、亀有、金町の駅の成り立ちはなかなか複雑なのでウィキペディアなどをご覧ください。北綾瀬なんていう東京メトロ千代田線の分岐駅というのもあり鉄道マニアにはお馴染みとなっています。千代田線では町屋を通過しなければならないのは残念ですが、ここからの3駅にも面白い酒場は続きます。最初の駅は綾瀬です。酒場本でもあまり紹介されることのないこの地に果たしてどんな酒場があるのでしょう。対する京浜東北線は酔っ払いであれば一度は訪れざるをえない昼酒のメッカの赤羽です。吉田類の酒場放浪記でも取り上げられた酒場が前者が1軒なのに対し、後者は赤羽岩淵を加えると7軒という差があります。果たしてどれだけ綾瀬が善戦できるか楽しみです。 綾瀬駅では西口方面が酒場の充実した地帯と言えるでしょう。綾瀬で最も知られた酒場は「大松」ということになるでしょうか。いつもお客さんでびっしりでいい具合に煙に燻された店内は酒飲み好みだし、出されるものはどれもおいしいくて安い。安さで言えば「串のこたに」の安さにはいつもびっくりさせられます。家族連れの多さがもはやファミレス遣いの串揚屋と化しています。すぐそばにある老舗中華点の「綾瀬飯店」もひっそりとしていて落ち着くし、なんといっても麻婆豆腐がおいしい。 ガード下、ガード沿いにもユニークな酒場がひしめいていて、ガード下なら「立ち呑みコーナー 江戸っ子」が安くて使いやすく「もつ焼 りき」は雰囲気こそないもののその安さだけでもうれしくなります。道を隔てて「串揚げ 典」が渋~く営業中でのんびりとしたスタイルがほっとさせてくれます。高架を挟んで反対側には驚愕の午前3時開店の「立ち呑み処 かあちゃん」があります。東口方面に進むと「駅前酒場」があり、元ボクサーのお父さんがかっこいい。ここは季節の珍しい肴をたくさん揃えてくれていて、何を頼むか目移りします。「もつ焼 笑店」は入りにくそうな外観ではありますが、手堅いモツ料理をいただけます。他にも「居酒屋 みやはら」「味わい処 とこ呑」「酒 らいでん」などなかなかの酒場がありますが、駅から少し離れた「お父さんの店」がお勧めです。値段の安さや店のくつろげる雰囲気、肴の味などどれもちゃんとしています。 綾瀬はとにかく安い酒場の多さを特筆すべきでしょう。サラリーマンのささやかな小遣いで楽しめる貴重な場所です。 続いては赤羽です。赤羽というまずはOK横丁方面から歩いてみたいですね。真昼間から呑むことができる「まるます家」、うなぎをはじめとした肴のおいしい「川栄」、珍しい部位のもつ焼をいただける「八起」、うらさびしいのになぜか楽しい「ミルクホール 三珍亭」などなどの有名店・珍店があります。 チェーン店ではない立ち飲み屋さんの充実も目を見張るものがありますが、安さでは「立ち飲み いこい」「喜多屋」「立ち呑み 桜商店603」が御三家といったところでしょうか。小奇麗な「立ち呑み処 三代目 順貴」やおでんの「丸健水産」も個性派として楽しめます。 他にもキャベ玉で知られる「まるよし」や建物のうらびれた感じが堪らない「米山」が知られていますが、どちらも混み過ぎているためなかなか足を向ける気分になれません。 以上は駅の東側になりますが、西側にも雰囲気のよい酒場が散見されます。「大衆酒場 まこと」は常連さんばかりで最初は居辛い気分になりますが、おいしい酒と肴をいただいているうちに気分もほぐれてきます。御近所の「もつ焼 ながしま」もまた常連さんでにぎやかなもつ焼屋さんで従業員のみなさんと常連さんの打ちとけた雰囲気がうらやましくなります。そのお隣の「大衆酒場 大忠」は、一転ひっそりとしており、孤独を味わいたい向きには悪くないのではないでしょうか。 なんだか赤羽に対するコメントがそっけない感じになりましたが、どうしてだか赤羽の雰囲気はあまり得意ではないのでした。 こんな曖昧な感想でジャッジするのも気がひけますが、独断で綾瀬の勝利とさせてもらいます。
2011/10/18
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第4回は北千住vs東十条。どちらも名店がひしめく酒場のメッカではありますが、いかにも北千住に分がありそうですね。常磐線もここまでは東京でもかなりの裏街道的なイメージがつきまとう土地を歩いてきましたが、ここに来て一気に現代的な町へと変貌します。宿場通りに代表される歴史ある町並みと現代的なショッピングセンターが縦横に交錯する大きなターミナルは場末好みの琴線に触れることはできるのでしょうか。一方、京浜東北線は飛鳥山のある王子に関しては観光地でもあって明るい印象の町並みに出会えましたが、東十条はぐっとうらびれた様子です。街の印象が酒場に現れてくるかが見ものです。 それでは北千住に行ってみます。北千住と言うとまずは西口のときわ通り(呑んべい横丁)を語らないわけにはいかないでしょう。有名店の「千住の永見」「天七」「大衆酒蔵 幸楽」「大升」をはじめ、その場で手作りしてくれるさつま揚げのおいしい「ふじもと」、値段がわからなくなってちょっと不安になる(安めなのでご安心)「五味鳥」、マグロの安い「魚八 千両」、焼鳥がうまくて安い「石井」などなど楽しい酒場がいっぱいですが、どこもにぎわっていてひとりでしっぽりという感じではないですね。場末ムード漂う「居酒屋 雄武」のような酒場がもっとあればいいのですが。 少し歩くと「割烹くずし 徳多和良」があって名店の誉れ高く確かに低価格で質の高い肴をいただけますが、やや陽気すぎる向きには向かいの「藤や」がお勧め。東京では珍しい串に刺さった煮込み(門前仲町の「大阪屋」でもいただけますね)をいただきほうじ茶割をすすっているとじっくり腰を据えてみたくなります。まあこちらの女将さんが非常に元気なのでしっぽりと一人酒というわけにはいかないかもしれませんが。 さらに日光街道を越えると「酒屋の酒場」があり、安くおいしい魚をいただけますが、こちらもご常連でびっしりということが多いようです。千住大橋方面にも足を伸ばしてみましょう。太田和彦激賞の「田中屋」は立派過ぎて居酒屋とは言えない風格がありますが他にも「もつ焼 おざわ」「居酒屋 とりかず」「立ち飲み 六ちゃん」「大衆酒場 ばんや」などなどどこも庶民的な価格でおいしくいただけます。とりわけお勧めは「ときわ」、外観は立派ですが格安で酒と肴を出してもらえる良店です。 それではと年季の入った一軒家がうれしい「遠山」に足を向けます。ご主人の焼く焼鳥でついつい酒が進みます。常連さんが生ビールをついでくれたり和気藹々とした空気が心地よい酒場です。「遠山」まで来てしまったら煮込みの「大はし」に寄らないわけにはいかないでしょう。いつもお客さんでびっしりで少し並ぶことは覚悟しています。店の中からは店主及びその息子さんが威勢よく「お~い」という声を張り上げています。 東口はあまり省みられることのないスポットですが、渋い酒場がちらほらあります。上品な料理屋の風情の「かえる」ややいろんな種類の手羽唐揚をいただける「鈴木商店 (圭)(マルケイ)」、常連で一杯の「鳥好」、中でもお気に入りはつたの絡んだクラシックな喫茶店(既に閉店しているようです)の隣にある「やすらぎ」、こちらは静かにのんびり酒を飲みたい人にお勧め、ただし一品の量が多いので注意が必要です。 こちらもついでに京成関屋まで足を伸ばしでみます。こちらも再開発が進んでおり今は東京電機大学の新キャンパス建築中で殺風景になっています。それでも京成関屋まで辿り着くと赤提灯がちらほら目に入ってきます。多くの通勤客はここで東武伊勢崎線の牛田駅と乗り継ぐためだけに利用しているようですが、さいはての乗換駅に来たような哀愁が漂います(その先の堀切駅まで行くとさらにその感は高まるのですが)。おにぎり屋さんの「みよ枝」、絶品もつ焼の「Moana(モアナ)」、牛田駅改札から徒歩1秒の「みちのく」、常連さんでにぎやかな「東菊水」などフツーの酒場を求める向きにはおあつらえ向きの酒場が揃っています。 こうしてみると北千住はさすがに充実しています。ただ街が立派になりすぎて、帰宅時ににぎやかな駅方面に向かうのが億劫になるという欠点があります。 その点東十条は問題なし。北口の東側こそ商店街があるものの武蔵野台地の境目?にあたる西側はいきなりこじんまりした酒場街で崖の上に酒場横丁が構成されているのが不思議な感じがします。南口は夜らしい暗さがぽっかり口を開けており、初めて降り立った人はこんな場所に酒場があるとは思えない風景です。では南口を徘徊してみます。こちら側の最有名店は「埼玉屋」ということになるのでしょうが、コメントは差し控えます。まずは「酒処 よさこい」、駅からほど近いおでん屋さんで昭和28年創業とのこと。L字の低めのカウンターはうらびれたサラリーマンのひとり酒にはのってこいです。よく知られた「新潟屋」はにぎやかで元気になれそうなもつ焼の酒場、元気なおかあちゃんが一人で切り盛りする「さくま」はのれんがいつも仕舞われているけど思い切って入ってみてください。大衆的なコの字のカウンターが出迎えてくれます。そばの「木崎屋」は中華料理店ですが、すごく侘しい感じでついつい長居してしまいそう。 続いて北口に向かいます。京浜東北線の東側を線路沿いに歩くとなかなか寂れたムードがたまらなく魅力的。ぐっと我慢して北口を越えてさらに住宅街に踏み込むと「よりみち」が見えてきます。こちらは昭和40年代からやっている酒場でそれこそ近所に住んでいたら毎晩1,2杯引っ掛けて帰りたいような佇まいです。難点は肴のレベルがかなり落ちること。この点さえクリアされれば通いたい位。その点、駅寄りの「大衆酒場 杯一」は酒場気分が横溢しているばかりでなく、なんでもそこそこおいしくいただけます。 北口の西側は小学校の机のようなテーブルが置かれたもつ焼屋の「野豚」などなど酒場が連なっていますが、やはり「みとめ」が知られた存在でしょう。オンボロといっても差し支えないような外観は堪らない魅力です。東十条名物のからし焼もいただけますが、ここは酒や肴はともかくとして店の空気に浸っているだけで心地よくなります。他にも質のいい料理を出してくれる「あぶくま」なんかもありますが、大抵このまま十条まで歩き「齋藤酒場」に寄り道してしまうことになります。 といったわけで酒場の充実度では北千住が勝っておりますが、呑んべい好みの街の空気では東十条が圧倒していると思われます。ここは個人的な好みを優先して引き分けということにさせていただきます。
2011/10/17
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第3回はすごく厳しい勝負になりそうです。王子vs南千住です。どちらも都営荒川線の最寄駅に直結できるということもあって頻繁に利用する駅なのでした。それではまずは王子から。 王子よいえばやはり、「山田屋酒場」を避けては通れないでしょう。半熟玉子をつまみつつ昼酒する楽しみは格別です。というかもしかするとここ以外にはもしかすると楽しみはないのかも。「一福」や「大衆居酒屋 松島」も大衆酒場としての楽しみはそれなりに味あわせてくれるし、柳小路の「たちのみ 漢祭」「集っこ」「福助」やさくら新道の「バー リーベ」もついつい寄り道したくなる風情だし、「平澤かまぼこ」で立ち呑みながら待合るのはのはもはや定番になっているのかもしれない。でも思いがけず飲み屋が少ないのだ。思い切って北に向かってみる。やがて北区豊島なる地名が見えてくると王子駅前とは違う一面を見せてくれるようになるのでした。「もつ焼 やき鳥 シマ」は何気ないもつ焼屋で心地よく飲めますが、さらに歩くと出鱈目に建て増されたような「とん平」が見えてくるでしょう。こちらは楽しい。安くてうまい、一見は勝手がわからず、ちょっとばっちい。いいなあ。大丈夫。すぐそばから池袋方面行き路線バスが出ています。 南千住といえば「大坪屋」となるのだろうか。こちらはともかく安い。もはや湯理由を言うまでもないが、一見または気を使うタイプの人はあまり居心地はよくないだろうな。 ここは山谷方面と三ノ輪方面に大きく分けることができます。まずは三ノ輪方面。駅からすぐの「大力」は創業はさほど古くないらしいものの、しっかり地元になじんでおり、ひとりで行けば常連のおねえさんに構ってもらえるでしょう。その先の「おでん ヤスベエ」も薄暗くて降ろした腰が上がらなくなります。千住大橋方面に向かうと立派な「六車食堂」があり、ここのお母さんの優しさも捨てがたい。駅前にもすでに巨大ビルの半地下に埋もれてしまって入るものの「鶯酒場」があって、ホイスを飲ませてもらえます。新興の「駅前市場」は100円焼肉や刺身などがあって頑張って欲しいものです。 山谷方面。こちらは玉石混合なのでともかく先入観を捨てていろいろ行ってみてください。ぼくのこれまで行った感想では、居酒屋 裕栄:カウンターはディープな客層だが、テーブル席は近隣のサラリーマンが進出しているようで思いがけず普通の酒場になりつつある。三岩:明らかにサラリーマンの溜まり場。孤独を求める向きにはお勧めできない。淀屋酒店(角打ち):かなり広いスペースがあって、過ごしやすい。居酒屋・食事処 たかでら:ともかく安い、外観の地味さに惑わされず行くべし。なんとネットでクーポンもある。遠州屋 本店 高尾:近辺では数少ない宴会もできる酒場。ただし小奇麗で、安くもなし。きぬ川:食堂。ビールくらいしかないが安い。古晒酒店(角打ち):ここはひとりで入るのはそれなりの気合が必要。心して入られたし。etc.といろいろありますが、「タカラ酒場」の佇まいはすばらしいのですが、客の入りが残念。ここをはじめとして「下総屋」なんていうところもカラオケを常備してるんですね。居酒屋然としつつ実はスナック的な商売というのが混じっているのがこの界隈の特徴。やはり地域性もあるんでしょうが、居酒屋よりやや高目の価格でスナック的な使い方をできるという配慮がなされているのでしょう。ぼくはカラオケはさほど気にならないので平気ですが、騒音・爆音が駄目な人には注意が必要です。 そうなると「丸千葉」がいい!ということになるのでしょうが、どうしても「大林」を愛します。もはや「大林」だけのために南千住があってもいいと思えるくらいです。 という偏愛振りで南千住の勝ち。実はこの「大林」も「三楽」と同じ頃に酒場巡りのきっかけとなった酒場なのでした。
2011/10/16
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第2回は、上中里と三河島の対決です。ところがこれまで上中里で呑んだことがないんですね。それだけで三河島の不戦勝は決まってるんですが、それだと面白くないのでもう少し文章を引っ張ります。 上中里では呑んだことはないですけど、降りたことはあります。かなりぐるぐると散歩してみたこともあります。東京メトロの西ヶ原駅周辺はかなり寂しい。駅の南は駅前におでん屋?「お多福」や焼鳥屋の「やきとり 岡ちゃん劇場」なんかもありますが、北側は独特な侘しさの漂う風景で、その大きな理由はJRの路線によって中洲のように孤立しているからでしょう。食堂(「花屋食堂」は立派、そばに銭湯もあったかな、「やまと食堂」は営業してるんだろうか、酒はなさそう)や中華屋、寿司屋なんかもあったと思いますが、この僻地感が場末好きな人々を呼び寄せるのでしょうか。カメラを抱えた若いカップルが目立ちます。東北本線の尾久駅方面は脱出口が2箇所あったと思うのですが、どちらもひとりではかなり心細い。 番外にはなりますが尾久駅方面の酒場紹介。駅の北側は明治通りに面していてさすがに多少のネオンが瞬いてます。中でも「たらく 別館 いけだ屋」「中国家常菜 同心房 尾久店」は目立ってる。前者は、尾久駅前で強い勢力を誇っているようで、「たらく 本店」のほかイートインコーナーもある寿司屋も同じ系列のようです。ここが同じタイプの酒場であるかはリサーチ不足ですがかなりのオオバコ。雰囲気も悪くないんですが、経営的に大丈夫なのか心配してしまいました。明治通りを池袋方面にもう少し歩くと「串焼 丸吉」というのがあって、こちらはもう見事な位、原住民御用達の酒場となっており、店内はどこかモダンなカウンターバーのようでありながら、ご高齢者がメインなそこそこハードな安酒場であったのでした。 続いては三河島。在日韓国人街が広がっているこの街では、日本人への反発もあってか、正直店によっては不愉快な思いもさせられているのですが、小粒ながら憩える酒場もぽつりぽつりあります。 駅前の「若松」はまさに正統派の居酒屋。ここのくつろげる感じはいまや貴重かもしれません。ちょっと離れて明治通り沿いには「割烹 三岩」(この「三岩」の屋号って単なるのれん分なんでしょうか)も立派で気分がいい。駅そばの「三松」はそば屋ながら昼呑みもできそうだし、「家谷酒店」は東京の角打ちでもかなり怪しげでそれはそれで楽しめる。日暮里方面の「蛇の目鮨」では2時間500円で飲み放題をいいことに大変になったことも。うまく「豚太郎」を見つけられた方はここもかなりオンボロではありますが、もう少し散策してみてください。「すずや」を見つけることができるはずです。この酒場の佇まいはほんとすばらしい。煮込みがちっさかろうが、ウイスキーが少なかろうが問題にはならないでしょう。武蔵小山の名店「牛太郎」の祝い額が掲げられていますが、京成高砂の「もつ焼 ひらの」でも見掛けた記憶がありますが、あまり関係は深くはなさそうです。鐘ヶ淵の「牛太郎」とはどうなのでしょう?ともあれこちらは一見の価値ありです。その後は「大衆食堂 越後屋」でのんびり過ごすのもくつろげますし、さらに足を伸ばして、三ノ輪方面の「酒場 源氏屋」「遠太」「中さと(中ざと)」「栃木屋」まで足を伸ばすと大衆酒場を満喫できることでしょう。というわけでちょっとずるい結果ですが、三河島の圧勝ということになりました。もし上中里にすごい酒場があったらお知らせください。すぐにでも出向いて確認したいと思います。
2011/10/16
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JRの常磐線と京浜東北線には有名酒場,珍酒場が多くあります。かねてからどちらの路線に魅力があるのか気になっていました。こんなことして何の意味があるのと思われることは覚悟の上で勝負させてみようと思います。勝った方の沿線に住めば夜の呑みは充実したものとなるはずです。 スタート地点はそれぞれ山手線から北上する分岐駅にしておきます。常磐線は日暮里、京浜東北線は田端からスタート。 日暮里の南側には夕やけだんだんを下ると谷根千があって、休みの日なんかには大勢の観光客が繰り出してにぎやかになりますが、平日の夜はと言えば谷中銀座商店街から一歩外れると人通りもまばらでいささか寂しい。 その谷中銀座商店街の突き当りにあるよみせ通りでは「居酒屋 喜月」がお気に入り、コの字カウンターには会津出身の女将さんと常連のこれまた会津出身の方たちが盛り上がっている。通りからちょっと横道に入ると、上品な和菓子を食べさせていただける「御菓子司 むさしや」や少し先には思わず足を踏み入れたくなる渋いすずらん通り(古参の「そば処 あかしや」はとりわけムードたっぷり、伺った話では昭和36年頃から営業しているそう。頼んだポテトサラダは大皿からてんこ盛りしてくれました)があったりするのですが、さすがに日暮里の酒場とは言えないかな。 谷中霊園方面にも居酒屋「町人」やおでんの「おせん」、酒場や生姜がたっぷり入った銘菓・浮草で知られる「谷中岡埜栄泉」など店構えの趣を眺めているだけで楽しくなりますがここも日暮里からはちょっと遠いですね。 えらくもったいぶってますが、日暮里駅のそばにもちゃんとあります。そばの「川むら」の向かいの通りからすぐの初音小路が、侘しいネオンで酒呑みを迎えてくれます。路地の奥にはちゃんと共同便所もあって風情抜群。この脇から裏の通りに抜けられたりもしてぶらりと立ち寄るだけでも楽しめます。「沖縄家庭料理 あさと」「酒処 力弥」「麻音酒場」などにお邪魔しておりますが、使いやすいのは「麻音酒場」でしょうか。 日暮里繊維街のある東口方面は酒場好きには知られる「いづみや」や「豊田屋」もありますが、再開発によって巨大ビルが立ち並び、街並みを単調なものに変えてしまったようです。そういう意味では「酔の助」や「居酒屋 路」などがしぶとく根を張って商売しているのは貴重なのかもしれません。 と全般に日暮里の酒場はいささか小粒な印象が強いですね。「お食事 とみや」という中規模な町工場の食堂といった風情の大衆食堂はじんわりとせつない気分になれる渋い店です。 続いては、田端。北側には最近代変わりした「初恋屋」が有名だが、いつも混んでいて落ち着いて呑んだことがないです。混んでるってのはいい店の証左であるのかもしれませんが、もっとゆったりした気分に浸れる酒場がいいですね。角打ちの「喜多屋酒店」のお隣でひっそりと控えめな明かりでようやく営業していることがわかる「立飲スタンド 三楽」がやはり大のお気に入りです。 明治通りを越えた田端新町には渋くて安い焼鳥屋の「鳥幸 加瀬政支店」やさらに路地をそれた場所ですごく安く飲み食いさせてくれる「飲み食い処 瑞穂」なんかもあります。ここから商店街を駅方面に引き返すと「食事処 酒処 豚珍軒」や「やき鳥 相馬」と思いがけない良店もあったりします。どちらもちょっと入りにくいところが魅力です。 駅北口の南側方面には「ときわ食堂 動坂」や「動坂食堂」などの食堂くらいしか思い当たる店がなかったのですが、最近ふっと思い付き駅からすぐの立体交差している道を歩いてみようと階段を上ってみると恐らく昼間っからやってる「焼鳥 焼とん 扇 sen」やせつない気分になる位古ぼけた「食事処 しの」、やたらと中身の多いホッピーを出してくれる「のがみ」などが狭い一角に密集してるんですね。この一角は好きな雰囲気でした。 と主だった酒場を選びましたが日暮里にはここぞという店がない一方で、田端は「立飲スタンド 三楽」があるという理由だけで田端の勝ちとしてしまいます。
2011/10/15
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こんばんは、まだほとんど文章のないこのページを御覧頂いている方がおられますので、急ごしらえではありますが現在までのお気に入り酒場を紹介します。ずらり有名酒場が揃っていますが、どうしてここがというようなところもあるかもしれませんが、あくまでも個人的なお気に入りなので笑って眺めていただきたいと思います。田端 立飲スタンド 三楽南千住 大林中野 北国中野 ブリック 中野店平井 豊田屋十条 齋藤酒場王子 山田屋酒場新子安 市民酒蔵 諸星(諸星酒場)雑司が谷 高松屋入谷 もつ焼きと銘酒 加藤新宿三丁目 サントリーラウンジ イーグル本郷三丁目 呑喜門前仲町 大坂屋木場 河本月島 岸田屋住吉 山城屋酒場大島 大衆酒場 ゑびす一之江 カネス酒場(大衆酒場 カネス)三ノ輪橋 遠太三ノ輪橋 中さと(中ざと)庚申塚 やきとん 高木庚申塚 庚申酒場東向島 大衆酒場 岩金(岩金酒場)鐘ヶ淵 はりや八広 丸好酒場京成立石 宇ち多゛堀切菖蒲園 喜楽京成小岩 銚子屋松陰神社前 バッカス神奈川 市民酒場 みのかん(美濃勘酒場)
2011/10/14
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今晩は軽く田端の「立飲スタンド 三楽」にお邪魔します。ここはそれなりに知られた酒場なので今更紹介するまでもないのですが、すごく気に入ってるのでどうしても書いておかないわけにはいかないのでした。 縄暖簾を潜り、お決まりのチューハイをいただきました(常連さんが左手にというルールがあるようで、一見さん側からはチューハイの品書きは確認が困難なのです)。ここのチューハイは飲み口からはあまり感じられないけれど、すごく濃いのです。三杯呑めばそこそこいい加減。オヤジさんが元気な頃は三杯飲んだ客は帰していたと聞いたことがあります。 目の前の鍋ではぐつぐつ豆腐が踊っているのでこちらの定番のおでんが始まったかなと少し興奮したのでした。黒板に書かれている品書きを見て納得、もつ煮込だったのね。せっかくだから頂くことにしました。 お母さんは口数も少なくちょっとおっかないけど、たまに話し掛けるとお喋りの相手になってくれたりもする。悩ましいのが客によってお通しを出してくれたり、出なかったり、軽い肴(今晩はきびなごの煮干)があったり、なかったり。今晩はお通しにもやしキムチを頂けたけど、軽い肴は駄目でした。 ここは酒場巡りをはじめるきっかけになったお店の一軒です。開いているか外観からははっきりしないところや煤けて真っ黒になった風景画なんかに魅せられてしまったのでした。初回なのに短文となってしまいましたが、ぼちぼちと書き続けていくつもりです。お付き合いいただけると幸いです。
2011/10/14
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