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小山ってどこがどうってことを明確に説明する準備はないけれど、ちょっと気になる町だし、好きな町でもあります。だからということもありませんが、このブログにもこれまで何度か小山を訪れて立ち寄ったお店のことも書いたことがあったはずです。特に大きな繁華街があるって訳でもないのですが、こぢんまりした呑み屋街があったりしてじっくりと探索してみたいと思っているのですが、なかなかその機会を確保できていません。機会などというものは持て余す程の時間だけはあった学生の頃であればある程度のやり繰りでなんとでもなったはずですが、先立つものが用意できませんでした。長じてある程度自由になるお金を手に入れた頃には思うように時間を割くことが難しくなっていたりしてなかなかうまくいかないものです。なのでぼくはかなり以前から定年後の到来を今か今かと指折り数えるようになりました。でもここ数年の日本のみならず世界的な経済状況の悪化を思い遣ると将来に希望を馳せるのも楽観的に過ぎると思わざるを得ないのでした。どうしたって予測不能な将来に希望を預けるよりは、現状を整理して無駄を減らすことで身軽になることが現実的な振る舞いとも思えます。とにかく最近は呑みに行く時間も捻出するのにやっとといった具合で、それはきっと今やらなくてもいいことに時間を割き過ぎているってことを実は自覚していながらも長年の習慣からやめられなくなっているだけなんだと思うのです。まあ、そうした習慣を断ち切るのは、初めは不安や焦燥を覚えても、案外脱ぎ去ってみるとどうということもないものだったりします。 とまあ、今日は色々と悩みがあるせいかちょっと深刻になってしまいましたが、小山には行きたい呑み屋がたくさんあるのです。しかし、重荷である土産があるので、炎天下をウロウロする余裕はありません。かといってこのまま帰京するのも癪であります。宿題店が予想外の中休みで入れないと分かるとすぐに駅へと取って返すことにしたのですが、途中「やきそば 蔵屋」というお店が営業していたので涼みがてらであれば土産をダメにしてしまうこともなかろうとお邪魔することにしました。ここではポテトやきそばが食べられるようです。かつて栃木市で食べてすっかり気に入っていたので、喜び勇んで頼みました。並 450円でサラダと味噌汁まで付いてくるからかなりお得といえましょう。こちらのやきそばは自家製麺との記載もありますので期待が持てます。サラダを摘まみつつ一杯。やがてやきそばが届きますが、これはまあ普通に美味しいってところですかね。やきそばで本当に不味いってのは逆に難しいものではあります。特にどうってことのないお店ではありますが、やきそば屋で酒の提供があるのは案外珍しいもので、あってもせいぜいソフトドリンクでありますからこれはこれで有難いものです。お値段が手頃で通しの営業というのもいいです。何にせよ小山で短い時間ですが息抜きできたのは助かりました。
2023/10/11
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通洞こそが前々から訪ねたいと悲願にしていた町です。いや、昔々わたらせ渓谷鉄道に乗車したことがあったようななかったような。学生の頃から常に金欠を継続してきた誇らざるべき過去を持つ身としては、気が付いた時にはすでに国鉄から切り離されていたこの路線は青春18きっぷの対象路線からは外れている以上、乗車しそびれていると考えるのが自然かもしれません。結局JRの全路線を完乗し切れずに飽きてしまって、その内に廃線や第三セクターへの転換などでますますコンプリートすることへの意味や意欲を見出し難くなってしまいました。かつては北海道以外は18きっぷ以外でコツコツと巡り、9割には達しないかもしれぬけれどそれに近いくらいを乗り潰して、古い時刻表から破り取った全国路線図をマーカーで塗り潰しながらほくそ笑んだものです。鉄道の旅も失われつつある今では、取り組むべきライフワークとなり得ますが、近頃、在来線で旅をするたびかつての狂熱が呼び覚まされることのないのを感じるのでした。それでも恐らく初めて乗車する路線はザワザワと心を揺さぶるような、心臓をそっと鷲掴みされるような息苦しさを感じるのでした。しかし往復を同じ路線を使うのは芸がないと躊躇していたのが、日光から路線バスが出ていることを知りーそれはもう何年か前のことだったのですがー、にわかにこの旅への意欲がフツフツと湧いてきて意識の底から消えることはなかったのでした。 その路線バスはJRの日光駅前からひっそりと発車しました。客席は空席が目立ちます。一組のカップルもやはり日光から足尾銅山を巡るようです。自分ではファインプレーと思っているけれど、このプランは案外定番化しているのかもと思うとちょっとばかり興が醒めるのです。車窓は案外に単調で、特に消さがた歩いたばかりの東照宮までの渋滞に一切の風景を見逃すまいという意気込みなどすぐに消し飛び、ウツラウツラするうちに通洞駅前に到着します。多くの人はもう少し乗り通すようです。カップルは足尾銅山観光前まで行ったのだろうな。 人通りの少しもない寂れ切った駅前商店街は規模は思っていたよりもずっと小規模でありましたが、独りだとあまりの切なさに涙ぐんでしまったかもしれません。路地を入るとすぐに「スタンド喫茶 マルサン」がありますが、いかにも役目を終えたという店内が覗けます。かつてはどのような店舗であったのか無性に見てみたかったという欲望が湧いてきます。かつて思い立ったときに来ていればといつもながら未練たらしい。向かいの食堂は現役のように見えましたが、後でお邪魔したお店の方の話だともうやっていないようです。「ラポール」なんていう喫茶店もありますがここもお休み。近くに駐車場があってそこに店内写真付きの看板があったのでそれでもうすっかり満足してしまいました。さて、目指す酒場の開店にはまだ2時間近くあります。これはもう足尾銅山観光に行くしかないな。820円の出費も時間を買うつもりで思い切って支払うことにします。これがトロッコ列車に始まり、妙に生々しい人形たちを含めなかなかの充実した施設となっています。無理を承知で言えばもう少し穴の奥深くまで入り込んで、東京―福岡間とほぼ同じ長さという迷宮感を味わえれば満足度がもっと高まったはずです。しかしまあすごい産業遺産であるとは思うけれど、物足りなさが残る。特にかつて敷地内のあちこちにあったという共同浴場や寮、食堂などの施設を時代の遷移を辿りつつ見れたりすれば、興味深さも数倍増となったはずだし、単純にアミューズメントとしても愉快なはずでもったいないなあ。この後訪れる酒場でもこの辺では観光の後、食事する場所に困ると仰るお客さん多いんですよとお話しされました。 でもお土産屋兼レストランの建屋があって、そこでは多様なお土産(土産屋さんも数店あるのですが、どこも同じようなものばかり扱っているのがもったいない)、1階のレストランフロアーでは大食堂跡とともに唯一営業を続ける「珈琲&スパゲティ ヒロII世」がありました。さも偶然見つけたかのような書き振りですが、存在は知っていました。寂れた観光地に取り残された喫茶店というのは、何度か訪れましたが、なんとも言えぬ寂寥感があって、これはこれで風情があってよかったです。窓にビニールテープで「テイー」とか「スパゲッテ」と表から読めるように貼られていますが、この窓の文字を表から眺める人などいるのかしら。なんてったって窓の外は崖になっていて下から見上げたら読み取れないと思うのです。 それでもやはりたっぷりと時間が余ってしまいました。「ホルモン 末広」の開店時間は午後4時30分との事前調査があります。昼間通り過ぎると戸が開け放たれ、蛍光灯の灯りも見えましたが、町並みを眺めて引き返すと人の気配は失せていました。さてどうしたものか、午後4時36分が桐生行きの列車の発車時刻、これを逃すと次が2時間待ちです。いつもはそんなこと気に掛けぬS氏もさすがにここで店に入れず2時間を過ごすのが不安になったようで、電話をしますが一向に繋がりません。とりあえず開店時間まで待って、それでも開かぬようなら急いで駅に引き返す作戦に出ました。時間になりますが、暖簾は下がらず堪り兼ねたS氏が店内に声を掛けたところ、どうぞとの声が聞こえてきました。酒場巡りでこれほど安堵したのははじめてかもしれません。さて、この店の素晴らしさを欠くとキリがない。コブクロの両端にある不気味なキイチゴ風の形状の部位を説明して、わざわざ二人分切り分けてくれたり、特にシロが抜群においしかったり、手作りのキムチもさっぱりしてお代わりしてしまったりと、語りたいことはいくらもありますが、何より素晴らしいのは店のお母さんさんです。お母さんなんて言うと失礼かもしれない、なんと御年93歳になられたとのことです。店の忙しいときには娘さんが来てくれるというので、いつが忙しいのと伺うと正月前後が混むとのことです。でその娘さんは横浜にお住まいとのことで、それは大変だと思わず絶句します。その他、お話しくださったことをいちいち書き留めたい気もしますが、紙幅が迫っています。何よりうれしかったのが、帰りがけに長生きしてねと言ってくれたこと。思わず、同じセリフをお返しするしかないのでした。ここは遠すぎる、だけれどもまた訪れたい、そんな思いに囚われて、わたらせ渓谷鉄道ではまんじりともできぬのでありました。
2017/07/03
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この旅を思い立ったのはもう何年も前のことです。そもそも日光にはあまり行きたくはないのです。何故行きたくないのか、何度も東照宮を訪れたことはあるということもありますが、それ以上にじっくりと一日をかけて巡る優雅な旅の仕方は老後の楽しみに取っておくことにしています。そのときはもちろん金谷ホテルにも宿泊するつもりです。もしその前にコロリとあの世へ旅立ってしまうならそれは縁がなかっただけのことと諦めればよいのです。それだから日光は敬遠し続けていたのですが、足尾にある酒場にどうしても行きたかったので、日光で唯一行きたいと思っている喫茶店にもついでに行けるので、ついにいを決して決行することにしたのです。 旅のお供は今回も酔狂な旅に少しも楽しそうな素振りは見せぬけれど、付き合ってくれるS氏なのであります。今回もあまり登場の機会はないと思うけれど、この先思いがけずも唐突に登場するのも不躾すぎるので取り敢えずは書き留めておきます。ちなみにぼくは、前の夜、したたかに呑み過ぎてしまい、絶不調ながらも律儀に自宅を出て、6時過ぎには北千住駅から東武伊勢崎線に乗り込むのでした。当然ながら株主優待券を利用します。9時頃には東武日光駅に到着します。いつもの事ですが、東武日光駅前は、一大観光地にも関わらずしけたムードです。それでも目当ては駅前にはないので、気にせず東照宮を目指して歩きます。ぼくの知る頃に比べると大分小奇麗に整備されていますが、あまり面白みのないのは変わりません。観光客の多さに比して余りにも飲食店も不足しているのではないだろうか。まあ集客が日中しか見込めぬ以上はこんなものか。メジャーな寺社だけで経済が成り立つような町の多くは、似たりよったりかもしれません。 目当ての店は「お食事 喫茶 すいらん」だったのですが、どうも思っていたのと違っています。しかもやっていないとあっては、よもやの店内が素晴らしいなんて逆転劇も起こりようがありません。客足の多い土曜にやっていないということは閉店されたのか。失意に肩を落としますが、実は東照宮へと逸れる道の路地に遠目にもこれは間違いないと追わせるお店を見止めていたのでした。「コーヒーショップ ダフネ」がそこです。正統派でクラシカルな佇まいはもはや語ることすら虚しくなります。本来の目的を忘れて、ここに来れたことだけで来た甲斐があったと思わせるに充分です。もう欲張って歩き回らずここでずっと移動の時間までを過ごせばそれでいいとさえ思うのです。そんな甘い誘惑を断ち切るのは至難なのでありますが、唯一難点があります。絶好のポイントと確保した窓際の席ですが、この細い路地は裏道であるとの思いとは裏腹に、ツアー客の抜け道となっているらしくとにかく夥しい人達が好奇の視線を隠しもせずに耐えることなく通り過ぎるのでした。金魚鉢のランチュウにでもなった気分にくたびれてようやく席を立つことにしたのです。 その後、欲をかいて「ベル」、「草原」、「樹仁亜」、「らんぶる」、「カフェ フルール」、「てんとう虫」を巡りますが書き留めるまでもない。「COFFEE ニュー沖の」は、閉まっています。 けっこうな距離を歩いて二日酔いが遅れてひどくなってきました。こんな時ぼくは食事を取らねば耐えられぬのです。なんとか良さそうな食堂でもないものかと歩き回りますが何もない。期待もせずに引き寄せられた「レストラン マコ(Mako)」が下手な喫茶店より風情があったのでここに書き残します。酒もあるので酒場ネタにしても良かったのですが、二日酔いが酷すぎてその余地もありませんでした。足尾へと向かう路線バスの車窓から「ピノキオ」という良さそうなお店があるのを見止めますが、路線バス以外の足を持たぬぼくには黙って見送るしか手はないのでした。
2017/07/02
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下今市では、いつものことですが酒場と呼ぶのを幾分か躊躇する大衆食堂にて過ごすことができたので、記録に留めておくことにします。その前に歩ける範囲で2軒の酒蔵に立ち寄ることができたのでその訪問から始めます。いずれも酒造りの行程を案内してもらうことができるようですが、ちょうど忙しい時期だとお聞きしたので、またの機会にお預けです。なので酒蔵建築の外観と販売所のみに立ち寄るだけになりますが、それなりに気分を味わうことができました。 最初に立ち寄ったのが「片山酒造」でした。丁寧な女将さんがオススメの4種を試飲させてくださいました。あまりに親切で優しい方だったので、思わずかつて食べてかなりの酒臭さに驚かされたことのある酒ケーキがあったので購入しました。正月にでも酒の肴にしようかな。 続いては「渡邊佐平商店」です。先の酒蔵より一回り大きなコチラは、思わず手に取りたくなるような酒器を数種扱っており、思わず手を伸ばしそうになりますが結局出番のないままに食器棚の肥やしとなりそうなので泣く泣く諦めることにしました。 町の外れにあるスナック街の更にその奥の舗装されぬ小道の先に「居酒屋 甚兵衛」があり、これがなかなかの佇まいです。ここには是非とも呑みに来たいものだなあ。良さそうな居酒屋が何軒かありましたが、それ以上に目立つのが大衆食堂の多さです。下今市駅から上今市駅に繋がる通りにはそれこそ数え上げるのが面倒になるくらいに食堂があって、このどれかにお邪魔して昼メシ兼喫茶店の「アラジン」の開店までを時間潰しすることにしました。なので、今回お邪魔した食堂はいずれも「アラジン」のそばになります。 まずは「佐藤食堂」に伺いました。この通りの中ではかなり穏当な雰囲気の初心者向けの食堂に思われます。一見したところは蕎麦屋のような構えです。戸を開けて入るとどこか雑然とした印象を受けます。カウンター席のスナック風のスツールに無愛想な広いテーブル席が違っているのがそうした印象に繋がったのかもしれません。年末で胃腸がへばっているのでまずは寒いけれどビール程度にしておきます。食事はラーメンと丼ものが中心ですが、一品料理も多くそれで一杯やる客もいるようです。というかぼくと入れ違いに出て行かれた方は、一杯どころか二、三杯は召し上がっていたようです。チャーシューメンを注文しました。チャーシューを肴に呑むつもりです。ぼくはラーメンの麺が伸びるの、ちっとも気にならずむしろ違った食感が楽しめるとすら思っています。でもサービスでスモークタンを付けてくれたので、だったら普通のラーメンでも良かったかな。そのラーメンですが、誠に優等生の王道ラーメンでこのあっさりすっきり味が復権することを願うのです。 続いては「ワタナベ食堂」にお邪魔します。こちらは宇都宮焼そばを食べさせるお店のようです。その古びた外観から必ず立ち寄ろうと思っていた店なので先の店でラーメンなど食べて麺続きになるのは愚かしいとお思いでしょうが、へたにボリュームのある一品料理は逆に胃腸に負担が掛かるし、ましてや丼ものなど食べてから焼そばはぼくのキャパシティーを完全に超過してしまいます。ここでも肉なし、卵なしのシンプルにキャベツだけの焼そばをオーダー、温っためた黄桜といきたいところですが、お忙しそうなので常温のままでお願いしました。そしたらばあちゃんがコップと受け皿をテーブルにドンと置き、黄桜をドボドボと豪快に注ぐのですが、この酒器が素晴らしい。これほどに分厚い立派なのは見た記憶がありません。そしたらばあちゃんが、以前いくらでも出すから何とか譲ってほしいと言ってきた人がいたよと、熱意にほだされて譲ってしまったけど、もうここにあるのだけだからねと語ります。さすがに譲ってもらうのは無理そうです。焼そばはモソモソとちょっと旨いんだかそうでもないんだか判断しづらいもので、でもこれが案外癖になるのかもしれませんね。味付けはソースをぶっかけただけのようで実にシンプル、ぼくはコショーをドバドバ掛けて食べましたが、これにはギャバンのブラックペッパーではなくエスビーのテーブルコショーが合いそうです。それにしてもこの辺のばあちゃんや客のおばちゃんたちの気さくなことといったら、皆が皆、見知らぬぼくにも語り掛けてきて、店の跡取り息子さんも一人旅はこうした人との触れ合いが良いんだよねと、二人旅の客には話し掛けづらいからなどとおっしゃいますが、ここまで賑やかな一人旅もそうはないと思うのでした。
2017/01/09
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東武電鉄は関東の国電ーだったかなーとか呼ばれたりもしたほどに、関東一園の広範に路線網を張り巡らしており、それなりに乗り潰し甲斐のある鉄道マニアならぬぼくにとっても魅力的な鉄道会社なのであります。しかし、そのあまりの広範さが弊害となることもあります。一日乗り放題のようなオトクな切符を販売すると採算が合わないと考えているのでしょうか。でも東急電鉄や京王電鉄のように土日に使える一日乗車券を扱っている鉄道事業者もあるのだから、ぜひとも取扱を前向きに検討して頂きたいものです。とまあそれはそれで置いておくこととして、株主優待券を貰っちゃったんですね。ありがたいことです。この切符、金券ショップでもよく見かけますが、東武の鉄道網であれば途中下車さえしなければどこまででも行けてしまうという仕組みになっていて、都内に在住しているなら日光とか鬼怒川温泉に行くのに利用する方が多いのではないでしょうか。ぼくもこれまで何度か使っていますが、くれるだけあって使用期限がいつも迫っており、急いで使ってしまわぬと無駄にしてしまいかねぬので綿密な計画を立てる暇なく、慌てて目先の目的地に費やしてしまっていました。今回もまた期限まで2週間を切っているので、迷っている猶予はありません。喫茶指南役のこのお方の後押しもあって、食べログで掲載保留となり続けている鬼怒川温泉の喫茶店を求めて4時過ぎには起床して起点となる北千住を目指したのでした。 8時37分には鬼怒川温泉駅に到着しました。ホームに滑り込むーという表現をよく目にしますが、これって適当な言い回しなのだろうか、ホームには乗り上げるとならぬのかー寸前にこれから向かう喫茶店が視界を過るのを認めますが、やってるかどうかまで判断できるほどの動体視力はあいにく持ち合わせておらぬのです。判別できてまし閉まってたら鬼怒川温泉には下車せず、引き返すか乗り進めるかしたにちがいありません。改札を抜けると随分と久し振りの駅前の眺めを確認することすらじれったく思われ、駆け出すように店に向かうのでした。粉雪も舞っていますが気に掛けるゆとりすらないとは無粋にすぎるでしょうか。しかし「マロニエ」は、こちらの焦燥などどこ吹く風といった恐らくは普段通りの何気ない表情を晒して、飄々と営業を続けていたのです。グッと抑え目の照明のもとに広がる空間はしかしカーテン越しの最高が抜群の精度で制御されており、これ以上ない居心地の良さを演出します。レトロでありながらサイケなムードも併せ持つ美的なセンスからは店主のただならぬ情熱を感じ取れますが、それを尋ねたところでお馴染みの古いだけだよの一言が返ってきそうです。いやいや古いだけでなく手塩にかけて育ててきたからこその空間なのは見まごうはずはないのであって、だからぼくはこういう素敵な店では、押し黙ってしまうのです。満たされた気分で店を出ると「和風れすとらん こだか」なんかもありましたが、痺れた頭を冷やすため町を一巡りするだけで立ち去ったのでした。 鬼怒川温泉行きを決めてでもそれだけで引き上げるのはいかにももったいないと慌てて思い付いたのが下今市でした。よく知られた「純喫茶 アラジン」を訪れるのを思い付くのは、調べ始めてしばらくしてからの事とは喫茶好きの風上にもおけぬ。余りにも情報が過多となって、とてもすべてを覚え切れぬのです。しかし正午からの開店という情報には助けられました。これを知らなければ3度程様子見に行ってもシャッターが開かぬのに痺れを切らしていたところです。それにしても「三興社印刷所」の金属を加工して作られた立体的な看板をはじめとする商業建築の楽しさときたら、「アラジン」に入らずともきっとかなり満足できたはずです。昼になって店に向かうと時間通りに開店していました。看板の店名は大部分が剥落して無残なことになっていますが、『ハクション大魔王』のような仮名アラビア文字の名残をくっきりと見て取ることができます。店内には置看板が放置され、一部店主の書斎というか趣味の空間と化した感のあるのが残念ではありますが、のんびりさせて頂きました。下今市駅のそばには「コーヒーショップ 街」があって、つい足を踏み入れてしまいましたが、これは食堂というのが正しいようです。 今市の町はぼくにはとても楽しくて、今度はできることなら夜の町を散策したいと思いますが、夜には都内に戻らねばならないので株主優待券の二枚目を使い次の町を目指したのでした。
2017/01/08
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初めにお断りしておきます。今回は喫茶篇をタイトルに据えていますが、1軒たりとも入っていません。あくまでも今後の備忘としての役割だけに終始しますので興味のない方は、自分で言うのもなんですが時間の無駄になるかもしれませんので先に申し上げておくことにしました。 福島駅前で知人夫婦と別れると、S氏は独り駅前のベンチでパンを食べていました。次の列車まで時間があるので駅前を一回りしましたが、どこかやってるような気配は感じられません。予定より早い東北本線の郡山行に乗車、その後黒磯行、宇都宮行と乗り継ぎます。この後の宇都宮線は沼津行で悪い誘惑を振り切るのがやっとです。落ち合ってここまで一緒だったS氏とはここでお別れ。ぼくは独り雀宮駅で下車すると孤独に喫茶店探しに繰り出すのでした。それにしても閑散とした駅前だこと。 入れもしなかった喫茶店のことをダラダラ書くのも虚しいので気になった喫茶についてだけ簡単にコメントします。駅からすぐの路地の奥、ズン止まりにあるのが「アシベ(ACB)」です。自宅を兼ねたらしいこの喫茶が結局見かけた限りではもっとも惹かれました。少しでも店内の様子が見れたら良かったのですが、残念ながらどうにもならないのでした。駅から近いのが救いか。 その後、駅から歩くこと15分、唐突にパラパラと飲食店やらがある―後で調べてみると「みんみん」の支店もあるようです、見逃しましたが―しょぼくれた人気のない商店街に辿り着きました。「ブランカ」やら「る、ぼあ」なんかを見かけますが、あまり味気ないし第一やってもいない。「伊万里」は、悪くはなさそうでしたが、今ではスナック営業になってしまったようです。というか、「アシベ(ACB)」以外のすべての店がそうらしい。「ワカマツヤ(WAKAMATSUYA)」、「カモミーる」もしかり。ああ、こう書いているうちにこんな収穫のない報告を垂れ流して良いものという自責のような感情に囚われそうになるのですが、ここまで書いたのだから垂れ流すことにしよう。だって書き直すの面倒だからね。 その後は大人しく帰宅しまし。ここまで上卑屈な態度を取らざるを得ないのは無念なのですが、まだまだ終わりの見えぬ酒場篇とのバランスをこれでも考えてのことですが、これ以上はどうにも引っ張ることは難しそうです。なので次週は何とかネタを見つけます。いろいろネタはあっても写真の整理が覚束ないのです。まあ、何とか日曜のこの喫茶記事は続けていきたいです。
2016/04/02
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喫茶巡りは不調に終わったわけですが、これからがメインイベントの酒場巡り、となるはずが体調の悪さがこの上ない。旅の最中に体調を崩すなんてこと、ついぞ経験したなかったのでもう虚しくてしょうがない。どうやら最初に入った中華料理店のハードな脂がもともと脂に弱いぼくの胃腸をガタガタにしてしまったようです。でもそれでも宇都宮にもはやほとんど未練をなくしたぼくにとってはこれが最後の機会となるかもしれぬことを思うと、みすみす目当ての酒場を素通りするわけにはいきません。 まあ実際は素通りなどせずかなり通り道して市役所ーだったかなーの目と鼻の先にある 「庄助」を目指すのでした。その酒場を目にした瞬間あまりの渋さに油酔いなどという甘っちょろいものは吹き飛んでしまったかというと、そうはならないのが年のせいだと思うと虚しくなります。でもここ、外観からは見て取ることは困難ですがかなり広くて奥行きのあるお店でした。我々はカウンターに落ち着くことにしました。店を開けたばかりのためか、他にお客もなくこの風雅な店の雰囲気を存分に楽しむことができます。カウンターに並ぶ大皿には次々に新しい惣菜が並べられていき、それを女将さんらしき方が味見のフリしてのつまみ食いしています。確かにいずれの皿にもつい手を出したくなるような美味しそうな惣菜が並び、普段ならどれにしようか苦慮するはずです。でもこの夜のわれわれの胃腸はついぞ経験にない程にもたれてしまっていて、存分に目の前の肴を味わう余地はありません。せめてもの慰みとしてこの溜まらなく情緒のある店内だけでも味わい尽くしておくことにします。奥の宴席なども味わいがあり、宴席でも持たれるのか、お通しがすでに用意されていますが、結局われわれは他の客の到着を待たずに撤退を余儀なくされたのです。 「純喫茶 サンバレー」隣のちょっといい感じのもつ焼店「ふくべ」に訪れるものの早くも満席、店内は思ったより代わり映えしなかったものの大変な人気店のようです。そのすぐそば、もう少ししたら乗り込むことになる東武宇都宮駅の目と鼻の先でもあり至極便利でありながら1階席ががら空きの「焼とり かしわ」にお邪魔することにしました。理想的な雰囲気の1階ではご主人らしき高齢の方が焼鳥を焼いていて、地下へ行くようにと言われましたが本当はこの1階の雰囲気が良かったな。まあ地下がどうなってるのか気になったので抗うことなく階段を降ります。地下もカウンターにテーブル席が数卓あるばかりで、昔こんな酒場に来たことあるよなと記憶をほじくり返すのですがどうもピンとこない。どこにでもありそうで、実際にはどこにもなさそうなこの雰囲気は悪くありません。焼鳥と飲物などのセットがあるのでお願いしますが、どうしたって焼鳥が飲み込めない。実際焼鳥の味には疑問もありますがそれはまあ語らぬことにします。この古ぼけた酒場でわれわれと同様に多くの客たちが列車が出るまでのひと時を過ごしたのであろうと、いや今でもそのように使われているのだろうことに思いを馳せながら短いひとときを過ごすのでした。 その後、列車に乗り込むと行きの苦労とは打って変わって順調で、疲労のせいもあってかぐっすり眠ってしまい、一度の乗り換えも無事済まして北千住に辿り着けたのでした。その頃には胃腸の具合もすっかり良くなっていて北千住で下車したいところではありましたが、それはよして家路を急ぐことにしたのでした。
2015/11/02
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一応書くだけは書いておくことにしますが、宇都宮では後はこれって喫茶店には巡り会えませんでした。もともと今回は行きそびれていた酒場に立ち寄るのが主なる目的だったこともありますので、それはまあそれで致し方ない事なのかもしれません。ぼくなどは酒場と喫茶という二股かけての旅になるのでまだいいのですが、酒場もしくは喫茶の専門で行動している方はそれはもう遠出をするには迷われることも多いと思います。実際のところ宇都宮という町は喫茶にしろ酒場にしろ下調べの段階ではいざ都内から行こうと思うとしばしの躊躇を強いられる町であって、酒場と言ってもバーのマニアであったならかなりの充実した旅を楽しめることでしょうし、ましてや餃子好きで健啖であれば一晩を過ごすだけではもの足りぬはずです。って言ってはみましたが、餃子を食わせる店、そんなに数多くあるようにも感じられないのです。ぼくだって初めて宇都宮に宿をとってきっちり彷徨った最初には餃子とバーをハシゴしてみたものです。 そんなボヤキは置いておき、次に伺ったのは 「珈琲 朴花」です。さほど惹かれるものがあったわけではありませんが、選り好みなどしておられぬ。情緒ある小川に面した小さいビルの階段を上がり、入った店内はまあどうということはないし、でも窓の外の風景は悪くない、そんなお店です。 ここは素通り。「自家焙煎 おーるど・びーんず」は悪くなさそうですが純喫茶とは程遠い。なのでパスしました。 「cake & coffee TANAKAYA」は目抜き通りに面していてちょっと気になりますが改装中のようです。 「テラス ローリエ」、呑み屋街でひっそりと営業しているお店。まだ現役のようですが残念ながらお休みです。 続いては「コーヒー館 ゆう」。ようやくやってるお店に出会えました。まあごくごく普通の喫茶店で特にどうってことはないです。 「美留く」は、まだ3時を過ぎたばかりだというのにもう店仕舞いする様子。店内は至ってありふれていてがっかりはしないまでもこれが宇都宮の喫茶巡りの締めくくりと思うと落胆を禁じえません。 せめて「純喫茶 カリーナ」が現役で営業していたらいくらか気分も和むものの宇都宮という町は喫茶店の存在をもはや切り捨ててしまったようです。
2015/11/01
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今回宇都宮に来ることにしたのは、喫茶店巡りよりも酒場巡りが主眼にあったのですが、かと言って昼日中から呑める店は限られてきます。喫茶巡りに酒場もどきを織り交ぜつつ飲/呑みを繰り返すことになります。そしてとりわけ呑みの選択肢次第でその日の行動が決まってしまうことがあります。この日も1軒目の呑みの店のチョイスがこの一日を決定することになるなんて当初は少しも思ってもいなかったのでした。 最初に目に入ったのは、「ふんよう菜館」という中華料理店です。とさもハナから知っていたかのような物言いとなっていますがバラックのような、とても商売をしているようには見えぬかなりの荒れ果てた店舗です。しかも看板もなく、業態も不明というかなり敷居の高いお店となっています。そんなわけなので店名は帰宅後に調べたものとなります。店内も相当な荒びようで瞬間腰を降ろすのをためらうほど。店中が油で黒ずんでいて、肘をつくなど思いもよりません。カウンターの隅っこの席にS氏と並んで腰掛けました。お客さんは結構埋まっていて、繁盛しています。ぶっきらぼう過ぎる程に愛想のない夫婦は、これで旨くないはずはないと思わせる程に徹底している様子ですが遅れて入ってきた懐かしい顔を見ると一転してご機嫌になるのはなんだかあまり面白くありません。とにかくここの食べ物は油好きには溜まらない魅力を放っているようです。特に巨大な豚バラ肉をシンプルに味付けたそれは確かにトロンとして旨い、旨いのだけれど大層胃腸に負担が掛かる。油好きではあるものの油酔いしやすいという不幸なぼくはこれがこの後にひどい重しとなることにこの時は分かっていなかったのでした。 せっかくなので宇都宮に来たのだから餃子も食べておこうと、こと盛名を誇る二軒に行ってみてはみるものの驚くべき行列に恐れをなして敬遠します。初めて来た時にはそれなりに並んでいたものの程なく入れたのに、こうなってしまってはもはや再び訪れることはなさそうです。近場にある「餃子の店 香蘭」に行きたいと珍しくもS氏から希望があったので行ってみることにしました。味も素っ気もない面白みのないお店でそれより何よりあまりにも閑散としているのが、先の二店とのギャップがあり過ぎて逆に好奇心が湧いてきます。じっくり焼くのがうちのやり方とのことで、しばし待たされた後に頂いた餃子は確かに美味しいけれど、他店と際立っての違いがあるということでもないように思われます。それを言ってしまえば2軒の名店も値段は安いけれど驚くほどではないことを考えると、餃子って言うのはまあその程度のものであると改めて確認するに留まらざるを得ないのでした。
2015/10/26
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たまたま入手した東武鉄道の株主優待券が手元にありました。しかし使用期限が目前に迫っています。急いで使ってしまわないともったいないことになります。悩んでプランを立てている暇などありません。なるべく遠くてでもそれなりの規模の町のほうが楽しいとなると、行くべき町はやはり宇都宮ということになります。旅のお伴には近頃いつも一緒のー我が事でなければふしだらな関係かと疑念を懐かれても仕方のないー、S氏と北千住にて合流したのでした。しかしぼくの寝坊が響き、3,4回の退屈極まりないー東武線は全般に車窓が単調ですー時間を過ごすことになったのでした。その辺のことは記憶も薄れかけているし、何より本旨から外れるのでバッサリとカットします。 ということで、宇都宮にやって来ました。同じ列車で帰宅するのを考えるとげんなりとした気持ちになりますがやむを得ません。できるだけ充実した時間を過ごして寝て帰れたら何よりです。大体いつもなら中心街から遥か遠いJRの宇都宮駅からスタートを切ることになるのですが、今回は東武宇都宮駅が起点となるので着いたその場から直接町歩きできるのはありがたい。そんなわけで早速喫茶巡りを開始します。まずは「純喫茶 サンバレー」を目指したのですがやってないようです。これが一番のお目当てなのでそうそう簡単には諦められません。また後で行ってみることにします。 結局最初には入れたのは「喫茶 すみれ色」てす。ひっそりと静まり返った路地の突き当りにあります。外観はなかなかの味わいですが店内は至って飾り気のない地味なお店でした。正直外観と内装のギャップが大きく楽しめませんでしたが、食事メニューの充実した人気のお店のようです。最初にこの店に入ってしまったせいもあって、このたびの間中、高田みずえのせつない歌声が離れることがありませんでした。 続いては、まともに書くと「ブラジルコーヒー商会 ブラジルコーヒーショップBC 栃木県庁前店」という何ともくどくどしい店名のお店に入ることにしました。ここは宇都宮では二番手に入りたかったお店です。2,3年前には、駅前店にお邪魔しておりそちらは正統派ではありますがラフな感じで格調が感じられませんでした。一方で県庁前店は店に入るといきなり二階に続く階段があって大変重厚感のある内装でコーヒーがなくとも満足できちゃうくらいに贅沢な気分を味わえます。こんなお店が近くにあったら書斎替わりに自分ちのように使っちゃうんだけどな。 念願の「純喫茶 サンバレー」に戻ってみるとありがたいことに営業を始めていました。風俗店と呑み屋が入り乱れる一角に密やかに、でもしっかりと町に寄り添ってきたことが感じられるそんな喫茶でした。内装はさりげなくも凝った意匠が施されていて職人さんの心意気がひしひしとにじみ出ており、感動的です。高齢のママさんにはこれまでもこれからもずっと同じように暖かくもてなしていただきたいものですが、再び訪れる機会はあるのでしょうか。
2015/10/25
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さて、これでGWの東北の旅の酒場篇は最後になります。下車したのは東北本線の栃木県最後の駅、野木駅です。まだ時間もそう遅くはないのにここで最後にしたのにはどうにも愚かしい理由がありますが、それは追々報告させていただくことにします。 野木駅もまた間々田駅と同様に殺伐とした気分になるくらいにドンヨリと淀んだ空気感の漂うこう言っては住んでいる方には失礼ですが、町としての役割を終えつつあるどこか諦めに満ちた気配が充満しているように感じられました。駅の東側は再開発に着手されながらも放置されてしまったかの雰囲気でチェーンの居酒屋が1軒あるだけです。西側には駅から目抜き通りらしい通りが伸びているものの違和感をあからさまにした真新しいちょっと気取った居酒屋がありますが、お休みのようです。もう少しだけ歩いてみるかと進んでいくと、飲食店が軒を連ねる古い粗末な造りの長屋がありました。その1軒「酒処 おかめ」は営業しているようです。これは見過ごす手はありません。カウンターと小さなテーブル席が2卓、奥にはやっとこ4人入れるかどうかの小上がりもあったはずです。女将さんが、この長屋のできた30数年前から一人で続けてこられたお店だそうで、この周辺はどんどん町並みがダメになっていると寂しげに語られました。駅の向こうで見掛けた喫茶店はちょっと前に店を閉めたけれどいいお店だったのよと教えてくれました。300円とお値ごろなカツオの刺し身は分厚い切り身が5切れほどもあって、これは平日だったら仕事帰りの客たちでたいそう混み合うのだろうなと思っていたら次から次へと新規のお客がやって来て、いつの間にか店は一杯になっていました。間々田駅そばの似たような店名のお店とは違い、こちらのお客さんは強面の人が多いけれどなかなかに気さくです。ぼくが東京から来ていることを知ると、赤羽で長く仕事してたんだけど赤羽より王子で呑むことが多かったねと言われたので、「山田屋」ですかねとお聞きすると嬉し気な表情を浮かべて懐かしそうにそうそうそんな店名だったかなと顔をクシャクシャにして喜ばれるのでした。 いやあ、いい店だと満足して席を立ち、もう少しだけ野木を歩いてみようかと歩き出してしばらくしたところで、切符のないことに気付きました。この日2度目の紛失てす。探せど見つからず、これはこれ以上呑み続けたら碌でもないトラブルに巻き込まれるかもしれぬと、まだ時間は早いのですが帰宅することにしたのでした。
2015/06/02
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さて、話は一気に飛んで仙台の知人夫婦宅に泊めてもらったその翌日のこと。何とも呆気ないことにこの日で旅は終わりです。帰路もまた東北本線を各駅停車でダラダラと帰ることになります。もちろんただ乗りっぱなしというつもりはありませんが、岩手ですっかりGWの洗礼を受けてしまい意気消沈の体たらくなので、どこまて気力が持つものやら、いささか不安ではあります。 それでも7時前には仙台駅まで送ってもらい予定していたよりも早い列車に乗車できました。このGWは東北の交通網はトラブル続きなため、少しでも先に進んでおくのが得策です。白石止まりの列車で乗り継ぎに少し時間があったので以前空振りに終わった喫茶店を三軒ばかり偵察に向かいましたがやなり不調に終わりました。福島駅と黒石駅にも訪ねておきたい喫茶店がありますが、歩きで行くには幾分遠すぎます。泣く泣くまたの機会に譲ることにして本格的に途中下車の旅を開始したのはもう東北を脱出した栃木県の西那須野駅でした。 駅前を進むとやがてウッディな構えの正統派の良さそうな喫茶店があってしかも嬉しいことに営業しております。念願の喫茶店が確保できたのでひと心地ついて散策することにしました。ところが町らしい町並みもなく「カリメラ」という喫茶店、いやあれはカラオケを提供しているスナックに近いお店のようです。あまりグズグズする時間はありません。駅に取って返し、「ホープ」にお邪魔することにしました。電話ボックスもある外観と違和感のない本格的な、でもちょっと大人し目のシックなお店でした。お客は他にお一人だけ、よほど美味しかったのかランチのサラダをお代わりしています。ぼくはこの先を考えても素直にコーヒーを所望、ちゃんとした癖のないおいしいコーヒーでした。店を出る準備を始めたら、矢継ぎ早に地元のオバちゃんが数名来店しました。 次に下車したのは矢坂駅です。西那須野よりは駅前は多少賑やかです。それでもやはりかなり寂れた商店街を進むと風情ある食堂もあったりしてなかなか楽しめます。「エジンバラ」、「コーヒーショップ」、「ピノッキオ」などの喫茶店があって、とくにもう閉業している「ピノッキオ」にはぜひ訪れたかったものです。さらに進むと「カフェ・ド・ジュリエ」があります。アメリカンな装飾の純喫茶とは趣の異なるお店なのですが、どういうわけだか案外いい雰囲気に思われます。たまたま指定された席が窓側だったのが良かったのかもしれません。よくよく眺めるとそれなりの年季が感じられ、後付でアメリカンな内装を付け加えたのかもしれません。 思いの他ゆったり出来てそれなりに満足して店を出て、次なる町を目指します。というわけにはいかなかったのです。駅まで戻り改札を通ろうと切符を探すのですがどうしても見つからない。どこかで落としてしまったようです。愕然として念のため来た道を引き返しますが、きっと「カフェ・ド・ジュリエ」で落としたのでしょう。藁にもすがるような気持ちで店で尋ねますが見かけなかったとのこと。絶望的な気分で道を渡るとありました。道端に飛ばされることもなく転がっていました。ほっと一息つくものの次の列車までまだ随分と間が空きます。駅そばの渋い食堂にでも行こうかしら。
2015/05/31
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さて,足利での滞在時間もごくわずかとなりました。30分後に迫った列車時刻を逃すと佐野行きは危うくなります。それでもほんのひと時でもいいから過ごしておきたい店があります。前夜から何度か覗きに来ていたのですが営業しておらず,最悪の想像が脳裏を過ることもありましたが,諦めずに立ち寄ることにしてよかった,うれしいことに店が開いています。 線路沿いの商店街にある「食事と喫茶 富士屋」にお邪魔したのでした。外観は観光地にありがちな食堂といった造りで,軒先で自慢焼なるお菓子を販売しているのも観光レストラン風です。ところが濃紺の扉を開くとそこはまさしく純喫茶としかいいようのないどこかうらびれていて,それでいながらキッチュな装飾が随所に確認できる空間が広がっていたのでした。しかもこれが100名ほどは収容できそうなオオバコなので壮観です。店を入るとすぐに食券販売の小窓があって,自慢焼を焼くおばさんが食券販売を兼ねているようです。時間もあまりないし,名物ということなので200円の小倉アイスをいただくことにしました。食事系のメニューが充実していて,昼はここにしておけばとちょっと残念でしたがこの小倉アイスも甘み控えめですっきりといただけたっぷりの量をぺろりといただいてしまいました。昼食時を過ぎていたためか客はわれわれだけ。ひっそりと静まりかえった店を独占したような贅沢気分に浸ることができました。 この日訪れた「Café de FURUKAWA(フルカワ)」,「コーヒーの店 はとや」とこの「富士屋」はいずれもまったく系統の異なるタイプの喫茶店ですが,いずれも東京のもっとも好きな喫茶店に引けを取らぬ素晴らしいお店でした。喫茶店という業態は居酒屋とは異なり,地域ごとの差異が希薄であることに興味を引かれます。これら純喫茶があくまで日本国内で同時多発的に誕生し,今や瀕死の状況に置かれていることを考えると,寸暇を惜しんで通わねばならないという使命感に駆られたりもします。 足利の行けなかった喫茶店。 さて,十分満足した今回の旅ですが,最後に佐野に立ち寄ってみることにします。存分に感慨を噛みしめる間もなく佐野駅に到着,まずは佐野厄除け大師に向かうことにします。すると「ナカダパン 本店」というのがあります。あんぱんで有名なお店があることは知っていましたが,店の佇まいも渋くてついふらふらと立ち寄ってしまいました。店の奥には古くからやっているお店らしく喫茶室が併設されていましたが今や物置と化してしまっています。あんぱんは5個入りだけととても食べきれなさそうなので,あん入りのコッペパンなど数個を購入。このコッペパンがあんとマーガリンのバランスがよくて,甘からずほのかにマーガリンの塩気が利いていてさすがに定評のあるお店と感心。人通りもまばらな通りを進むとやがて騒がしくなり,どうやら佐野厄除け大師が近づいているようです。今回の旅のお土産に狙っていた「関東・栃木レモン」があるのではなかろうかと立ち寄った商店にもやはり当の商品は見つかりません。食品店兼食堂としていまでは食堂がメインの商売となっているようです。ここでいもフライが販売されていました。せっかくなので足利のものと味比べするために購入。足利の焼そば店のおばちゃんの話通り,パン粉の衣で覆われています。味はいいのですが,足利の天ぷら風のものに比べるとやはりちょっと油が重く感じられ,これなら東京でもありそうです。 佐野厄除け大師は,川崎,西新井に比べると気の毒ですが,参拝者数もそれほど多くなく2,3分程度待つだけであっという間に参拝終了。屋台の数こそ多いのですが,参道らしい参道もないのがやはり物足りない気分です。しからばと下調べしておいた喫茶店を巡ることにします。 最初に伺ったのが「もみの木」です。県道9号線の1筋裏手の通りに大きな洋館風の建物があります。地方の結婚式場のような建物です。店の正面に至るとここが洋菓子店であることが分かります。1階の売り場の階段を上がると喫茶室となっていますが,あいにくと正月明けは定休のようです。せっかくなので見せてもらうことにしました。上品ではありますが,華美さに過剰さが感じられずやや物足りない印象ですが,地元の方には重宝されそうなお店に感じられました。 最後にもう一軒,巨大なショッピングモール,イオンタウン佐野のそばにある「大樹」に立ち寄ってみました。広い一軒家の喫茶店で,外観こそいまどきあまり見かけなくなったドライブインのようでそれなりに趣きがありますが,店内はこれといった特徴もなく,足利での充実した喫茶店の数々とは比較できるはずもありませんが,さんざん歩き回ってくたくたになった足を休めることができたのはありがたいお店でした。 本当であれば「木古里」,「コーヒーハウス 点」などにも立ち寄りたかったのですが,陽もとうに暮れて,一休みして疲れがどっと出てきたので今回の旅はこれにて終了ということにしたのでした。 最後に佐野の行けなかった喫茶店。
2014/03/02
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足利の夜は不完全燃焼のままばったりと崩れ落ちるようにしてあっけなく幕を閉じてしまったわけですが,2日目はどうなることでしょう。無料の朝食を食べ過ぎないようにしつつも結局はあれもこれもと欲張って,けっこうしっかりと摂ってしまったのでした。予定ではこの日は昼過ぎ頃までのんびりと定番の足利観光をしてから,佐野に移動するつもりです。 お決まりの足利学校の見物に向かうと「Cafe de FURUKAWA(フルカワ)」という喫茶店がありました。事前の調べではどうしてだか検索に引っかかっていませんでした。こちら店頭の張り紙を見ると,喫茶室の営業時間が6:30~10:00,携帯・デジカメ・PC/IC機器・煙草が禁止という何かと制約が多い喫茶店のようで,店内もかなり混雑しているようなので一度は引き返しかけましたが,洋館風の瀟洒な造りを見てしまってはにむざむざ通り過ぎることはできませんでした。狭い店内ですが,席は窮屈になりすぎない程度にうまく配置されています。書斎風の空間も居心地がよさそうです。これらの席はお客さんでほぼ満席です。ところで,こちらは何よりコーヒーが絶品です。これほどおいしいコーヒーは東京でも稀ではないでしょうか。おぢさん5人組がそれはそれはうれしそうにお土産用の挽き売りの珈琲豆を持ち帰られました。ちなみに禁止事項の多いこのお店のご夫婦,けして偏屈な方達ではありませんでした。むしろ店を出る際には居酒屋のノリで大きな声で見送ってくれました。 足利学校,鑁阿寺を観光,これで世界遺産を目指しているということですが,周辺の町並みの整備さえなんとかすれば夢ではないのかもしれません。続いて織姫神社を目指します。 すると,名無しのやきそば店がありました。ちょうど小腹も空いてきたので入ってみることにしました。都内でも荒川線沿線に近所の子供たちを相手にしたようなもんじゃ焼屋がわずかに店を続けておられますが,小都市の足利に来ればいくらでもあると思っていたこうした屋号も掲げぬ小店舗が存外少なかったため,迷わず立ち寄りを決めたのでした。定番のポテト入り焼そばといもフライを注文,特筆すべきはいもフライのこと。よく知られているのは佐野のいもフライで,佐野ではパン粉を付けたまさしくフライであるのに対して,足利では天ぷら粉を絡めて揚げているので重ったるくならないとは高齢の女将さんの言。このいもフライ,なんと驚くべきことに5本もあってすっかり満腹してしまいました。ちなみに焼そばももっぱら店の常連はお婆さんたちばかりで,茶飲み友達の寄り合い所となっているため,ラードを使うのをやめてヘルシーなサラダ油に切り替えたとのこと。こちらの女将さんもものすごいお喋りでかつ栃木が大好き! 楽しいひと時を遅れました。 織姫神社は,平安神宮のようなキッチュな神社でした。境内まで299段あるという階段は,腹ごなしにはいくらか物足りない程度ではありましたが,境内からの眺めも良く,森高千里の歌で知られる渡良瀬橋もばっちり眺められ,見つけることはできませんでしたが,東京スカイツリーも見えるそうです。 さて,怪しげなスナック長屋にやって来ました。ここに来たのは「コーヒーの店 はとや」に来るため。いかにも胡散臭い建物の最奥に店の看板が出ています。スナックのママさん相手にやっている店であろうという予想でしたが,営業時間が7~15時とあって,さすがに店の仕舞が早すぎるので,そうではなさそうです。きっと朝方であれば常連がモーニングなんかを取りに来るのではないでしょうか。カウンター席とテーブル席が2卓のコンパクトなお店で,お客さんはおりませんでした。女性の主人は無駄口をまったく利かぬ物静かな方でおいしいミルクコーヒーを入れてくれました。飾り気が少なく,こぢんまりして大変居心地の良い素敵なお店に出逢えました。 さて,足利土産にホテルの飲食店マップに掲載されている「マルタカパン」でも覗いてみようと,「はとや」の裏手の踏切を渡ると「豆の樹」がありました。こちらは事前の情報にはまったく引っ掛からなかったお店なのでちょっとうれしい驚き。ひょろりと背の高い周囲から目立った立派な建物です。店の中は案外平板ですが,まっすぐ伸びるカウンター席にマスターのこだわりを感じます。こちらのマスターはまさに喫茶店のマスターとしか言いようのない方でまさにこの仕事が天職なのでしょう。ちなみに漫画も豊富にありますが,漫画の充実した喫茶店に多く見られるような雑然とした雰囲気がないのがよかったです。 ところで,「マルタカパン」は素朴なコッペパンサンド系が充実したお店でした。そしてこれが驚くほどおいしいのでした。お土産にするパンをあれやこれやと悩んでいるうちにも地元の方はお気に入りのパンを一気に10個ほどもトレイに積んで買って行かれます。長年にわたって食べ続けてきたのでしょう。実にうらやましいことです。さて,この後,佐野に移動したかというとそうではなく,実は2日目になって急速に喫茶店の町としての真価を発揮し始めた足利でももっとも味わい深い店にお邪魔することになるのでした。
2014/02/23
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「勉強亭」を出ますが,駅近くの呑み屋街は年始の土曜日ということもあってか,ことごとく閉まっていて,数少ない開店しているお店はチェーン店ばかりです。まだまだ呑み足りておらず,しからば夕方に見掛けた酒場に行ってみようじゃないかと,わずかに酔ったらしくいきり立った気分は抑えることができません。足利駅の正面にまっすぐ伸びる通りをひたすら直進,しばらくすると右手にちょっとよさそうな焼鳥店がありますが,ここは目指す先が閉まっていた場合の抑えにキープして,さらに直進。やがて,左手に木造にトタン張りの古ぼけた酒場が見えてきます。 「みっちゃん」という見るからに古くからやっていそうなまさしく好みの酒場に出逢えました。夕暮れ時には明かりが灯っておらず,開いていたら幸運だなあという程度の淡い期待のみで訪れたのですが,まず営業していたことだけでそこそこ満足した気分です。店に入ると10席ばかりのコの字のカウンターと奥には継ぎ足しでとってつけられたような小上りがあります。先客は男女それぞれ1名づつ。お二人は顔見知りのようではありますが,特にあいさつを交わすでもなく淡々と酒を嗜んでいます。店のオヤジさんはかなりのご高齢のようで,なかなか頑固そうな容貌をされていますが,物腰は柔らかくてこうした酒場ではよくあるおっかないタイプではなさそうです。一安心して品書をみるとこれがちょっと東京の相場から考えると思わず見返してしまうほどに高いのでした。総じて地方の中小都市の居酒屋は価格帯が高いものですが,「鳥の巣」や「勉強亭」の値段を見る限りは足利の相場はけして高くはないはずだったのですが。まあ,高いと言っても居酒屋,しかもここはもつ焼店なのでしれたものではありますが,ちょっと残念な気分になります。それでも熱燗をちびりちびりとやっていると,じんわりと幸福な酔いが身に染みわたってくるのが感じられ,気分も徐々に高揚してきます。ごく平常時の夜にはこの酒場には人はどの程度入っているのだろうかなんてことをぼんやりと想像しながら呑むのも,年明け早々の地方小都市の酒場での楽しいひとときなのでした。 勘定をさっと計算するとこのままここで呑んでいては,財布がもたないとの結論に達し,ほどほどで切り上げると,さきほど見掛けた居酒屋に移ることにします。かなり大きな平屋造りの雑居建築で,かつては飲食店が5店舗ほど入居していたように思われます。外観からは2階部分があるように見えるので,看板建築といっていいのでしょうか,ファサードの裏手には木造の一戸建てが隠れています。さて唯一の生き残りの店は一昔前によくあった「大吉」なんかの焼鳥店と似たような佇まいです。屋号には「鳥勝 足利本店」とあります。近隣に系列店があるのでしょうか。靴を脱いで店内に上がるスタイルで,座敷に加えて掘りごたつ式のカウンター席もあります。今日一日は随分な距離を歩き回っていたので,窮屈な靴を脱いで靴下だけになると旅装を説いたような解放感にしばし浸ってしまいます。お店は女性が2,3名でやっていて,無駄口も利かずてきぱきと仕事しています。お客はこれまでと違ってそこそこの入りで,独り客もいれば,大学生くらいの男3名とかもいたりして,足利で初めての賑やかな声を耳にしました。まあごく標準的な焼鳥店ですが,居酒屋の少ない足利の町にあってはこうしたチェーン店ではないごくごく当たり前の焼鳥店が貴重な存在になっているんでしょうか。程よい賑わいとカウンターの独りくつろげて,しっくりと全身を開放できる空間の気分の良さにいつまでも呑み続けたいところですが,酔いつぶれるわけにもいかず,よっと掛け声とともに席を立ったのでした。 このままホテルに直行のつもりが,何の変哲もないホテル隣の「はなまるうどん」でぶっかけを。呑んだ後に食べに行く習慣はあまりないので,つい旅先の出来心といった程度ですが,以前,1度このチェーン系うどん店にお邪魔した際は缶ビールがあったと思ったのですが,ここはソフトドリンクバーがあるばかり。やむを得ず大人しくうどんのみ食してから,コンビニにて缶チューハイを調達,ぐっすりと深い眠りに着いたのでした。
2014/02/17
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充実した栃木市散歩を終え,次はこの日の宿泊地のある足利駅に向かいます。列車に揺られ,のんびり車窓を眺める間もなく到着です。まだ陽も高いのですが,観光は翌日に回すことにしてあと数軒喫茶店を巡ることにしました。市街地とは逆側の南口を散策してみることにしました。事前調査で渋いパーラーがあることを確認していたからです。 さびしい駅前の通りをしばらく進むと「パーラー しらくら」がありますが生憎と店が閉じていました。外観からはまったく店内が想像できないという点では,気掛かりでしょうがないのですが,ネットには店内の様子を窺えるような情報はなさそうです。やむを得ず,両毛線の線路をくぐりぬけ北口方面に移動します。この辺りは店を畳んでしまっているお店が多くただただ侘しいばかりです。伊勢神社を眺めたりしているうちに陽も暮れかかってきました。「JAZZ オーネット」というジャズバーらしい店舗もありますがこちらもやっていません。駅前通りはグランド通りという愛称があるようです。ひたすら進むことにしました。 「自家焙煎 カフェ モカ(Cafe Mocha)」があります。特段変わり映えしないカフェのようなお店ですが,一憩に立ち寄ってみることにしました。夜の早いらしい足利では遅くまで営業しているお店でお客さんもそこそこ入っています。 まだ確認しておきたい喫茶店があるので,さらにグランド通りを進みます。通りにはちょっといい雰囲気の焼鳥店やもつ焼店がありますが,ちょっとホテルから離れているので,ここまでまたやって来るのはきついなあなんて考えながらさらに北上,目指す店は「ふるはうす」というのですが,探せど見つからず冷静に地図を見返すとさらに1本先の昭和通という大きな通りに面していたようです。ようやく「ふるはうす」に辿り着いた頃にはすっかり体も冷え切ってしまいました。とにもかくにも暖を求めて飛び込みました。一軒家の広いお店ですが,家具の配置に随分とゆとりを感じます。特に装飾が凝らされているわけでもなくのっぺりとしており,豊富に漫画があるのが特徴と言えば特徴でしょうか。こうして写真を見返してみると公立の図書館のようにも見えなくもありません。足利には純喫茶好きを興奮させてくれる喫茶店はないのだろうかと弱気になります。 一方,「蔵王食堂」なんていうよい雰囲気の食堂があったりします。いますぐ立ち寄りたいところですが,M氏はホテルに一刻も早くチェックインしたいようです。付き合わねば後が面倒なので,すっかりくたびれてしまいましたが,急ぎ足でホテルに向かうことにします。途中,「珈琲 蔵」がありますがこちらは間もなく閉店とのこと,「長谷川コーヒー店」はちょっといい雰囲気ですが,あまりにも正統的で立ち寄る気分になれず。もう喫茶店は十分,今すぐにでも酒を呑みたい気分なのでした。
2014/02/16
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毎度のごとく喫茶編と併せてお読みいただければと思いますが,酒場篇は今回は宿泊した足利のみとなります。今回の小旅行では主に栃木―足利―佐野を巡ったのですが,総じてどの町も酒場が少なかったというのが印象として残っています。町の規模は回った順番で当たっていると思われますが,幸いにも宿泊地の足利が飲み屋の数は多かったように思われます。栃木の町にも居酒屋と風俗店が集まる地域がありましたが,極めてまばらでとてもハシゴできるほどはなさそうです。佐野となるとそれこそかなり寂れていて駅からすぐに昔は酒場が立ち並んでいただろうという名残のある通りもありましたが,現役で店をやっているとなるとかなり広範囲に点々と散らばっているようでした。そういう意味で宿泊地を足利にしたのは正解だった気がします。なんて実は楽天トラベルで安いホテルを探すと小山のホテルばかりでかろうじて足利のホテルが1軒あるばかりなのでした。 さて,栃木をじっくりと散策,足利はさっとひと巡りして,喫茶店に立ち寄った後,足利駅前のビジネスホテルにチェックインします。M氏はくたびれたということで,ホテルにて休むとのこと。しからば独りで足利の夜を堪能することにします。部屋には佐野の旨い店を紹介したお散歩MAPが置かれていたので,それを手に再び町に出ます。 地図に従い町を歩くと線路に沿って呑み屋街があります。仕舞屋となった店舗も多いもののかろうじて呑み屋街といっていい程度の店舗はあるようです。マップでお勧めの「居酒屋 一水」はお休みです。元祖ソースかつ丼の「まるや」はくいだおれ人形などの店頭の様子が気に入らずスルー,相田みつおゆかりのお店という「なか川」は相田みつおが嫌いなのでこれまた素通り。「鳥の巣」という店はなかなか渋い,枯れた味わいのある店に思われたので暖簾をくぐることにしました。案の定というか,やはりよい雰囲気の居酒屋さんです。カウンター席だけの酒場らしい酒場もいいですが,たまにはこういうカウンター,テーブル,小上りと用途に応じて使い分けのできるお店は店の造作に変化があって楽しいのです。チェーン店居酒屋はこの発展型ということになるのでしょうが,やはり年季という面ではるかに酒を呑みたくなる気分にさせてくれます。都内に居酒屋は数多いのですが,こうした居酒屋らしいお店は少なくなった気がします。うきうきした気分と客のいないテレビの音だけが耳に入る静けさにしんみりした気分になるのとが入り混じって何とも言えない静かな興奮が湧きあがってきます。これこそがぼくにとっての旅の醍醐味だと感じます。新聞を読むともなく眺め,思いがけずおいしい焼鳥を食べながらお燗酒をすするのはたまらなく旅情を感じさせてくれます。 さて,次なる店を目指そうと「鳥の巣」に入る前すぐそばの店に目を付けていたのですが,早くも店仕舞いしてしまったようです。しからば目の前にある「勉強亭 本店」にお邪魔しましょう。屋号に「勉強」とはなんともヘンテコですが,店の構えを見る限りは典型的な食堂兼居酒屋のようです。店に入るとテーブル席がずらりと並び,奥には小上りもある家族連れ1組だけがじっくり腰を据えて呑まれています。品書きを眺めるとからりこシューマイなるものがあります。そういえば栃木には肉を使わないで,玉ねぎと片栗粉だけが原材料のシンプルなシュウマイがあって,ソースをかけて食べるということをテレビで見たことがありますが,どうやらそれのようです。当然,これを注文,期待したほどのコクがあるわけではありませんが,もっちりとした食感はソースとよく合っておいしかったのでした。当然ながらソースかつ丼などの食事の種類も豊富でかつては三世代とか四世代の家族連れで賑わったのではないかとその様子を想像しながら酒を呑みほしたのでした。
2014/02/10
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さて,「カフェ・ドゥ・モンド」を出るとちょっと廻り道をして,大正時代に建てられたというカトリック教会を眺めます。シンプルながらも瀟洒さも併せ持ついい教会であるなあなどと眺めていると神父さんが登場,たまたま通りがかった東京から来たという3人連れに,どこからいらしたの,栃木はいい町よ,観光船には乗らない方がいいよとなかなか会話を切り上げさせないすさまじいお喋りっぷりで,3名にはありがた迷惑なことだなあという表情がありあり。神父さんはお喋りと栃木が大好きなのは十分感じ取れました。危うく難を逃れたわれわれは巴波川沿いの講演を抜けてさらに商店街を北上します。 すると歩き疲れる間もなく次なる喫茶店が登場です。「喫茶 バク(BAKU)」というお店。可愛くてこぢんまりとした洋館風の建物で。まだ休むには早過ぎますがつい立ち寄ってしまいました。店内は英国のお屋敷のティールームのようで上品でのんびり過ごしたくなるムードです。お腹も空いていないのにバクバーンという焼サンドイッチを食べてみることにしました。これが具だくさんでボリューム満点,すっかりお腹がいっぱいになってしまいました。こちらのママさん、ものすごいお喋りで話し出すととめどなくいつまででもしゃべり続けてしまいます。われわれが観光客と知るや栃木が大好き!を前面に押し出して,お向かいでロケしていてうちのトイレを誰それに貸したのよとか,遊覧船の発着所の川沿いの黒壁の通りではさるドラマの撮影があったのよとか,でも遊覧船には乗らないでねとかとか,とにかくそのお喋りは留まるところを知らないので,お時間のない方は地元住人を装うことをお勧めします。それにしても栃木の方は栃木が好きで好きで仕方ないのでしょうね。 おっ,オンボロの建物があるので何かと思えば「ホワイト餃子 栃木店」ですね。これは入ってみたかったなあ。おやっ,「昭和食堂」とはこれまた栃木市のイメージに合うなあなどと「栃木市役所別館」やら「例幣使街道」などなどの観光スポットをひと巡り,すっかり栃木の魅力を堪能しました。途中,「洋菓子・焼菓子の店 マロニエ」の喫茶室を覗くものの,喫茶室は今ではやっていないように見えました。やむなく蔵出したまごなど数種の焼き菓子を購入,早速いただいてみます。量産品のいかにもお土産物の定番然としていながら,これが驚くほどのおいしさ,濃厚なクリームが後を引きます。もう1軒のお勧めは老舗和菓子店の「松屋」です。鑛泉煎餅と本練洋館,カステラが有名ですが,たまたま食べてみたミニマドレーヌがあまりにもおいしくて,思わず取って返して知人へのお土産として発送してしまったほどなのでした。 さて,栃木市で最後に立ち寄ったのが「ティティドール 洋菓子店」の喫茶室です。喫茶室とはいささか大げさな位にこぢんまりしたスペース。店頭で販売されるケーキはほとんどが250円,飲物とのセットでも400円です。近所にあってほしい素敵なお店です。店の奥に貼られていた新聞の切り抜き記事を眺めるとこのお店がこの地に店を構えたのは昭和57年,それまでは東京の洋菓子店にお勤めだったそうで,洋菓子界では権威のある賞も受賞されたようで,セットをとったM氏はぺろりと平らげていました。最近,上石神井の「リビエラ洋菓子店」にも伺ったのですが,三ノ輪の「洋菓子喫茶 コールドンブルー」,新御徒町の「中屋洋菓子店 喫茶室」,元山の「ロンシャン洋菓子店」や東中野の「喫茶 ルーブル」など洋菓子店やパン屋に併設の喫茶室っていうのは独特の落ち着いた雰囲気がうれしくなります。長く頑張ってもらいたいものです。 おまけに,栃木駅周辺で見掛けたそのほかの喫茶店です。
2014/02/09
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この年末年始は,9連休の勤め人が多いことがニュース番組などで報道されていましたが,ぼくも御多分に漏れず長い休日を取ることができました。ただ残念なことに家計がままならず,近場でなるべくお金を使わずに旅行するのがせいぜいです。関東圏内を巡るとなるとどうしても何度か行ったことのあるような土地ばかりになってしまうのですが,なぜか栃木市にはまったく記憶がないため,それならば栃木市観光をメインに据えて,ついでにご無沙汰している足利や佐野もひさびさに訪ねて,佐野厄除け大師に初詣してくることにしたのでした。これで年末年始で,関東三大厄除け大師にお参りしたことになります。厄年でもなんでもないんですけどね。 さて,この地域を巡るには東武鉄道のふらっと両毛がお得そうなのですが,栃木市がエリア外でしかも町歩きをメインにしたく,あまり列車の乗降も生じないので,却下とせざるを得ません。結局はJRの宇都宮線に揺られることになったのでした。乗り換えの小山駅はつい先頃,自治医大駅に出張した際に立ち寄ったばかりでしたが,朝も早く家を出ていますし,しかも両毛線への乗換時間がたっぷりとあったので,再び小山駅に下車したのでした。 小山駅の西口を市役所方面に進みます。本当であれば前回歩く時間を取れなかった東口を見てみたかったのですが,同行者のM氏はまちの駅のある西口に興味津々。確かに東口方面は再開発の進んだ味気ない風景です。西口からすぐのまちの駅「思季彩館」は早くも開店しています,先日訪れた鹿沼のまちの駅は,早くから営業しているのに加えて,地産野菜や地元の手作り惣菜(B級グルメっぽいものを含む)などがずらりと並んでいたのでした。ついつい同じ栃木県なので,小山のそれにも期待してしまったのですが,意に反して小山のは品揃えがいまひとつです。やむを得ないので昨日伺った「美飲豆」に再訪しようかとも思いましたが,役所のそばには喫茶店が付きもの,小山でもきっとそうに違いないと信じて,市役所の周囲を歩いてみました。すると案の定,なんだかこぢんまりとして上品そうな一軒家の喫茶店があるではないですか。 「Asi-na(あしーな)」というお店でした。店先で店の方らしき女性と母子連れがお喋りをしており,ごく身内間でのやり取りらしく感じられます。こざっぱりとした衒いのないシンプルな店舗で幾分物足りなくはありますが,普段使いのお店として目覚めの1杯を楽しむには格好のお店です。店内はカウンターがメインで地元密着のお店であることが察せられます。白い壁面と天井には,筋交い風の木材による飾りがどことなく山小屋にいるような安らぎを感じさせてくれます。注文したコーヒーにはそのお伴として手造りのパウンドケーキが添えられており,それには獅子柚子というのでしょうか,巨大な柚子が練り込まれていて,これを含みながらコーヒーを口に運ぶと,柚子の香りが口から鼻に抜けてさわやかな気分になります。この巨大柚子の実物をスマートな女性主人が持ってきて見せてくださいました。よく落ち着いたシックな喫茶店でした。 さて,そろそろ両毛線の発車時刻となります。慌てて店を飛び出しなんとか列車に乗り込み,一息ついたところでもう栃木駅に到着です。早速町に飛び出すことにします。駅前風景はなんだか侘しい郊外駅といった感じで,何軒か喫茶店にでも立ち寄れればいいかと思う程度でしたが,駅から離れるに従って古い建物がこれでもかと出没してまったく飽きさせることのない町であることが徐々に判明するのですが,それは追々書くことにします。 駅前の大通りが観光のメインストリートのようなのでここは戻りのお楽しみにして,裏手の寂れた商店街を歩きます。すると早速「カフェ・ドゥ・モンド」を見つけてしまいました。Uの字をひっくり返したようなファサードの建物がユニーク,この町には歴史ある立派な教会が多くありますが,背の高い店構えはどこかしら教会の造りをイメージさせるようです。当然お邪魔することにします。店内はかなり古びた様子で,ただストーブの置かれた広いスペースはなんとなくダンスホールのような佇まいでした。メニューを眺めると,食事系のメニューも充実しています。しかも値段がびっくりするほどの安さです。焼そばが400円とのことなので,ご主人に尋ねると案の定栃木景物の例の品を出してもらえるそうなので迷わず注文です。そう,ポテト入りの焼そばです。出されたその焼そばは大げさではなく2人前はありそうな圧倒的なボリューム,しかもホクホクとしたジャガイモがまったく違和感なく当然入っていてしかるべきだと思ってしまうほどにおいしかったのでした。店内には2階に続く階段があります。ご主人に伺うと物置と化してしまっているため,お見せするようなものではないとのこと。かつては2階までお客さんで一杯になったのでしょう。栃木の旅は楽しくなりそうだと,幸先よいと感じたのでした。
2014/02/02
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自治医大駅から東北本線に乗り込みます。家の遠いK氏は遅くなるのを恐れてあっさりと離脱,独り小山駅に下車することにしました。10分程度の乗車時間であっさりと到着。とっくに日は暮れているので窓外は見たくもない自分の顔が見えるばかりなので,短い乗車時間は逆に退屈せずに済みました。東北新幹線ばかりでなく,両毛線,水戸線,そして今乗って来た宇都宮線(東北線)も停車するターミナル駅ですが,駅周辺の印象は希薄です。駅構内から遠目にも再開発が進んでいるように見える東口側は今回はパスすることにして、かつて小山城のあった小山城址公園側であればまだ古い街並みがあるだろうと期待して足早に町を巡ることにします。 駅前の大通りには居酒屋などの飲食店や風俗店がありはするもののこちらも古い建物はほとんど残されておらず、かつて日光街道の宿場町であり、思川の舟運で栄えたという名残はせいぜい町の駅に留めている程度です。そんな味気ない通りを引き返しながらふと路地を覗き込むと「美飲豆」なる喫茶店が目に留まりました。うっかりすると見落としていたに違いないほどに細い路地の中に薄暗く身を隠すように営業していました。その建物を正面にすると正に王道の本格派の純喫茶そのものの。2階は切妻屋根に漆喰風の壁面のある木製バンガロー、1階はガラスに木製の格子で店内は一望できるこのスタイルはまさにトーアコーヒーの系列に連なる佇まい。すでに日が落ちて久しく気持ちは居酒屋に向かっていますが、見掛けてしまった以上、立ち寄らずにはおられません。店内は想像通りのウッディなコーヒーカラーで統一されたこの上なく安心できる調度類で誂えられています。長居する余裕のないときに限って、こういう素敵な店に出逢ってしまうこのジレンマに後ろ髪を惹かれつつも、駅を出てはるか線路沿いのずっと先に見えた酒場を目指すことにしたのでした。 線路に沿って建つビルの背後に細い通路が通じています。その先にどうにも気になる明かりが見えています。いやそれは単に暗い通りに赤提灯が下がっているだけのことであって、よさそうに見えるのはあくまで錯覚に違いありません。それでもハエ取り紙に吸い寄せられるハエのようにゆらゆらと近寄っていくと、ガラスの引き戸に紺暖簾というこの上なくシンプルな店構えの店がありました。まるでデコレーションされていないお店なのですが、酒場の場合はこの飾り気なさは当たりである場合が多いのでした。喫茶店の愉しみとはまるで真逆ですが、いずれの雰囲気にも耽溺できるのはまったくもって幸福であると思います。店内も期待通りの広い20名以上は入れそうなコの字のカウンターのお店です。冷え切ってしまったので、梅入りの焼酎お湯割りをお願いします。アジの刺身をお願いするとメンマなどのサービスのお通しとともに独りで食べるには多すぎるほどの切り身が盛り付けられていました。そういえば店頭で数名のおじさんたちがなんだかただならぬ気配を漂わせながら、何やら意見を戦わせていましたが、やがて彼らが店内へ。せっかくいい気分で呑んでいるのだから、もめごとなど起こさないでもらいたいものだと思っていると、お店の元気な女性がご苦労さんと声を掛けています。どうやら店頭の側溝のフタが壊れてしまい、建設業のグループ数名でどう修繕すべきかを語り合っていたようです。連れの面々や常連たちからもご苦労、ビールをやってくれと店の方をせかしています。実に気持ちのよい酒場でした。「野楽炉大関」という理想的な駅前酒場に巡り合うことができました。
2013/12/24
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JR日光線の鹿沼駅で滑り込みで宇都宮行き列車に乗り込みますが,車窓の風景はさほど情緒のないどちらかというと退屈な風景が続きます。せいぜい14,5分で栃木県の県庁所在地である宇都宮に到着するのでいたしかたありません。ひと息つく間もなく宇都宮駅に到着です。宇都宮での滞在時間はごくわずか,駆け足で散策します。 ともあれ,何度も訪れて勝手知ったる宇都宮ですが,喫茶店めぐりは始めて。時間もないので駅前の数軒を巡る予定です。まずはかねてよりその存在は知っていたものの立ち寄るチャンスを逸していた駅前の大通りの果物屋2階のお店を目指します。「軽食&喫茶 ブーケ」がそれですが,2階に伸びる階段は荷物で塞がっており,どうやら閉店してしまったようです。そのあたりの事情を伺う間もなく,取って返して通りがかりで見掛けたお店にお邪魔しました。 「VAN」です。なんだかあまり気乗りしない店名ですが,店内は見通しが悪くとにかく入ってみようと飛び込みます。女主人がひとり席でくつろいでおられます。お喋りがお好きでどうしてこちらにおいでになったの,タウン誌でもご覧になったのとおっしゃいますが,こちらはまったくの飛び込み。お店の歴史を伺うと,店内に貼られるディズニーのポスターなんかを指さして,ディズニーランドの開園と同時なのよとおっしゃいます。1984年の開園なのでおおよそ30年の歴史があるようです。お喋りは留まることを知らないのですが,あいにく残り時間が少ないので,早々にお暇しました。 とりあえず駅前に引き返し,ふと気づくと「みちのく」というあまりにも懐かしい雰囲気の,かつては地方の駅前にどこにでもあったようなやってるんだかやってないんだかも定かでないようなおにぎり屋兼一杯飲み屋がありました。1杯位はよかろうと店に入ると,おにぎり屋というよりは,照明や椅子,テーブルのあつらえは,むしろ思いっきり渋いカウンター喫茶のような風情です。高齢の女将さんに夜勤明けらしきおじさん客が一人。すっかり元の色合いが分からなくなるほど煤けてしまった壁や天井,冷ややかな土間を眺めると不思議と心が安らぐのを感じます。冷えていたので,とりあえずと日本酒をお燗してもらいます。サービスに白菜のおしんこを付けてくれましたがこれがたっぷりでしかも変な添加物など入っていないらしい素朴なものでこれだけでもいい肴になります。おじさんと女将さんは初対面のようですが,話に花が咲いています。やきそばが食べたかったのですが,時間が気になりおにぎりと追加のお燗。驚くほど手際よく握られたおにぎりは大きくて,ふんわりしてとてもおいしかったです。店を出る際,引き戸の内側をふと見下げると,宇都宮の老舗BAR「パイプのけむり」の看板がそっと置かれていました。品書:酒:280,サワー:350,おにぎり:120,やきそば:300 東武宇都宮駅のそばにもある「ブラジルコーヒーショップBC」の駅前店にはぜひ入ってみたかったのですが,時間切れとなってしまいました。宇都宮駅から東北本線に乗車,自治医大駅を目指します。 この駅で下車するのは初めてかもしれません。仮に降りていたとしてもほとんど印象に残らないくらいに町に個性が感じられないので1年も経ったらきっと忘却の彼方ということになりそうです。そんな正直退屈な町だったのですが,一抹の希望を胸にまずは自治医科大のある東口はお楽しみにとっておくことにして,西口側を散策しました。駅を出ると和食処みたいなのがありますが,店はその程度,餃子屋さんもあるらしいのですが,時間もないので駅前を眺めるだけですぐさま東口に移動です。東口側には大型スーパーや飲食店もそこそこありますが,ここぞという渋めの居酒屋は見当たらず,チェーンめいた店ばかりのようです。ひと巡りして,ここで呑むまでのことはないなと見切りをつけて自治医大に向かいます。(お仕事タイムは割愛) 獣医師のK氏から自治医大には居酒屋があるとの情報を入手。東大やらで酒を出す学食はいくつか知っていますが,居酒屋そのものがあるというのはちょっと珍しいので行ってみることにします。Jプラザという建物にありそうです。この建物にはコンビニやレストランは当然のことですが,薬局や理容室,旅行代理店に宝くじ売り場まであって,大学の敷地内は小さな町として機能しているようです。ところが肝心の居酒屋らしきものは見当たらず平凡なレストランが営業しているばかりです。あまり時間を使ってはもったいないので,駅方面に向かいます。ニコチン中毒者のK氏は,自治医大では喫煙所がいっかな見当たらないので激しく喫煙欲求が高まって爆発寸前です。ネットで調べると敷地内に喫煙用プレハブ小屋があったようですが気が付きませんでした。たまたま見掛けたHPではなんと自治医大駅のホームには喫煙所がある(あった)らしいのですが,気付きませんでした。駅の外の喫煙場所に人が群がっていたので,すでにホーム上からは姿を消してしまったかもしれません。 K氏がしきりに昼に食べたクリームコロッケとオムハヤシライスがうまかったと自慢するので,店だけでも見ておこうと案内してもらうとそれは駅のすぐそばのビル1階の奥まったところにありました。「キッチン花」というお店です。その目と鼻の先に「鳥八」という居酒屋があって,これが自治医大で見掛けた中では一番味のある店構えなので入ってみることにしました。われわれが口開けの客となりました。生ビールがタイムサービスで280円とお得なので,早速注文。焼鳥も盛合せでもらいました。店は女性一人で切り盛っていて混雑したら大変そう。コの字のカウンターをテーブル席が囲んでいて,けっこうな席数がありそうです。でも焼鳥は思いがけずもおいしくてついつい酒が進みます。偶然にもよい焼鳥屋に出逢えて幸運でした。ここらへんは自治医大の職員や学生のほかは都心から帰宅してくる客たちで遅くなってから混みだすのでしょうか。なんにせよ開店直後は空いてますし,ビールもお得でお勧めです。 それにしても個人経営の喫茶店をほとんど見かけません。唯一見掛けた(ただしお休み)の一軒がこれ。さほど魅力を感じませんけど。
2013/12/23
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たまたま仕事の都合で獣医師のK氏と自治医大に出張することになりました。用件は午後から,午前中は自由に使えます。本当なら10時過ぎに自宅を出れば自治医大駅には昼ごろには到着できますが,こんな絶好の機会をみすみす無駄にするはずがありません。さまざまなプランを立てては放棄するのを繰り返すこと数回,出発前夜の居酒屋でようやく基本的なプランを組み立てたのでした。前提として,あくまで出張であるので昼酒は極力避けることという当然と言えば当然すぎるほどの条件に加えて,交通費を職場からの支給金額と同額程度に抑えることを自らに課したのでした。 自宅を6時30分過ぎには出発,7時過ぎには北千住に辿り着いたのでした。次に乗車したのは,東武伊勢崎線の快速・東武日光・会津田島行だったのでした。東武伊勢崎線の快速はなんとも渋いボックスシートの列車で,日光辺りの紅葉狩りにでも出掛けるのでしょうか,われわれよりもずっと元気いっぱいであまりのやかましさに文句のひとつやふたつ付けたくなるほどのじいさん,ばあさんグループで座席は埋まっています。苛立ちが徐々に蓄積されてきて爆発寸前になる頃,ようやく列車は新鹿沼駅に到着します。鹿沼を訪れるのは随分久しぶりで前回訪れたのはいつであるかばかりでなく,町の印象もまるで記憶に残っていません。鹿沼というとにっかつロマンポルノの女優さんの鹿沼えりが思い起こされるばかりです。江戸時代から日光街道の宿場町として栄え,古い民家や寺社が多く現存するようです。早速地図を片手に歩くことにします。 鹿沼の町のメインストリートは「F」字方になっており,「|」の下部が到着した東武の駅とすると角の辺りが建て替え問題が浮上している古い市役所がある旧市街地となっています。「-」には鹿沼銀座というシャッター商店街化した古い通りがあり,その先には栃木県内に数店舗を構える福田屋百貨店の鹿沼店があります。この百貨店,地方都市の小規模デパートの哀愁はなく,郊外型の大規模ショッピングモールに近く,あまり惹かれません。「 ̄」には黒川を越えたその突き当りにJR日光線の鹿沼駅があります。 さて,駅を出るとすぐに「宮田食堂」という味のある食堂があります。空腹でもあり立ち寄るつもりで覗き込むと,おばちゃんたちがくつろいでいらっしゃる。もうすぐ開店かと様子を窺うものの店を開く気配はなし。どうやら9時30分開店のようです。他にもいい感じの食堂がぽつぽつとありますが,いずれも開店前。「|」を少し進んだ路地には「喫茶 遊」もありますが,こちらも開店前。「まちの駅・新・鹿沼宿」というのがあります。こちらはすでに開店していますね。お馴染みの地域物産店と地元のにらそばを供する店が出店しています。そば屋は閉まっていますが,物産店には多くの地場野菜とともにニラ焼そばなどの惣菜類が豊富にしかもお安く販売されており,思わず目玉焼きの乗ったひき肉餡の乗った焼そばを購入。複数の店から出展されていてどれを買おうかしばし見比べてしまいます。店頭のベンチで独りもそもそといただきます。お土産にしたい位においしかったです。 さて,渋い市役所で便所タイム,目当ての喫茶店の開店時間,10時までまだ時間があるので役所裏手の御殿山公園をさっと見物します。ようやく10時,まずは市役所からすぐの「柊(ひいらぎ)」を目指しますが,なんとまだ開店していません。やむを得ずその先にある「ニュー平和喫茶」に向かうとありがたいことに店のシャッターが上がっています。白い漆喰塗風の壁に青い庇という鄙びた構えがまぎれもなく純喫茶であるなあと激しくときめきます。難波里奈さんという方の著作『純喫茶コレクション』を見て以来,憧れ続けた喫茶店に念願かなっての訪問となりました。どきどきしながら店に入り,写真から想像する以上の落ち着いた様子でなんともすばらしい。奥は多人数グループ用のスペースとなっており,いくらか純喫茶度が落ちるのがちょっと残念ではあります。ご主人夫妻は思っていたよりお若いのが意外でしたが,開店早々の慌ただしい中にあっても丁寧にあいさついただけました。帰りにマッチを所望した際も店の奥までわざわざ探しに行ってくれました。 念のため,「柊(ひいらぎ)」に引き返してみるとうれしいことに開店したようです。店に入るとカウンターには早くも地元のご老人3,4名が談笑中。時折,さらにご高齢化とお見受けされる女主人が上品に言葉を挟んでいます。もっとも見渡しが利く奥の上げ底になった席に着くと店の中心にくるまれたような安堵感に包まれます。もっと広い席になさったらというお言葉に丁寧にお断りしてどっぷりと店の雰囲気に浸ります。浸りながらマガジンラックに置かれたエロ度の高い週刊誌を眺めてしまうのがぼくの程度の低さでありますが,十分堪能させてもらいました。ここでもマッチをいただくことができましたが,レジ周辺の棚をごそごそ探してようやく見つかった1個なので,残り少ないようです。マッチ箱コレクターの方は急いで訪問されることをお勧めします。 さて,列車の時刻が迫ってきました。あまりおちおちしておられません。急ぎ足で「ニュー平和喫茶」を通過,脳裏に刻みつけながらもさらに足を速めます。閉店したらしき喫茶店を横目にやがて黒川を渡り,緩やかな坂を上り切るとそこにJRの鹿沼駅がありました。新しい市役所はここら辺に移動して新築されてしまうのでしょうか。閑散として味気ない風景でありながらも,駅前旅館が2館あるのだけが旅情を掻き立ててくれます。
2013/12/22
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さて、時間を少し戻して喫茶店2軒を紹介します。水戸の町はその規模の割には喫茶店の数はそれほど多くないように感じられ、時折見かけることはあってもすでに廃業していることがしばしです。それでもいまだ昔からの店舗をそのままに営業を続けているお店もわずかながらありました。この2軒は至近距離にあって、京成の百貨店から西に少し歩いたところにあります。 1軒目は「純喫茶 富(BENZ-103)(ベンツ)」です。なかなか風格ある古い建物で期待が高まります。想像していたのとは異なりカウンターのみのお店です。カウンターには水商売風の女性と近い関係にありながらもちょっと距離を取りたがっているような微妙な立場の男性がおります。女性は昼間からビールを呑んで(こういう時に人は自分が他人から日頃どのようにみられているかをようやく知ることになるのでした),ママさんにまでなんとしても飲ませようとしつこいのでした。そういう具合でこのお店の由来や経緯などをお聞きする暇はありませんでしたが,大好きなカウンター喫茶であることに加えて,ベンツマークのさまざまな装飾が不思議とシックでかっこよくて漫然と見入っているだけで満足なのでした。 2軒目はそのすぐそばにある「喫茶 チャペル」です。貴族の館風のなかなか豪華な構えのお店で期待が高まります。店内はテーブル席2卓とカウンターだけの狭い店で,思ったよりもこじんまりしたお店でした。女主人は,どこか横柄なムードがむんむん漂っていて,居心地はあまりよくありません。その横柄と思われた理由はすぐに判明。こちらはお客さんたちをタロットカードで占ってあげるのを売りにしているようなのですね。いいおっさん2人が占いもなにもあったもんじゃないですけど,店の方はさぞ気味が悪かったのでしょう。ともあれ,そういった趣旨のお店なので飲物は単なるおまけといったおざなりな提供の仕方で,単なる喫茶店遣いには不向きかも。占いに興味のある方はどうぞ。 他に水戸で見掛けた喫茶店。
2013/09/10
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